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新型コロナウイルスとの“長期戦”。

この試練とどう向き合っていくのか、1人1人が試されている今、共に生きていくための知恵やヒントを一緒に探っていきませんか?

みなさんが実践していることや経験、アイデアをお寄せください。

トピック一覧はこちら
21.ぺこぱが聞く医療現場のリアル② 感染症対策の“プロ”に聞く『いま必要なこと』
20.ぺこぱが聞く医療現場のリアル① 感染者数減でも若手看護師の本音は…
19.【働き方のヒント④】合田文さんが教えるリモートワーク 4つのコツと1つの理想
18.【現状リポート③】「Hey! Say! JUMP 山田涼介さんが聞く 医療現場の最前線はいま」
17.【支援のヒント①】困難を抱える人への新たな支援のカタチ オンライン就労支援
16.【地域発!のヒント③】集まれなくても開催できる!Withコロナ時代のイベントとは
15.【現状リポート②】「コロナ禍の在日外国人に安心を」東京・高田馬場のミャンマーレストラン
14.【再起のヒント②】劇団四季 吉田社長に聞く コロナと演劇
13.【働き方のヒント③】東芝 出社とテレワークの最適解はどこに?
12.【働き方のヒント②】カイシャ革命の課題 どうする?社員の評価
11.【再起のヒント①】劇団四季 公演再開までの舞台裏
10.【働き方のヒント①】サイボウズ 青野社長に聞く コロナ後のカイシャ
9.【地域発!のヒント②】地方移住 カギは「テレワーク環境」の整備
8.【安心のヒント④】 家族間のイライラ 解消するには
7.【地域発!のヒント①】 「ゲストハウス」ピンチをチャンスに
6.【発想のヒント②】"新型コロナ時代" をどう生きるか  C.W.ニコルの遺言
5.【安心のヒント③】 ストレス治療の専門家 小山文彦さん
4.【安心のヒント②】 “親子の孤立”どう防ぐ? 模索する現場から
3.【安心のヒント①】 宇宙飛行士 野口聡一さん
2.【現状リポート①】若い女性3割超 “経済的不安を感じる”
1.【発想のヒント①】"ストレス危機” どう乗り越える? みなさんの解決策

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2021年10月1日

ぺこぱが聞く医療現場のリアル② 感染症対策の“プロ”に聞く『いま必要なこと』


お笑いコンビ「ぺこぱ」の2人が、新型コロナ治療の最前線に立つ医療関係者にインタビューするシリーズ。今回お話を伺ったのは「日赤和歌山医療センター」感染症内科部長、古宮伸洋さんです。古宮さんはエボラ出血熱やSARSなど、国内外でさまざまな感染症と闘ってきました。次々に発見される変異株、そして医療現場のリアルな現状…ぺこぱの2人が率直な疑問をぶつけました。

(インタビューは9月15日に実施)




ぺこぱ
左:シュウペイ 右:松陰寺太勇
同じバイト先で先輩と後輩であった2人が2008年コンビ結成
2013年より「ぺこぱ」として活動


デルタ株、ミュー株、イータ株…変異株って今後どうなるの?


松陰寺太勇(ぺこぱ)
「いま変異株がどんどん広がってるじゃないですか。デルタ株に続いてミュー株、イータ株とか色々出てきてますけど、今後もどんどん変異が続く可能性はあるんですか?」

古宮伸洋さん
「新型コロナウイルスが世の中に出てきて以来、ウイルスは変化し続けていて、変異株も次々と出てきています。適者生存というか、その状況や環境で広がりやすいウイルスが選別されて残っています。

変異株の中でも、病原性や感染力が強い、ワクチンが効きにくいといった、社会に影響を与えるような一部の変異株にだけ名前が付いています。それ以外にも名前も付いていないような変異株はいっぱいあるんです。

ですから今後も いろいろな変異株が出てくることが予想されます。」

シュウペイ(ぺこぱ)
「変異株では症状は変わるんですか?」

古宮さん
「基本的な症状はウイルスが変異しても変わらないんですが、重症化する割合は変化していく可能性はあります。」

ワクチン接種は進んでいるけれど…

(古宮伸洋さんは国内外の医療現場で感染症と闘ってきた)

松陰寺
「改めて新型コロナのどういったところが怖いですか?」

古宮さん
「新型コロナウイルスはうまく広がる性質を持っているんですね。発症する前から感染力がある、あるいは無症状の人からも広がるというのは、対策をとる上で非常に難しいです。

例えばインフルエンザでも発症の前日から他人に感染させることはあるんですが、やっぱり可能性が高いのは、症状が出ている間に感染させるケースです。そのため『症状が出る人は特に気を付ける』ことで感染を抑制することができます。

しかし新型コロナの場合は、“誰から感染が広がるのか読めない”ところが難しいと思います。」

松陰寺
「基本に立ち返って、感染を防ぐために大切なことって何でしょうか?」

古宮さん
「新型コロナウイルスが体に入って来る場所はだいたい決まっています。目やのど、鼻の粘膜にウイルスが付着したり、肺で吸い込んだりして体内に入ってくるわけですね。

例えば、手はいろいろなものを触るのでウイルスが付着しやすいんですけれども、それだけでは感染しません。ところがウイルスの付いた手で目や鼻や口を触ると、そこの粘膜から体に入ってきます。ですから、手にウイルスが付いていても、しっかりと食事の前などに手を洗えばウイルスが体の中に入ってくることはありません。

あとはマスク。自分がウイルスを吸い込むのを防ぐ作用と、もしかして自分がウイルスを持っていた場合は、ウイルスを吐き出すのを防ぐ効果があります。ただしっかり着けないと効果は下がりますので、鼻が出ないようにカバーするなど、どうせ着けるならしっかり着けていただく必要があります。こういうのは習慣ですので、ぜひ多くの方に基本的な感染対策を習慣にしていただきたいと思っています。



松陰寺
「いまワクチン接種がだいぶ進んできたと思うんですが、それでも対策というのは必要なんでしょうか?」

古宮さん
「少し前までは『ワクチン接種が進めば対策が不要になるんじゃないか』という期待もありましたが、最近は変異株の出現もありその希望にかげりが出てきています。感染力が強く、ワクチンの効果が低い変異株が増えれば、ワクチンだけではコントロールが難しくなります。

海外ではワクチン接種が進んで重症者が減ったことを理由に対策を緩める動きがあります。またワクチンは時間が経つと効果が薄れてきますので3回目の接種を開始した国もあります。

われわれはこうした先行している国々の動向を見ながら判断していくことになるのかなと思います。」

どうやったら元の生活に戻れるの?


松陰寺
「ちょっと漠然とした質問なんですけれども、どうやったら元の生活に戻れますか?」

古宮さん
「難しい質問ですね。ワクチンや治療薬が進歩して少なくとも重症化が防げるようになれば対策を緩める方向になるとは思うんですけど、現時点での見込みとしては、当分の間は難しいかなと思います。」

松陰寺
「なるほど…」

シュウペイ
「まだまだ今の生活の状態が続くという感じなんですね?」

古宮さん
「国によってポリシーの違いもあって。いくつかの国はある程度、新型コロナと共存していく道を選び、ある程度の犠牲は受け入れるという姿勢で進めています。

また逆にいくつかの国は“ゼロコロナ”、コロナは一切流行らせない姿勢です。ある程度流行してしまうと一定の割合で亡くなられたり後遺症を残したり、そういう方が出てきますので。

ただ厳しい対応にはデメリットもありますから、どちらにバランスを置いて進んでいくかは国や国民の議論を踏まえて考えていく必要があります。」

自宅療養 何に気をつければいい?


松陰寺
「いま 自宅療養で家族と生活するというケースが増えていますよね。それについて気を付けなきゃいけないことはありますか?」

古宮さん
「自宅療養で心配されるのは、患者さん自身が適切な治療を受けられずに重症化してしまうことと、家族に感染を広げてしまう可能性だと思います。

まずは病気の経過とか症状について知り、どういう状況になると入院の必要があるか理解していただく。また家族に広げないためには、基本的な感染予防の知識を持っていること。あとは自宅の構造によっては難しいんですが、家の中で家族との接触の機会をどう減らすか、そういうことを事前に準備して考えておくのが大事かと思います。」

シュウペイ
「現状で最低限やれるのは、そういうことしかないということですよね?」

古宮さん
「そうですね。うまく重症化を予測して、家族に感染を広げない。そういう対策をとられれば、特に軽症の若い方などは安全に自宅療養できるかと思います。」

いまできることって何?


松陰寺
「いま 僕たちにできることは何でしょうか?」

古宮さん
「もう何回も言われていると思うんですけども、基本的な感染対策を続けてほしいです。あと最近気になっているのはネット上のデマや感染者に対するひぼう中傷ですね。人から人に感染する病気なので皆で協力して立ち向かう必要があるんですが、それぞれの立場や考え方の違いから、対立している人たちがいるんだと思います。デマやひぼう中傷を広げないためにも、まずは正しい知識を得ていただくことをお願いしたいです。

私はしっかり3密を避けるなど当たり前のことを守っていただければ、そんなに感染が広がるものではないと思っているんです。ただこうした生活をどこまで続けられるのかとなるとやっぱり難しいところで。うまくモチベーションを保ちながら、“病気にかからない”ことが、ぺこぱのお二人が仕事を続けていく上でも大事なことかと思います。」

松陰寺
「僕らは『皆さんの娯楽のために』できることがないかと日々頑張っていますので、先生に言われたことに気を付けて、頑張りたいと思います。」

古宮さんとぺこぱの対話は動画でも公開中です。
[新型コロナウイルス] ぺこぱが聞く 新型コロナの現状 | 命を守る行動を

NHKどーがレージ


※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

2021年10月1日

ぺこぱが聞く医療現場のリアル① 感染者数減でも若手看護師の本音は…

9月30日をもって緊急事態宣言が解除されました。

感染者数が過去最高を更新し続け”医療崩壊”の危機にあった現場は、9月に入り感染者が減る中でどんな変化があったのか―。
お笑いコンビ「ぺこぱ」の2人が、最前線に立つ若手看護師にインタビュー。
本音を伺いました。

(インタビューは9月15日に実施)



ぺこぱ
左:シュウペイ 右:松陰寺太勇
同じバイト先で先輩と後輩であった2人が2008年コンビ結成
2013年より「ぺこぱ」として活動


「いつまで続くんだろう」 第5波で襲ってきた不安


今回ぺこぱの2人が話を聞いたのは、横浜市立みなと赤十字病院のICU(集中治療室)で働く看護師の金城櫻さんです。看護師として働き始めて4年目、去年から新型コロナの治療現場に立ち続けています。


松陰寺太勇(ぺこぱ)
「金城さんは今も現場に出ていらっしゃると思いますが、仕事内容を簡単にご説明してもらえますか。」

金城櫻さん
「私はICUに所属していて、重症化した新型コロナの患者さんはもちろん、それ以外の集中治療を必要とする方たちの看護をしています。」

松陰寺
「どうですか、現場の今の感じは? 」

金城さん
「第5波では患者さんの数も重症の方も増えて、スタッフや医療従事者のマンパワーが必要になりました。それまでは感染する方は70代、80代が多かったんですけど、第5波は40代、50代、60代と年齢層も変わってきた感じです。

シュウペイ(ぺこぱ)
「看護師さんたちの中では、患者さんが増えるんじゃないかという見込みはあったんですか?」

金城さん
「それは何とも言えないんですけど…やっと患者さんが少し良くなって一般病棟のほうに移れたと思ったら、「また新しく重症の患者さんが来ます」という感じで。“とめどない”と言うか、「これがいつまで続くんだろう」という不安はありました。

感染者数が下がったから「わーい!」という気持ちはない

(金城櫻さん)

松陰寺
「第5波がちょっと下り坂になってきたと思うんですけども、世の中と医療現場とのギャップってありますか?」

金城さん
「それは常にあります。感染者数が減っているというニュースを見ても、やっぱり目の前にいる患者さんの重症度や必要なケアは変わらないので。感染者が減ったからといって私たちがやることはそんなに変わらないです。」

シュウペイ
「いま伝えられている以上に、現場では『収束していない』という感覚なんですか?」

金城さん
「そうとは言えないんですけど…感染者がゼロにはならないので。ちょっと下がったからって『わーい!』という気持ちは全くないので。」

松陰寺
「“コロナ禍”が始まってから1年半以上たったわけですけども、どうですか、『長いな』という感じですか?」

金城さん
「最初に新型コロナの患者さんが来た時は、まさかここまで続くとは思ってなかったので。初めの頃は感染対策だったり、未知の病気だったのでいろいろ試行錯誤をしたりしながらやってきました。慣れてきたところもあるんですけど、大変さは変わらないと思います。

新型コロナに感染すると、家族に会えないなどどうしても隔離が必要になってしまいます。タブレット端末を使ってリモートで面会をするなどの工夫もしてるんですけど、われわれのマンパワーが足りないこともあって毎日はできません。

家族や患者さんご本人も不安があるだろうし、それをうまく軽減できるような工夫をしているところです。」

最期を一緒に看取れない


金城さん
「一度重症化してしまうと、亡くなってしまう方もいます。新型コロナ以外の病気であれば最期お看取りする時に、亡くなっていく過程、例えばどんどん心拍が下がって…というような過程をご家族と一緒にお看取りすることもあるんです。新型コロナだと、その過程を一緒に看ることができなくって…最終的に納体袋に入ったお顔をちょっとだけ見ることしかできません。」

松陰寺
「あー…」

金城さん
「40代で重症化する人もいらっしゃいます。お子さんがまだ小さくて、これからやりたいことがたくさんあるだろうなとか、お子さんと一緒にこうしたいとか色々あったと思うんですが、結果的にお亡くなりになったり…。そういう方々を看護してると、やるせないというか悔しいというか、われわれもつらいです。

もちろん日々の業務も大変なんですけども、重症化した時に家族に会えなかったり、お話ができなかったり、それは普通の病気の対応とは違うので、そこがつらいです。」



松陰寺
「お話を聞いていると、医療現場の方々の体調やメンタル面を心配してしまうんですけれど、大丈夫ですか?」

金城さん
「みんな自分自身の体調を管理して、チーム一丸となって頑張ってるところです。」

シュウペイ
「看護師さんや医療従事者の方って本当に必要とされているじゃないですか。一方でどこかで心が折れそうになるとか、『ちょっともう辞めようかな』みたいな瞬間はありましたか?」

金城さん
「私自身はそんなになくて。心が折れたりとかは大丈夫です。」

松陰寺
「『折れそうになった時に、ぺこぱのネタを見て元気になった』とか言ってもらえると思ったんですけど…何かすみませんでした。」

金城さん
「すみません(笑)」

いま知ってほしいこと 改めて基本の感染予防を


松陰寺
「いま現場にいる立場として、どんなことを皆さんに知ってほしいですか?」

金城さん
「新型コロナに感染して入院してしまうと、なかなかご家族とも会えなくなり、患者さんご自身の不安が増すと思います。重症化して人工呼吸器やECMO(人工心肺装置)をつけるのも苦しいし、苦しさをとるために鎮静剤などを使うと眠っているような状態なので、そうなるとお話できないし…。

自分自身はもちろん自分の大切な人を守るためにも、”手洗い・うがい・3密を避ける”といった基本的なところをしっかり守っていただきたいです。」

松陰寺
「当初から言われている事ですね。根気強く頑張っていきたいと思います。」

金城さん
「ですね。コロナが始まって約1年半、ずっと『感染対策』って言われてきたと思うんですけど、まずは手を洗うだけでも感染予防になりますので、一緒に頑張っていきましょう。」

金城さんとぺこぱの対話は動画でも公開中です。
[新型コロナウイルス] ぺこぱが聞く 最前線の医療現場の今 | 命を守る行動を

(NHKどーがレージ)


※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

クロ現+
2021年5月18日

合田文さんが教えるリモートワーク 4つのコツと1つの理想

4つのコツと1つの理想

生産性があがらない、新人の育成が難しい、新規開発が進まない・・・在宅勤務が広がる中で、多くの企業が悩みを抱えています。

多様な人々の居場所を作るというミッションを掲げ、アプリやウェブメディアを手がける企業を経営する合田文さんは、リモートワークでもあまり困らず仕事を続けられている実感があるとのこと。どんな実践をしているのか、マネジメントのコツを、番組でご紹介できなかったものも含めてお伝えします。

LGBTQ+などダイバーシティについて漫画で紹介するウェブメディアの編集長をつとめる合田さん
リモートでのマネジメントも「その人らしさ」を大切にしている


コツ① オンラインでは、わざわざ雑談を行う

一日一度は定例のミーティングでメンバーと必ずオンライン会議をする合田さん。積極的に話すのは、「雑談」だそうです。リモートワークは決まったことをコツコツとする仕事には向いていますが、新しいアイデアやひらめきは雑談から生まれることが多いというのは、番組でも紹介した定説。合田さんも業務連絡よりも、最近楽しかったことなど雑談を主にすることでチームの空気を作り、「発言しても大丈夫な空間」であることをチームの当たり前にすることで、自由な発想と発言が活発化するように努めています。

コツ② 部下がアガるポイントを押さえておく

若い部下と雑談するのって、結構難しいですよね。合田さんはよいコミュニケーションを取るために、相手がアガるポイントを普段から見つけるようにしています。部下が好きなことはなにか、わくわくすることは何か、わかりますか?わくわくすることを知っておけば、どんな仕事を振るといいかも見えてくる。普段から探しておくようにしないと上手な雑談はできないはず。

コツ③ 実際に会うときには、会えることを喜ぶ

緊急事態宣言下をのぞき、週に2回、そして節目には感染対策をしながら部下と顔を合わせるという合田さん。
そのときには「会えてうれしい」ことをきちんと相手に伝えます。「当たり前には居てくれない」ということを肝に銘じることが大切なのだとか。部下とは「コミュニケーションがちゃんととれているか」というコミュニケーションが大切。「自分はこの会社にいていいんだな」と思えるコミュニケーションがとれるか、気をつけているそうです。

コツ④ 安心できる職場を作るには、リーダーから変わる

リモートワークはそこまで問題ではないと語る合田さん。メンバーは基本在宅勤務、中には実家で働くメンバーがいたりと働き方も多様。コロナ前は定期的に会うようにしていたが、そもそも集まらなくてもいいことも多かったのではないかと改めて考えているそうです。合田さんは、まず変わるべきはリーダーであると考えてワーケーションを行い、そうした経験をメンバーにシェア。そして、何よりも大切にしているのが「発言を尊重する」を徹底すること。そうして成果を出すために一番いい方法を相手に選んでもらうようにしてもらい、それを言い出すことも、実践することも大丈夫なんだと考えてもらおうと心がけています。

理想のオフィスとは・・・

集まることが目的化しているオフィスはもう古いのではと語る合田さん。というのも、リモートワークになって休む人がいなくなったそう。
そんな合田さんが、将来的に作りたいのは、「みんなで食事できるオフィス」。ミーティングの延長ではなく、普通にご飯を一緒に食べられるスペースがほしいのだとか。オフィスは無意識の違和感を持つような場所であってはならない。心理的な安全性が担保されているかどうかが大切だと考えます。安全性が担保されれば、退職する人も減るはず。新たな人を採用するのは大変ですからね。

