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2022年1月27日(木)

あなたは大丈夫?
コロナ禍で広がる市販薬の過剰摂取

あなたは大丈夫? コロナ禍で広がる市販薬の過剰摂取

コロナ禍以降、ストレスで若者などが市販薬の過剰摂取に至り、救急搬送も増えているという。簡単に手に入る市販薬だが、使い方を誤ると中毒で死に至ることもある。一方で国は、各自が健康に責任を持ち、軽度の体の不調は自分で手当てするセルフメディケーションを掲げ、医薬品の規制緩和などが進む。薬局では購入者への情報提供、服薬管理、相談まで、新たなサービスを開始したところも。市販薬の適切な利用のために何が必要なのか考える。

出演者

  • 上岡 陽江さん (ハームリダクション東京 共同代表)
  • 宮田 裕章さん (慶應義塾大学 教授)
  • 井上 裕貴 (アナウンサー) 、 保里 小百合 (アナウンサー)

※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。

"市販薬が手放せない…" コロナ禍で広がる過剰摂取

1日200人近くの患者が訪れるという、都内の頭痛外来です。コロナ禍で頭痛が悪化し、市販薬を手放せなくなった人が増えているといいます。

こちらの女性もその一人。コロナ禍でマスクの着用が増え、頭痛が悪化したといいます。

患者
「マスクをつけると、やっぱりすごく頭が痛いですね。もうここらへんから肩から目から、本当に。(頭が痛いと)やっぱりいらいらするし、本当にしゃべれなくなり、声を出すのもつらくて」

痛みを抑えるために市販の鎮痛薬に頼るようになりました。感染へのおそれから病院に行くのを控えたためです。のむ頻度は2~3日に1度でした。ところが次第に効き目が短くなり、毎日何度ものむようになりました。

患者
「病院ってすごく待合室、混むじゃないですか。そこで密集して何時間も待ってというのであれば、すぐ行って効いて、すぐ買えてすぐのめるものに手を出してしまう。コロナ禍になってからは、ほぼ毎日薬をのんでいる感じなので」

一方、こちらの女性は外出自粛のストレスによって頭痛が悪化。

患者
「外を歩いてスポーツを前みたいにはできなくなって、そうすると痛みが多くなってしまいました」

市販の鎮痛薬をほぼ毎日のむように。そうしなければ、日常生活に支障を来すほどだといいます。

患者の夫
「頭痛薬を買ってきてくれと言うので、60錠とか入っているのに、もう無いのかと。僕が見ていて、すがっちゃっているような感じですよね」

医師は、市販薬を定められた以上に服用することには危険が伴うと指摘します。

頭痛専門医 清水俊彦医師
「気がついたら月に10日以上のんでいる、あるいは予防的に使ってしまう。怖いから前もってのんでおこうというような使い方をされるようになってきたら、それはその時点でやはりいけないと思います。一度はちゃんとした検査をされることをお勧めします」

過剰摂取は痛みを抑えるどころかさらに悪化させ、体に悪い影響をもたらすおそれがあると指摘する医師もいます。

日本頭痛学会 副代表理事 竹島多賀夫さん
「鎮痛薬をのみすぎることで、ご自身の痛みを抑制する回路があまり働かなくなって、同じような痛みの刺激に対して、より強い痛みを感じるようになる。かえって痛みが悪化しているという現象があると考えられています。それ以外の害としては胃腸障害が起こったり、あるいは肝臓や腎臓に負担がかかって、肝機能や腎機能に悪影響を及ぼす。激しい肝炎を起こすと、黄疸(おうだん)が出たり、ひどくなると意識がおかしくなったり、そういった症状まで起こしうると思います」

市販薬の過剰摂取 体に深刻な影響が 命の危険も…

市販薬を一度に大量に服用すると、臓器に深刻な影響を与えます。かぜ薬による肝不全、せき止めの薬による致死性不整脈など、重篤な被害が生じることがあるのです。

市販薬の過剰摂取で命の危険に直面した人がいます。まゆさん(仮名・23歳)です。きっかけはSNSでの情報でした。

両親からの虐待でつらい気持ちに襲われることがあった、まゆさん。同じようにつらさを抱える人が過剰摂取していることを知り、ドラッグストアで購入した市販薬をまとめてのむようになりました。

