子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がんの最新放射線治療を徹底解説

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がんのなかには、積極的に放射線治療を行うものがあります。子宮頸(けい)がん(癌)がん、子宮体がん、卵巣がんを例に、いつ、どのように行うのか解説します。

放射線治療とは

放射線治療とは、がん細胞に放射線を照射して消失させる治療法です。以前は手術ができない場合に行う治療とされてきましたが、近年、放射線治療の精度は急速に向上し、がんによっては放射線治療単独でも根治も目指せるようになってきました。

放射線治療そのものに痛みはありません。手術のように体にメスを入れることがないので、体への負担が少ない治療といえます。手術ができない場合や、高齢で手術に抵抗がある場合などには、がん治療の重要な選択肢の1つとなっています。あえて、手術ではなく放射線治療でがんを治すという人も増えてきています。

早期の子宮頸がんでの適応が増えている

子宮頸がんは放射線が非常に効きやすいがんで、高い効果が期待できます。特に早期の子宮頸がんで積極的に放射線治療が行われるようになっています。
子宮頸がんの放射線治療には、体の外から放射線を照射する方法と、体の中から照射する方法があり、これらを組み合わせて治療します。

体の外から照射する方法

体の外から照射する方法
体の外から照射したときの子宮のMRI画像

  • 装置の上にあおむけになり、専用の固定具で体を固定します
  • 装置の上部(赤い丸)から放射線が照射されます
  • 照射時間 1回15分
  • 子宮の周りに小さながんがある可能性があるため、がんを含めて少し広めに照射します(上の図 紫の線内)

体の中から照射する方法

体の中から照射する方法
体の中から照射したときの画像

  • 放射線を放出する装置につながった器具を子宮に挿入します
  • 器具の先端から放射線が照射されます
  • 器具を体内に入れる必要があるため、1回1時間ほどかかります
  • 器具の先端から、強い放射線をごく狭い範囲に絞って照射します(上の図 黄色の線内)

治療スケジュール

放射線治療の治療スケジュール

はじめは、体の外からの照射を週5回行います。4週目ごろからは、週5回のうち1回を体の中からの照射に切り替えて行います。週当たりの回数は徐々に減らしていき、7週間以内に完了します。外来でも可能ですが、副作用のケアなどのために入院して行う場合もあります。

主な副作用

放射線治療の主な副作用

  • 治療中の副作用
    「吐き気」や「下痢」があります。治療が終われば自然に治まるので、それほど心配はありません。症状がつらい場合は、薬で対処することもできます。
  • 治療後の副作用
    「直腸炎による血便」「膀胱(ぼうこう)炎による血尿」「小腸炎による腸閉塞(そく)」が、半年から数年後に現れることがあり、治療しても慢性的に残ることが少なくありません。そのため、治療が終わったあとも、定期的に通院して副作用が現れていないかどうかを確認する必要があります。

ほかの治療と組み合わせる

放射線治療は、より治療効果を高めるために、手術や抗がん剤治療など、ほかの治療を組み合わせて行うこともあります。

放射線治療とほかの治療を組み合わせる

精密なコンピューター操作による「放射線治療」+「手術」

早期や、やや進行した子宮頸がんの手術後に、放射線治療が行われています。手術で取り切れなかったり、周りの組織に広がっていたりした場合に、がん細胞を照射線で消失させることで、再発のリスクを抑えるのが目的です。

コンピューター操作による放射線治療、強度変調放射線治療(IMRT)

近年では、副作用を軽減するために、精密なコンピューター操作による放射線治療が行われるようになっています。IMRT(強度変調放射線治療)と呼ばれる、コンピューター制御で多方向から強弱をつけた放射線をがんの形にあわせて照射する方法です。通常、量を調節せずに放射線を照射すると、がんの近くにある正常な組織にも、がんに当たるのと同じ量の放射線が当たってしまいます。IMRTでは、正常な組織に当たる放射線の量は最小限に抑えながら、がん全体に対して十分な量の放射線を照射することができます。

「放射線治療」+「抗がん剤」

放射線治療と抗がん剤の併用は、子宮頸がんの早期から進行したがんまで行われています。

  • 併用の目的 その1「放射線治療の効果を増強させる」
    抗がん剤によって、放射線に対するがんの感受性を高め、放射線治療の効果を増強することができます。
  • 併用の目的 その2「再発・転移を抑える」
    全身に作用する抗がん剤を併用することで、画像検査ではわからないほどの小さな転移がんを消失させることができます。再発・転移を抑える効果が期待できます。

治療スケジュール

放射線治療と抗がん剤を組み合わせた治療スケジュール

放射線治療の方法は放射線単独で行う場合と同じです。放射線治療に加えて主に「シスプラチン」の抗がん剤を週1回投与します。5週~6週繰り返します。シスプラチンは、がんの放射線に対する反応を高める効果があると考えられています。

症状を緩和する

がんによる症状の緩和を目的として、放射線治療を行うこともあります。進行した子宮頸がんや子宮体がんのほか、卵巣がんでも限定的に行われています。
特に効果的なのが、骨に転移した場合の痛みの緩和です。原因となっている転移がんに放射線を照射することで、痛みを抑えることができます。そのほか、脳転移による神経症状や、がん組織が血管や神経を圧迫して起こる症状の緩和も期待できます。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2020年9月 号に掲載されています。

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    女性が気になるがん「最新放射線治療」