※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

2020年12月31日

「Hey! Say! JUMP 山田涼介さんが聞く 医療現場の最前線はいま」

12月31日に放送された第71回NHK紅白歌合戦。 番組のなかでHey! Say! JUMPの山田涼介さんが日本赤十字社医療センター救急科の鷺坂彰吾(さぎさか・しょうご)医師に、医療現場の現状を聞きました。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、若い世代に伝えたいメッセージとは?未公開シーンも含めたインタビューの内容をまとめました。
緊急事態宣言の頃と比べ いまの状況は

Hey! Say! JUMP山田涼介さん(以下、山田さん):
鷺坂彰吾先生、よろしくお願いします。
いま新型コロナウイルスの“第3波”が来ていると言われていますけれども、医療現場の最前線はどうなっているのでしょうか。

日本赤十字社医療センター 救急科 鷺坂彰吾医師(以下、鷺坂医師):
私は救命救急センターという部署に所属する医師です。この数か月、新型コロナ対応は当然のこと、交通事故などで重傷の外傷患者さんや、あとは心筋梗塞、脳卒中とかですね。命の危険が迫っているような患者さんに対して、集中治療、24時間体制の治療を提供しています。


(リモートインタビューに答える 日本赤十字社医療センター 鷺坂彰吾医師)

現状は、正直、非常に厳しい状況と言わざるをえないかなと思っています。いわゆる“第1波”と言われていた4月の頃は、緊急事態宣言が出され、お店が閉まったりとか、移動を自粛してくださったりとかで、人の動きや経済の動きがある程度止まっていたので、それに合わせて、コロナ以外の患者さんもかなり減っていました。

それがいまの状況は、人の移動や経済活動が、通常に近い形で再開されていますので、必然的に交通事故やコロナ以外の重症な患者さんも発生しています。通常の医療を守りながら、増加する新型コロナウイルスの患者さんの対応を同時にしていかなければならないという状況です。


(救命救急センターの初療室で患者の処置にあたる鷺坂医師(中央)/映像提供 日本赤十字社医療センター)

山田さん:
なるほど。4月に緊急事態宣言が発令されたとき、新型コロナの患者数は都内で100人、200人という数字だったと思います。それが先日は800人を超える人数が発表されました。(編集部注:12月17日、東京都は都内で新たに821人の感染が確認されたと発表) そういった点で、4月と比較して深刻な状況になっているということはありますか。

鷺坂医師:
4月、5月で何が大変だったかというと、この新型コロナウイルス感染症がどれほど恐ろしいのか、どのくらいの死亡率で、どういった治療法があるのかとか、私たち医療者自身が感染を防ぐためにどういった対応をすればいいのか、ということを日々、模索しながらの状況でした。患者さんの数がたとえ少なかったとしても、一人ひとりに対応する手間暇や、治療のすすめ方とかは、いま以上に大変だったと思っています。一方で、半年以上が経過して、この感染症そのものがどういう病気なのか、どういう人たちのリスクが高いのか、どういった行動が危ないのか、だんだんわかってくるようになりましたし、私たち自身にもノウハウが蓄積されてきたというのはひとつあります。
かといって患者さんの数が減っているわけではなく、むしろ患者さんの数は、人の移動や経済活動が再開するにつれて、どうしても増えてきてしまっています。さらに12月とか1月という寒い季節は、心臓や脳卒中などの血管系の病気が増えてきます。救命救急センターとしては、もともと忙しい時期なんです。そのなかでこのコロナの対応をしないといけない。


(24時間体制で救急患者を受け入れる/映像提供 日本赤十字社医療センター)

新型コロナウイルスがここまで流行してしまうと、例えば、全然関係ないご病気で病院にやってきた方、緊急手術を受けなればならないような方が、念のため行った検査で新型コロナの陽性が発覚したとか。あとは交通事故でやってきた方や、意識の状態が悪く、頭の病気を疑うような症状でやってきた方が、実は新型コロナウイルスに感染していたということがあり得ます。ですので、私たちは運ばれてくる患者さんに対して、ある意味全ての人に対してコロナを疑ってかからないといけない。そういう状況になってしまっているというのが大変なところですね。
感染予防にはシンプルに手洗いとマスクを

山田さん:
医療崩壊を招かないためにも、ご高齢の方から僕たちの若い世代まで、いま何ができるのかということが大切なポイントのひとつだと思っています。先生からいまの若い世代に届けたいメッセージ、お伝えしたいことはありますか。

鷺坂医師:
やっぱりSNSとかを見ていると、比較的若い世代の方々は、コロナに仮に感染したとしても「私たちは死なないから」「重症化しないから」と思っている方が多いなと感じます。実際には、若い人も少ないながら重症化していますし、何より若い方が外で感染してしまって、ご両親やおじいちゃんおばあちゃんとか、同居されている方にうつしてしまう家庭内感染もあります。あるいは、会社とか学校とかでより年配の方にうつしてしまうことを疑われている事例がいくつも発生しています。
若い方は、症状がほぼ出ない方、あるいは出ても極めて軽い方が一定の割合いらっしゃいます。でも若い方が年長の方にうつしてしまうことによって、結果的にそちらの方が重症化してしまうと。そういうことを考えると、決して若い方がかかっていいわけではなく、一人ひとり、若い人もご年配の人も含めて、この時期だからこそ感染管理を徹底していただく。具体的には、本当にシンプルで原始的なんですけれども、手洗い。そして人前とか、外に出るときにマスクをしっかりとつけていただくとかですね。本当にそれで予防できるのかって、みなさん思うかもしれないんですけど、私たちも実際、新型コロナの対応を100件以上対応しているようななかで、かかってないわけです。それはきちんと手洗いといった手指衛生(しゅしえいせい)を徹底しつつ、必要なマスク等を身にしっかりつけて予防していることが、いちばん寄与していると考えています。ちゃんと予防すればある程度は防げる病気ですから。



山田さん:
症状が分かりづらいところも、新型コロナの怖いところではないかと思うんです。僕たちのメンバーも、一時期コロナにかかりましたが、そのメンバーも症状が分からなかったと。においや味覚がなくなってというのはあったけれど、熱は出なかったようです。僕たち若い世代にとっては、怖くないって考えてしまうかもしれないけれど、本当に一人ひとりの気持ちを変えていくことから、まずは始めてほしいところですよね。

鷺坂医師:
そうですね。本当におっしゃる通り、症状が軽い、あるいはないからいいというわけではなくて、他の方にうつしてしまうというのが、社会全体としても大きな問題になってしまうので。大前提として、調子が悪いときは外に出ない、人に会わないというのを徹底していただくのはもちろんですし、症状がなかったとしても、マスクとか手洗いっていうのを本当に一人ひとり、徹底していただきたいなと思います。

山田さん:
ことしだけでなく、2021年も気持ちを引き締めて。今まで以上に、一人ひとりが手を取り合って、意識を高めていってほしいですね。

鷺坂医師:
そうですね。あとはもうこれだけステイホームを継続してくださっている方が大勢いるなかで、少しは出かけたいなと思っている方もいらっしゃるかもしれないのですけれども、私は日赤に所属している医師ですのであえて申し上げますと、献血は不要不急の外出ではないです。ぜひ、行ける方には献血には行っていただきたいなと思っております。
大みそかにも医療を守る人たちを思って


山田さん:
僕たちは紅白で、メッセージ性の強いメドレーを歌わせてもらうので、先生もお忙しいと思うんですけど、もしお時間があればご覧いただければと思います。

鷺坂医師:
大みそかは、ちょうど勤務のはざまでお休みをもらっていますので、ぜひみせていただきます。元日は勤務なんですが。感染が広がって、急きょこれ以上追加で働くことがなければいいなと思っています。
あとは、紅白のある大みそかの日も、病院とか、救急車の救急隊とか、本当に必死で何とか医療を守っている人たちがいることを心の片隅に覚えておいていただければと思います。コロナにかからないにこしたことはないですし、人にうつさないための感染対策をしていただく。このウイルスの皮肉なところは、やっぱり人との接触だとか、そういったことがリスクになってしまう。人間がいちばん大切にしたい部分に影響してしまうウイルスだなと思っているんです。ですので、帰省などもよく考えてもらって、するのであれば感染対策をしっかりした形でやってもらいたいなと思います。

山田さん:
本日はお忙しいなか、ありがとうございました。

鷺坂医師:
ありがとうございました。

(この記事は2020年12月18日に収録されたインタビューを元に構成しました)

【あわせて読みたい】

※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

クロ現+
2020年11月14日
このお題はクローズアップ現代+で番組になりました

“オンライン就労支援” 困難を抱える人への新たな支援のカタチ

11月10日に放送したクローズアップ現代プラス「気づかれない大人の障害」は、放送後にSNSなどで様々な反応が寄せられました。
「これは私だ」「治療やトレーニングの話題も取り上げてほしい」など、当事者や支援機関の方からも多くのご意見をいただきました。今回寄せられた声にもあった「トレーニングや訓練」について、番組では取り上げきれなかった内容を記事でお伝えします。
“Withコロナ”の生活で、社会のあらゆる場所でオンライン化の流れが進んでいますが、就労支援を行う現場でも、これまでほとんど取り入れられてこなかった“オンライン就労支援”が広がっています。 新型コロナウイルスの影響が続く中、新たに生まれた取り組みを取材しました。
(取材:クローズアップ現代プラス 栗原望アナウンサー)
新型コロナを機に始まった“オンライン就労訓練”

東京 品川区の「ジョブサ品川区」

取材に訪れたのは、東京都の指定を受けて就労支援をおこなう「ジョブサ品川区」。
メンタルの調子を整えるトレーニングや、コミュニケーションのスキルに加え、実際に企業で働く際に使うパソコンの基礎などを学ぶ場所です。ことしは新型コロナウイルスの影響で雇用状況が悪化していることもあり、相談者の数は、4月と比べ9月はおよそ3倍に急増しています。

参加しているのは、ひきこもりから社会への参加をはじめようと取り組む人や、かつて職場で悩みをかかえて退職し、再就職をめざそうという人たちです。生きづらさを抱えながらも、なんとか仕事をしたいと願う人たちが集まっていました。
中には、今回番組で注目した、障害があることを本人も周りも気づくことができずに辛い思いをしてきた人も多く、こうした就労支援の施設で相談をする中で、適切な診断につながったケースも多くありました。



通所による職業訓練の様子  講師は他の場所にいてオンラインで授業を配信

この就労支援は、原則2年間利用できます。利用者の負担額は1割で、残りは東京都が負担します。都に利用状況や成果を報告するために利用者の出席数や課題の進捗などを詳しく記録する必要があることから、これまでオンライン化が進んできませんでした。しかし新型コロナの影響でリモートワークなどが進んだ今では、東京都内全ての区でオンラインでの就労支援が可能となっています。

オンライン化は、これまで対面での就労支援が受けにくかった人たちにも支援の手が届くようになった一面もあるといいます。

「ジョブサ品川区」福祉事業部  西河 知子 統括マネージャー
「特に感覚過敏の方、例えば私たちが当たり前に朝電車に乗って通勤をしているんですけれど、人と人との距離で、雑音が全部聞こえてしまう方。肩が触れ合っただけで気分が悪くなってしまう方もいらっしゃいます。実は通えないんだけれど、在宅であればやってみたいというニーズがあったので、オンラインでやろうと考えました」



「ジョブサ品川区」福祉事業部  西河 知子 統括マネージャー

オンラインで押印も
「ジョブサ品川」ではSNSやオンライン配信の講義を通じて、コミニケーションのスキルアップを学んだり、企業に入ったときのことを想定した作業などの課題に取り組んだりしています。


この日の課題は「電子レンジの買い替え」  利用者が一日かかりでつくった資料

この日の課題は、「会社で電子レンジの買い替えの見積もりを作る」という実践的なもの。
上司から商品購入の際のリサーチや、市場動向の確認などが求められたときに対応できるよう訓練を積んでいるのです。

利用者たちはインターネットで商品の価格を調べ、パソコンで資料を作成していました。 途中で職員がチャットで確認したり、疑問に答えたりしながら対応していきます。
オンラインにしたことで可能となったのは、利用者の質問や疑問に即座に対応できるようになったことだといいます。
教室で手を上げるのはおっくうだけどチャットならば参加できると学びの効果も上がっているということです。


授業終了後の「押印」もオンラインで行う

そして課題が終わると行うのは「押印」。これまでは施設に来て日々の終わりに押印していましたが、オンラインで可能になったことで「記録」がしっかりと残せるようになりました。
こうしたオンライン就労支援の取り組み、新たな選択肢を生み出す可能性もあるといいます。

ジョブサ品川区 福祉事業部 西河 知子 統括マネージャー
「オンライン就労支援によって、在宅ワークがどう行われる1日の流れがどういったものであるか、自分がどれぐらいのレベルで作業ができれば働けるのか。本当は通勤は苦しいんだけど、そういう在宅ワークがあったら併用型(※通勤と在宅を併用して勤務すること)の会社に就職してみたいとか、あるいは完全在宅ワークでしてみたい方もいらっしゃいます。オンライン訓練をしていくことによって利用者の選択肢を増やしたのはあるかなと思ってます」


新型コロナで増加する“在宅勤務の求人”


ハローワークが公開する求人資料  「在宅可能」な企業も相次いでいる

一方で施設によると、企業側の求人にも変化がみられるといいます。
上の写真は施設が利用者に紹介している求人の資料。これまであまり見られなかった「在宅のみ」での就労の形態が、増加しているといいます。 こうした「在宅勤務」が可能な会社が増えていけば、例えば地方に住んでいても東京の会社の仕事ができる機会が生まれるなど、生きづらさを抱えた人たちの仕事が増えていくのではと期待しています。

「ジョブサ品川区」福祉事業部  西河 知子 統括マネージャー
「新型コロナの影響が続く中、各企業が在宅求人に切り替えることで、地方採用にもつながっている例もあり、地方の障害枠の求人も活性化していくんじゃないかなと思います。今生活している場所でしっかりと働ける術があるように、変わっていってほしいなと思っています」

「ジョブサ品川区」の利用者の多くは、ひきこもりや「障害」など、これまでの生活の中で生きづらさを抱えた方々でした。一生懸命に学ぶ姿を見て、本人たちの中に「社会に参加したい」という強い思いがあることが分かりました。
その思いにこたえるためにも、「在宅OK」など、変化する必要があるのは、社会のほうなのだと強く思いました。
「オンライン就労」は、社会の中にあった「弱いところ」に支援が届き、社会的弱者とされてきた人たちをエンパワーメントできる取り組みではないかと感じました。

※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

2020年9月11日

集まれなくても開催できる!Withコロナ時代のイベントとは【地域発!のヒント】

新型コロナウイルスの影響でイベントの中止が相次ぐ中、デジタルの力を利用することでイベントの開催や集客ができないか、各地で模索が始まっています。
創意工夫を凝らせば、オンラインならではの新しい魅力や価値が生み出せるのではないか? 北海道の「オホーツク網走マラソン」と大阪の「愛染まつり」の事例から、Withコロナ時代の新たなイベントの姿を考えます。
スマートフォンのGPS機能を利用して“webマラソン”
北海道網走市で6年前に始まった「オホーツク網走マラソン」。知名度の高い網走刑務所がスタート地点、特産のブランド和牛の焼き肉を食べることができる給水所など、ユニークな取り組みが人気を集め、3000人が参加するイベントにまで成長しました。



新型コロナウイルスの影響で全国各地のマラソン大会が中止されるなか、オホーツク網走マラソンも中止に追い込まれました。しかし、網走市では実際にコースを走る「リアル」の大会を中止する代わりに、オンライン上でタイムを測定する「webマラソン」の開催を決めたのです。
7月1日から始まった大会のエントリーの受け付けは好調で、定員3000人のエントリー枠に初日だけで1900人が応募し、1週間で完売する人気ぶりだったことから、網走市は8日に追加の枠を300人分作るなど対応に追われました。
(※現在、エントリーの受付は終了しています。)
オンライン上でマラソン大会を実施する「webマラソン」では、専用のアプリをスマートフォンにダウンロードすることが必要です。スマートフォンのGPS機能を使って、走った距離と時間を測定し、その合計が42.195キロに達すればゴールになる仕組みです。



参加ランナーは網走市に集まるのではなく、それぞれが住む地域で走ります。大会期間の2週間の中で、好きな時に好きな場所で好きなだけ走れるのがwebマラソンの特徴です。 オンライン上でマラソン大会を行うという初めての試み、当初は網走市もランナーに受け入れられるか不安に思っていましたが、いざ告知を始めると評判は上々でした。

網走市 水谷洋一市長
「単にやめるだけでは、この大会を来年以降は選んでもらえないのではないかという危機感がありました。やめるのであれば何か違うことをやろうと考えていた」


webマラソンでも経済効果を
今回の大会では“特産品のPR”でもひと工夫を加えています。定員3000人のうち100人限定の特別枠として設けたのが「網走応援エントリー」です。大会の特徴の1つである“特産品を食べることができる給水所”の代わりに取り入れました。エントリー料は1万5000円で、特産の毛ガニ2杯か、ブランド和牛650グラムがもらえます。
特産品は網走市が地元企業から購入し、新型コロナウイルスの影響で落ち込む市内に経済効果を行き渡らせることを狙っています。この試みを地元の水産会社も歓迎しています。

水産会社経営 牛渡貴士さん
「私たちの会社だけではなくて、商品を使ってくれる飲食店も含めて新型コロナウイルスの影響が大きいです。こうした取り組みで応援してもらえることは非常にありがたいですし、声をかけてもらえたこと自体がうれしい」


大会の中止というピンチから始まった新しい取り組みについて、網走市は今後の観光のあり方を変える試金石になると考えています。水谷市長は来年以降のマラソン大会をリアルとwebの両方で行うことも含めて検討したいとしています。

網走市 水谷洋一市長
「ファンを大きく広げるチャンスになるのではないかと思っています。来年はもちろんリアルの大会をやりたいし、やります。一方でwebマラソンでも参加できるようになれば、網走マラソンのマーケットが広がるのではないかと思っています。ぜひ今回、この試みを成功させたいと思います」


オホーツク網走マラソンは9月14日の13時から開催される予定です。

動画のライブ配信で夏祭りを
今年は各地の夏祭りも、中止や規模の縮小を迫られました。そんな中、お寺が祭りの動画をネットで配信するかたちで開催されたのが、大阪市天王寺区にある愛染堂勝鬘院(あいぜんどう しょうまんいん)で行われた「愛染まつり」でした。 無病息災を願って江戸時代に始まった「愛染まつり」。毎年6月末から3日間、普段は公開していない本尊が特別に開帳されます。また、祭りをPRする愛染娘を載せた「宝恵かご行列」が行われたり、境内の舞台では奉納の舞踊や演芸も披露されます。 長年祭りを担当してきた寺の住職の山岡武明さんは、当初は中止も検討しましたが、催しをオンラインでライブ配信することに決めたと話します。
愛染堂 住職 山岡武明さん
「毎年いろいろ、つらいことも災害もあったりしますけど、それでもずっと繰り返しやってきました。前向いてやっていかなあかん」


