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2023年9月26日(火)

世界が絶賛!日本人が知らない名所▽外国人観光客が意外な場所へ

世界が絶賛!日本人が知らない名所▽外国人観光客が意外な場所へ

2023年1月ニューヨーク・タイムズで“今年行くべき世界の52か所”して2番目に紹介されたのが岩手県盛岡市。訪日外国人向けの交通アプリの位置データを分析すると、東京~大阪を結ぶゴールデンルートから外れた場所に足を伸ばしていることがわかってきました。外国人観光客が日本に求める「5つのポイント」「本当の日本」とは?アジアと欧米、観光客の傾向に違いが?訪日観光客の動きから日本の意外な魅力が見えてきました!

出演者

  • フランク・ウォルターさん (ジャパンガイド 編集者)
  • 桑子 真帆 (キャスター)

※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。

外国人観光客に異変? 日本人が知らない“新名所”

桑子 真帆キャスター:

外国人観光客が注目している日本の地方ですが、こちらアメリカのニューヨーク・タイムズの特別版です。2023年、訪れるべき世界の52か所が紹介されています。最初に紹介されているのがイギリスのロンドン、その次がなんと日本の岩手県盛岡市なんです。この写真は盛岡城跡公園の紅葉です。

なぜ今、人口30万の都市、盛岡なのか。外国人だからこそ見いだせる魅力が見えてきました。

アメリカ有力紙が特集 “訪れるべき場所”盛岡

岩手名物わんこそばを楽しんでいるのは香港からの観光客。

香港からの観光客
「この旅で、わんこそばがいちばん楽しみだった」
香港からの観光客
「香港のテレビでも盛岡が取り上げられて有名だった」

ニューヨーク・タイムズで紹介されてから盛岡を訪れる外国人が増えています。

駅の観光案内所にも多い時で一日およそ120人がやって来ます。外国人にとって盛岡の魅力とは何か。一緒に市内を巡り探ってみることに。

日本に来るのは5回目という、クリスティーンさんとタイロンさん夫妻です。これまで東京や京都などを訪れましたが、盛岡は今回が初めてだといいます。

タイロンさん
「ちょっと違うことをやってみたいと思った。日本の違う地域に行ってみたかった。僕たちは現地に着いてからいろいろ探すんだ。ただ探検するんだ」

まず訪ねたのは…

町の中心部にあるレトロな喫茶店です。店の壁に興味を持った2人は店員に話しかけました。

クリスティーンさん
「壁のペンキは昔のまま?」
店員
「最初は白でした。ここは喫煙できたので、たばこの煙とか」
タイロンさん
「それでスモーキーな、いい壁になっているんだね」
タイロンさん
「僕たちはいろいろなところに行って、日常を普通に過ごしている人たちと交流するのが好きなんだ。その方が有名な観光名所に行くより面白いんだよ」

続いてやって来たのは、喫茶店のほど近くを流れる中津川。

夏草で覆われた川沿いの道を歩いていくと、アユを狙う釣り人の姿が目に留まりました。

タイロンさん
「ここは本当に自然のままでとってもいいね。歩いていると穏やかになれるし、自然を感じられる。それなりに大きな街にいるにもかかわらずね」

盛岡は“歩いて回れる宝石スポット”ばかり

“観光スポットとは違う場所”に行きたい外国人が増えている。そう指摘するのがクレイグ・モドさん。

ニューヨーク・タイムズの記事を書いたライターです。盛岡の魅力は「Walkable Gem(歩いて回れる宝石スポット)」。町じゅうに歩いて回れる宝石スポットがちりばめられていることだといいます。

ニューヨーク・タイムズの記事を執筆 クレイグ・モドさん
「盛岡のだいたいすべては足で味わえる。歴史を感じる町並み、歩きやすい町並みになっている。歩きながら面白いところを見かけたらスッっと入って楽しいことが待っているというところから、Walkable Gem(歩いて回れる宝石スポット)。そういうところに行くと町の素顔を味わえるし、彼らはそういうオーセンティック(本物)な部分に魅力を感じている」

盛岡に残る歴史や文化を感じられる宝石スポット。“外国人が訪れたくなる町並み”はどうやってできあがったのか。背景には観光のためではなく、暮らしを守ろうとする住民の存在がありました。

町並みの保存活動をするNPOの理事長、海野伸さんです。

活動のきっかけは盛岡の中心部に道路計画が立ち上がったことでした。歴史的な町並みが残る地区を横断する4車線道路の計画。町屋が立ち並ぶ、鉈屋町地区が取り壊される危機に直面したのです。