まゆさん(仮名)
「嫌な気持ちを忘れられるよって言われて、それを見て自分も『ああ、こうなりたいな』と。現実から逃げ出したいみたいな感じが一番でした」

初めのうちは、週に2~3回。しかし、次第に頻度が増えました。あるとき、まゆさんは激しい吐き気に襲われ、救急搬送される事態に。医師から「命を落とす可能性があった」と言われました。

まゆさん
「本当に死ぬんじゃないかと思った時に死ぬ時の恐怖が出てきて、それでもがき苦しんで」

市販薬の過剰摂取の深刻さは、コロナ禍でより一層増している。そう指摘するのが、若者を中心にオンラインでの相談支援を行う岡田沙織さんです。市販薬に関する相談は、コロナ禍以降2倍に増えました。人とのつながりが希薄になったコロナ禍で居場所を失い、不安を解消するために過剰摂取してしまうと考えています。

若者メンタルサポート協会 岡田沙織理事長
「今はやっぱりコロナ禍でみんながずっと家にいることもあって、家がぎすぎすしちゃっている環境も増えているんですね。私もコロナでつらいのにっていうので、気軽につい手を出してしまう。ちょっと現実逃避というか気を紛らわす、ストレス発散みたいにもなっているのが懸念点かなと思います」

市販薬の過剰摂取 難しい中毒の治療 原因を調べると…

コロナ禍で後を絶たない市販薬の過剰摂取。治療には課題があるといいます。食品や薬などの中毒を専門としている、救命救急センターです。

この病院では中毒を引き起こした市販薬を患者などから提供してもらい、症状との関連性を調べています。

市販薬の多くは、幅広い効果を出すために1つの薬剤に複数の成分が含まれています。大量にのんだ場合、どの成分が症状を引き起こしているのか、その判断が難しいまま治療せざるをえないといいます。

埼玉医科大学病院 喜屋武玲子医師
「一緒にたくさんの薬(市販薬)をのんじゃうと、どういった症状が出るかというのは実際まだわかっていないので、どういう症状が出るんだろうというのは想像しながら治療していくしかない」

さらに、成分の組み合わせによっては薬をやめようと思ってもやめられない依存を引き起こす可能性もあるといいます。

埼玉医科大学病院 臨床中毒センター長 上條吉人医師
「本来は弱いながらも依存性のある薬物が感冒薬とか解熱鎮痛薬とか、せき止めに配合されている。それを繰り返してのめば、依存が生じてしまう。過量服薬によって、その主成分によって命の危険にさらされるリスクがある。それが非常に問題だと思う」

あなたは大丈夫? コロナ禍で広がる市販薬の過剰摂取

保里:まずは、長年薬の過剰摂取や依存で悩む方を支援してこられた上岡陽江さんに伺います。上岡さん、VTRでは別の支援団体の取り組みもご紹介しましたが、今まず伝えたいことはどんなことでしょうか。

上岡 陽江さん (ハームリダクション東京 共同代表)

上岡さん:ああいうのを見ていると、ちょっと胸がどきどきして。錠剤がたくさん映るようなところもあったので、胸がどきどきして不安になったりする方もいらっしゃるかもしれないけれども、気軽に相談してくださいね。みんな、生きてね。

井上:お聞きしていきたいんですが、このコロナ禍での市販薬の過剰摂取の増加傾向、これは現場ではどういうふうに捉えていらっしゃいますか。

上岡さん:昨年の緊急事態宣言が出る前後で、私たちの周りで非常にみんなの不安定さが目立ってきました。その中で、もともと市販薬を使っている人たちの相談先みたいなものがないなとすごく思っていたんです。その中で、SNSでみんなが話し合っていることが、どんどん追い込まれているような書き方になっていたのでとても心配していました。正直に話すことはすごく大切なことなんです。でも、それを受け取ってくれる人がいないというのはどうなっちゃうんだろうと私たちは思っていました。

井上:具体的にどういう声だったり、どういう方をみてこられているんですか。

上岡さん:私は女性の支援をしていたことが多いので、例えば生理痛で痛み止めをのんでいる。仕事が忙しくて休むことができず、病院に行けない。自分でいつも痛み止めを買っているんだけど、どんどん増えちゃっていると。それとともに眠れないということも始まって、睡眠薬も自分で手に入れていると。そういうふうなことで頑張ってクリニックに行ったんだけれども、そこでもうまく説明できなかった。もうどうしていいのか分からないと。これはよく聞く話です。本当にみんな、せっぱ詰まっています。