毎年恒例の舞踊や演芸はオンラインでの開催に向けて事前に収録することにしました。専門の業者に依頼して、背景に映像を合成できる特殊な撮影を実施。初めての挑戦に戸惑いながらも、参加者たちからは“祭りを成功させたい”という気持ちが表れていました。



摂州地車囃子かずら会長 得田 昌伸さん
「楽しかったです。いつもと違う感じで。悪い空気を追い払いたいと頑張っています」


愛染堂 住職 山岡武明さん
「みんなが本気で、演者さんたちも心なしかわくわくしているような感じです。やっぱり楽しんでできるっていうところが大事やと思います」

オンラインであっても祭りを楽しんでもらいたいという気持ちに変わりはありません。

「オンライン愛染まつり」開催当日の様子は・・・?
迎えた祭りの初日。去年は5万人が訪れた境内は閑散としていました。新型コロナ対策のルールにのっとり、境内は御朱印やお守りの授与所を設けるにとどめています。 一方、寺のホームページでは午前10時からライブ配信がスタート。進行役は祭りのシンボルである「愛染娘」です。



事前に収録した舞踊や演芸も、オンラインでお披露目です。愛染娘を乗せた「宝恵かご行列」は、生放送で配信されました。



初日のライブ配信は愛染娘の座談会なども交えて、午後5時まで行われました。祭り開催期間の6月30日から7月2日までの3日間の合計では、21時間にも及んだ長いライブ配信。住職の山岡武明さんは、新型コロナで大変な今だからこそ、新しいやり方で伝統を守ろうとしています。


愛染堂 住職 山岡武明さん
「コロナに負けないぞって気持ちにみんなで奮い立って、楽しいよって言っていけるよう 盛り上がれたらと。そうすることが夏祭りのだいご味だと思います。いつもの2倍疲れました」


「オホーツクwebマラソン」も「愛染まつり」も、これまでとは全く違う準備を行うことで、新しい形のイベントを築き上げています。ことし、遠隔地からも参加できる仕組みを作ったことが、来年以降も、参加者をこれまで以上に広げられる新たな可能性につながっていくのかもしれません。

※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

2020年8月28日

「コロナ禍の在日外国人に安心を」東京・高田馬場のミャンマー・レストラン【現状リポート】

新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの飲食店が窮地に立たされています。
東京・高田馬場にあるミャンマー料理店 ルビーもその1つ。4月の売り上げは去年の10分の1となり追い込まれています。ミャンマーから来日し、難民認定を受けたチョウチョウソーさんが経営するこの店。飲食店としてだけではなく、在日ミャンマー人たちの相談の場、日本人との交流の場としての役割も担ってきました。 最近は、コロナの影響で仕事が激減したミャンマー人たちの相談にも乗っているチョウさん。このままでは、「大切なコミュニティーが失われてしまう」と危機感をつのらせています。

(「withコロナを生きるヒント」取材班 ディレクター 伊藤加奈子)


安心できる「コミュニティー」が窮地に
「リトル・ヤンゴン」とも呼ばれる高田馬場。周辺の地域には、約1,700人のミャンマー人が暮らしていて、多くのミャンマー料理店があります。ルビーは、2002年に開店しました。(2012年に現在の場所に移転)



ミャンマーでは会計士をしていた、オーナーのチョウチョウソーさん。1988年の民主化運動に参加していましたが、仲間たちが捕まっていき「次は自分かもしれない」と身の危険を感じるように。そこで、1991年に日本に逃れ、1998年に難民認定を受けました。日本で暮らすミャンマー人が増える中、「安心できる場を作りたい」という思いでこの店を開きました。





チョウチョウソーさん:
「店を開くときから、ミャンマーの味を食べられるだけではなく、お互い情報交換もできる『交流の場』にしたいと考えていました。生活が大変な人、日本語の問題、職場の問題がある人など、色々な課題を抱える人がいます。けれど、ここに来たら落ち着けて、ひと安心。『おいしい。よかった。幸せ』と、その瞬間だけでもいいので、温かい気持ちになって帰ってもらえたらいいなと。」

ランチビュッフェではさまざまなミャンマーの味を楽しめる

その後、ミャンマーと日本のビジネス面での交流も増えたことで、日本人の会社員なども店を訪れるように。さらに、日本に暮らす難民のことを知りたいと講演に呼ばれた大学、高校などの学生たちも来てくれるといいます。店は、ミャンマー人と日本人の交流の場にもなってきました。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、4月の売り上げは去年に比べて、10分の1にまで落ち込みました。感染拡大防止協力金、持続化給付金など、収入を得るために手は尽くしてきましたが、経営は追い込まれています。

店がなくなると「相談の場」も喪失してしまう
日本にいるミャンマー人のリーダー的な存在であるチョウさん。仲間たちと一緒に、在日ミャンマー人を支援するグループを作り、職場や家族の問題などあらゆる相談に乗り、生活をサポートしてきました。ミャンマー人に日本語を教える活動も続けています。

コロナの流行が始まってからは、コミュニティー内で少しでも余裕のある人が、米や油、卵などの食料を寄付する助け合いも行うようにもなりました。日本語があまりできない人たちや、情報過疎になりやすい地方に住むミャンマー人たちにも、日本のコロナに関する情報が行き渡るように、受けられる支援や日々の感染者数の情報などをミャンマー語に訳してSNSでの発信も行っています。

先日私が参加した新型コロナウイルスの在日外国人への影響をテーマにしたセミナーでは、日本に住む外国人の人たちの中には、「3ない(情報、住居、身分がない)」の状況にある人も多いと聞きました。チョウさんの店は、駆け込み寺のような存在でもあり、直接相談にやってくる人や電話をかけてくる人もいます。取材にうかがった直前にも、「職場でトラブルがあった」と突然相談に来た女性がいたとのこと。チョウさんは、「もし店がなくなってしまうと、相談の場や、コミュニティーそのものもなくなってしまう」と強い危機感を持っています。

チョウチョウソーさん:
「私たちは、日本に長く住んでいるから責任があると思っている。私たちが最初日本に来たときは、助けてくれる人はいなかったので、最近来た人たちには経験談を話すなどして、できるだけサポートしています。できることをやらないのは悔しいし、『関係ない、知らない』などとは無視できません。いろいろな問題があるのは当たり前のこと。特に、このコロナの中ではたくさんあります。ただ、みんなお店のつながりで知り合ったから、お店がないと活動を続けるのが難しくなってしまいます。」

店ではチョウさんの周りに自然と人が集まってくる

常連客のミャンマー人たちも、次々とチョウさんのもとに相談にやってきます。飲食店で働く人も多いため、コロナの影響で仕事を失ったり、収入が減ったりと、行き場をなくした人も多いのです。留学生などは、帰りたくても飛行機が減便となった、飲食店でのアルバイト代が激減して飛行機代を工面できないなどの問題に直面しているといいます。

コロナの影響で働いていた飲食店が4月に閉店し、突然職を失ったミャンマー人の男性。今は、毎日ハローワークに通っていますが、全く仕事が見つからない状況が続いています。雇用保険も切れてしまい、小学生の子どももいるため、「これからどうなるのか不安がつのるばかりだ」といいます。別のミャンマー人の男性も飲食店で働いていますが、仕事が週3日、1日5時間だけに減少。収入が減り、これまで住んでいた家の家賃が払えなくなり、家賃の安いところに引っ越しをするなど苦しい状況に陥っています。

コロナで職を失ったミャンマー人の男性
「仕事を失った日本人も多いので、ハローワークには毎日たくさんの人が来ています。求人も少ないし、外国人を雇わないところもあるので、なかなか仕事が見つかりません。でも、ハローワークが混んでいるので、感染も怖いです。チョウさんには、週1~2回会いに来て、話を聞いてもらっています。チョウさんの方がもっと大変だと思いますが、話すと安心できます。」

チョウさんが、特に気にしているのは支援が届きにくい難民認定申請中の人たちです。就労不可の在留資格の場合、働くことはできず、日本に「ただいるだけ」という状況です。そこで今、チョウさんは、特に困窮している人たちに、店で食事を提供するなどの支援もしています。

難民認定申請中の男性:
「チョウさんには食事を食べさせてもらい、本当に助けられています。ありがたいです。チョウさんは、お父さんのようです。」

コロナの流行後、チョウさんの店でときどき食事を提供してもらうようになった難民認定申請中の男性は、収入面に加え、医療面での不安も話してくれました。男性が持つ在留資格では健康保険に加入できず、病気になると医療費は全額負担で、「目が痛くて病院に行ったら2万円かかった」とのこと。
また、住民基本台帳に記録されていれば、外国人でも1人10万円の「特別定額給付金」が受けられますが、男性はその対象にもなっておらず、あらゆる支援を受けられない状況にあるのです。

チョウチョウソーさん:
「難民認定申請中の人たちに対する支援は何もないような状況になっています。もし、彼らが感染したらどうなるのでしょうか?日本国内にいる人たちなのだから、このコロナの時期だけでも特別に考えてほしい。日本人、外国人、難民認定申請中、留学生、技能実習生とか関係なく、みんな同じ“人間”として考えてほしいと思います。」

「困ったときはお互い様」日本人と協力して再起へ
チョウさんの店の危機に立ち上がったのは、講演に来てもらったり、一緒に日本語活動をしたりと、これまでチョウさんとのつながりを持ってきた日本人たちです。

2011年の東日本大震災の時には、岩手県陸前高田市の被災地に駆けつけ、ボランティアでミャンマー料理の炊き出しを行ったチョウさん。ミャンマー人、日本人に関わらず、「困っているときにはお互いに助け合うこと」を常に大切にしてきました。




陸前高田市に駆けつけボランティアで炊き出し(写真提供:チョウチョウソーさん)

いま、その姿勢に共感する多くの日本人たちが、店を支援するため、寄付をつのったり、アイデアを寄せたりしています。

まず始めたのは、テイクアウト弁当。ランチの時間帯に1,100円で行っているランチビュッフェから好きな料理を詰めて、600円で持ち帰れるようにしました。店の周辺にはオフィスも多いので、会社員もターゲットにチラシ配りをして、まずは店を知ってもらおうとしています。店の再起に協力する大学教員からは、その弁当を、コロナの影響で仕事を失った人たちに、配達してもらってはどうかという案も寄せられました。


東京都の感染防止徹底宣言ステッカーを取得 テイクアウトも可能

さらに、難民支援の活動をしている大学生たちが中心となって、クラウドファンディングの立ち上げ準備が進められています。集まったお金は、高田馬場のミャンマー料理店に寄付するのに加え、感染が拡大する今は店に足を運びづらいという客にも認知してもらえるように、「リトル・ヤンゴン」を詳しく紹介するホームページを作る資金にも充てられる予定です。


クラウドファンディング立ち上げに向けた話し合い

店の再起に協力する東京大学大学院 佐藤安信教授:
「チョウさんの店を存続させなければ、そこにある大切なコミュニティーが失われてしまいます。コロナの影響で、自分のことだけに目が行きがちですが、脆弱な人たちが犠牲になったり、見捨てられたりしないようにしなければなりません。いま問われているのは、『お互い様』の精神で、それがコロナ後に根付くように、相互理解と相互扶助を実践する時だと思っています。」

チョウチョウソーさんに話を聞いていて、特に印象的だったのは、自分の店が厳しい状況にある中でも、周りの人たちへの心配りを忘れずに、できる支援をし続ける強い責任感でした。また、とりわけ苦しい状況にある難民認定申請中の人たちに心を寄せ、「今は、日本人、外国人とわけるのではなく、同じ“人間”として考えてほしい」という言葉も胸に刺さりました。自分の悩みや心の内を、素直に安心して話せる場所は、今この時期にこそ必要だと思います。チョウさんが大切にしてきた「助け合い」「困ったときはお互い様」という気持ちを心にとめ、この苦境を乗り越えていくためのアイデアを今後も伝えていけたらと思います。

【2020年11月追記】
大学生たちが準備してきた、高田馬場のミャンマー料理店を応援するクラウドファンディングが進められています!(11月30日まで)


今を乗り越えるだけでなく、アフターコロナも見据えた取り組みやアイデアをこれからも紹介していきます。この記事への感想や、あなたの周りで始まっている「withコロナを生きる」ヒントをぜひコメント欄にお寄せください。


【あわせて読む】
・わたしたちが「黙って歩いた」意味 在日ミャンマー人によるサイレントデモ
・「集まってしまって、ごめんなさい」在日ミャンマー人の若者 民主主義への思い

※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

クロ現+
2020年8月4日

劇団四季“ウィズコロナ経営”への思い 吉田社長インタビュー【再起のヒント②】

長期間の公演中止を経て、7月中旬に公演を再開した劇団四季。新型コロナウイルスへの感染リスクを減らすため、あらゆる対策を取ってきましたが、再開直後、所属俳優の一人に感染が判明しました。この俳優は、公演に出演してはいませんでしたが、改めて演劇と感染対策の両立の難しさが明らかになりました。人が集まること自体がリスクとなる今、「演劇を続ける意味」はどこにあるのか?劇団四季社長の吉田智誉樹(よしだ・ちよき)さんに、武田真一キャスターが聞きました。

演劇が持つ感染リスクとどう向き合うか?
武田:公演を再開されたすぐ後に、舞台には出演されていない稽古中の俳優さんへの感染が確認されましたが、改めてどう受け止めていらっしゃいますか。

劇団四季 吉田智誉樹社長(以下 吉田社長): これだけ国内の感染者が増え、コロナウイルスが市中にまん延している状況下です。劇団四季の所属員は現在1,400人おりますので、いつかこういう日が来ると覚悟はしていました。ただ、再開に向けた準備の段階から、俳優をグループに分けて稽古を進めるなど、感染者が出た場合にできるだけ影響範囲を小さくする対策を取ってきました。今回の濃厚接触者は、感染者と同じ、舞台に出演していないグループの中にしか出ていませんので、対策がある程度、功を奏していると思います。

舞台上の俳優たちは、マスクなしで演技せざるを得ません。そういう性質の仕事なので、唾液によるPCR検査を月1回受けています。急なキャストチェンジを除き、該当月に出演の可能性がある者全員が対象です。今回の感染もこの定期検査の中から見つかったので、システムそのものは機能したと思っています。

武田:これまでそういう感染防止対策をとってきて、にも関わらず、感染者が出てしまった。それを受けて、対応を変えていくことはお考えなのでしょうか。

吉田社長:劇団内で過ごす間は、かなりの感染防止対策を行っていますが、所属員にはプライベートな時間もあります。オフの時も劇団にいる時と同様に、感染防止に気を配った行動をするように、何度も注意喚起をし続けるしかないと思います。

一定のコントロール下にある組織の中での時間に比べ、オフではどうしても気が緩みます。例えば「絶対に外食するな」とか「食事は必ず一人でとりなさい」と指示することもできますが、個人の時間を完全に制約してよいのかという議論もあります。難しいところですが、感染した場合のリスクを説明して、個人個人の強い自覚を促し続けるということですね。

劇団四季 吉田智誉樹社長

武田:再開に向けた社内会議の中で、「舞台上でマスクをつけない俳優たちには、やはり感染のリスクがある。そのリスクを冒して芝居をしてもらう覚悟を求めるのか?」という問題提起があったとのことですが、その言葉を突きつけられた時は、どういう思いでいらっしゃいましたか?

吉田社長:われわれの仕事の性格上、どうしても避けられない問題を突きつけられたという感じですね。ただ、問題提起をしてくれたスタッフ(演出部:坂田加奈子)はその直後に、「ほとんどの俳優は、どうしても舞台に出たいと考えているが」と発言しているんです。俳優出身の彼女自身も、彼らが舞台を希求する強い気持ちを十分にわかった上で、「こんな状況だから、再度全員にアナウンスした方がよいのでは」と提起したんですね。同じ席で私からも担当者に、俳優全員に直接話して意思確認のヒアリングをするよう指示をしました。舞台を続けなければ組織は維持できないし、待っているお客様もいらっしゃいます。この厳しい状況への折り合いのつけ方が語られた場面だったと記憶しています。

武田:ヒアリングされた中で、印象に残っている言葉や、心に響くものはありましたか。

吉田社長:「舞台が好きだ」というと単純過ぎるかもしれませんが、ほとんどの俳優が、この仕事に懸けているんですよね、自分の人生を。だから、どんなにリスクがあっても、やはり「自分はここで生きる」という強い決意を示してくれました。私たちの仕事の基盤は俳優です。彼らの決意と覚悟に本当に感謝しています。

武田:皆さんの生きる糧でもあり、まさに生きる目的でもある舞台が、一方では、お客さんも含めて、感染を広めてしまう場にもなり得ます。俳優やスタッフの皆さんの葛藤というのは、どういうものがあったのでしょうか。

吉田社長:私自身にもありますし、俳優や支えるスタッフたちの中にも当然葛藤はあると思います。ただ、「演劇という芸術そのものが否定されたわけじゃない」ということは、みんな共通に信じていると思うんです。コロナがまん延する今の時代との相性がよくないだけで、存在そのものを否定されたわけじゃない。どうにかして生きていける道を探していかなくてはならないし、いけるんだという思いですね。今われわれが進むべき道は、細かい感染対策や定期的な検査、陽性者が発生した時のマニュアルを充実させ、しっかりと守り、お客様の安心感を醸成することだと思うんです。苦労も多いですが、こういう状況になっている以上は、1つ1つ決められた通りにしっかりやっていくということしかないと思います。

リスクがある中で演劇を届ける意味とは?
武田:今回、リスクを完全にゼロにするのは難しいと改めてわかりましたが、そうした中でも、演劇を届ける意味はどういうことだとお考えになりましたか。

吉田社長:公演再開後、私もいくつかの舞台を見て回ったのですが、一番印象的だったのは、客席で舞台を楽しんでいらっしゃるお客様の様子です。舞台を提供ができなかった間、長く待って下さった方々が満を持していらっしゃって、作品に没入して下さり、終わったあとは涙を流してお帰りになるという光景がありました。それを見た時に、「こういう気持ちになることが、人生ではやはり必要なんじゃないか。それを届けるのがわれわれの仕事なのだから、やはり、われわれは否定されたわけじゃない」と思いましたね。それが再開を決めた大きな根拠でもあるし、われわれ自身のよりどころでもありますね。

