災害時は高血圧に注意!死亡リスクも上昇 非常食での減塩など対策

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災害がもたらす健康リスク

災害時の死亡リスク 心臓病と脳卒中の場合

地震や水害などは、健康への大きなリスクとなります。特に高血圧が引き金となる重大な病気が急増します。阪神淡路大震災のある調査では、心臓病(冠動脈疾患)での死亡者が1.5倍、脳卒中での死亡者が1.9倍に増加していました。

災害時 血圧はこんなにピンチ

過去の災害では、血圧に異常が無かった人も避難所で高血圧になっていた事例が多くありました。阪神淡路大震災では、発災1~2週間後に上の血圧(収縮期血圧)が平均で18mmHg上がっていました。災害前は上の血圧が120程度だったのに、災害後180以上になったという人もいました。

上の血圧が20mmHg上がるごとに心臓血管系の病気のリスクは2倍になると言われています。ふだん120の人が180になると、リスクは8倍近くになってしまいます。

これは災害からの時間経過と、特徴的な死因を示したものです。

災害直後、1週間後、3か月後で起こる病気のリスク

発災直後は災害そのものによる【外傷】【圧死】【溺死】が多く、1週間目くらいまでは不整脈などによる【突然死】が目立つようになります。もっとも長引くのは【脳卒中】【心筋梗塞】【心不全】など高血圧に関連する病気で、発災後から数か月間、比較的長期にリスクが増加しています。

災害時になぜ高血圧が悪化するのか

高血圧悪化の大きな原因

高血圧悪化の大きな原因は、精神的ストレスや生活リズムの乱れと考えられています。交感神経の働きが強まり、体から塩分を排出する機能が低下します。すると血液中の塩分が増え、血圧が大幅に上がってしまうのです。また避難生活での脱水、感染症、日中活動量の低下などと、交感神経の働きが強まることが重なることで血液が固まり、血栓ができやすくなります。これらのことが脳卒中や心筋梗塞を引き起こしていたのです。

過去の震災では、大きな余震が何回も続くことや、もっと大きな余震が来るのではという恐怖がストレスの原因になっていたようです。また避難所生活では睡眠も邪魔されやすいです。周りの人が出す音や、歩くときの振動で眠れず生活リズムが崩れやすいのです。こういったストレスや環境の変化で、ふだんは高血圧でない人も高血圧になるのです。

被災したら気をつけたい4つのポイント

被災したら気をつけたい4つのポイント

(1)非常食でも減塩を

非常食でも減塩を

おにぎり、カップラーメン、缶詰などの非常食は塩分が多い傾向があります。梅干しおにぎりだと2g、カップラーメンでは5gにもなります。高血圧の人の食塩摂取の目標値は6g未満とされているので、すぐに超えてしまいます。

大切なのは、カップめんの汁や、おにぎりの具など塩分を多く含む場所を残し、塩分摂取をおさえることです。食べ物が限られる中、残しづらいという状況もあるかもしれません。実際に被災地では「せっかくもらった食料だから」「まわりの目が気になる」と全部食べてしまう人が多くいました。もちろん1日1食しか食べられないような状況ではしっかりと食べたほうがよいですが、十分に食料が確保できるようになってきたら、周囲に高血圧であることを伝え、残すようにしましょう。

(2)水分補給 トイレは我慢しない

過去の災害では暗くて寒い屋外に仮設トイレが設置されており、トイレを我慢してしまうケースが多くありました。トイレを我慢すると水分を我慢してしまい、脱水を起こすなど病気のリスクになります。1日1リットル以上を目安に、お茶かお水などの水分補給を心がけましょう。甘い物や塩分の入った飲料水は避けましょう。

(3)日中の運動と夜間の睡眠

睡眠中は副交感神経が働き血圧を下げますが、睡眠の質が悪いとそれが機能せず高血圧が悪化します。災害後の大変な中なので難しいとは思いますが、日中に運動を行うことで血流を促しつつ疲労で夜眠れるようにしましょう。1日20分程度のウォーキングもよいでしょう。

(4)毎日、血圧を測る

災害時は血圧の変動も大きい上、その変化は感覚でわかりません。健康状態を把握するため自分で自分の体をモニターすることが大切です。血圧計は避難所に置いてあることが多いので、毎日測りましょう。上の血圧(収縮期血圧)が3日連続で140mmHgを超えたら危険です。医療スタッフに相談しましょう。

ふだんからの備え

1週間分の薬は常に持ち歩くようにしましょう。主治医と相談の上、薬は常に手元に残るようにしておくと、もしものときに安心です。
お薬手帳の情報も大切です。東日本大震災では発災直後から医療チームが被災地に入りましたが、多くの人は自分が服用している薬の名前を把握しておらず混乱しました。お薬手帳は貯金通帳と同じくらい大事だと思って、コピーを財布に入れておくなど薬の情報をいつでも持ち出せるようにしましょう。

災害時の高血圧は、事前の備えや現場での対策で予防できます。一度助かった命。その後を健康に過ごせるよう今から準備を始めましょう。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2021年5月 号に掲載されています。

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