保里:番組にもさまざまな声を寄せていただいています。例えば、「生理痛が治まらずに痛み止めを用量より多く摂取してきました。症状が改善されないばかりか、胃の痛みも出てきてつらい思いをしました」。

上岡さん:つらいね、本当に。

保里:切実な声ですね。そして、もう一つご紹介いたします。「娘が市販薬を過剰に摂取している様子で、とても心配です」という声ですね。

井上:そしてもう一方、慶應義塾大学医学部教授の宮田裕章さんにお聞きしていきます。宮田さんは医療政策の研究もされていますけど、こうした現状というのはどう見ていますか。

宮田 裕章さん (慶應義塾大学 教授)

宮田さん:国は、軽度な体の不調は自分で対処するという「セルフメディケーション」というのを医療費削減の観点からも進めてきたんですが、このコロナ禍においてやはり非対面ということも含めて、非常に加速してきています。一方で、市販薬には用法・用量が記載されているんですが、処方薬に比べると使用の判断が利用者に委ねられている部分があります。本来は薬が手に入って使えるというのはいい部分も多いんですが、ただ、やはりリスクも想定する必要があるということで、市販薬との正しい使い方というのが今まさにより重要になってきている局面かなと思いますね。

保里:その市販薬に関するさまざまな悩みについて、相談窓口を以下のリンクからもお伝えしています。

では、一体その市販薬とどのようにつきあっていけばいいのでしょうか。
一例としてかぜ薬を見てみます。かぜ薬の箱を裏返しますと、その薬に配合された成分が書かれています。

多くのかぜ薬にはこのようにたくさんの成分が入っていまして、それぞれの効能がかぜの幅広い症状に対応しています。ただ、薬を決められた用量以上に大量にのみますと、こうした成分による害が出てきます。例えば、「アセトアミノフェン」については多くのかぜ薬に入っていまして、熱を下げて痛みを和らげる効果があります。ただ、過剰に摂取をしますと肝臓などにダメージを与えます。
そして、さらに思いがけず特定の成分をとりすぎてしまうというケースもあるんです。別の薬を一緒に使った場合です。一例として鼻炎薬の成分を見てみます。これをかぜ薬と一緒にのみますと、このように両方の薬に含まれている成分が中にはあるんです。

それぞれの薬の用量を守ったとしても、知らず知らずのうちにこうした特定の成分を取りすぎてしまうリスクがあるということなんです。

井上:早くかぜを治したいからかぜ薬をたくさんのむというのは当然間違っているということですね。
宮田さんは、「一度にたくさんの処方薬をのむことへの対策」も研究されていらっしゃいますが、市販薬についての対策はどう考えてますか。

宮田さん:処方薬に関しては、国のほうで情報を把握できているんですね。われわれも今マイナンバーカードを通して自分の処方薬を見ることができるんですけれども、一方で市販薬に関してはそういった情報を集めることがなかなか難しいんですね。処方薬に関しては、例えば1種類の単剤というものが多い傾向にあるんですけれども、市販薬はやっぱり複数の成分が含まれていると。そういう意味でも因果関係を検証することが簡単ではないんですね。実態を把握しながら、やはりこの影響を見ていくということがまた必要になってきているのかなと思います。

保里:こうした市販薬への対処について、現場の医師たちも苦慮しています。

総合内科医の平憲二さんは、10年前から市販薬の情報を独自に集めています。患者が服用する市販薬の種類が増える一方で、含まれる成分などの詳細については医師でも把握しづらいためです。

効能や成分などをデータ化していく中で、市販薬を過剰摂取した際の課題が見えてきました。

総合内科医 平憲二さん
「脳に働きかけるタイプの成分が、複数入っている製品が大変多いなと。目が覚める薬と眠くなる薬が入っているとか、そういうパターンが大変多い。何らかの薬物依存とか、そのへんのリスクになっているのではないか、これは仮説なんですけれども。やはり結構心配だなというところはあります。(過剰摂取の)ブレーキ役が市販薬の場合いないので」