劇団四季は演劇やミュージカルを届けていますが、オーケストラやバレエなど、お客様の目の前でパフォーマンスをして見せる芸術はたくさんあります。これに従事している方々全員が、今、われわれと同じような苦境に陥っている。どんな芸術にも感動の瞬間があり、お客様とよろこびを分かち合っていると思うんです。そしてそれは、人間の生活に絶対必要なものです。特にコロナでソーシャルディスタンスということが言われ、人々が離れなくてはいけないわけですが、離れただけの人生はきっと味気ないものだと思うんです。そういう時にこそ、夢見る世界、想像力を羽ばたかせる世界では、人々が固く団結していて、友情や愛情で話が進んでいくような物語やミュージカルに、一時期、魂を遊ばせていただくことは、とても意味があるし、役に立つことだと思うんですよね。だから、われわれは仕事を続けなければいけないと思っています。

武田:とはいえ、今、人々の楽しみ方は多様になっています。演劇だけではなく、映画も、会員制のテレビチャンネルも、ネットの動画もあります。人々が楽しむものがさまざまある中で、「演劇、舞台で表現することの価値」は、どうとらえていらっしゃるでしょうか。

吉田社長:映像やウェブ上のコンテンツにも魅力的なものがたくさんありますが、われわれの仕事と決定的に違うのはやはり「生」だということですね。目の前にいて同じ空気を吸っている俳優が、心を、感情を動かしていく。お客様は同じ場所で、彼らの心に共感して物語の中に没入していくということ。これはなかなか2次元のメディアでは、難しいんじゃないかと思いますね。コロナの時代では問題とされていますが、「生」が演劇やライブの芸術の強みだと思いますし、ウェブや映画や映像と対抗できる唯一の価値だと思います。



「観客あっての芸術」である演劇をどう守るのか?
武田:劇団四季の理念は「良質な舞台芸術を万人に届ける。それによって団員の皆さんがちゃんと食べていくこと」だとうかがっています。今の状況において、その理念の中で、これは守っていくべきだ、ここは変えていけるんじゃないかというのは、それぞれどういう点でしょうか。

吉田社長:守っていきたいのは、創設者の浅利慶太が標ぼうした「人生は生きるに値する」というメッセージを伝えていくことです。人生賛歌、人生は素晴らしいということを、ご覧になるお客さんの心の中に届けられる作品を選んで上演し続けていくことは変わらないと思います。それによってお客様に歩み寄り、チケットを買っていただくことで得られる収入で劇団を経営していく。ここも変えるつもりありません。

ただ、浅利は「芝居だけで生きる」ということを言っていたのですが、こういう状況になると「芝居だけ」というのは難しくなってくるかもしれません。演劇に軸足を置いて経営をしていくことは変わらないけれど、収益構造をチケット代に極端に頼っていた形からは脱却し、新しい仕組みを作る努力をしなくてはいけないかもしれない。先ほどの話と矛盾するかもしれませんが、劇場に来なくてもウェブ上で、「生」の感覚を楽しめるような方法がないかとか、演劇をビジネスの中で生かして頂く方法はないかとか、いろんなことを今考えています。

もう一つは、演劇が「お客様あっての芸術」だという「原点」でしょうか。芸術にはいろんな形があって、例えば小説や絵画なら、原稿やキャンバスなど実体があります。ところが演劇は、同じ時間を共有し、終わったあとは何もなくなって消えてしまうという、実体のない芸術であるという点ですね。こういう芸術を成立させるためには、方法がどうかを問わず、その芸術を味わう人たちが一緒に集まらなくてはいけない。つまり、お客様がいなければ演劇は成立しないんです。このような状況ではありますが、お客様と共有する時間が演劇そのものだということは、変えようがないんですね。

武田:「観客あっての芸術」というと、やはり観客が集まってこられないとしょうがないということですよね。

吉田社長:そうです。ですから、今回のコロナウイルスの問題は、「お客様が集まらなければ成立しない演劇という芸術」の特殊な構造の急所をついてきたというところですね。演劇が成立する「1丁目1番地」を襲われたということでしょうか。そこが非常に深刻ですね。

今までわれわれは、「演劇で生活する」という演劇におけるプロフェッショナリズム、これの確立のために努力をしてきました。しかし、今度のコロナの問題はこういった努力とは全然違う次元のところからやってきた。全く想像もしていなかったし、われわれからすると、背中から刃物を突きつけられたような感じですね。コロナの行く末は見えませんが、何とかして終息まで生き残るか、状況と折り合いをつけるしかないと思っています。

武田:もし、創設者の浅利さんがご存命だったら、今こういう状況下で苦しんでいる皆さんに、何と言われると思いますか?

吉田社長:今の立場になってから、1つ1つの決断に「浅利慶太だったらどう判断するだろう」と考えることはよくあります。今回の事態は、今までの引き出しの中にはなかったことです。ただ、おそらく彼は、何としてもこの組織を残そうと思ったのではないか。アプローチは違うかもしれないけれど、「とにかくこの組織を残す」という気持ちは、勝手ですが、浅利さんと共有できているような気がします。もちろん1,000回以上の公演が中止になって、売り上げも相当額減っています。厳しい状況には変わりないですが、劇団という「理念で集まった人たちの集団」の特徴を生かし、苦しみはできるだけ大勢で分かち合って、コロナの嵐が過ぎるのを待つということでしょうね。衛生対策を充実させ、お客様が安心できる環境を整える仕事を1つ1つ積み重ね、夜が明ける日を待つ。そこまでなんとか生き残るということじゃないかと思うんですよね。浅利さんほど、「演劇」を愛していた人はいないと思います。おそらく彼が生きていても、同じことを考えたんじゃないかと思います。

座席数を減らしてチケットを販売

再起のスタート地点「いばらの道でも続ける」
武田:今、劇団再生の道筋の中のどの位置にいるとお感じになっていますか。

吉田社長:スタート地点でしょうね。公演を再開した7月14日がちょうど創立記念日だったんですよ。今の状況は、浅利慶太たちが67年前に劇団を作ったときのような 「これから劇団を立ち上げるんだ」という思いでないとやっていけないぐらいの大きな転機だと思うんです。その象徴が創立記念日の7月14日からの再開だったと思います。ですから、ここから始まるんです。毎日毎日、衛生対策があり、俳優の感染リスクとの闘いがあります。コロナが終息するまでは続きますが、向き合っていかざるを得ないですね。

武田:公演を再開して、観客も客席は半分とはいえ、入るようにはなっていますけれども、まだまだ。

吉田社長:再び感染者が出れば、さらにある程度の期間を中止することも必要になってくるでしょうし、体調不良者が出た場合も、「ちょっと無理して頑張れ」ということはもう絶対に言えない。どんな体調不良でも、すぐキャストチェンジに直結します。代わりに出演できる者がいればいいですが、いないケースも出てくると思います。そうしたら公演は続けられない。公演を休まなくてはいけないリスクは、これまでと違って格段に上がっています。それでも、待っているお客様のために舞台を用意し続けていかねばならない。再開にあたっては、組織を再起動するような意識を持っています。新型コロナウイルスには、それほど強い決意がないと勝てないと思います。

武田:ブロードウェイのようにしばらくやらない決断をしたところもありますが、それでも劇団四季は続けるというのは、どうしてなのでしょうか?

吉田社長:ブロードウェイやロンドンは1年間ほぼ仕事が止まりますよね。どんな影響があるかはまだわかりませんけれど、相当厳しい事態が待ち受けていると思います。もし1年以上仕事をしなくなってしまったら、おそらく一番影響がでるのは俳優でしょう。俳優には、歌唱やダンスなど、特殊な能力を持った人たちが多い。彼らの技術は、本当に長い時間、ほぼ人生そのものをかけて培われたものです。でも、この力は休むと簡単に失われてしまうんです。技術は落ちますし、戻そうと思ったら相当な努力と時間が要ります。何より仕事がないですから、生活もできない。そうすると廃業することになる。こうなってしまうと、1~2年後に「コロナが収まりましたので、演劇の皆さん、どうぞ仕事を再開して下さい」と言われても無理ですね。失ってしまうんですよ、全てを。失われたら戻ってこないと思うんです。だから、苦しい「いばらの道」ですけれど、来るべき再開の日に備えるためには、やはりある程度のボリュームでやり続けなければいけない

本番って、稽古とは違うんですよね。サッカーなどでも、「試合勘がないから負けた」という話が出たりしますが、それと同じで、日々、本番の舞台を積んでいることの経験値は大きいんですよね。これが1年も失われてしまったら、どうでしょうか。私は相当厳しくなってしまうと思いますね。

よく浅利さんが、「ダンサーは1日休むと自分にわかる。2日休むと相手役にわかる。そして、3日休むとお客さんにわかる。だから、ちゃんと毎日レッスンするんだぞ」と言っていたんです。それが3日ではなくて1年になってしまったら、到底元には戻れない。俳優たちのスキルをしっかりと今の状態で維持するためにも、必ず仕事は必要です。これは舞台を提供する側からの、仕事を継続する理由の1つです。

もう1つは、お客様です。今でも一定の方々が、劇団四季の舞台を待って下さっている。こういう方々に作品が全く提供できなくなったら、舞台を見る習慣そのものを失うか、更に縮小してしまう可能性がある。こちらも、もう戻ってこなくなってしまう。だから続けていく必要があるんです、いばらの道でもね。



社会の状況で変わる作品からのメッセージ
武田:公演再開後に『マンマ・ミーア!』を拝見したのですが、肩の力を抜いて楽しめる演目で、コロナや災害でふさぎがちな気持ちが一瞬のうちに晴れました。また、今の状況下で見ると、家族の絆だったり、「一人一人が自立して前を向いて生きていくんだ」というメッセージだったり、深いものを感じたんですね。ロングランを重ねてきた劇団の皆さんにとっても、さまざまな演目の中で、テーマや意味を再発見されるようなことはありますか?

吉田社長:大いにあると思います。演劇はその時代の空気を吸って生きる芸術なんですよね。ですから、お客様にその言葉がどう届くかは、社会の状況で変わってきます。例えば、『ライオンキング』の中に「日はまた昇る」というセリフがあります。いまは、それを切望する気分が社会に満ち満ちていますよね。だからお客様にも、コロナ以前とは違った響きで聞こえているはずです。それが演劇なんだと思います。そういった「時代との呼吸」も含めて、全てが演劇の喜びだと思いますし、楽しみ方だと思います。ご覧いただいた『マンマ・ミーア!』にも、現代の空気が必ず反映している。2020年の『マンマ・ミーア!』なんですね。

武田:『マンマ・ミーア!』は、通常は観客が一緒に歌ったり踊ったりする楽しみがある演目ですが、今回は「歌唱を控えてください」という案内がありました。ですがその分、俳優さんたちが本当に熱を込めて演じているように感じたのですが、吉田さんはどうお感じになっていますか?

吉田社長:全くその通りだと思いますよ。4か月近く自分たちの仕事ができなかったということが、大きく影響しているのでしょうね。スタッフたちは、テレワークなどで仕事ができましたが、俳優たちは舞台がないと何もできないんですよね。自粛期間は、自宅で自分のコンディションを整えるだけという状況が続きましたから、彼らのうつうつとした気持ちはよくわかるんです。それが舞台という場を、舞台というより「生きる場」を、再度得られて爆発したんだと思います。お感じになったエネルギーに直結しているんじゃないでしょうか。

『マンマ・ミーア!』

「演劇の灯」をともし続けるために
武田:「演劇の灯」をともし続けるために、今やらなければならないことは何だとお考えでしょうか。

吉田社長:現状では感染防止でしょうかね。もしクラスターが起きたりすれば、お客様は遠のいてしまいますし、そもそも舞台の維持もできなくなってしまいますから、とにかく感染防止、そして予防、これに尽きると思います。

それと並行して、舞台の感動を高める努力をし続けることですね。出演者のレベルを上げて、よい作品を最高のコンディションでお客様にお届けする。今までも劇団四季が続けてきたことですが、これを変わらずにキープすること。感染防止は全く初めての、想像もしていなかった種類の仕事なので、今はそちらの方にどうしても気持ちが取られていますが、バランスなんでしょうね。「感染防止に気を取られて舞台の質が下がった」と言われないようにしないといけないですね。

武田:舞台を拝見して「こんなにいいものだったら、みんな見に来るんじゃないか」と素直に思ったのですが、それだけでは、やはりなかなか難しいですね。

吉田社長:今は半分の座席しか販売できないので、普段より数は少ないんですけど、満員にならない公演もあります。できるだけ、ご自身の感染リスクを下げたいと思っておられるお客様が多いからでしょうね。お客様のそういうお気持ちを、まず冷静に受け止めて、その上でどうしたら安心して来て下さるのかを考えなくてはいけない。

武田:まさに、それが新しい劇団四季の理念になっていく。

吉田社長:コロナが終息するまでは、徹底した感染対策と、お客様に楽しんでいただける舞台作りの両方が重要な仕事になるでしょう。終息の時期がはっきり見えませんから、この形でしばらく行くしかないのかなと思います。
先ほどもお話しましたが、演劇はお客様がいて初めて成り立つ芸術であることを考えると、その条件設定の1つに感染防止が入ってきてしまった。コロナ禍では、よい舞台を作ることと、しっかりした感染対策をすることは同義に近くなってきていると思います。

武田:「人生は生きるに値する」という浅利さんの言葉は、今この状況の中で、どんなふうに吉田さんの心の中に響いていらっしゃいますか

吉田社長:改めて重みを増しています。そして、今、このメッセージを求めている人はたくさんいらっしゃると思うんですよ。特にコロナ禍では、閉塞感を感じている方が多いと思うんですね。その時に「あなたは、人生をそのまま生きていいんだよ。あなたはそのままでいいんだ」というメッセージは、より強くお客様の心に響くようになっている。お仕事で苦労をされたり、あるいは、経済的な苦境に立ち向かっている方も多いと思います。そんな時には、自分が否定されたり、自分の人生に価値が無いと思ったりする方いるかもしれない。「そんなことはないんだ」と舞台を通して伝えることが、いまほど大事な時代はないと思いますね。



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【再起のヒント①】「劇団四季 公演再開までの舞台裏」

2020年7月28日(火)放送 クローズアップ現代+
「劇団四季 終わりなき苦闘 ~密着 再開の舞台裏~」放送ダイジェスト

 

今を乗り越えるだけでなく、アフターコロナも見据えた取り組みやアイデアをこれからも紹介していきます。
この記事への感想や、あなたの周りで始まっている「withコロナを生きる」ヒントを、ぜひコメント欄にお寄せください。

※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

クロ現+
2020年7月10日

東芝 出社とテレワークの最適解はどこに?【働き方のヒント】

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「新たな日常」の到来で進む“カイシャ革命”。その波は、これまでテレワークなどに馴染まないとされてきた製造業の分野にも押し寄せています。国内7万人の従業員がいる東芝では、設計業務などを見直し、テレワークを大胆に導入。「週休3日制」の検討にも乗り出しています。
「週休3日制」の導入も検討
東芝では、出勤するのが当たり前と考えられてきた製造現場に対しても、出勤を15%以上削減するという方針を打ち出しています。

鉄道やダム、交通システムを制御する基盤など、社会インフラを担う東芝 府中工場。新型コロナウイルスの感染が拡大する中でも通常通りに稼働し続けてきました。感染リスクを減らすため、導入を検討しているのが「週休3日制」です。

週に5日出勤し、1日約8時間働く従来の働き方。1日の労働時間を2時間ほど延ばすことで、1週間あたりの勤務時間は変えずに、出勤日数を1日減らそうというのです。



若手社員への聞き取りを行うと、休みが増えるというメリットを感じる従業員がいる一方で、不安の声も上がりました。さらに、取引先との調整なども必要です。実現に向けた議論が続いています。

出社とテレワークの最適解は?
グループ企業の設計部門では、1か月間、完全テレワークを試みました。ただ、全く出社しないのは難しいという声が。設計には法律で定められた設置基準など膨大な知識が必要なため、オフィスに保管されている資料を確認する必要があるからです。こうした意見を受け止め、設計部門では週に2回まで出勤できるようにしました。



東芝 車谷暢昭社長
「劇的な変化が、いま社会では起こっていると考えたほうがいいので、従業員と一緒に、それぞれの職場ごとに、どういう形がいいのか作りこんでいるところ。変化に対していかに適応する能力があるか。いま、まさにそれが問われているんじゃないかと。」

より詳しくはこちら↓
2020年6月23日(火)放送 クローズアップ現代+
「ウィズコロナ時代 “カイシャ革命”であなたの仕事は?」放送ダイジェスト

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【働き方のヒント①】サイボウズ青野社長に聞く コロナ後のカイシャ
【働き方のヒント②】カイシャ革命の課題 どうする?社員の評価


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クロ現+
2020年7月8日

カイシャ革命の課題 どうする?社員の評価 【働き方のヒント】

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「新たな日常」の到来で、カイシャのさまざまな仕組みが根底から変わってきています。あなたの会社では、どんな課題が見えてきていますか?
テレワークで業績アップ! でも課題も・・・
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、全社員が在宅勤務可能な仕組みを整えた会社 オンリーストーリーでは、業績が上向きに。外回りを担当していた社員は、商談も全てオンラインに切り替えました。それにより、通勤や移動に費やしていた時間を資料作成などにあてられるようになり、ひと月の契約件数が過去最高に伸びました。



一方、従来のやり方を根本から変えたことで、管理職の負担が増すという課題も浮かび上がってきています。15人のチームをまとめるマネージャーは、一つ一つの業務を「見える化」するために、毎日1時間半かけて作業の工程表を作成。部下へのメールやミーティングの頻度も増やしました。以前に比べ、業務量は大幅に増えているといいます。
社員の仕事ぶり どう評価する?
社員の仕事ぶりが見えにくくなるテレワーク。目に見えにくい部分をすくい上げるため、この会社では、新たに「自慢シート」という仕組みを導入しました。左側には営業の成約数など数字で示すことができる成果、右側には数字で表しにくい工夫や努力などを書き込むものです。シートは、オンラインで全社員に共有されます。



毎月行う互いの仕事ぶりを評価しあう会議では、自慢シートをもとに、その月の表彰者を社員たちが投票して決めています。

社員の管理や評価に手間がかかるテレワーク。どう改善させていくか、模索を続けています。

ほかの事例などより詳しくはこちら↓
2020年6月23日(火)放送 クローズアップ現代+
「ウィズコロナ時代 “カイシャ革命”であなたの仕事は?」放送ダイジェスト

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【働き方のヒント①】サイボウズ青野社長に聞く コロナ後のカイシャ


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クロ現+
2020年7月3日

劇団四季 公演再開までの舞台裏 感染リスクとどう向き合う?【再起のヒント①】

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年間公演数 約3,000回、観客動員数 約300万人。日本を代表する演劇集団の「劇団四季」。新型コロナウイルスの感染拡大で、今年2月末から公演の中止を余儀なくされてきましたが、7月14日(火)から約5か月ぶりとなる公演の再開を決めました。

しかし、最大の課題は、観客や俳優などの感染リスク。そこで行ったのが、飛まつのリスクを可視化するための「実験」です。実験では意外な結果も明らかになり、未知のウイルスとの向き合い方がわかってきたといいます。
※「クローズアップ現代+」で取材中です。
“「満員の客席がリスクに・・・」 創設以来 最大の危機”
劇団四季は、全国に8つの専用劇場を持ち、抱える俳優・スタッフは総勢1,400人以上にのぼります。

