首が痛い!原因を探るセルフチェック
首には7つの骨からできているけい椎があり、その骨と骨の間には椎間板というクッションの役割をする組織があります。
首は重さ約5kgの頭を支えながら左右上下に動かすなどさまざまな動きをします。そのため首にはとても大きな負担がかかります。
日常生活をチェックして、どんな病気が潜んでいるか確認してみましょう。
①スマホやパソコンでの作業時間が多い
この場合、同じ姿勢を長く続けていることが多く、首がこって痛みが出ることがあります。さらにストレートネックになっている可能性があります。
もともと首の骨は、左の写真のように前方へカーブしていて、頭の重さなどの負担を緩和しています。ストレートネックの場合、カーブがなくなり真っ直ぐになってしまうため、衝撃を吸収しにくく、首に負荷がかかって首の筋肉がこったり、関節に障害が起きたりしやすくなります。
②首が下がってきた
首が下がり、顔が上げにくい状態になる場合は、首下がり症候群という病気の可能性があります。
写真は同じ患者さんの寝ているときと立っているときの写真です。寝ているときは首が正しい位置にあり、首のカーブはほぼ正常になっています。しかし、立っているときは首がかなり曲がって、頭が下がっています。
首下がり症候群は、首の筋力低下によって起こります。高齢者に多い病気ですが、神経難病のパーキンソン病やうつ病などが関係していることもあります。
③首を後ろに反らすと痛い 首から腕へ痛み
首を後ろに反らすと痛い場合は、神経根が圧迫されていることが考えられます。
神経根は脊髄から枝分かれした神経で、脳からの命令を手足に伝えています。
加齢によって神経根が圧迫され、神経の通り道が狭くなることで痛みがおこります。
この症状を起こす首の病気は、「けい椎症」と「けい椎椎間板ヘルニア」の2つが代表的です。
けい椎症は加齢などにより、骨が変形してトゲのようになり神経根を圧迫することによって起こります。
けい椎椎間板ヘルニアは、椎間板組織が飛び出して神経根を圧迫することにより症状がおこります。
「けい椎症」や「けい椎椎間板ヘルニア」では、神経根ではなく神経の太い幹にあたる脊髄が圧迫される場合もあります。脊髄は、体のさまざまな部分を動かす脳からの信号を送る役割りをしています。脊髄が圧迫されると、脳からの信号がうまく伝わらず、手足の動きや排尿や排便にも支障がでてくることがあります。
④ボタンの掛け外しがうまくできない。
⑤足がもつれ歩きにくい。
⑥1日に10回以上トイレに行く(または夜間に3回以上)
などの症状が現れることがあるので、注意が必要です。
心配なときは詳しく検査
まず、診察によって脊髄あるいは神経根のどこが悪いか判断します。
問診では、「どんな症状か?」「いつ頃から症状が出てきたか」などを聞きます。
さらに、首を後ろに反らして手足の痛みの程度を確認したり、腱(けん)を叩いて神経の反応を見ます。また、リウマチや感染症などを調べるために血液検査を行う場合もあります。
そして、骨の異常や脊髄などの神経が圧迫されていないか調べるために、X線やMRIなどの画像検査を行います。
疑わしいところがいくつかある場合には、痛みの原因箇所を特定するために神経ブロック注射を行う場合があります。
症状が軽い場合は保存療法
けい椎症やけい椎椎間板ヘルニアで症状が軽い場合は、保存療法で経過を見ます。
「けい椎カラー」という首を固定する装具をつけて首の動きを制限し、首を安定させて負担を軽減します。
また、首や肩の周辺を温めて血行を促進するための温熱療法や、非ステロイド系の消炎鎮痛薬などの内服薬で痛みを和らげます。それでも効果が見られない場合や痛みが非常に強い場合には、神経ブロック注射などを行い、痛みを緩和させます。
首の痛み改善!