保里:製薬会社の業界団体、日本OTC医薬品協会にも見解を聞きました。「市販薬は医療用の医薬品として長年使用され、有効性や安全性が認められている。用法・用量や使用上の注意を守っていただくことが基本。製薬メーカーは市販後の薬について副作用等に関する情報を常に収集し、添付文書に記載されていない情報があれば厚生労働省と連携して、使用上の注意を速やかに変更している」という回答でした。

井上:宮田さん、製薬会社だったり薬を売る事業者、これの責任だったり役割というのはどうあるべきだと思いますか。

宮田さん:例えば、たばこやお酒というものはメリットとともにリスクを強く示すということが年々世界的にも必要とされてきています。薬は、しこう品ではなく必需品なんですが、適切な摂取を促す義務というのがやはりメーカー側にあるだろうということですね。メーカー側の論理でいかに多く売るかというだけではなくて、やはり消費者側、あるいは患者さん側の視点に立った上でどういったリスクがあるのか。こういったことを伝えていくということは非常に重要になってきている。どう使うのか、そういったことも視野に入れた考えが必要かなと思います。

井上:上岡さん、今宮田さんからまさに消費者目線という視点が出てきましたけど、実際、過剰摂取に悩む人の立場に立ったときにどう見えると思いますか。

上岡さん:私の周りの人たちがよく言っているのは、字は分かるんだけど意味が分からないとか、それから疲れ果てちゃって見る力がないとか。いっぱい書き過ぎていて、大切なところが分からない。もうちょっと分かりやすくしてほしいということはみんなが言っています。

保里:それは、情報の受け取り方にも格差があるということなんですか。

上岡さん:はい。今すごく経済的な格差も広がっていますし、それから地方に住んでる人たちは、すごく情報の格差にさらされていると私は思っています。

保里:では何が必要なんでしょう。

上岡さん:本当に何が必要なんだろう。それでも、みんな諦めないでね。どこかに話を正直にしてくれたらうれしいなと思います。

保里:その消費者の側に立った目線も必要だということですよね。

上岡さん:きちんと消費者側が分かる形で書いていただけるとありがたいですね。

保里:この過剰摂取を防ぐために何が必要なのか。薬を販売する事業者や薬局でも、顧客がどのような薬をどれだけのんでいるのか把握するという独自の取り組みを始めています。

どう防ぐ?市販薬の過剰摂取 オンライン相談と購入履歴で

新しい顧客管理のシステムによって、市販薬の過剰摂取などの問題を防ぐ取り組みが始まっています。

オンライン専門の薬局です。2,500種類以上の市販薬をインターネットで購入できます。

特徴は、このボタン。

クリックするとオンラインで薬剤師とつながり、無料で何度でも薬の相談をすることができます。

薬剤師
「問診表を記載していただいた内容がこちらに表示されていまして、ユーザーからの質問内容が下から上に順番に上がってくるようになっています」

寄せられた質問です。「かぜ薬Aと漢方薬Bは一緒にのんでも大丈夫ですか?」。薬剤師は、2つの薬に同じ成分が入っているため、とり過ぎとなり、ひどい汗や動悸(どうき)が起きる可能性があることを指摘。過剰摂取を避けることができました。

このシステムを導入したことで、月に200件以上相談が寄せられるようになりました。

さらに、過剰摂取を防ぐための別の仕組みも導入しています。一人一人の購入履歴をチェックし、特定の薬が頻繁に、または大量に注文された場合は受け付けないようにしています。

こうした顧客には、薬剤師がすぐに電話やメールで体調を確認。過剰摂取のおそれがあれば、地域の医療機関や保健所につなぎます。

薬剤師
「ひとり暮らしの方とかで、そういう状態に陥ってしまうと手を差し伸べてくれる人もいないだろうし、自分自身もどこに助けを求めていいかわからないだろうし。やっぱり専門の医療機関に、その人たちを導くのが大事かなと思っています」

どう防ぐ?市販薬の過剰摂取 患者と対話 正しい服用へ

患者とのコミュニケーションに力を入れることで、正しい服用を促す取り組みも始まっています。

この薬局では、主に医師の処方箋を必要とする処方薬を取り扱ってきました。しかし、同時に市販薬を購入する患者も多く、処方薬と市販薬を総合的に管理する必要に迫られました。