『キャッツ』

創設者の故・浅利慶太さんの理念のもと、「演劇から得られる収入だけで組織を成り立たせる」ことにこだわってきました。そのため、劇場公演以外からの収入はほぼなく、新型コロナウイルスの感染拡大で、創設以来“最大の危機”に陥りました。中止公演の総回数は、6月時点で1,000回を超え、売り上げの3割、約85億円を消失する事態となったのです。



劇団四季 吉田智誉樹社長:
「芝居だけで食べる、劇場からの糧だけで生きることの前提は、やはり“満員の客席”です。でも、新型コロナウイルスの感染拡大を助長してしまうと考えられているのも、同じく満員の客席。感染拡大が始まった頃には、どうしていいかわからないような気持ちでした。」

“ゼロリスク”にできない中で どう公演を再開?
“生きる糧”である公演を再開するには?緊急事態宣言下の5月上旬、再開を模索する社内会議が発足。会議には、吉田社長以下、営業や顧客対応、劇場支配人、制作、技術など、各セクションのトップや現場担当者が参加し、2つの中心課題について話し合われてきました。



最優先に掲げられたのが、観客の感染者を出さないことです。「休憩時にトイレの長蛇の列はどうするのか?」「売店は“3密”にはならないか?」など、対処すべきリストは膨大に。観客席で俳優が演技をするシーンを一部変更するなど、苦渋の決断をせまられることもありました。


過去の公演の様子

次の課題は、俳優同士の感染リスクです。話し合いの末、稽古場には厳格なゾーニングを導入。演目の違う俳優同士の接触を禁止しました。フェイスシールドをつけて稽古し、マスクの着用、換気や消毒、食事中は話さないなどの細かなルールも徹底することに。


6月上旬、稽古場に戻ってきた俳優たちは・・・。


『マンマ・ミーア!』主人公ドナ役 江畑晶慧さん:
「この2か月間、初心に戻る機会になり、自分がどれだけ舞台を愛していて、どれだけ舞台に立ちたかったか、本当に心の奥底から湧き出てくるような感じでした。ただ、不安が全くないと言うわけではありません。どうしても舞台で相手と近くでしゃべったり、歌ったりしなければいけないので、自分が絶対にかからないように徹底していかないといけないと思います。」

実験で感染リスクを“可視化” マスクの効果が明らかに
劇場での感染リスクはどこにあるのか?リスクを明らかにした上で対策に活かしていくため、取り組んだのが、2つの「可視化実験」です。1つ目は、観客席での感染リスクを明らかにするもの。微粒子測定の専門家の協力を得て、実際の劇場で「観客がマスクをせずに、会話やせき・くしゃみをした場合、ウイルスを含んでいると仮定した飛まつがどれくらい飛散するのか」、実験しました。

  (協力:新日本空調)
実験では、マスクなどの対策をしないと、前方だけでなく横の人にも飛まつが拡散してしまうことが明らかに。一方、マスクを着用した場合は、飛まつの拡散は見られませんでした。そこで、HPなどで観客への注意喚起を行い、劇場でのマスク着用をお願いすることにしました。

俳優のせりふや歌から出る飛まつは? 意外な結果が明らかに
今回行ったもう一つの実験が、「舞台上で俳優が発声・歌唱をした場合、どれくらい飛まつが漂うのか」検証するものです。せりふや歌を劇場全体に響き渡らせる俳優たち。その飛まつ量や飛距離は、どこまで及ぶのでしょうか。

  (協力:新日本空調)


実際の舞台上で、俳優に本番同様のボリュームでせりふをしゃべってもらうと、口から出る飛まつの多くは真下に落下。一般人にせりふを大声でしゃべってもらって比較すると、意外なことに、俳優の方が飛まつの量や飛距離が控えめに見えるとわかったのです。



実験に協力した俳優(『リトルマーメイド』などの舞台に出演)田邊真也さん:
「僕たちは、大声を出しているように見えて、実は息の量をコントロールしています。ロングラン公演を続けていくためには、そうしないと一日で喉が潰れてしまうからです。」

さらに、声学の専門家によると。
東海大学:梶井龍太郎教授
「日常生活の会話と舞台での発声は、息の流れや声の大きさのメカニズムが別です。プロの発声が空気を多く使っているかというと、むしろ逆で、少ない空気でより遠くに聞かせるように音を発しているため、飛まつの量も飛距離も少なくなると思われます。」

しかし、一部は飛まつが舞台を超えて観客席の最前列に達している可能性もあり、念のため、最前列から数列空けて、チケットを販売することを決めました。実験によって未知のウイルスとの向き合い方が分かってきたといいます。

劇団四季:吉田智誉樹社長
「これまで新型コロナウイルスは“見えない敵”でした。ですが実験で、ようやく敵の影だけでも掴めた気がしました。“正しく恐れる”ことができるようになったのは、とても意味のあることです。」

公演再開しても険しい道のり
演劇が持つ感染リスクと向き合い、対策を検討してきた劇団四季。約5か月ぶりに舞台を再開する日が近づいてきています。ただ、道のりは平坦ではありません。最大の懸念は、今後、感染が再び拡大した場合にどうなるかです。再び公演の自粛が求められることも考えられます。



さらに、国や都道府県の要請に基づき、当面は座席の間隔を空け、満員時の50%以下で再開させます。しかし、これでは採算がとれず、再開しても赤字を続けることになるのです。
このような多くの課題が残されている中でも、吉田社長は再開する意義を強く感じているといいます。

劇団四季:吉田智誉樹社長
「コロナで人の気持ちも、社会も変わってきましたが、演劇という芸術そのものが否定されたわけではないと思います。演劇を求めるエネルギーは、社会の中にも人の心の中にもある。私たちの舞台はどの作品の中にも、人生賛歌、“人生は生きるに値する”というテーマがあるんです。こういうご時世だから、観た方の心に響くんじゃないかと思います。生身の人間がその時代の空気を吸って、同時代のお客様の気持ちをおもんぱかりながら届ける芸術、これが演劇ですから。再開した舞台をご覧いただいて、明日を生きる活力を得ていただきたいですし、われわれ自身もメッセージをしっかり込めてお客様に届けたいと思います。」


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クロ現+
2020年7月2日
このお題はクローズアップ現代+で番組になりました

アフターコロナの企業に変化が必要なワケ サイボウズ青野社長インタビュー【働き方のヒント】

多くの企業でテレワークが導入されるなど、新型コロナウイルスの感染拡大によって、私たちの働き方が大きく変化しました。そのテレワークを10年前から導入し、ほかにも子連れ出勤や副業を認めるなど、多様な働き方をいち早く実践してきたサイボウズ。ソフトウエア開発を手がける従業員約900人の会社です。社長の青野慶久さん「新型コロナウイルスが企業にもたらした影響」について聞きました。

新型コロナウイルスは企業に何をもたらしたのか
ディレクター:
「新型コロナウイルスは企業にどのような影響をもたらしましたか」

サイボウズ社長 青野慶久さん(以下 青野さん):
「新型コロナウイルスは、企業の“場所” に影響を与えました。シンプルに場所なんです。これまで会社という場所に集まって働いていましたが、分散せざるを得なくなった。今までの仕事の形をやめざるを得なくなったということです。しかし、やめたことにより “新しい活動にチャレンジするきっかけに” なったと思います。よくテレワークが取り上げられますけど、テレワークだけではなく、営業スタイルが変わったという話も聞きます。例えば、イベントをオンラインで開催する。顧客発掘をオンライン化して、その後の営業体制もビデオ会議、メールやチャットを利用して営業をすることなどですね」

会議室いらなくない?
ディレクター:
「テレワークを経験した後に、私自身、従来の働き方を思い返して“場所に縛りつけられていた”と感じました。アフターコロナは、これまでの固定観念にとらわれない働き方が生まれてくるのでしょうか」

青野さん:
「テレワークを経験した多くの人が “テレワークの方が効率良くない?” と気付きました。会議の資料とかもそうかもしれませんね。会議の資料のコピーを当たり前にやってきたことが、オンラインになると資料をコピーして配れませんから、デジタル化した資料を事前に配布しますよね。そうすると『え、これでよくない?』となります。
会議室が3密になる、感染するというのであれば『会議室いらなくない?』みたいな。それにオンラインで、全員マイクをつけてフラットに会議した方がやりやすいみたいなことも出てきました。いらないものに気付いてしまった。新しい手段によっていらないもの、固定観念が可視化されました」

会社は実在しない“河童”である
ディレクター:
「アフターコロナは『会社のあり方』がより問われることになりそうですね」

青野さん:
「経営者は “会社のために頑張ってくれ”や“会社の方針だからこれに従ってくれ” という言い方をしてきました。けれども実際に会社なんてものは実在していません。あくまで法律上、人と定義した法人に過ぎません。つまり、河童と同じ幻想なんです。にもかかわらず、 “河童のために頑張ってくれ” “河童の方針だから” と経営者は言ってきました。しかし、“河童のために仕事をしてくれ”ということ自体が本来おかしなことなんです。何かをするときに“会社に迷惑がかかる”と表現する人がいますけれど、本当は、迷惑をかける相手はお客さまや同僚です。

実在するのは僕たち一人一人の人間ですよね。ですから本来、注目すべきは人間です。在宅勤務が定着した後に“もうコロナ終わったんだから出勤してこい”という経営者がいた時に、あれ?って思いますよね。アフターコロナで、経営者がつまらない発言をすると、みんな気付くわけです。つまり犠牲にならない働き方というのを経験すると、一人一人の人間を犠牲にしようとする人に対して疑念が湧いてくるということです。コロナ前は、会社のために出張に行って、会社のために転勤して、といわれてきたけれど、コロナを機に新しい手段を使ったことで、いらないものが見えてきたのだと思います」

(サイボウズのオフィス 2017年撮影)

「アフターコロナには、変化する会社と逆戻りする会社が出てくると思います。緊急事態宣言が出てから、“よし、在宅勤務やろう。けれど、緊急事態宣言が解除されたから在宅勤務から出社に戻してしまおう”みたいな会社です。でも、そうなると、若い人たちは転職してしまうと思います。今回、若い人たちはテレワークの良さを知ってしまった。それをやらせてくれない会社に魅力を感じません。そうすると、アフターコロナというのは、変われる会社と、変われない会社に二極化する。そして、変われない会社はまさに淘汰される。それがちょっと加速したという印象です」

アフターコロナの会社経営で求められるもの
ディレクター:
「一方で、子どもが自宅にいて仕事に集中できないなどの理由で、テレワークで働くには限界があるという人もいます。第2波の可能性がある中、仕事のやり方はどのようになっていくと、青野さんは考えますか」

青野さん:
「今回のコロナにおいてメンタル的に辛かったことに、学校が閉まったことがあります。学校と保育園が閉まったため、子育て中の社員が子どもの面倒を見ながら、在宅勤務でパフォーマンスを出さないといけないっていう。これ無理ゲーですよ。パフォーマンスを出せる訳ないですよ。だからここにケアが必要です。私も “パフォーマンス落としていいよ”と全社員に向けて発信をしました。『そのことにより人事評価を下げるようなことはしないから、子育ては大事な仕事だから』と、みんなのメンタルケアをしました。諦めた上で、出来ることやろうということです。日本人は根性論好きなので“根性があれば何とかなる”となってしまう。むしろ、これからは相互扶助の仕組みを作っていった方が良いと、私はそう思います」

(子連れ出勤の様子 2014年撮影)

ディレクター:
「どのようにすれば相互扶助の仕組みを実現できますか」

青野さん:
「大切なことは、嘘を許さない組織を作れるかどうかと考えます。そう言うと、会社でありがちなのは、監視的な事をやり始めるということです。そうではなく、僕たちは監視にはあまりコストをかけないで、その代わり『正直に話して』というモラルの向上の方に力を割いていくべきだと感じています。監視に力を入れれば入れるほど、社員の間に信じられていないという感じが出てきてしまい、本人も楽しくないです。マネジメント側も監視するためカメラを設置するなどコストがかかってしまいます。ですから、コストだけかかって何も良いことないですよ。」

「そのために重要になってくるのは組織のあり方。私は、権限のヒエラルキーと情報のヒエラルキーに分けて考えます。サイボウズの場合は社長・本部長がいるなど、権限のヒエラルキーがあります。けれど、情報に関してはヒエラルキーを作らなくて、フラット。社長が知っている情報と、現場が知っている情報にほぼ解離がありません。これが大事なことだと思っています。嘘をつかない、隠さないってこういうことだと思いますよ。でも世の中の多くの会社は、社長が決めた事を部長が翻訳して課長に伝え、課長が翻訳して現場に伝え、3回くらい繰り返します。なんか伝言ゲームで全然伝わらないみたいな感じです。ITツールを使えば全員に対して同時に情報共有できます。オープンな情報共有を徹底する。例えば、さっきの子育てでメンタルがちょっと辛いという人も、情報がフラットであれば、誰かが気付きフォローに入れます。情報がフラットでなかったら、気付かれずに心が折れてしまうわけです。情報が広くオープンに共有されていて、異変にすぐ気付いて、気付いた人がフォローに入る、こういうチームワークの形が、情報がフラット化されたチームです。その人の個性に合った活躍ができるようにしていけば、それがベストです」

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青野さんご出演 2020年6月23日(火)放送 クローズアップ現代+
「ウィズコロナ時代 “カイシャ革命”であなたの仕事は?」放送ダイジェスト


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クロ現+
2020年7月1日

地方移住 カギは「テレワーク環境」の整備 【地域発!のヒント】

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コロナを機に地方移住希望者が増加
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、 “地方に移住して仕事をしたい” と考える人が増えています。

愛媛県今治市では、5月からオンラインで移住に関する相談を始めましたが、参加者は1週間で10人を超えました。「職場」に対する意識が変化する中、市は大きな可能性を感じていると言います。



この相談会に参加した20代の男性は、満員電車などソーシャルディスタンスのとれない東京の感染リスクの高さに不安を感じ、仕事を辞めて地元愛媛に帰ることを妻と相談し始めています。

自治体に求められる「テレワーク環境」の整備
一方、地方移住を検討する上での不安や問題として、4割近くの人が挙げたのが「テレワークの環境」でした。北海道北見市は、若い世代の人口流出をなんとか食い止めようと、5年前から、従来の企業誘致に加え、テレワーク人材の誘致を進めることに。テレワーク環境の整備に先進的に取り組んできました。



テレワーク拠点としてオープンした「サテライトオフィス北見」。施設内には、Wi-Fiやテレビ会議室、鍵付きのロッカーやコピー機などを完備。利用料は1人、月に1万円と格安です。出張などで利用する人が年々増え、昨年度の利用者はのべ約3,000人にのぼっています。

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【地域発!のヒント】「ゲストハウス」ピンチをチャンスに
【発想のヒント】"新型コロナ時代" をどう生きるか C.W.ニコルの遺言

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クロ現+
2020年6月23日

家族間のイライラ 解消するには 【安心のヒント④】

子どもの虐待やDV=ドメスティック・バイオレンスの相談は、後を絶ちません。虐待・DVの加害者と被害者支援を行うNPO「女性・人権支援センター ステップ」では、4月の緊急事態宣言が出されて以降、オンライン会議システムを通じて、加害者更生のグループワークを実施していますが、毎週のように新たに参加する人が増え、4月~6月の新規参加者は去年の同時期と比べて6倍の24人に上ります。特に、最近、妻からの相談が増えているそうです。

家族間のイライラや不安とどう向き合えばいいのか。NPO「ステップ」理事長の栗原加代美さんやグループワークの参加者への取材から、ヒントが見えてきました。

(報道局社会番組部 ディレクター 白瀧愛芽)


“子どもも ひとりの人間”

(NPO「ステップ」理事長・栗原さん オンラインによる加害者更生のグループワークの様子 今年4月 撮影)

4月上旬、緊急事態宣言の出された日の週末から、NPO「ステップ」は、それまで活動スペースで実施してきた加害者対象のグループワークによる更生プログラムを、オンラインに切り替えて行っています。

私は、このオンラインのグループワークに参加した男性に、後日、話を聞くことができました。40代のこの男性は、去年の秋頃、「わが子への虐待をやめたい」とステップに相談。それから毎週のように更生プログラムのグループワークに参加していたそうです。


(わが子への虐待をやめたいとNPO「ステップ」に相談した父親 40代 オンライン・インタビュー)

男性は、ステップに通うようになる前は、小学生の子どものことを「所有物」のように考え、「自分が子どものときにできなかったことをさせたい」という思いが強かったそうです。例えば、洋服は自分の買ってきたものだけを着させたり、本人が好きなスポーツの練習に通わせるよりも英語の勉強をさせたりして、子ども自身の興味や個性を認めようとしていなかったといいます。しかし、ステップに通い、「相手は子どもでも、全く別の人間であり対等な存在であること。そのため、コントロールしようとすることで、健全な関係性が失われていく」ということを学ぶことで、自分の考え方が変わっていったそうです。

父親(40代)
栗原理事長から「子どもだって、ひとりの人間なんだよ」という話を聞いたときに、はっとしました。それまで、わが子に対しては「親としての責任がある」と考えるがあまり、子どもを「ひとりの人間」として認めるよりも、「所有物」という感覚を強く持っていました。そして、食事のマナーや会話の時の返事などについて「こうあるべき、こうするべき」と厳しくしつけていました。ところが、次第に子どもが家庭内でゴミ箱を蹴り飛ばしたり、包丁を持ちだして自傷行為をしようとしたりするようになり、自分の接し方が子どもに悪い影響を与えていると気づきました。

ステップで学んだことで、子どもにもプライバシーやパーソナリティがあり、彼らの人生なのだからむやみに踏み込んではいけないと思うようになりました。「子どもはこうあるべき」という考えがなくなり「最低限のことを守ってくれればいい」と思うようになると、イライラする理由がなくなりました。


“思考の癖“を直すために・・・
再び取り戻した家族との穏やかな関係。しかし、ことし3月、新型コロナの感染拡大の影響で、男性がテレワークを始め、休校で家にいた子どもたちと24時間一緒にいる生活が続く中で、絶えない兄弟げんかにカッとなり、暴言を吐いてしまいました。6週間、ステップの更生プログラムへの参加を自粛していたことで、考え方の癖が戻ってしまっていたといいます。オンラインであっても、参加し続けることの大切さを実感したそうです。

父親(40代)
徐々に悪い時の感覚に戻っていることに自分でも驚きました。家族にもストレスを与えているんだなと、正直反省する限りです。以前までは、参加した後の1週間、とても穏やかに家族と接して、自分よりも相手の気持ちを思いやることもできたのですが、自粛している間に、再び、自分の考えを優先するように思考が戻っていました。

こういう時だから、子どもは静かにするべきとか、いい子じゃないといけないという自分の「(こうある)べき」を押し付けるのではなくて、子どもはうるさくてもいい、子どもなんだし兄弟ゲンカもする、こういうときはしょうがないよねと、自分の中の「(こうある)べき」の基準を下げることがとても大事と思います。

