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2022年10月4日(火)

値上げラッシュの秋 暮らしをどう守るか

値上げラッシュの秋 暮らしをどう守るか

2夜シリーズ「異例の物価高」。第2夜は、物価高を乗り越えるためには、何をすればいいのか考えました。鍵のひとつとなるのが、賃金の値上げです。政府は、新卒の給与をアップさせた企業に対して法人税を減税する「賃上げ促進税制」の適用拡大を検討。企業が蓄積しているお金“内部留保”が過去最高に達するなか、賃上げは実際に取り組むことはできるのか。経済ジャーナリストの荻原博子さんや成田悠輔さんなどが徹底議論しました。

出演者

  • 小林 俊介さん (みずほ証券 チーフエコノミスト)
  • 荻原 博子さん (経済ジャーナリスト)
  • 成田 悠輔さん (イェール大学助教授)
  • 桑子 真帆 (キャスター)

※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。

家族4人のトラック運転手 物価高で副業を始める

トラック運転手として働く佐藤大輔さん(仮名)。17年間、正社員として働いてきました。

運送業では燃料価格の高騰などで経営が厳しい企業も多く、佐藤さんの収入も上がらない状態が続いています。

月給は、手取りおよそ30万円。佐藤さんは、妻と2人の娘の4人家族。2022年、次女が中学校に進学し、長女は高校受験を控えています。毎月6万円の住宅ローンの返済に加え、教育費は多い月だと5万円以上。光熱費も上がり続けています。妻のパートの収入を加えても、生活費を切り詰めなければなりません。

しかし、食料品の値上げが相次ぎ、2021年と比べて毎月の食費は1万円ほど上がりました。

佐藤大輔さん(仮名)
「(油が)すごく高いんですよ。これ1キロで500いくら高いですよ。ここはちょっと抑えて買わないようにしようかなと」

できる限り食費を抑えていますが、毎月の収入が増えていないだけに生活費が手取りを超えることもあるといいます。

佐藤大輔さん
「本当はもっとレトルトとか冷凍食品とか、もうちょっと買おうかなと思ったんですけど、今回はこれでいいかなと。そうでもしないと、結構やっていくのに難しいところなんですよね」

佐藤さんは、7月からアルバイトを始めました。

佐藤大輔さん
「大体(荷物の)仕分けとか検品とか、そんな仕事が多いですね」

本業のトラック運転手の仕事に体調面での影響が出ない範囲で掛け持ちしています。3連休の中日、夜10時から働きます。8時間働いて、報酬は9,000円あまり。

取材班
「きょうは、どういうスケジュールなんですか?」
佐藤大輔さん
「スケジュールは、このあとも入ってます。」

さらにこの日は、別のアルバイト先へ。生活費を補うことはできていますが、いつまでこの生活が続くのか見通しは立っていません。

佐藤大輔さん
「(値上げ)前までは、そこまで考えていなかったけれど、今回は結構考えないといけない。(冬は)暖房費とかかかるじゃないですか。そういうのも見据えている。まだまだ(アルバイトを)続けないと、しょうがないかなと」

悩ましい物価高 良いこと?悪いこと?

<スタジオトーク>

桑子 真帆キャスター:
この物価高をどう乗り切ったらいいのか。3人のゲストと議論を深めていきます。

きょうのゲストは、4日から引き続き、みずほ証券チーフエコノミストの小林俊介さん。そして、アメリカからイェール大学経済学部助教授の成田悠輔さん。そして、経済ジャーナリストの荻原博子さんです。

今回は、視聴者からの質問にも答えていただこうと思っています。

まず考えたいのは、そもそも今の物価高というのは良いことなのか、悪いことなのかを考えていきたいと思います。

1.そもそも物価高って良いこと?悪いこと?

実際、日銀は2%の物価上昇率を2013年から目標にしてきました。実際に視聴者の方からも、

「なぜ2%程度の物価上昇が望ましいのですか?」(50代 男性)

ということで、なぜこのように物価の上昇を目指していたのかというと、景気の好循環を作るためだったんです。

どういうことなのかといいますと、まず物価が上がります。そうすると、モノの価値が上がるので、それを売っている企業の利益も上がります。そうすると、そこで働く従業員の賃金が上がり、雇用も増えていきます。お金を持った消費者は購買意欲が高くなり、消費が活発になって、また物価が上がっていく。この好循環が、良い循環のことになります。

つまり、「賃上げを伴って安定的に物価が上昇すれば経済全体は成長する」。この形を日本は目指していたわけなんです。

ただ、私たちはいま物価高に悩まされているわけです。なぜ、私たちは物価高に悩まされているのでしょうか。

2.なぜ私たちは物価高に悩まされているのか?