盛岡まち並み塾 理事長 海野伸さん
「(計画道路ができたら)両側の家は全部だめになりますよ。この通り、なくなりますよ。すると町がなくなっちゃいます」

町を守ろうと海野さんたちは「盛岡まち並み塾」を結成。町屋の魅力をアピールするため、古いひな人形を飾るイベントを開くなど町並みを残す意義を訴え続けました。こうした地道な活動の結果、都市化よりも街並みを重視する機運が高まり、計画は見送られました。

盛岡まち並み塾 理事長 海野伸さん
「本当に派手な観光地ではないので、静かに歩くだけでも癒されるような感じになるのかな。だから来てくれているのかな。われわれやってきてよかったなと」
クレイグ・モドさん
「町の魅力はひとつのことだけじゃなくて、市民のやさしさ、個人店の面白さ、歴史の面白さ、深み、町並みの設計、自然との向き合い方、全体含めてその町の魂が生まれているから観光客もそういうところを感じると思うんですよ」

急増市町村トップ10

桑子 真帆キャスター:
盛岡では日常の暮らしを守ることが観光地としての魅力を高めていました。
番組では今回、訪日外国人向けの交通情報アプリの位置データを基に、外国人が急増している市町村トップ10をまとめました。

この数字は、訪日外国人の数が過去最高を記録した2019年と比較した伸び率を示しています。北海道の当別町、山形県の高畠町など、いずれも地方の自治体です。
これらの自治体、なぜ急に外国人が訪れるようになったのでしょうか。

伸び率1位は、北海道当別町。札幌市から車で40分の場所です。ここにあるのが、オープンしたばかりのチョコレート工場の体験型施設。札幌観光のついでに立ち寄る人が増えているようです。

香港からの観光客
「ドライブの途中でついでに立ち寄りました」

日本でもまだ有名ではないこの施設を香港でどうやって知ったのかというと…

香港からの観光客
「23万人が北海道の情報を共有しています」

北海道の観光スポットを紹介する中国語のSNSグループで、いち早く拡散されていたのです。

香港からの観光客
「日本好きな人たちで情報共有するんです」

その土地独自の文化や風土が目当てという場所も。

秋田県能代市は、バスケットボールによる町づくりに力を入れてきました。

人気漫画「スラムダンク」に登場するチームのモデルになった高校があり、新作映画の公開をきっかけに外国人の姿が目立つようになりました。

フィリピンからの高校生
「スラムダンクが昔から好きでした」
フィリピンからの高校生
「来られてよかったです」

7位に入ったのが広島県府中市です。

宿場町の面影を残す町並みは、住民自ら費用を出し、守ってきました。

町の人が教える日本文化体験ツアーも大盛況。地元の人との交流が人気を呼んでいます。

徹底分析 なぜ“地方”に?

<スタジオトーク>

桑子 真帆キャスター:
きょうのゲストは、外国人観光客向け情報サイトの編集者フランク・ウォルターさんです。

外国人が急増している市町村トップ10、これを地図にしたものですが、こうして見ますと北海道から九州まで各地にあることが分かります。

ウォルターさん、こうした現象が起きている背景に大きく2つ挙げていただきました。

「リピーター」と「滞在の長期化」ということで、まずリピーターからですが、増えているという傾向ですけどなぜでしょうか。

スタジオゲスト
フランク・ウォルターさん (ジャパンガイド 編集者)
日本旅行・生活・文化に精通

ウォルターさん:
日本に来る外国人観光客は、2つに分けられると思います。一つはアジア人、一つは欧米人。その中ではアジアが割と日本に近いじゃないですか。3時間とか4時間ぐらいで日本に来れることがあるので、リピーター率はアジア人の方が多いです。

桑子:
その心は?

ウォルターさん:
そうですね、僕は東京に住んでいるんですが、僕が沖縄とか北海道に行くのと同じような感じで「あっ、ちょっと行ってくる」とか「スキーやりたい」とか、そういう感じでアジア人がかなりピンポイントで日本に来たりすることが多いです。

桑子:
リピートしてくるというのはどうしてでしょうか。

ウォルターさん:
自分の興味が合う場所とか、例えばアニメが世界的に人気があるので。特に能代市の「スラムダンク」、かなり韓国とか香港とかフィリピンで人気がありまして、それを聖地巡りみたいなこと、ちょっと見たい方が多いです。アニメが好きで行ってみて、また新しいアニメが出てくるじゃないですか、それでまた行きたいという気持ちがかなり強いと思います。