NPO「ステップ」理事長の栗原加代美さんによると、“思考の癖”は習慣化しているため、なかなか簡単には直らないそうです。そのため、イラっとしたら、立ち止まり、マイナス思考をプラス思考に変えることを習慣化していくことが大切だといいます。

栗原 加代美さん(NPO「ステップ」理事長)
更生プログラム参加者には一度でなく、毎週参加し続けることを勧めています。学んで訓練しないと一人では習慣化することは難しいのです。自分でできることとしては、例えばテレビドラマや新聞、本などから、プラス思考に変えるきっかけとできるような「良い言葉」を書き留めておくことです。例えば「悲しいとき、笑うことで悲しみが消える」とか、「何でもあり」など。普段からプラスの言葉にアンテナを張って、書き留めておけば、マイナス思考になったときに、見返したり、思い出したりすることができます。


急増する妻からの 加害・被害相談
6月、ステップの相談者の顔ぶれにある変化が起きていました。妻からのDV相談が増えているというのです。女性加害者からの相談は4月からの間に10件。2か月間にこれだけ多くの女性から相談を受けたことはないそうです。「ストレスから夫をどなってしまった。自分は加害者ではなないか…」。あるいは、言葉や行動の暴力に至らないまでも「自粛期間中、夫を怒らせないように機嫌をとりすぎて疲れた」という声もありました。テレワークをしていた夫が再び出社するようになり、一人の時間ができたことで、ようやく相談できたという女性が少なくないといいます。

ストレスや不安を感じたとき、どうすればいいのか、栗原さんに聞きました。


(NPO「ステップ」理事長 栗原加代美さん)

栗原 加代美さん(NPO「ステップ」理事長)
女性でDVや虐待をした経験をもつ人の多くは、罪悪感が強く、悩みに悩んだ末に相談してこられます。できれば、悩みすぎる前に相談していただければと思います。自分だけで悩まないで、オンラインや電話相談で、自分のストレスを吐き出していただきたいです。ただ吐き出す、自分の中に起きている負の感情や思考を言語化することでも、だいぶ自分が楽になるため、他の弱いものにストレスや怒りが向かわないようになります。可能であれば、ステップに来て、マイナスの考え方をプラスの考え方に変える方法、ストレスから解放される方法を学んでいただきたいと思います。


“まあ いいか” 家族間の衝突を避けるヒント

(「ステップ」には、“夫が特別定額給付金を独り占めしようとする”という相談も)

悩みすぎる前に相談することが大事なのは、被害者も同じです。栗原さんのもとに、先日、「特別定額給付金を夫が独り占めしようとしている」という妻から相談が寄せられました。40代の妻は、3人の子どもと夫と5人暮らし。結婚当初から、主婦である妻は、夫から、「だれのおかげで生活できていると思っているんだ、子どもの学費を払っているのは俺だ」と言われるなど、経済的なことで心身に負担を与えられてきたそうです。さらに今回、特別定額給付金の申請がきっかけで、金銭的な自由を奪われかねないなど、“経済的DV”がひどくなったと感じ、以前、テレビで知ったステップに連絡したといいます。

栗原さんが妻から聞いた話によると、きっかけは、「家計簿のつけ方」でした。夫は、自分が望むような形式で家計簿がつけられていないからという、一見ささいな理由で、給付金を渡さないと主張し始めたそうです。さらに「俺が一生懸命働いてきたのだから、俺が使って何が悪い」とどなられ、互いに口を開けば、ののしり合うようになっているということでした。

これに対して、栗原さんは、相手を変えられないが、自分の思考と行為を変えることはできると伝えました。「なぜ夫は給付金を渡してくれないのか、自己中心的だ、ひきょうだ」と夫を責めたり非難したりするのではなく、「相手は、何かしらの理由があって、ああいう行動をとっている。相手にとって最善の行動なのだ。まあ、いいか」と考え、まずは自分自身の機嫌を直し、自分の夫に対する接し方を穏やかにすることを優先してはどうかとアドバイスをしたといいます。

栗原 加代美さん(NPO「ステップ」理事長)
その女性は、「まあ、いいか」と口にしてみることで、意外にも怒りがおさまっていくのを感じたそうです。夫に対して穏やかに「何に使いたいの?」と聞いたり、「あなたがそんなに使いたいならどうぞ、今まで私たちを経済的に支えてくれてありがとう」と伝えたりしてみることも選択肢の一つです。けんかしないで話し合いで折り合いをつける夫婦を目指していただきたい。そして、ゆくゆくは夫と一緒にNPOにきてほしいと、その女性に伝えました。

その結果、女性は、「まあいいか、給付金のことで言い争えば、いま夫から月々渡されている生活費さえ もらえなくなってしまうかもしれない。また、争いを子どもに見せるのは良くない。お金より家族関係が大切だ」と考え直し、「夫婦関係が良くなることを目指して、夫の行為をプラスに考えようとすることにチャレンジしたい」と言って、電話を切ったそうです。

栗原さんは、夫婦や親子の間で口論や衝突を避けるために、以下のことを心がけるよう、アドバイスしています。

夫婦や親子の“衝突”を避けるためのアドバイス
・「過去と相手は変えられない、変えられるのは、自分の思考と行為と未来」と考える
・相手を非難せず、行動に対する理由を聞く
・相手に感謝の言葉を口にする


取材して・・・
私はこれまでもDVや虐待の加害経験をもつ人たちを取材してきましたが、新型コロナの影響によるストレスや不安がきっかけで、DVや虐待などの家庭内の問題が一気に深刻化、顕在化しているように感じます。加害者の更生支援の現場では、加害行為の背景に、「自己肯定感の低さ」や、「相手に期待しすぎる自分」があるなどといわれます。日頃から自分を大切にできていなかったり、相手が「~してくれない」と不満を募らせたり ストレスをためたりしている人たちは、“新しい生活様式”が求められる今、ちょっとしたことがきっかけで暴力や暴言に走ってしまいやすいのかもしれません。

もし、小さなことでも引っかかることがあれば、大ごとになってしまう前に、迷わず相談の扉をたたいてほしいと思います。

DVや虐待の相談を希望される方は…
●NPO法人 女性・人権支援センター ステップ https://www.npo-step.org/(※NHKサイトを離れます)
10時~20時 電話:045-439-3620 / 080-5530-8047  
メール相談も可
クローズアップ現代「“ストレス危機”をどう乗り越える?」(4月30日放送)でも取材しました。
●DV相談プラス(内閣府) https://soudanplus.jp/(※NHKサイトを離れます)
24時間対応電話:0120-279‐889 
SNS、メール、チャット相談、外国語対応も可
●DV相談ナビ(内閣府)
電話:0570-0-55210 最寄りの配偶者暴力相談機関につながります。

あなたの記事への感想や意見、親子や夫婦間でのイライラを「こうして乗り越えた」などの経験談を、下の「コメントする」から お寄せください。

※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

クロ現+
2020年6月19日

「ゲストハウス」ピンチをチャンスに【地域発!のヒント】

新型コロナウイルスの感染拡大で外国人観光客の減少、国内旅行もかつてのようにはまだ行けない状況…。
観光業が大きなダメージを受けるなか、各地域のゲストハウスが「このピンチをチャンスに変えよう」と新たな一手を打ち出し始めています。
今回は東京、京都、札幌のゲストハウスの取り組みを紹介します。

東京発! “時間貸し”で利用方法も多様に


東京都北区にある、外国人向けの一軒家のゲストハウス。外国人好みの「和」を基調にしているのが特徴で、利用者の9割を外国人宿泊客が占めていました。しかし、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、2月ごろから宿泊客は大きく減ったため、ゲストハウス側が、苦肉の策として、部屋の「時間貸し」に力を入れ始めました。



この日、利用していたのは東京に住む家族連れ。外出を自粛していた時に部屋の掃除をしていて出てきた着物で、母親の誕生日の記念撮影をしようというのです。通常は外国人旅行者が寝泊まりしている和室で、着物の着付けをしたあと、番傘などを背景に撮影を楽しみました。

撮影で利用した母親
「一軒家を開放して、いろいろな部屋を自宅のように着物でいっぱい写真を撮ってもらえてありがたい。いい場所を貸してもらえて、いい巡り会いができたなと思います。」



「時間貸し」は、空き部屋を1時間単位で貸し出し、売り上げを確保するのがねらいです。 「ゲストハウス」を仲介するサイトの運営会社によりますと、新たに登録される「時間貸し」の物件は毎月10件程度でしたが、2月以降は、およそ40件と急増しているということです。安い部屋では、1時間1000円程度で利用でき、手ごろさから利用が増えているといいます。仲介サイトの運営会社は「時間貸し」の需要増加に手ごたえを感じ始めています。

仲介サイトの運営会社 重松大輔社長
「インバウンドが壊滅的で、東京オリンピックの需要が来るまでしのぎたいというオーナーさんが多いと感じています。借り手のほうも、テレワークや動画撮影など、新しい使い方が出ていて、スペースの活用は伸びていくと考えています。」

京都発! 今こそ“ご近所さん”を招待


京都市下京区の路地沿いにあるゲストハウス。日本らしい滞在を楽しめると、宿泊客の8割は外国人観光客が占めていましたが、新型コロナウイルスの影響で予約の9割以上がキャンセルになり、連日空室の状態が続いています。
そのような状況のなかで、運営会社は4月、近所の人たちに無料で宿泊してもらうプランを企画しました。

そのねらいは、地域の人たちにゲストハウスのことを知ってもらうことでした。
外国人観光客が急増していた京都では、トラブルが相次ぎ、ゲストハウスや民泊にネガティブなイメージを持つ周辺住民が増えていました。運営会社は、観光客が期待できない今の時期だからこそ、地域の人にゲストハウスを体験してもらい、摩擦を減らそうと考えたのです。

運営会社 井上千亜希さん
「近隣の方とかによく思われていないものがありまして、今回それをいいきっかけに、ゲストハウスの中も見てもらって、近隣の方にも知ってもらえたらなというのがあります。」



感染拡大を防ぐため、宿泊してもらう対象は、公共交通機関を使わなくても良い徒歩圏内に自宅があり、普段から同居している家族に限定しました。

この日(取材は4月)チェックインしたのは、徒歩10分のところに住む鎌田さんの家族。高校生になる娘と、同居する鎌田さんの姉、姉の子どもたちの、合わせて5人で訪れました。およそ1か月間、家族で出歩いたことはほとんどなかったという鎌田さん。子どもたちにいつもとは違う体験をさせてあげたいと申し込みました。
夕食には豪華な弁当、夜は枕投げ。休校が続く子どもたちはのびのびと過ごすことができました。実際に滞在することで、ゲストハウスに対するイメージも変わったといいます。

宿泊した鎌田さん
「ゲストハウスが身近なものにもちろん感じたし、敷居が低くなりました。いろんな人が私たちみたいに泊まりに来て身近に感じてくれたら、どんどんいい方向に行って、理解も増えると思うのでいいと思います」



運営会社 井上千亜希さん
「すごくホッとしました、満足していただいて。帰るときにリラックス、来たときと違う笑顔になっていて。少しずついろいろ知ってもらう企画ができたらなと思います。」

(このプランは4月いっぱいで終了しています。)


札幌発! “オンライン宿泊”で観光を諦めない


札幌を中心に7つのゲストハウスを運営する会社が「オンライン宿泊」を本格的に始めています。
「オンライン宿泊」はオンライン会議システムを活用した交流会で、ゲストハウスに宿泊するワクワク感やコミュニケーションをオンライン上で体験することができる新たなサービスです。



チェックイン時の「はじめまして」のやりとりからスタートし、宿の中を写真やライブ映像で見たり、地図を使ってゲストハウスの周辺にあるおすすめのお店を教えてもらったりと、実際に訪れた時と同じようなサービスを受けることができます。
参加費は1000円で、その半額は、将来、実際に宿泊した際に宿泊費から値引きしたり、ウェルカムドリンクとして還元したりする予定です。



参加者(東京都在住)
「すごく新鮮で純粋に楽しかったです。こういうオンラインの楽しさを知っていたら、自粛疲れが起きなかったりするのかなと思いました。」

参加者(大阪府在住)
「参加者をランダムにグループ分けしてもらって、ラウンジで話をするという時間があったんですけど、そこでめっちゃ盛り上がって、フェイスブックを交換しようということに私たちのグループではなりました。終わったあとでも交流があるというのは、実際に泊まった感じがしました。」



このサービスを始めたゲストハウスを運営する合同会社Staylinkでは、新型コロナウイルス拡大以降、キャンセルが相次ぎ、売り上げは3月が前年比65%減、4月は90%減りました。給付金や融資を受けながら雇用を維持していますが、8月には運営する店舗のうち1店舗を閉店させる予定です。
こうした状況のなかでオンライン宿泊を始めた狙いを、運営会社の柴田涼平さんはこう話します。

運営会社 柴田涼平さん
「人が呼べない、人が来れないから観光を諦めるというのは、すごくもどかしさがあって。ずっと観光業に携わってきましたし、人が来ることによって生み出した価値もあると信じているので、それをこの状況下になってしまっても諦めたくないという気持ちがあって、オンライン上で価値提供を始めました。」

柴田さんの会社では、ゲストハウスの2段ベッドが置かれた「ドミトリー」のベッド数を減らし、個室としても利用できるように改装するなど、3密を防ぐ対策を急ぐことにしています。このほか店舗を一棟まるまる1グループに貸し出すサービスを始めるなど感染対策と収益確保に取り組んでいます。
またオンライン宿泊を国内だけではなく、海外の人にもPRし、終息後に北海道を訪れたいと思う人を増やしていきたいと考えています。

運営会社 柴田涼平さん
「実際に旅ができるようになった時に、旅をしたいという欲求が芽生え、その芽生えた欲求の先が札幌である、北海道である、日本であるというところはちゃんと築くことができるんだなと思います。」


今を乗り越えるだけでなく、アフターコロナも見据えた取り組みやアイデアをこれからも紹介していきます。観光、農業、漁業、働き方、地域活動など、あなたの地域で始まっている「withコロナを生きる」ヒントをぜひコメント欄にお寄せください。

※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

クロ現+
2020年6月5日

"新型コロナ時代" をどう生きるか  C.W.ニコルの遺言 【発想のヒント②】

4月に直腸がんのために亡くなった作家のC.W.ニコルさん。信州・黒姫山の麓で35年に渡って森の再生に取り組んできたニコルさんは亡くなる直前、新型コロナウイルスに翻弄される私たちに向けて、あるメッセージを発表しました。

今回、生前つながりがあった脚本家・倉本聰さん、解剖学者・養老孟司さん、地域エコノミスト・藻谷浩介さんに、ニコルさんが遺した言葉を読み解いてもらいながら、私たちが“新型コロナ時代”をどう生きればいいのか、ヒントを探ります。

(この内容は5月29日「知るしん 信州を知るテレビ」(長野県域)で放送されました)

ニコルさんが遺したメッセージ「バランス」


新型コロナウイルスの感染拡大に心を痛めていたニコルさんが、亡くなる6日前に英字新聞で発表したコラムです。

生命体はあまねく すばらしい競争のなかにあります
カモシカと草 カモシカとライオン アリとアリクイ
食べる側 食べられる側の間にある競争は ウイルスも同じです
ウイルスから私たちが身を守るには まずは免疫を付けることです
その上で感染者を隔離する努力は当面は必要でしょう
しかし強制を伴う隔離は 長く続けることはできません
そうしたなかで私たちに今 求められているのは「バランス」なのです

C.W.ニコル「免疫、隔離、そしてバランス」

新型ウイルスに対し、各国が進めた都市封鎖などの隔離政策。しかしウイルスを完全に隔離することは困難だとして、「バランス」が必要だと訴えたのです。

「バランス」 ニコルさんの原点


ニコルさんが、新型コロナと向き合う上で必要だと訴える「バランス」。
実は、ニコルさんは人の自然との関わり方を語る時、常々この「バランス」という言葉を用いてきました。

「大木があって、いろんな動物や植物が、何千何万年も一緒にバランスをとって共生していきているのは森です。それで我々が入って手入れして、目的は原生林に近い状態にしようと。これこそ森なんです」

(2003年「NHK人間講座」のインタビュー)


ニコルさんが30年以上かけて取り組んできたのが、黒姫山の森の再生です。
1985年にニコルさんが買ったこの森は、もともとは、終戦直後の開拓で、いったんは耕作地になったものの、作物が育たず、長年放置されていた土地でした。
そのころ日本はバブル景気の直前で、開発に伴う環境破壊が社会問題となっていた時代。
黒姫山でも開発が進められようとしていると聞き、その自然を守ろうと考えたのです。

ニコルさんの「バランス」の考え方。それは、一緒に森の再生に取り組んできた松木信義さん(84)から学んだものでした。松木さんは15歳から森の仕事に携わり、木こりや炭焼きなど、森と生きる暮らしを続けてきた「森の達人」です。
2人で下草を刈り、木を間引いて森の環境を整えていくなかで、太い木ばかりを残そうとするニコルさんに、松木さんが口を酸っぱくして伝えたのが、「動植物の数や種類のバランスこそが森にとっては大切なんだ」ということでした。
あえて人が手を入れることで自然のバランスを保つ。それはまさに、かつて日本の里山で大切にされてきた考え方でした。



人の命を奪うウイルスに対し、私たちはどう「バランス」をとっていけばいいのか。
ニコルさんの言う「バランス」がどういうことなのか、コラムではそれ以上、語られていません。
養老孟司が読み解く「バランス」 ~排除から共存へ~


その言葉をまず読み解いてくれたのは、解剖学者の養老孟司さん。14年前に東京都の森づくりを考える委員会で出会い、意気投合。5年前には対談本も出しています。
ニコルさんが伝えたかったのは、ウイルスを排除する社会から、ウイルスと共存する社会への転換だと考えています。

養老孟司さん
「ニコルさんは、病気は悪いものだと決めつけて、それを潰そうとする立場はとらないんですね。“共存”です。
社会全体を人として見れば、頭でっかちの人ができてしまって、体の方が薄くなった、そこをウイルスに突かれてしまった。人類は、ほかの生き物と“共存”ではなく、全部を廃棄してきたんですね。だから社会に異物が入ってくると排除してしまう。新型コロナは典型です。

森に行ったら意味のわからないものはいくらでもあります。石ころは転がっているし、それこそミミズは死んでいるし、草は生えているし、いちいち意味が分からないもの同士が“共存”しています。」

藻谷浩介が読み解く「バランス」 ~地域の実情に応じた“間合い”~


地域エコノミストの藻谷浩介さん。ニコルさんの考えに共鳴し、ニコルさんが副委員長を担うNPOの理事を務めています。
平成の大合併前の全国3200の市町村を全てめぐり地域から日本のあり方を提言してきた藻谷さんは、地域の実情に応じた“間合い”が求められていると感じています。