これは、好循環が生まれていないからということになります。

では、なぜ生まれないのか。物価の上昇が続いた状態を「インフレ」といいますが、実はインフレには「良いインフレ」と「悪いインフレ」があります。良い循環が生まれるためには「良いインフレ」にならないといけないということです。

例えば、1つ100円の商品があるとします。このうち、コストは80円、利益は20円だとします。この商品は人気があって、需要が増加します。すると企業は「これはいけるぞ」ということで、130円に値上げをするわけです。売値を上げたときに、たとえコストが10円上がったとしても130円に売値を設定していますから、利益の分は40円確保できるわけです。この利益をちゃんと「設備投資」だったり「賃上げ」に回せば、先ほど見た良い循環が生まれる「良いインフレ」になるということになります。

一方で、悪いインフレというのはどういう状況なのか。先ほどの需要の高まりではなく、「原材料の高騰」によってコストが40円増えたとします。コストは増えたのですが、もともとあった利益の20円を足そうとすると、売値を140円にしないといけません。しかし、高くするとお客さんが買ってくれるか不安になります。そういうことで、企業は泣く泣く利益を20円から10円に減らします。そうすると、企業に入る利益は少なくなるので「設備投資」や「賃上げ」はできず、好循環へとつながらない。

つまり、同じ130円に値上げをしても、中身の状況がこんなに違うということになるわけです。今、日本に起きている物価高が続くとこのような「悪いインフレ」になってしまうという可能性があるわけです。

悩ましい物価高 なぜ日本で起きたのか

桑子 真帆キャスター:
小林さん、なぜ日本は「悪いインフレ」になっていってしまったのでしょうか。

スタジオゲスト
小林 俊介さん (みずほ証券 チーフエコノミスト))
景気動向の分析が専門

小林さん:
いちばんの問題は、インフレに見合うだけの所得の増加が起こってないということです。日本全体の所得、これは「家計可処分所得」と呼ぶのですが、これが25年前と今で全く変わっていないという状況です。

25年間増えてこなかった背景は明確で、この25年間、いわゆる「生産年齢人口」という働き手の数が減り続けてきた。そうすると、一人一人が頑張っても、どうしてもこれが増えないという状況が続いてきたわけです。

桑子:
人口減少社会ではありますからね。

小林さん:
その上、さらに高齢化も進んでいるということで、社会保険料が上がって手取りが増えない。そういう状況の中で海外でインフレが起こってしまうと、日本の場合はエネルギーや食料を海外に頼っていますから、インフレだけ起こってしまって、でも所得はそれに見合うだけ伸びないということで「悪いインフレ」が起こってしまうという状況です。

桑子:
外的要因によって、上がってしまっている。あと何か原因はあるのでしょうか。

小林さん:
もう一つ挙げられることがあるとしたら、やはり自給率が全然上がってこなかったということかと思います。食糧自給率もしかりなのですが、エネルギーのところが非常に停滞状況になってしまっている。これは11年前に不幸な事故があって、原発が止まってしまったと。その結果として、より一層エネルギーの自給率が下がったまま、ここまで走ってきているということで、特にエネルギーコストが世界的に上がっている中では、なおさら日本のインフレが進みやすい。そして、所得が上がらないので「悪いインフレ」になるというところかと思います。

桑子:
荻原さんはいかがでしょうか。

スタジオゲスト
荻原 博子さん (経済ジャーナリスト)
家計経済の第一人者

荻原さん:
今おっしゃっていたとおりですが、そこに加えて、日本はこの20年間、かなり増税をしてきました。消費税が10%まで上がり、それから2022年の10月も雇用保険が上がりますけど、社会保険料もどんどん上がってきました。とにかく税収は、コロナ禍でみんなの家計が傷んでいる中でバブルを超える史上最高になっています。