桑子:
1回目はやはりメインの観光地といいますか。

ウォルターさん:
はい、どうしても東京、大阪、京都のゴールデンルートというのがあるんですけど、リピーターはもう既に行っていて満足して「もういいや」っていう感じというか。

桑子:
まさにこの黄色いところですよね。

ウォルターさん:
そうです、はい。自分がより興味、趣味に近いところに行きたがります。

桑子:
そして滞在の長期化している。これも増えているわけですね。

ウォルターさん:
そうですね。こちらは欧米人です。結構遠くから来るので飛行機代がかなり高いんですね。20万、30万、40万ぐらい往復でするので。もう3日間とか、週末で来るのがもったいないじゃないですか。なので、結構1週間以上滞在したい方、滞在したがる方は多いです。でも1週間以上になってくると、かなり詰め詰めの行程表になってくるとかなり疲れるんじゃないですか。
なので、どちらかというと柔軟性のスケジュールみたいな感じで、それで発見することをちょっと楽しめる。もう冒険みたいな感じの方が欧米人スタイルの旅行だと思います。

桑子:
長期化する中でメインの場所ではなく、いろんな所に行ってみようということで地方に波及している。外国人観光客を引き付ける理由として、大きく5つキーワードを挙げていただきました。

外国人 何を求めて日本へ?
・オリエンタル(神社仏閣・古民家)
・デリシャス(ラーメン・居酒屋・屋台)
・ネイチャー(自然・里山)
・リアル(日常の暮らし・地元の人)
・クール(歌舞伎町・秋葉原・アニメ)

この「リアル」というのはどういうことでしょうか。

ウォルターさん:
そうですね、英語で言うと「本当」。「本当の日本」ということなんですけど。主に外国人観光客は日本に来たい理由は日本人を知りたい、日本人を知りたいというか「交わりたい」という気持ちが結構強いです。どういうふうに生きているのか、みたいなことが普通の日本人と出会って話し合うのが目的で、かなりそれが一つのポイントだと思います。

桑子:
それが「リアル」というところにつながるんですね。さらに、このトップ10の中には地域課題への取り組みが外国人観光客を呼び込む結果につながった例もあります。

“ある地域課題”が外国人観光客を呼び込む

鳥居の前で結婚写真を撮っているのは、ベルギーからの観光客。

今、フォトウエディングスポットとして外国人から注目されているのが山梨県小菅村です。多摩川の源流域にあり、清らかな水で育ったわさびやイワナやヤマメなどの川魚が特産品です。人口はおよそ700人。外国人観光客とは無縁の村でした。

外国人が訪れるようになったきっかけは、築150年の古民家を改装したホテルが出来たこと。部屋から日本庭園を眺めることができ、柱や梁のある伝統的な日本家屋を味わえます。部屋数は4つ。最大10人が宿泊可能で客の2割が外国人です。

食事は地元で取れた食材を使った和食のコース料理。料金は1泊2食つきで3万円からです。

ホテルの運営には村人も関わっています。毎朝地元で取れた食材を届けます。

「近くにある養魚場で、けさ取れたばかりの魚です」

村の和菓子屋が持ってきたのは手作りのまんじゅう。ウェルカムスイーツとして提供されます。

この古民家ホテル、もともとは空き家でした。村長の舩木直美さんは、村で増え続ける空き家の問題に頭を痛めてきました。調査をしたところ、その数は100軒に上ることが分かりました。

小菅村 村長 舩木直美さん
「こんなにあるのか。空き家は難しくてなかなかマッチングできない。利活用は非常にハードルが高いです」

空き家の中でも、この築150年の古民家はどうしても残したい建物でした。

舩木直美さん
「昔はテレビの台数がないので、見るためにみんな集まってきたんです。集いの場というんでしょうか」

古民家存続のため舩木さんが相談を持ちかけたのが、地域づくりコンサルタントの嶋田俊平さんです。嶋田さんは村の課題を逆手にとって強みに変えようと考えました。

打ち出したのは「700人の村がひとつのホテルに」というコンセプト。村がひとつのホテルになるとはどういうことなのか。

まずは空き家となっていた古民家を客室として整備。山道はホテルの廊下に見立てます。道の駅はホテルのロビーにある土産物コーナー。自慢の天然温泉は豪華なバスルームです。そして村人たちがキャストとなって小菅村というホテルを訪れた客をおもてなしするのです。空き家だったかつての集いの場は、古民家ホテルに生まれ変わりました。

