中通り
星降る村の小さな天文台
【小さな村の小さな天文台】
夜、349号線は漆黒の闇に閉ざされていた。福島県の南、茨城県との県境にある鮫川村。人口4000の小さな村は、面積のおよそ8割を森林原野が占める。
でも空を見上げると・・・。満点の星空!ここは国の調査で星の見え方全国3位になったこともある、日本有数の天体スポットなのだ。
この絶景を眺めるために、村の人たちが作った小さな天文台がある。東京ドーム14個分の広大な観光牧場の真ん中にポツンとある鹿角(かのつの)平(だいら)天文台。
ここの管理を務めることから「星守」と呼ばれる中川西(なかがわさい)寿彦さん。冬はめったに人が来ない天文台だが、中川西さんレンズのメンテナンスなど毎週末欠かさずここを訪れる。
【星と共に生きてきた暮らし】
中川西さん自身も無類の天文愛好家だ。小学生の時、アポロ11号の月面着陸をテレビで見たのをきっかけに、宇宙の世界のとりこになった。自宅では毎日のように自慢のカメラを夜空に向ける。
人家がまばらで、夜はほとんど明かりが無くなる鮫川村で生まれ育った中川西さん。「この暗さを生かして、村おこしをできないか」28歳の時に思い立ち、3年間役場への交渉を続け、天文台設立にこぎつけた。
【どんな場所にでも輝くものはある】
閑散期の1月、天文台に次々と人が集まる日がある。8年前、若くして亡くなった原正人さんをしのぶためだ。
原さんは鮫川村の隣、棚倉町の出身。日本大学で教べんを取り、中川西さんとともに天文台設立に尽力した仲間だ。この日集まったのは、原さんのゼミのOBたち。毎年、命日にあわせて天文台に集まるという。OBたちもまた、原さんとともに大切な時間を過ごしたこの天文台が特別な場所になっている。
「鮫川村の星空は永遠に残り続ける。これからもこの天文台を守り続けて行きたい。」中川西さんは今日も天文台から空を見つめる。
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