それは一体何なのかというと、やはり主役は消費税です。ですから、消費税というのは実は逆進性があって、弱い家庭、ぜい弱な家庭ほど影響を受けやすいといわれています。そういう税金がものすごく上がってきたというのと、もう一つは社会保険料が一緒に上がってきました。社会保険料と税金の負担率で、いま国民負担率が財務省が発表しているものだと2021年は48%です。

桑子:
半分ぐらいになりますね。

荻原さん:
そうです。ですから、そういったものがどんどん上がってくる中で給料が上がらなかったので、家計はすごく苦しいというのを実感していた中に、この驚異的な世界的な物価高がやってきたので、いま本当に悲鳴を上げている状況だと思います。

桑子:
成田さんにも聞きますが、なぜいま「悪いインフレ」に向かおうとしているのでしょうか。

スタジオゲスト
成田 悠輔さん (イェール大学経済学部 助教授)
データや数字でビジネス・政策をデザイン

成田さん:
先ほどおっしゃられた要因に加えて、コロナによる混乱、それからウクライナ戦争の混乱というような世界的な背景が今回のインフレにはあると思います。

実際、日本以外のほとんどの国もインフレを経験しています。他の国と比べると、日本で起きているインフレはまだ緩やかな方で、マイルドなほうといっていいと思います。

僕が住んでいるアメリカですと、日本が2~3%ぐらいのインフレを経験しているとすると、アメリカは9%、下手すると10%ぐらい、数倍ぐらいのインフレが起きている状態です。ガソリンとかホテルとかですと、1年間で30~40%ぐらい値段が上がるといった、歴史の教科書でしか見たことがないようなインフレが起きているのが現状だと思います。

それを考えていくと、確かに日本の家計がつらいというのは確かなんだと思います。ただ、同じか、それ以上に人類全体が苦しんでいるというのが現状なのかなと思います。

徹底議論 物価高対策 カギは賃金上昇

桑子 真帆キャスター:
こうした中で、私たちの生活を少しでも上を向かせたい。じゃあ、どうすればいいのかということでカギとなるのを見ていきます。「賃金の上昇」です。

3.カギは賃金上昇!対策は?

こちらのグラフは物価の影響を考慮した実質賃金のグラフですが、2021年の同じ月と比べて、2022年に入って、なんとか3月まではプラスを維持してきました。ところが、4月にマイナスに転じ、以降は4か月連続でマイナスとなっています。

つまり、私たちの実感としては給料が減ってきているということを表しているわけです。

こうした中で、いま議論の的となっているのが「内部留保」。企業が蓄えとして手元に残しているお金のことです。

「企業はなぜ内部留保をため込んで、賃上げしないの?」(40代 男性 会社員)

視聴者からこのような声も来ていますが、内部留保の推移を見ますと、

この20年間で従業員の給与は増えていないのに、内部留保は過去最高を更新し続け、10年間過去最高を更新し続けています。2021年度の合計というのは、合わせて516兆円。2021年の日本全体の税収のおよそ8倍が、企業の中にたまっているということを表しているわけです。

今の物価高の中で、このたまっている状況をなんとかできないかということで、ある企業ではこういったことを始めました。

4月から「インフレ手当」として、月1万円の支給を開始したのです。従業員の男性は「給与が4%上がる計算なのでありがたい」とおっしゃっているそうです。

そして、別の企業では物価高に対応するため夏にベースアップを決めるという異例の決断をしました。

小林さん、内部留保はこれだけあるのに、なかなか実態とすると賃金に回せない。これはどうしてでしょうか。

小林さん:
いろんな理由があるのですが、3つほど指摘させていただきたいと思います。

1つは、過去30年間で4回も経済危機が起こっていますから、結果において従業員に還元しないで、現金を分厚く置いておいた企業が生き残ってしまったというところがあります。

2つ目は、この30年間で起こったことですが、冷戦終結以降、グローバリゼーションが進み、国際競争が激化してきたわけです。そうすると、日本国内で作るよりも、例えば中国や他のアジアの国で作った方が安いということであれば、わざわざ日本で高い賃金を払う必要がないというような判断を企業がしてきたということかと思います。

3つ目は、労使関係がどんどん企業に有利な状況になってきた経緯というのがあると思います。それは何かというと、戦後ずっとそうなのですが、いわゆる労働組合の組織率が下がり続けている。結果として、企業に対する労働者の交渉力というのは減り続けているということになります。