村人がありのままの姿を飾らずに伝える散歩ツアーも人気です。小さな村の挑戦への共感が世界に広がっています。

タイからの観光客
「とても良かった。この村が大好きです。見たことのないものをたくさん見ることができた。過ごしやすくて、村の中だけで何でもできて大満足」
地域づくりコンサルタント さとゆめ 社長 嶋田俊平さん
「この村の方々が昔から営んできた暮らしとか風景とか、地域の方々が村を守ろうとしている姿勢とかストーリー、そうしたものに世界の方々が共感してくれる。そういう村を見てみたい、応援したいというお客さまがきっとたくさんいるだろう」

村では更に2軒の空き家を改装し、部屋数を2つ増やしました。今後は全ての集落に広げていきたいと考えています。

舩木直美さん
「外から来た人は新しい視点で新しい見方をしてくれる。その資源を磨き上げるとすばらしいものになると教えてくれる。わが村も捨てたものじゃない」

観光立国ニッポン “リアルな日本”を大事に

<スタジオトーク>

桑子 真帆キャスター:
観光と地域課題解決の両立の可能性、どういうふうに感じてますか?

ウォルターさん:
そうですね、モドさんが言っていたように盛岡は「Walkable Gem(歩いて回れる宝石スポット)」とおっしゃっていて、小菅村の方もその宝石は見つかってると僕は思ってます。それが、その古民家。

150年の古民家は、さっきの5つで言うと「オリエンタル」のイメージが強くて。でも、一方でその小菅村の人と会えることによって「リアル」も楽しめる。わさびとかローカルの魚とかは「デリシャス」にもつながっていきますので、その一つの宝石を見つけて割合的にいろんな人が興味を持つように工夫しています。それで新しい観光を作っているということだと思います。

桑子:
その宝石、ほかの地域では例えばどういうものがありますか?

ウォルターさん:
僕は結構日本酒が好きなんですが、そういう系の話になっちゃいますが、佐渡島で廃校になった学校を日本酒学校に作り直していて、新しくプログラムがあるんですけど。日本酒が海外に人気が出ていることもありますし、日本人だけではなくて、外国人もかなり訪ねるというか勉強しに行くことがあります。

「デリシャス」は日本酒なんですけど、日本は日本酒の聖地ではあるんですが、それだけではなくて造っている人、蔵人とちょっと話したい。日本じゃないとできないんですが、自分でお酒を造って「ああ、うまくいってないな」みたいなことがあれば杜氏さんに直接「ちょっとこれやったんですけど、麹はうまくいかなかったんですよ」みたいな場を設けることによって、大変満足な観光コンテンツになっています。

桑子:
これから日本は観光立国を目指していくわけですが、どういうあり方が理想だと考えていますか?

ウォルターさん:
健全な観光がいいと思います。「住民を守るべき」なところはあります。「リアル」、本当の日本が日本の国民であるということで、どこまでリアルな日本がどこまで本当の日本が見えるかというと、観光をできるだけ利用することだと思うんですけど、観光を利用するというのは、自分たちがやりたいことを観光客とマッチすることが非常に大事だと思います。

逆にオーバーツーリズムみたいな感じで観光客が多すぎることによって、だんだん観光地が本当にテーマパークみたいな所になってしまいますので、どちらかというと住民を守って、自分たちがやりたいことをやらせて、それによって外国人観光客が来ます。本当に佐渡とか小菅とか盛岡みたいに自分たちのためにある程度の観光がいいんですけど、これがオーバーになってくるとちょっと困りますよね。いろんな工夫して宝石を見つけて、その宝石が土台になって、でもその土台は土台だけで、いろんなことをその土台の周りに、上にやらなければならない。観光資源というのは、本当に日本人そのものだと思います。

桑子:
住民が身の丈でしっかりと守られた状態で作っていく。ありがとうございます。最後ご覧いただくのはニューヨーク・タイムズで紹介された盛岡市。こんなところも魅力の一つになっているようです。

アメリカ有力紙が注目 盛岡 もうひとつの魅力

盛岡は、こだわりを持って店を営む人々に出会える町です。

エッセーやアートブックなど、およそ5,000冊を取り扱う書店の店主。

世界中を旅して集めたコーヒー豆をビンテージの機械でばい煎するコーヒー店の主人。

日本人が演奏する“和ジャズ”だけを流すジャズ喫茶のマスター。

開運橋のジョニー 照井顯さん
「びっくりですよ。日本のジャズに専門にしてきたことが、逆に今、世の中の人たちが面白がって見に来てくれる。(盛岡に)次から次から外国の初めての人たちが来てくれて、それが何かうれしいですね」
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