リンチ症候群セルフチェック 遺伝的に大腸がんになりやすい人の特徴とは

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大腸がん胃・腸・食道

監修 がん研有明病院 臨床遺伝医療部部長 中島健(なかじま・たけし)

大腸がんは、「リンチ症候群」という遺伝的な素因で起こる場合があります。リンチ症候群の人は大腸がんになる可能性が高く、他のがんも発症する危険性が高まります。早く見つけて、がんを予防するためのセルフチェック法と診断について紹介します。

知っておきたい「リンチ症候群」

大腸がん検診は、原則40歳以上の方が対象で、毎年受けることが勧められています。大腸がんは若い頃の発症は少なく、40代からリスクが高まる病気だからです。
ただし、20代や30代でも大腸がんになってしまう人がいます。その一部は遺伝家系の影響で大腸がんになりやすい人です。大腸がん患者の4人に1人は家族性(血縁者に大腸がんの人がいる方)で、2%ほどは遺伝性大腸がんである「リンチ症候群」とされています。

若い年齢でがんが発症しやすい リンチ症候群の特徴

生まれつきの体質(遺伝的な素因)が原因で起こる大腸がんの中で、一番頻度が高いものがリンチ症候群です。両親のどちらかがリンチ症候群である場合、その原因となる遺伝子の変化(バリアントといいます)が50%の確率で子どもに引き継がれます。

正常な細胞には、DNAを複製したときに生じた突然変異を見つけて修復する働きがありますが、リンチ症候群では、そうした働きをする遺伝子の一部が生まれつき変化しているためその機能が低下していることが分かっています。DNAを複製する際に生じた突然変異を修復する働きが低下しているために、細胞分裂のたびに遺伝子の突然変異が蓄積し、がんが発症しやすくなると考えられています。

リンチ症候群の場合、20代や30代などの比較的若い年齢でがんが発生しやすく、手術でがんを取り除いても、残った大腸や他の臓器(子宮、卵巣、胃など)に別のがんができやすくなります。そして、同じ遺伝子の変化を持つ血縁者にもがんが発生する可能性が高くなります。

大腸内視鏡の写真で大腸がんを観察しても、リンチ症候群の大腸がんなのか普通の大腸がんなのかの見分けはほとんどつきません。リンチ症候群を確定するには、遺伝子検査が必要になります。

遺伝子検査で異常が見つかった場合は、大腸がん、胃がん、子宮体がん、卵巣がんなどの検査を定期的に行うことが早期発見に役立つとされています。

リンチ症候群のセルフチェック方法

自分や血縁者がリンチ症候群なのかが気になる方のために、リンチ症候群の簡便なセルフチェックの方法をご紹介します。
チェックするのは、第一度近親者(両親、きょうだい、子どもなど)、第二度近親者(祖父母、おじおば、孫など)と呼ばれる範囲までです。

自分から見た第一度近親者と第二度近親者

第一度近親者と第二度近親者の中に、次の2つの項目に当てはまる人がいないかどうかをチェックしてください。

  • 50歳未満で大腸がんや関連がん*(子宮体がん、胃がん、卵巣がんなど)を発症した人がいる
  • 年齢に関係なく、大腸がんや関連がん*(子宮体がん、胃がん、卵巣がんなど)など、2つ以上のがんを発症した人がいる。

※再発ではなく、それぞれが初めて発症した場合で考えてください。
上記以外に、すい臓がん、胆道がん、小腸がん、腎盂、尿管がん、脳腫瘍、皮脂腺腫、角化棘細胞腫(かくかきょくさいぼうしゅ)が血縁者に認められている場合も関連があるとされています。
*リンチ症候群関連がん:大腸がん、子宮体がん、胃がん、膵がん、尿管がん、腎盂がん、脳腫瘍(特に膠芽腫)、胆管がん、小腸がん、皮脂腺腫、皮脂腺がんなど

どちらかに1つでもチェックがある場合 あなたが遺伝の影響で大腸がんになる可能性は

遺伝の影響で大腸がんになる可能性は【高】

第二度近親者までの中に上記のいずれかに当てはまる人がいれば、またその人数が多いほど、もしかしたらあなたの家系は遺伝性大腸がんのリンチ症候群の可能性が出てきます。
その場合、あなた自身もがんになりやすい体質も持っていて、20歳代や30歳代でも、大腸がんや子宮体がんになりやすい可能性があります。

もし当てはまらなくても、若くしてがんにかかっている血縁者が多い場合や大腸にポリープがたくさんある(数十個)場合には、リンチ症候群以外の遺伝性のがんの可能性もあります。
気になる方は、大腸がんと遺伝の関係に詳しい医療機関を受診することを検討してください。

該当する医療機関は、以下のホームページなどで調べることができます。

全国遺伝子医療部門連絡会議「遺伝子医療実施施設検索システム」
※NHKサイト離れます

  • 遺伝的なリスクがどの程度あると考えられるか
  • どのような対処方法があるか
  • 遺伝の検査を受けるべきかどうか(そのメリットとデメリットについて)

などの相談に乗ってもらえます。
そのような相談を「遺伝カウンセリング」といいます。自由診療になります。遺伝性腫瘍の一般的な情報は、国立がん研究センターがん情報サービスも参考になります。

遺伝カウンセリングは保険適用外

費用は医療機関によって異なりますが、1時間あたり1万円ほどです。詳しくは、医療機関に直接お問い合わせください。

どちらにもチェックが無い場合 あなたが遺伝の影響で大腸がんになる可能性は

低いの画像

大腸がんは、遺伝の影響が無い人でも、40歳から徐々にリスクが高まります。年に一度、大腸がん検診(便潜血検査)を忘れずに受け、「要精密検査」と出たら必ず精密検査を受けましょう。

この記事は以下の番組から作成しています
2020年1月29日(水)放送
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