危険な高齢者のてんかん 原因や症状、治療法について

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てんかんけいれんしびれがある脳・神経全身

てんかん発作とは

私たちの脳はおよそ1000億個の神経細胞からなる複雑なネットワークです。脳からの全身に命令が伝えられる際、神経細胞には、電気信号が起こります。電気信号によって、「体を興奮させたり」、「興奮を抑えたり」して、そのバランスをコントロールしながら、脳は活動しています。ところが、何らかの原因で、この電気回路がショートして過剰な興奮が起こると、体が発作を起こしてしまいます。これが「てんかん発作」です。

高齢者のてんかんの原因

高齢者の場合、一番多いのが、脳梗塞や脳出血などの「脳卒中」です。つまり、血管が詰まったり、破れたりして脳の電気回路に障害が起こります。脳卒中以外にも、年をとると「脳の神経が変性する病気、神経細胞がうまく働かなくなってしまう病気」も増えてきます。ほかにも「脳腫瘍」が、てんかんの原因になることもあります。そして実際には、原因が特定できないということも多くあります。

てんかん 主な原因

なお、子どもの「てんかん」の主な原因は、高齢者の場合とは大きく異なります。1つは「素因性」です。つまり「てんかん」になりやすい体質です。子どもの脳は成長とともに発達していきますが、その過程で、脳の電気回路がうまく働かず、「てんかん」を発症します。また、脳の神経細胞がうまくつくられない「形成異常」という病気が原因の場合もあります。他にも、感染症や自己免疫疾患などによって「脳炎」が起こり「てんかん」になることもあります。

高齢者のてんかんの症状

てんかんの発作というと「全身けいれん」を思い浮かべる人が多くいますが、全身けいれんは、発作のタイプでは「全般発作」と呼ばれるものの一つで、高齢者の患者さんでは、少ないタイプです。

高齢者の場合、「焦点発作」(部分発作)といわれるものがてんかん発作の多くを占めます。これは、脳の一つの領域だけの過剰な興奮によって起こるもので、意識がある場合とない場合があります。焦点発作は、脳の中で過剰な興奮が起こった領域によって特有の症状が出ます。

てんかん 焦点発作の主な症状

例えば、脳の運動をつかさどる部分だと、「口をもごもごする。手をもぞもぞさせる」といった症状が出ます。ほかにも「感覚」や「意識」をつかさどる部分で起これば、「1点を見つめボーっとしている」「答えが返ってこない」という症状や、「何をしていたか覚えていない」といった認知症のような記憶障害が起こることもあります。

てんかんの診断

てんかんの検査

てんかんを診断するためには、いくつかの検査が行われます。まず、時間をかけて「問診」が行われます。
「脳波検査」では、脳の過剰な興奮が脳のどこに起こったか調べます。また、MRIなどの「画像検査」は、脳の傷や障害を画像で確認できるため、てんかんの診断に有効です。

検査には「ビデオ脳波同時記録」という、より専門的な検査があります。4日くらい入院してもらい、脳波をとる装置を頭につけて、定点カメラで撮影しながら、発作の時の様子などを調べます。

高齢者のてんかんの治療

高齢者のてんかんの治療

高齢者の場合、てんかんの治療の基本は、発作を防ぐ「抗てんかん薬」をのむことです。特に高齢者の場合は薬が効きやすく、的確に薬を服用していくことで、9割近くの患者さんは、発作のない状態になります。発作がなくなれば、普通の生活が送れます。抗てんかん薬は、近年、新しいものも次々に増え、とても多くの薬があります。薬には第一選択薬というものがあり、最初に使うことが勧められています。

成人の場合、第一選択薬にはカルバマゼピン、ラモトリギンなど5種類があります。発作を抑制する効果は、どの薬でもあまり差がありません。ですが、副作用は薬によって異なるため、高齢者の治療では、「副作用を考慮する」ことが一番大切です。抗てんかん薬は、脳の中枢神経の働きを抑制することが多いため眠気やふらつきなどの副作用が出現することがあります。そのため高齢者では、そうした副作用が少ない薬、「レベチラセタム」「ラモトリギン」、場合によっては、「ガバペンチン」を使うことが勧められています。

治療費の負担を軽減する制度

自立支援医療制度

てんかんの治療では、「抗てんかん薬」を長期間にわたって服用するため、医療費の負担が大きくなりがちです。そこで、治療費の負担を軽くするのが「自立支援医療制度」です。自立支援医療制度を利用することで、通院治療の自己負担が1割になります。対象となるのは外来での診察・投薬・検査などです。

患者さんの所得によって、支払う医療費の金額が変わります。また、てんかんの診断書と患者さんからの申請が必要です。詳しくは、各自治体の「保健福祉課」などへ お問い合わせください。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2019年7月 号に掲載されています。

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