それに加えて、最近は変わってきましたが、有効求人倍率が1を割るというような時代が長く続いていたんです。有効求人倍率というのは1人の求職者に対してどれぐらい求人があるのかということを示す指標ですが、特に悪い時は0.5だったりしたと。つまり、求職者2人に対して、1個しか席がない。そうすると、企業としては安く働く方を選ぶというような状況が続いてしまっていたということかと思います。

桑子:
荻原さんは、どうして内部留保がなかなか動かすことができないと考えていますか。

荻原さん:
今おっしゃられた要因に加えて、やはり小泉政権以来、成長戦略というのを中心に据えたじゃないですか。それで結局、企業が成長するには法人税をどんどん下げればいいということで、どんどん法人税を下げてきたんです。

その一方で、法人税が少なくなる分、消費税は上げてきました。ですから、企業にとっては非常にためやすい環境ができてきた。しかも、ものすごく競争が激しく、大変なので、やたらに分配しないで内部にためておこうということになり、結局これだけの内部留保になってきたということですよね。

ですから、労働組合みたいなところがあって、ちゃんと物を言えばもっと違ったのかもしれないです。今はもう本当に御用組合が増えちゃいましたね。

桑子:
労働組合、今はどんどん縮小傾向にありますからね。成田さんにも質問が来ているのですが、

「企業の内部留保を賃上げ・設備投資に向けさせた、海外の成功した政策事例はありますか?」

どうでしょうか。

成田さん:
成功かどうかはともかく、企業が一定以上にため込んでいる内部留保に課税をするという制度を導入した国はいくつかあります。韓国とかアメリカとかは、そういった制度を何らかの形で持っていると思います。

内部留保に課税をすると当然、内部留保を持っていると税金を持っていかれることになるので、その分、人件費に回したり、配当に回したり、設備投資に回したりするインセンティブが高まることになると思います。

ただ、アメリカなどの国に比べると、日本の場合は正社員を企業がずっと雇っていて、戦争が起きても不景気になっても、ずっとその人たちを養い続けなくちゃいけないという負担があるというのも事実だと思うんです。いざという時のための保険を内部留保で企業が確保している部分があると思うので、簡単に海外の政策事例を日本に導入すればいいということにはならないだろうと思います。

桑子:
ためないといけない、ためざるを得ない事情も企業にはあるということですが、いま物価高はこうして続いている中で、なんとか賃金は上げたいということですが、どうすれば賃金が上げられるのか。

4.賃上げどうする?

まず成田さんは、

「ゾンビ企業・労働者の退場で生産性向上」

ということで、強い言葉ですがどういうことでしょうか。

成田さん:
ちゃぶ台を返すようなのですが、内部留保に関する話は問題の根本解決にはなっていないと思うんです。というのは、経済がつくり出しているパイをどうやって企業と労働者に分配するかというパイの切り分け、分配の話にしかなっていないですよね。

日本の賃金が伸びていない根本的な原因というのは、結局、日本人とか日本企業というのが世界の人たちが欲しがるようなものとかサービスをつくれなくなってしまった。それによって生産性とか付加価値がすごく低い状態になってしまったという、日本経済の弱体化というのが根本的な原因だと思うんです。

生産性当たりの賃金というのを計ると、日本はそんなに低くないというようなデータもあるぐらいです。それを考えていくと、日本のサービス業を中心とした産業にすごく残ってしまっているような、あまり事業として成立していないにもかかわらず、さまざまな規制とか補助金とか助成で、ぎりぎり生き長らえてしまっているようなゾンビ企業のような存在というのが存在して、適切な市場競争が機能していない。それをどう解消して、ゾンビ企業にちゃんと退場してもらうかということ。つらいようですが、究極的には賃上げのための根本的な治療法になるのではないかと思います。

桑子:
まさに根治療法というお話がありましたが、小林さんは、

「稼ぐ人の邪魔をしない」

ということで、これはどういうことでしょうか。

小林さん:
日本に制度的な欠陥が多々あるというのは、間違いないことなんです。これは労働者側から見た時にということですが、稼ぐインセンティブをこれでもかというような、そぐようなものが制度として残ってしまっている。

桑子:
例えば何でしょうか。

小林さん:
例えば、106万円の壁、130万円の壁がありますが、それ以上稼いでしまうと社会保険料がかかってしまうので、100万円以下に年収を抑えようというインセンティブが働いてしまう。