そこで持病のある人に向けた注意などは、分かりやすく表示。レジにいる薬剤師に気軽に相談できる体制を取っています。

薬剤師
「今、お薬手帳を確認していますけど、市販の薬とか何かのんでいますか?」

「のどがイガイガするときに、シュッってやるやつ」

店頭でのこうしたやり取りに加え、患者のお薬手帳を活用しながらどんな薬を服用しているのかを把握します。

この薬局のデータベースには処方薬だけでなく、患者が使っている市販薬の情報も入れることができます。

薬剤師
「市販薬と処方薬の一元的管理、その相互作用をチェックするのも、われわれの役割。患者様もわれわれに『こういうの、のんでるよ』と相談していただきたい」

それぞれの立場の人に寄り添ったサポートを

井上:上岡さん、この利用者目線を大切に、コミュニケーションを大切にという立場の取り組みはどう見ましたか。

上岡さん:ありがたいですね。私も実はぜんそくを持っていて、25年もおつきあいしている薬局の方がいらっしゃるんです。彼女は本当に細かく、私の薬の相談に乗ってくれています。それから今映像を見ていて思ったんですけれども若いころは説明が短くても分かるんですけど、今になってくるとちょっと分からないことが起きてきて、前よりも少しやっぱり時間がかかる。薬に対しての理解みたいなもの。だから、高齢の、私のような年の人たちにとってもそういうのが大事なんじゃないかなと思って見ていました。

井上:宮田さん、顧客のデータベースを活用したり、オンライン相談というのもあったりしましたが、こういう取り組みはどう見ましたか。

宮田さん:買うときだけでなく、買う前や買ったあとも含めて利用者の生活全体を支えていくという取り組みはすばらしいと思います。さらに先ほど上岡さんがおっしゃったような、一人一人に寄り添ったライフステージだったり、あるいは状況に寄り添って今まで人がサポートしてきているんですが、引っ越しをして担当者が変わったとき、引き継ぐためにはデータがすごく大事になってきます。国が集めているようなデータだったり、あるいは企業が持っている市販薬のデータ、これを集めることでさらにこれから人に寄り添うことが可能なのかなということですね。今ネット社会で「行き過ぎたレコメンド」が問題になっています。例えば、糖尿病の人が甘い食べ物をインターネットで購入すると「この人は甘い物が好きだ」と認識され、その後も購入を勧めるような広告や情報が届き、健康への配慮とは逆の形になってしまうという問題です。こういったものに対してのいわゆる修正というのを今行われていて、買い過ぎないようにとか、あるいは健康に配慮しながらその人に寄り添ったサポートをしていく。これは技術的に可能ですし、始まっていることなので、まさにこういった消費者、あるいは本人の視点に立った上で新しい取り組みを皆で作っていく。そういうような時期に今来ているのかなと思います。

井上:そういう仕組みが必要ということですね。

保里:今見てきましたように、市販薬によってあくまでも健康被害を決して出さないようにするために、過剰摂取にならないような仕組みがまず必要だという現状も見えてきました。そして上岡さん、私たち一人一人さまざまな立場がありますけれども、この問題とどう向き合っていったらいいのか、どのようにお考えですか。

上岡さん:私も市販薬の依存症だったころがあります。25歳ぐらいにアルコールと市販薬をまぜてのんでいました。やめるのがすごい大変だったんですよね。でも、私の周りにそれでも生きている人たちがいて、私はその人たちを見ながら今まで生きてきました。皆さん今、本当にどうしたらいいのか分からなかったり大変かもしれないけど、生きていればなんとかなる。それから正直に話すことがいちばんうまくいきます。

保里:そうですね。知らず知らずのうちにこの状況に陥ってしまう方もいれば、本当に苦しんでおられる方もいる。そうした方に伝えたいということですけど、周囲の人が果たす役割も大きいということですね。

上岡さん:大きいです。実は家族の方がいちばん大変なんです。そして、家族の方の相談先と当事者の相談先は別です。どうぞ、別の相談先できっちり支援してもらってください。いいんです、支援してもらっても。諦めないでね、みんな。

保里:健康を守るために、ぜひ必要な声かけもお願いしたいと思います。ありがとうございました。


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