藻谷浩介さん
「我々も含めて下の世代は、都市に偏りすぎて暮らしていて、自然との間合いの取り方を勉強していないんですよね。それを本当は勉強しなくてはいけないんだよということをニコルさんは言っていました。ニコルさんや養老孟司先生もですが、小さいときから自然に囲まれて生きてきた人というのは、理屈じゃなくて感覚として『今はこれぐらいの感じだよね。今度こうなってきたときはこれぐらいかなって、ちょっとやってみてダメだったら考え直そう』という自然との“間合い”の感覚を肌感覚で身につけているように思います。

今回はっきりしているのが、東京・首都圏と地方において、感染状況が全然違うということです。日本で亡くなった人の半数以上が、1都3県です。東京・首都圏の密のなり方が、ある一線を越えて極端に密だということなんです。
東京という狭い土地に、ものすごく見事に人間と緑を詰め込んで、かろうじて生きていける環境をつくってあるわけです。この芸術作品が逆に、できすぎていたということがわかったんですね。

間合いを取りながら、対処するところには きぜんと対処し、しかし過度に怖がらずに行動できるでしょ、自分の頭で考えて体で体験しようよということをニコルさんは言っていたはずなんです。」

倉本聰が読み解く「バランス」 ~本当の豊かさとは~


40年来の友人、脚本家の倉本聰さん。
「今の日本は、経済至上主義になっていないか」、そうニコルさんは考えていたと、倉本さんは語ります。

倉本聰さん
「ニコルさんが原点にしているのは、故郷のウェールズの炭鉱なんです。彼は自然破壊のすさまじさと、それに対する怒りみたいなものが幼いころから身についていたんだと思います。資本主義経済の進みや発達と、それによって自然が破壊されていくことを、ずっと彼は、心の中に怒りとして持っていて」

木材や石炭の供給基地となり、森の木は切り倒され、石炭のくずが山と積まれ、荒れ果てたふるさとを見ていた幼い頃のニコルさんは〝本当の豊かさとは何なのか〟ずっと疑問を抱いていたのです。

そして、倉本さんは、今こそ私たちは価値観を変えるべきだと言います。

倉本聰さん
「今回、経済と人命が てんびんにかかりましたが、今、かかりつつありますが、経済社会の恐ろしさは、今、行き過ぎているということだと思うんです。
ニコルというのは、僕は時代遅れのトム・ソーヤーだという気がします。僕は時代遅れのハックルベリーだと思ってしまいます。いくら叫んでみても、世の中の動きは仕方がないし、それに逆らうことは難しいという気がするんですね。
ただ、このコロナ騒ぎがこれだけあって、果たして人間、日本人は変われるだろうか、変わっていないだろうか、ということが一番問題だと思います。」

自然と経済の「バランス」への挑戦


ニコルさんは晩年、ある挑戦をしていました。「自然を大切にする生き方」で「経済的」にも成り立たせるということです。
5年前から森で2頭の馬を飼い始め、かつて日本の各地でみられた、馬を使って森の木を運ぶ「馬搬」の文化をよみがえらせようとしていました。

アファンの森でも ホースロギング(馬搬)で丸太を切り出し
それから製材機で 建材 ホダ木 薪などを作るつもりだ
そのような仕事ができれば
数人の若者が生活できるぐらいの収入を得られる
森には宝の山がある
それは私たちの心を豊かにして 生活に恵みを与えてくれる
森がよくなれば経済もよくなり そして人間が元気になる
私はアファンの森でそれを実践していく

(「C.W.ニコルの生きる力」より)




「馬搬」では大きな富は得られなくても、地域の人が暮らしていくだけの収入は得られると考えていたのです。
現に、ニコルさんのふるさと・イギリスでは、「馬搬」を生業にする組織が70以上作られ、人々の雇用や所得に結びついています。

“新型コロナ時代” 地方の見直しを
ニコルさんが目指した森を中心とした生き方や考え方は、コロナ時代を生きる私たちへの問いかけでもあります。

養老孟司さん
「新型コロナの発生率を見ても分かります。大都会は危険です。暮らしいい条件のあるところに人間が動くと考えたら、地方に動くのがごく自然じゃないでしょうか。ある程度、自然に触れるというか、そういう生活をしたほうが自分のためでもあり、子どものためでもあり、社会のためでもあります。生活のなかで、何が中心かということをもう一度考え直す機会になるんじゃないでしょうか。」

藻谷浩介さん
「現実に新型コロナの騒動になってわかったことは、庭に畑があったり、井戸があったり、場合によってはそもそも裏山の清水で水道をまかなっている人とかは、実は生活がほとんど変わっていないんですよね。1%でも1割でも、畑を自分でつくっていれば、それだけで格段に強くなるんです。
都市に住んでいても、ちょっとだけでいいから近所に公園がある。あわよくば小さな坪庭がある人と、まったく緑がないところでエレベーターに乗って暮らしている人では、今、受けているストレスが全然違います。
ほんのちょっとでいいので、ゆとりを持っていて、ちょっとでもいいから自然が目の前に見える環境に暮らしていることは、大都市でもできるし、それは重要なんです。」



誰よりも森を愛し、生涯にわたって、人類が進むべき道を探り続けたC.W.ニコルさん。 新型コロナ時代を生きる私たちに遺した文章は、こんな一節で結ばれています。

すべての生命は唯一無二の存在だが
お互いに結びついています
私たちは今こそ 尊敬と謙虚さを学ぶ必要があるのです


あなたが“新型コロナ時代”に生きるために実践している生活やヒントはありますか? コメント欄にぜひお寄せください。

※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

クロ現+
2020年5月27日

ストレス治療の専門家 小山文彦さん【安心のヒント③】

緊急事態宣言が全国で解除されましたが、外出自粛やイベントの開催制限は段階的に緩和されるなど、以前と同じような日常に戻るにはまだ時間がかかると見られます。

先が見えない不安やストレスを乗り越えるためにどうすればいいか。“最前線のプロ”に聞く「安心のヒント」、今回はストレス治療が専門の東邦大学医療センター教授・精神科医の小山文彦さんです。「非日常」と向き合うためのヒントを教えてもらいました。

(※小山さんが出演した4月30日放送の『“ストレス危機”をどう乗り越える? ~新型コロナ・奮闘する現場は~』特集ダイジェストはこちらから

ストレスや不安を感じて当然
Q: 大人から子どもまで、大勢の人が不安やストレスを抱えている今の状況をどう見ますか?

新型コロナウイルスの影響で、学校やイベントなど普段だったらあるはずのものがないとか、外出自粛や在宅勤務などで身近な人や職場の人との会話が乏しいといった 普段だったら自由にできていたことがなかなかできない日々が続いています。「日常性のピンチ」、「日常性ロス」のような状況だと思います。人は、このように、いつもと違う、少し苦しい状況を受けとめていく心理過程の中で、最初は「どうしてそんな事になっちゃうんだ」とか「そんな事はあるはずない」と思ったり、人のせいにしてみたりと、怒り・非難・批判・否認などが浮き彫りになりがちです。

そういう心理状態でいながらも、見えないウイルスの恐怖から自分を守っているわけで、「心ごとガードを固めているような状態」になります。このようなときに、人が近づいてきたり、咳(せき)こんだりすると、それだけで心が、敵対するような、いらだちのポーズを取ってしまう。こうした過程を経ることは、人間として自然なことだろうと僕は考えます。


(在宅勤務が増えるなど “日常性ロス”が続く日々)

身近な人への気遣い「ありがとう」が心の支えに
Q:どうすればストレスや不安を和らげることができますか?

今後、友人たちと集まるにしても、3密になりやすいお店などに行くことが以前に比べて非常に難しい状況ですが、本来、そういう場所や環境といった「箱」の中に僕らは何を入れていたのかというと、それは「人と人との交流」だったんですね。

新しいものではないけれど、普段から持っているはずの、人への気遣いやおもんぱかりを、僕らは「箱」の中で、一緒に楽しんだりしていた事が今はままならないので、「箱」の中身だけは、見えないストレスや恐怖に負けることなく、心に持ち続けないといけないと思います。

一方で、人と直接交流する機会が減っている今こそ、友人や家族など、普段、自分の身近にいる人たちのありがたさを再確認する いい機会でもあるんです。

友達にしても、普段はいがみあっている家族にしても、自分の目の前にいない今こそ、その人がどんな表情をしていて、どんな思いで毎日暮らしているのかなと想像してみる。そして、その後、電話で声を聞いてみたり、メールやオンラインでコンタクトをとってみたりすると、実際に近くにいたり、いがみ合ったりしている時よりも、逆に、その相手に対して気遣いだったり、おもんぱかりを強く持つことができたり、「ありがとう」と言うことができたりするんです。また、そうした身近な人への気遣いや「ありがとう」が人の心を支え、また、自分を支えてくれるように思います。

一人一人が、今、暮らしと家族を守っている。そんな「大仕事」をしている毎日だからこそ、互いにねぎらい、「ありがとう」を伝えましょう。不安を感じているときは、一人で悩まずに、精神的にも手をたずさえることが大事です。震災のときは、心の結びつきがいかに大事なものかが広く理解され、絆という言葉があらためて大切にされました。

絆をより、あたため、強くするにはどうすればいいか。次のことをおすすめします。

絆をあたため、強くするために…
・本当の気持ちをできるだけ隠さずに話し合う
・互いをねぎらう
・相手に長所短所があっても、その人が共にいてくれることに感謝する



(診療する小山文彦さん)

Q:家族で過ごす時間が増える中、家庭内でイライラがたまり、いがみあうことも少なくないと思います。どうすればいいでしょうか?

そんなときは、相手と自分とを結びつけるものを辺りにあえて転がしておくといいかもしれないですね。ケンカして、ふと相手の姿が目の前から消えたとき、相手の好きなものや脱いだばかりのソックスなどが床に転がっていると、ふと愛らしくなって笑ってしまう、そんなことを経験する人もいるのではないでしょうか。

あるいは、いがみ合っていても、おなかがすいたら一緒においしいものを食べ始めたら、機嫌が直り、おいしいねってなることもあるのではないかと思います。そこで、次のことを心がけるといいでしょう。

食事のときに…
・「おいしいね」と、言いましょう。
・「作ってくれて、ありがとう」と言いましょう。
・そう言われたら、「そう?よかった」と言いましょう。


未来の“良いシナリオ”を描き 実行する
Q:特に、先の見えないことに対する不安には、どう対処すればいいですか?

人は、大半の不安は、過去に遡るのではなく、先行きに対して抱くものなんです。例えば、「これからもずっとウイルスの感染は続くのか?」とか、「夏や秋になっても3密を避けなければならない状況は変わらないのか?」など。こうした出口のないような先行きへの不安は、人が自ら描いた心理的な脚本、シナリオにすぎません。

そこで、そうした不安を和らげるために、違うシナリオも描いてみるんです。例えば、「夏をあきらめなければならないのか?」というシナリオの代わりに、「夏にどんなものを着ていたいか?」と考えて、実際にタンスから着てみたい服を取り出してみる。好きなTシャツを広げる、白いスニーカーを真っ白に洗う、など。精神的な衣替えが出来ればいいと思います。家族みんなで衣服や靴などタンスなどの整理をしてみるのもいいかもしれません。 出口の先にあるだろうものを手元でしっかり確かめる。あるいは、それをイメージしてみることもいいでしょう。

みなさんは、ストレスとどのように向き合っていますか?ご自身の体験や、記事への感想や意見を、下の「コメントする」か、ご意見募集ページから お寄せ下さい。

※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

クロ現+
2020年5月26日

“親子の孤立”どう防ぐ? 模索する現場から【安心のヒント②】

政府は緊急事態宣言を全国で解除しましたが、外出自粛などについては、地域の感染状況などを評価しながら段階的に緩和していく方針です。地域のつながりを維持しづらい状況が続く中で懸念されるのが、“家族の密室化”に伴う虐待の増加です。東京都国分寺市で子育て支援を行うNPOでは、“地域みんなで子育てをする”という考えのもと、親子を孤立させないことで虐待を防ごうと活動しています。新型コロナウイルスの影響で、広場や公園にみんなで集まりにくくなったいま、どのように親子どうしや 地域のつながりを保っていくのか、かつてない難問に直面しています。試行錯誤を続けて2か月、一つの手がかりが見えてきました。

(報道局社会番組部 ディレクター 神津善之)


子育て広場が閉鎖… 見えづらくなるSOS

(閉鎖された国分寺市 親子ひろば「BOUKENたまご」)

国分寺駅前にある子育て広場「BOUKENたまご」。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、3月に入ってから閉鎖していますが、以前は毎日、30組ほどの親子が利用して、にぎわっていました。運営するのは、この地域で20年にわたって子育て支援を行っているNPO法人「冒険遊び場の会」です。10人のスタッフが親たちの悩みを聞き出し、時には栄養士や助産師、心理カウンセラーなどによる支援も行ってきました。相談の数は年間1400件にも上ります。

代表の武藤陽子さんは、ストレスや不安が高まりやすいいまこそ、気軽になんでも相談できる場が求められるにもかかわらず、広場を閉鎖せざるを得ない状況になったことで、子育て中の親たちが悩みや不安を独りきりで抱えていないか、心配する気持ちを強めていました。


(NPO「冒険遊び場の会」 代表・武藤陽子さん)

武藤さん
「ここに来てほっとされていたお母さんたちが、来られなくなって、“分断”され、孤立している状況を思うと、とてもつらいです。私たちは子どもを親だけで育てている家庭をつなげ、地域みんなで子育てを一緒にしようよということを大事にしてきました。でも、その“みんなで”というところができなくなり、それぞれ自分だけで考えて子育てしなければならなくなってしまった今の状態を心配しています。

もともとこの子育て広場が立ち上がった一番の目的は、虐待予防です。実際にお家で、お子さんと長時間 向き合う中で、どんなにできたお母さんでも、行き詰まってしまう、息が苦しくなってしまうと思うんです。今回、テレワークが始まって、余計に家族だけで密になっている。そのあたりがいま大変なのではないかと思います。」



(相談の電話を待つ「冒険遊び場の会」のカウンセラーさん)

武藤さんたちは、広場を閉鎖しても相談支援は続けたいと、すぐに電話相談を開始しましたが、当初、電話はほとんど鳴りませんでした。これまで多くの相談は、スタッフとの何気ない会話の中から出てきていました。自分からわざわざ電話して相談することは、親たちにとってハードルが高いのだろうと考えました。親たちからのSOSは突然見えづらくなり、武藤さんたちの危機感は募りました。

公園での遊びも禁止に…
武藤さんたちは、室内での子育て広場に加えて、公園に親子が集って話したり遊んだりする「青空ひろば」という活動を続けてきました。市内9つの公園に週1回、プレイリーダーと呼ばれる、各地区の担当のスタッフが出向き、それぞれの親子をつないだり、砂場や遊具などでの遊びや植物観察などをサポートする取り組みです。いつも同じスタッフが参加することで、近所の親子たちと顔見知りになって、つながりを築いてきました。


(「青空ひろば」の様子 2015年に撮影 写真提供:冒険遊び場の会)

しかし、緊急事態宣言が出ると、公園に人が密集することはリスクが高いとされ、自治体からの要請で「青空ひろば」の活動も中止することになり、武藤さんたちの懸念はさらに強まりました。

武藤さん
「以前は、公園で親子のみなさんと遊んでいたのですが、新型コロナの感染拡大が続いた中、緊急事態宣言が出て、外遊びも難しくなりました。活動ができなくなるのはやむを得ないことでした。ただ、実際に活動を中止してから、“これはまずい”、“どうしよう”という気持ちになりました。公園に遊びにきていた子どもたち、お母さんたちはどこにいってしまったのかと心配になったのです。集まれないのは仕方がないけれど、大きな戸惑いと憤りもありました。」


試行錯誤から見えてきた“つながる”ヒント
子育てを支援する活動の場がなくなり、地域で築いてきた つながりが絶たれる中で何ができるのか。武藤さんたちは、手探りを続けながら、いくつかのヒントを見いだしてきました。

ヒント① SNSの情報発信は“映えない”写真
(「冒険遊び場の会」のインスタグラム)

親子に会えないようになって、NPOのスタッフたちがまず着手したのが、SNSでの発信です。インスタグラムのアカウントを開設し、地域の親たちへメッセージを送り始めました。これまで対面でのつながりを大事にしてきたスタッフにとって、デジタルでのやりとりは初めてのこと。どんな投稿をすればいいのか悩んだ末、たどり着いたのは、ありのままの日常を伝えることでした。子育ては日々続いているからこそ、特別なときだけ発信するのではなく、毎日発信し続けることを決めました。そのため、無理はせず、投稿には“映える”写真は載せないようにしました。代わりに手書きの手紙を写真に撮って投稿するなど、手触り感のある、あたたかみにあふれた写真が並びます。

こうした投稿を続けたところ、電話相談の数が徐々に増え始めました。「いつまでこの生活が続くのか、先の見通しが見えずにストレスがたまっている」とか、「みんな大変な状況だから、がまんしないといけないと思っている」という声もあったそうです。


ヒント② “手を振るだけでいい”
(公園で親に声をかけるNPO「冒険遊び場の会」スタッフ)

さらに、NPOのスタッフたちは自分の暮らす地区で、“見回り活動”を始めました。日常生活で買い物に出るついでに近所ですれ違う親子に声をかけたり、プレイリーダーたちは公園の整備をするついでに、見かけた親たちとあいさつをかわしたり。短時間でも、ひと言でも声をかけることで、孤立感をやわらげようと考えたのです。

見回り活動をするスタッフに取材で同行した日、公園に、保育園への登園を自粛している子どもとその親が来ていました。小さな子どもをずっと家の中で遊ばせることが難しく、息抜きに出てきたそうです。スタッフと何気ないやりとりをした親は、「久しぶりに家族以外の人と話をして、気持ちが明るくなった」と話していました。

見回りを続ける中で、武藤さんやスタッフたちはあることに気づいたといいます。それは、たとえ話ができなくても、手を振るだけで喜んでもらえる、ということでした。

武藤さん
「手を振っただけでも すごく喜ばれたという報告がスタッフから届きました。スタッフが『手を振ることしかできなくて ごめんね』と言ったら、『私のことを思ってくれている人がいると感じられるだけで すごくうれしい』と言ってくれたそうです。それで“あ、そっか、手を振るだけでいいんだ”と、逆に教わりました。目と目をかわすだけで分かり合える、手を振るだけで、相手の心に響くということを知りました。」


ヒント③ ポストで手紙のやりとりも
(各地区の公園に設置されたポストと掲示板)

さらに、会えない人たちに向けて、公園内に、ある仕掛けをつくりました。「ポスト」の設置です。そして、親も子どもも それぞれ自由に気持ちを書いて投かんしてほしいというメッセージを掲示しました。アナログな方法ですが、反響は上々。手書きの手紙が入るようになり、手応えを感じています。声が届く度に、スタッフが掲示板に返事を掲げ、やりとりが続いています。

“ひとりじゃないよ”と伝えたい
集まることができなくなっても 立ち止まることなく、できることを考え出して活動を展開してきた武藤さんたち。その原動力は、孤立しがちな親子に対して“ひとりじゃないよ”、“気にしているよ”ということを伝えたいという強い思いだと言います。


(子育て広場でミーティングする武藤さんとスタッフ)

武藤さん
「外出自粛が続く中、社会から分断されてしまうと、自分は独りぼっちだと感じてしまう人も多いと思います。だから、“あなたは、ひとりじゃないよ”、“ちゃんと私たちが一緒にいるよ”ということを伝えたいと思っています。
親子の遊び場を一緒に作ってきた地域の仲間として、自分の親でもない、同じ地域に暮らす第三者の大人として、“あなたの味方だよ、仲間だよ”ということを、これからもずっと発信していきたいと思っています。」


NPO「冒険遊び場の会」の活動を取材して、新型コロナの影響で、親子が集まれる場がなくなってしまうことの歯がゆさを感じる一方で、こうした状況でも、つながりを保つためのさまざまなアイデアが生まれてくるのは、長年にわたって地域の親子に寄り添い続けてきた みなさんだからこそだと思いました。生活様式の変化が求められ、多くの人が不安やストレスを抱えがちないまこそ、孤立を防ぐために、ご近所さん同士のつながりや“地域の力”がいっそう大事なのではないかと感じます。

地域の親子や家族が“つながる”ために、何が必要だと思いますか?あなたの考えや 記事への感想を、下の「コメントする」か、ご意見募集ページから お寄せください。

※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

クロ現+
2020年5月20日

宇宙飛行士 野口聡一さん 【 安心のヒント① 】

「感染が怖い…」「いつ事態が収束するか分からない…」見えない脅威が広がる中、つのるストレスを乗り切るための心構えや秘けつを、“最前線のプロ”たちに教えてもらいます。

第1回は、“究極のストレス環境”である宇宙に長期間滞在した経験をもつJAXA宇宙飛行士の野口聡一さん。アメリカの民間企業「スペースX」が開発する新型宇宙船への搭乗が決まり、現在、NASA=アメリカ航空宇宙局のジョンソン宇宙センターで訓練を続けています。合原アナウンサーがオンラインで話を聞きました。

新型宇宙船の搭乗に向け 日々訓練中
合原アナウンサー
いま、野口さんはテキサス州のヒューストンにあるジョンソン宇宙センターで日々、訓練を続けていらっしゃいますが、新型コロナウイルスの影響は出ていますか?