それから「在職老齢年金」というのもあります。一定以上稼いでしまうと年金が削られてしまうということで、高齢者の働く意欲をそいでしまっている。それだけではなくて、例えば今回、子ども手当に所得制限をかけるという話になりましたが、これもディスインセンティブになりますし、所得が高ければ高いほど保育園に入れない自治体も多いということで、それも大きなディスインセンティブになっているわけです。

さらにもう一つ申し上げると、先ほどの有効求人倍率、いま1を大幅に超えてきているということですから、これから転職をすれば賃金が上がる可能性というのは非常に高まっていると。実際20代、30代の賃金は上がってきているんです。ただ、40代、50代は下がり続けている。これはなぜかというと、いろんな理由がありますが、例えば1つに退職金、これが定年まで勤め上げないともらえないような企業が非常に多い。そうなってくると、勤め上げないともらえないお金が多いということであれば、あと10年、20年賃金が上がらなくても我慢しようというような話が出てきてしまうということです。

ですから、そういった稼ぐ人の邪魔をするような制度をとにかく潰していくということが行政には求められているのではないかと思います。

桑子:
稼げる人は稼げるように、転職できる人はできやすいように、しやすいようにという環境作りが必要じゃないか。

今回、政府は新たな経済対策の柱を先週発表し、4日、岸田総理大臣の所信表明演説では、さらに具体的な内容も記しています。

例えば、物価上昇に見合うだけの引き上げの実現に取り組む。年功序列型の給与体系の見直し。リスキリング、これは学び直しですね、これを支援するために5年間で1兆円投入するなどあるのですが、こういった対策も見つつ、荻原さんは今どういうことが賃上げに必要かというと、

「賃上げよりも生活底上げ」

ということです。

荻原さん:
お二方の言うことはよく分かるんですよ。それについては、これからしっかり岸田さんがくみ上げてやっていっていただきたいことなのですが、それ以前に今、家計が凍りついているんです。

ですから賃上げ以前に、今どうやって家庭の底上げをしていくかという話なのですが、政府の政策でみると、電気代を安くするための制度を作る検討をこれから始めますと言っていますよね。それはあまりにも遅過ぎますよ。本気でやるのであれば、例えば、いま各電力会社に電話をして「来月から電気料金2,000円分、各家庭、全部政府に請求してくださいね。そのかわり政府がまとめて払いますから」と言って、来月から電気代を下げれば中間コストも入らないし、検討する時間も要らない。そういうスピーディーな方法をちゃんとやっていってほしいというのが、今の私のものすごく切実な願いです。

カギは賃金上昇 政府の経済政策の効果

桑子 真帆キャスター:
長期的に賃上げをする方向性も必要ですが、いま必要な支援というのもあるということで、いまどれだけ実際に暮らしを直撃しているのか少しご紹介しようと思います。

5.消費者の暮らしを直撃

例えば子ども食堂などへ食品を無料提供している愛知県のフードバンクでは、7月から提供先が70か所に増えたんだと。いま、485か所の施設へ食品を提供しているため、一時は在庫がほぼなくなった。こんな状況も聞かせてくれました。

こうした中で、どのようにしていけばいいのかということですが、ここからは視聴者からの質問に答えていただこうと思います。

「ロシアのウクライナ侵攻が収まれば、物価の高騰は収まる?」

これについて、小林さんにお伺いしましょうか。

小林さん:
現実的には難しいと思います。今起こっているインフレというのは、エネルギー・食料インフレの部分と、この2年間の財政金融政策で世界的に景気がかなり刺激され過ぎた結果としてのインフレ、2つ残っていますから、後者の部分が残ってしまうということなんです。そして前者の部分も、これは戦争が終わったとしても、ロシア、ウクライナからの資源の提供が本当に戻るのかどうかというところが問われますので、そう簡単には収まらない可能性が高いと思います。

桑子:
荻原さん、年金受給者の方から

「年金が減っている中で、どうしたらいいか?」

という声も聞かれました。

荻原さん:
もう一回、夫婦で自分の家計簿を見てみるといいですよ。夫婦で見ると、ああしよう、こうしようというのが、いっぱい出てきます。ですから、それをちゃんと実現していけば夫婦仲もよくなるし、家計簿も節約できます。

桑子:
これからも向き合っていきたいと思います。ありがとうございました。

見逃し配信はこちらから ※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。

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