日常の姿勢で首への負担を軽減
日常生活で姿勢に注意するだけで、首への負担が軽減できます。
携帯電話やスマートフォン、本を読むときなどは首が下向きになって、首に負担がかかります。
スマホの画面を長時間見続けるときには、首が著しく曲がった姿勢にならないようにできるだけ、スマホを目線の高さまで上げて持つようにしましょう。
また、いすに浅く腰掛けて背もたれに寄りかかる姿勢も首に大きな負担をかけてしまいますので、避けるように心がけましょう。
首の痛みを予防するストレッチと筋トレ
首の筋肉は、胸側は「大胸筋」、背中側は「僧帽筋」につながっています。首の筋肉だけでなく、首の周りの筋肉もストレッチすると首の痛みの予防に効果的です。
首周りのストレッチ
(1)腰に両手をあて、背すじを伸ばし、胸を張ります。
(2)両ひじを少しずつ、後ろに回し、左右の肩甲骨をできるだけ寄せるようする。
(3)その状態で、5秒間キープしたら、力を抜いて元の姿勢に戻る。
【回数】
10回1セットとして、1日に2~3セット行う。
肩甲骨周りのストレッチ
肩甲骨周りをほぐし、猫背対策にもなります。
(1)足を肩幅程度に開き、リラックスする。両ひじを曲げたまま、肩の高さくらいまで上げる。
(2)肩甲骨を中央に引き寄せるように、両ひじをゆっくり後ろに引いていく。
10回ほど行うと、肩甲骨周りをほぐすことができます。
首の筋トレ
首の筋トレは首下がり症候群の予防にもなります。
【首の上側の筋肉の鍛え方】
(1)あおむけになり、体の力を抜く。
(2)あごをゆっくり上げ、息を吐きながら頭頂部を床に3秒間押し付ける。
(3)息を吸いながら元の姿勢に戻る。
【回数】
10回1セットで1日に2~3セット行う。
【首の下側の筋肉の鍛え方】
(1)あおむけになり、体の力を抜く。
(2)あごを引き、そのまま後頭部全体を床に3秒間押し付ける。
(3)力を抜きながら、もとの姿勢に戻る。
【回数】
10回1セットとして、1日に2~3セット行う。
※無理をせず、自分のペースで行いましょう。
※首や背中に痛みを感じたら中止してください。
手術を考えるとき
保存療法やストレッチなどを行っても改善が見られない場合は、手術を考えます。
「手の細かい動きができない」「歩行障害」「頻尿などの排泄障害」などの症状がある場合や、痛みやしびれのために日常生活に支障が出ている場合に検討します。
代表的な手術法
椎弓形成術
椎弓(ついきゅう)形成術は、最も多く行われている手術です。「けい椎症」や「けい椎椎間板ヘルニア」などで、脊髄が広範囲にわたって圧迫されている場合に行います。
けい椎症のために骨にできたトゲが脊髄を圧迫しています。そこで、扉を開くように首の骨の後ろ側の部分を開き、脊髄の通り道を広げます。
開いた部分は、人工骨や金属などで固定します。こうすると脊髄の周りに余裕ができ、圧迫がなくなります。
骨のトゲは、通常、首の前側にできているため、この手術では取り除きません。
骨のトゲを取り除かなくても脊髄の通り道が広がり、圧迫がなくなるので症状が改善します。
前方除圧固定術
前方除圧固定術は、脊髄などの圧迫部分が狭い範囲に留まっている場合に行います。
この手術は首ののど側から手術を行い、脊髄を圧迫している骨のトゲや椎間板そのものを直接取り除きます。
切除して出来た空間には、人工骨やチタン製のインプラントなどを埋め込みます。骨と人工骨が結合するのに半年ほどかかります。
この前方除圧固定術では、後ろの筋肉組織の損傷を防ぐことができますが、人工骨を入れた部分の関節が動かなくなり、上下の骨や椎間板に負荷がかかり、傷んでくるデメリットがあります。