野口さん
先ほど訓練を終えて帰ってきたところです。NASAは基本的に全員テレワークを行っていますが、「スペースX」の宇宙船の搭乗が決まっている宇宙飛行士の訓練は、特例で続いています。直接対面しながらの訓練はかなり制限されていますが、テレビ会議のシステムを使ったり、コンピューターでのシミュレーターで対応したり、いろいろ工夫ながら訓練をなんとか継続しようと、NASAもがんばっています。訓練は通常、インストラクターや一緒に搭乗する宇宙飛行士が同じ場所に集まって話が進む部分がとても大きいのですが、さまざまなことが制限されている今は、いかにコミュニケーションを保ち続けるかというのが、すごく問われている気がします。

「ルーチンワーク」と「変化」が大切


合原アナウンサー
野口さんは、2009年に国際宇宙ステーションに半年間 滞在されました。そのときの経験から、外出自粛や自宅待機が求められている今、参考にできるヒントはありますか?

野口さん
宇宙ステーションは、“究極の自宅待機・外出禁止”のようなものです。半年間 地上に行くことができません。滞在したときに心がけたのは、「今ある環境の中で、できることをする」ということです。

中でも、「毎日のルーチンワーク」が大切です。私の場合は、宇宙ステーションにいる間、「朝起きたら水1杯を飲んで、頭が起きてなくても すぐに運動する」ことを習慣にしていました。とにかく起きたら30分から45分 運動する。そうすると、「体にいいことをしたな」という前向きな気持ちで一日を始められます。そういう意味で、ルーチンの役割がすごく大きいと思います。

一方、毎日、同じことの繰り返しだと単調になってしまうので、「少しずつ彩りと変化を加える工夫」もしていました。食事に関して、「今日は日本食をみんなで食べよう」、「次の日はロシア人宇宙飛行士の居住モジュールに行って、ロシアの食事と日本のカレーを交換してみよう」とか、「別の日はみんなでパンの上に、トマトソースとソーセージ並べてピザみたいにして食べよう」とか。普段と違う事を取り入れていくということも大事です。

「ルーチンワーク」と「変化」の2つを行うことで、長い自宅待機、隔離生活も乗り切れるのではないかと思います。



日数を数えず “新しい1日”を祝福する
野口さん
もう一つ、先輩の飛行士から言われたのは、「きょうは1日目、2日目」みたいに数えない方がいいということ。「あと100日、あと50日・・・」とか、「まだ あとこんなにある・・・」など、先が見通せないというふうに思ってしまうと、一日一日が非常につらくなります。あまり構えすぎずに、「その日1日乗り切れればいいや」ぐらいのところから始めるのがいいかなと思います。

新型コロナウイルスの問題も、「ワクチンができるまで あと何年かかるのか・・・」みたいなことを考え始めてしまうと すごくつらいです。だから、とにかく「今日やるべきことなどができた!」「愛する人や家族がコロナウイルスにかからずに1日が終わった!」という小さなサクセス(成功)を積み重ねる。翌日、朝起きたら、また、新しい1日に新しい祝福を与えて、「また がんばろう!」という気持ちを、小さく重ねていくことが大事だと思います。

寂しさやストレスを 分かち合う
合原アナウンサー
「外出自粛が続く中、大切な家族や友人に会えなくてストレスを抱えている」という声が番組にたくさん寄せられています。対処法はありますか?

野口さん
電話、オンライン通話、メールなど、「今できる範囲でどういうふうにコミュニケーションを保てるか」、工夫の見せどころです。大事なことは、「自分がコミュニケーションを大事にしている」ということを、しっかり相手に見せていくことだと思います。また、会えないつらさを無理に隠さなくていいということ。例えば、宇宙ステーションに居たとき、家族の大事な記念日や誕生日に参加できなくて残念だという気持ちは、みんな持っていました。無理に、それを隠す必要はなく、ワーッと出してもいいと思っていました。無理に平気なふりをしない方が乗り切れるかなと思います。

仲間として、その寂しさとかストレスに共感してあげる、お互いにそれを分かち合える というのも、ストレス解消という意味で、すごく大きいと思います。



合原アナウンサー
「みんなそういう思いをしているのだから、口に出すのもはばかられる」という人もいらっしゃると思いますが、そこは口に出した方がいいのでしょうか?

野口さん
そういう気持ちになる方は多いと思います。でも、自分の中にあるストレスは、ため込んで 抑え込んでも、消えるものではないです。短い期間であれば、「みんな、ストレスを抑えて、とにかく乗り切りましょう」など、不満を抑え込みつつ乗り切るという考えも確かにあると思います。でも、このコロナウイルス、おそらく長期戦になる可能性がありますよね。ですから、自分たちのつらさを出していける社会、自粛して外出ができないつらさを分かち合える環境とか社会になれば、すごくいいと思います。

自分も今は、日本に住む家族と離ればなれになってしまっているので、会えないつらさをストレートに伝えています。また、家族は今どういう問題に直面している、僕は今どういう問題を抱えているとか。普段の日用品でなくなっているものは何があるかとか、買い物に行ったらこれが売り切れていたとか。そんな話も含めて、今、自分の周りで起きていることを毎日ちょっとずつでも話すようにしています。

家族で “互いを尊重”、“不満を均等に”


合原アナウンサー
「自宅で家族とずっと一緒に過ごすことにストレスを感じる」という声も寄せられています。国際宇宙ステーションにクルー6人で長期間 滞在されたとき、ストレスとどう向き合いましたか?

野口さん
我々の場合、宇宙に行く2年ぐらい前から一緒に訓練しているので、メンバーみんな、気心は知れていました。ただ、そうはいっても半年間ずっと一緒にいると、やはり人間なので、「自分にとって、すごく大事な時間」というのは少しずつ違ってくるんですよね。「外の景色が見える窓のある空間とか、運動ができる空間を、この時間に使いたい」というのが、それぞれ出てきます。そこで、「ここに関しては、あなたを尊重するけど、それ以外は みんなで共有して使おうよ」という調整がちゃんとできるといいですね。

日本人の場合、私も含めて、いさかいが表面化しないように一生懸命、自分の気持ちを抑えてしまいがちですが、言うべきことは、小さなことでもちゃんと言って、小さなうちに逆にそれを表に出す。そうすることで、“時限爆弾”みたいにワーッと出ないようにすることが、すごく大事と思います。


合原アナウンサー
それでも、家族全員の不満をすべて解消するというのは、すごく難しいと思います。どうすれば、いいでしょうか?

野口さん
私が最初に宇宙に行った時、スペースシャトルの船長、アイリーン・コリンズさんに言われた言葉で、すごく覚えているのは、「全員が満足することではなく、全員の不満にばらつきがないことを目指す」ということです。誰かだけの不満を下げると 絶対に他の人にしわ寄せがくるので、不満を均等にすることが大切です。家族も同じことだと思います。特定の人が不満を多く抱える状態にならないようにすることが、気配りの上で大事だと思います。



先の見えない不安に 惑わされない
合原アナウンサー
先の見えない漠然とした不安も、今、多くの人が感じていると思います。野口さんは、2003年のスペースシャトル・コロンビア号の事故のあと、いつ打ち上げが再開されるか分からない中、2年半近く、ひたすら訓練を続けたそうですね。先行きの見えない不安をどう乗り越えましたか?

野口さん
私の最初の飛行が、コロンビア号の事故後、スペースシャトル打ち上げ再開の第1号でした。だから、スペースシャトルは本当に復活するのかという大きな問題と、宇宙飛行士としてこの先も雇ってもらえるのかという不安もあって、すごく先が見えない時期を過ごしていたと思います。でも、いずれも自分の中でどうにかなる問題ではありませんでした。

そこで、自分ができることというのは日々の訓練しかなかったので、とにかく、それをやっていく。スペースシャトルの打ち上げが再開するときには、自分は準備万端で待機しているという状態を保つ。あとは、この先どうなっちゃうんだろうみたいな、先行きが不安になるようなことに心を惑わされないように気をつける。精神状態をできるだけポジティブ、前向きに保ちつつ、心身を健康に保つようにしていました。しっかりご飯をたべて、運動して、休息もしっかりとるという、わりとシンプルな生活スタイルを心がけていたと思います。



今回も、新型の宇宙船への搭乗は新しい挑戦ですが、やることはわりとシンプルで、その宇宙船の訓練を日々しっかりやっていく。いつ打ち上げがあるかというのは、私自身の能力を超えたところで決断されるので、あまりそこには気持ちがいかないように、気持ちが迷わないように気をつけたいなと思っています。

新型コロナウイルスに関しては、正しい知識を入れつつ、対人の距離を取って、3密を避けることなど、自分が今できることをちょっとずつやっていく。その上で、死への不安、病への不安に心がとらわれないようにする。それが大切だと思います。

“日本のみなさんへ” 野口さんのメッセージ

※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

クロ現+
2020年5月19日

若い女性3割超 “経済的不安を感じる” 【現状リポート】

新型コロナウイルスによる社会への影響が長期化する中、日本の若い女性が置かれている実態を把握するため、国際NGO「プラン・インターナショナル」がオンラインでアンケート調査を実施しました。その結果、失業と収入減への不安を感じている女性は3割を超え、中でも非正規雇用など不安定な状況に置かれている人が、より強い不安を抱えていることが分かりました。その背景に何があるのか。アンケートを行ったチームのリーダー、長島美紀さんに話を聞きました。

「女性が解雇されやすいのでは…」

(「新型コロナウイルスの影響に関する女の子と若い女性の声アンケート集計結果」)

アンケートは15歳から29歳までの女性を対象に、ことし4月15日から26日の12日間に行われ、364人が回答しました。

「新型コロナウイルス感染症とその影響について不安を感じていますか?」という問いに対して、「とても感じている」と回答した人が50%、「やや感じている」と回答した人が44.2%、あわせて94.2%が不安を感じていることが分かりました。その中でも、失業や収入減など経済的不安を感じている人は32.8%でした。また、正社員など正規で働く人のうち、「不安をとても感じている」と回答した人は37.8%。一方、非正規や個人事業主として働く人で「不安をとても感じている」と回答した人は67.4%に上りました。回答者の母数が違うため 数字そのものを比べることには注意が必要ですが、アンケートを実施した「プラン・インターナショナル」は、不安定な立場で働く女性の方が、より不安を感じている傾向が現れていると受けとめています。

「新型コロナウイルス感染症について、自分が『女の子、女性だから』という理由で受ける影響や、男の子、男性よりももっと影響が大きいと思うことはありますか?」という問いに対しては、
・「売り上げが厳しくなると男性社員よりも女性社員を解雇するのではないか」
・「女性だからという理由で派遣や契約社員だったり、責任のある立場を任されたりしない働き方をしていて、会社から優先的に解雇される事例は増えそう」
・「子どもを自宅保育しなければならないことによって収入を絶たれ、夫に依存しなければ生きていけない状況に置かれる可能性があることに大きなストレスや不安を感じる」

といった声が複数寄せられました。

背景には 日本社会のジェンダーギャップ
アンケートを行った「プラン・インターナショナル」は、子どもの権利を守り、とりわけ女の子を差別しない公正な社会を実現することを目標に、世界70か国以上で活動する国際NGOです。各国で新型コロナウイルスが女性たちの仕事や暮らしに影響を与えることが指摘されている中、日本の状況を把握しようと、今回、独自にアンケートを実施しました。

調査を行ったチームのリーダー・長島美紀さんは、若年女性たちが感じる経済的な不安の背景には、日本の女性たちが社会の中で置かれている状況が関係していると指摘します。


(プラン・インターナショナル 長島美紀さん)

長島さん
「もともと、いまの社会構造の中で、女性が働いている状況がどうしても男性に比べて不安定である、そのことに対する不安というのがアンケート結果にすごくよく出てきているなという印象があります。総務省の統計等を見てみると、いま働く女性の過半数が非正規職員なんですね。これは男性に比べると、非常に割合として高い。新しく働き始める人の数は年々増加していて、女性ももちろん数としては増えていますが、その割合として やはり非正規で働く人たちが多くなったりする。また、女性が働くとしても、フルタイムの労働でも女性の給与は男性に対して大体7割程度と言われています。

学生など若い女性は、給与が少し減ってしまうのではないかとか、非正規の職の採用状況が悪化するのではないかといった中で、自分たちが仮に今後大学を出ても就職先があるのかというような、長い目で見た不安にもつながっていくと思います。

もともとプラン・インターナショナルは「ジェンダー格差の問題」を非常に大きく取り上げていて、その中でも特に、若い女性・女の子が自分の意思でちゃんと自分の人生、未来を選んで、自分の発言をもって社会にきちんと参画できる社会づくりを目指しています。しかし、残念ながら やはり日本の中で見てみると、まだまだ女性たちは、非正規雇用だったり、経済的、社会的に不安定な状況に置かれやすかったりすることが多い現状があって、その問題がコロナウイルスの影響の下で非常に分かりやすく現れてしまっていると思います。」

“ジェンダーに基づく暴力”に注意が必要

(「新型コロナウイルス対策における若年女性支援に関する要望書」)

プラン・インターナショナルでは、若年女性たちからの不安の声を受けて、5月12日に政府へ要望書を提出しました。その中で「若年女性への経済支援の拡大」に加えて、「若年女性へのジェンダーに基づく暴力の予防・対応の強化」も求めています。収入が減った若年女性たちが、性産業で働いたり、SNSを通じて金銭目当てで人と会ったりすることで、性的搾取の被害に遭うリスクが高まることも懸念しているからです。

長島さん
「経済的な不況に立たされはじめると次にどういう問題が出てくるか。例えば、飲食店で働いていた人が、働き先がなくなり、他に何の仕事があるんだろうって考えると、一番入りやすく見えてしまう、いわゆる性産業や それに類する産業に入ってしまう可能性が出てくる。また、SNSでいわゆる援助交際の相手を探すことで、性暴力とか性的搾取の被害を受けるリスクも高まります。

それから、若年女性に限らず女性全般ともいえるかもしれませんが、緊急事態宣言が多くの地域で解除されているものの、まだ外出自粛をできるだけしましょう、在宅勤務をしましょうと言われていて、その中でDVなど、いわゆるジェンダーに基づく暴力というのが増えることも懸念されています。今回のアンケートでも、家族・恋人・友人とケンカや不和が増えたと答えている人たちが1割弱います。それが暴力につながっていく可能性もありますし、「性暴力」が増える可能性も高くなると考えられます。

こうした問題のもとにあるのは、日本が女性に対してまだ優しくない社会、女性が活躍してない社会であるという現実です。平時から「ジェンダー平等推進」ということは言われていますが、それをさらに推し進めていかないとこうした問題は、最終的には解決にはならないと考えています。ちょうど今年、男女共同参画基本計画の見直しが行われることになっています。その中でいまジェンダー格差を解消しましょう、女性が社会で活躍できるようにしましょうと言っていますが、それをどう日本の中で現実化できるのか。ただ経済活動だけを見てしまうと、目の前の事だけを見てしまって その森を見ないという状況になってしまうので、平時から女性が搾取されやすい状況や、それが日本の中でまだまだ当たり前になってしまっている状況をどういうふうに変えていけるのか。社会のあり方そのものに対する問いかけが大事だと思います。」

※プラン・インターナショナルの実施したアンケート結果はこちらから(NHKサイトを離れます)

『クローズアップ現代+』にも、窮地に追い込まれる女性たちから悲痛な声が届いています。あなたの仕事 、生活は大丈夫ですか? ご意見募集ページから お寄せください。

※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

クロ現+
2020年5月12日
このお題はクローズアップ現代+で番組になりました

“ストレス危機” どう乗り越える? みなさんの解決策 【発想のヒント】

新型コロナの感染拡大が続く中、漠然とした不安、家庭内のイライラ、大切な人に会えないなどの悩みとともに、そうしたストレスとどう向き合っているか、『クローズアップ現代+』に たくさんのご意見が寄せられています。
みなさんの工夫やアイデアの詰まったストレス解消法を紹介します。

(※4月30日放送『“ストレス危機”をどう乗り越える ~新型コロナ・奮闘の現場は~』で一部 紹介させていただきました。 ご意見はこちらから募集しています。

■「感染が怖い・・・」、「先行きが見えない・・・」漠然とした不安を和らげるためには-




■「親子・夫婦でずっと自宅…」イライラを減らして仲良く過ごすためには-




■「家族や友人に会えない…」大切な人と“つながる”ために、寂しさを紛らわすためには-




専門家によると、不安や悩みを共有することがストレス軽減につながるそうです。

これからも、みなさんから寄せられたストレスの解決策・対処法をさまざまなカタチで紹介させていただく予定です。

あなたは、ストレスとどう向き合っていますか?ご意見をこちらから お寄せください。

※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。