海外放送事情

“Aereo敗訴”のアメリカ最高裁判決が意味するもの

~デジタル時代のコンテンツ配信の課題~

2014年6月、米国連邦最高裁判所は、地上放送の番組をインターネットで配信するAereo(エアリオ)に対して著作権侵害を認め、“Aereo敗訴”の逆転判決を言い渡した。その2年前にサービスを始めたばかりのAereoに対しては、4大ネットワークなどのテレビ局が、「Aereoはコンテンツ使用料を払っておらず著作権侵害だ」としてサービス中止を求めたのに対し、Aereoは「“より高性能なアンテナ”を提供しているにすぎず、無料の地上放送受信に料金を払う必要はない」と反論していた。

裁判では、Aereoのサービスが“公の実演(Public Performance)”に当たるかどうかが焦点となった。地裁、控訴裁では、2008年の「Cablevision(ケーブルビジョン)事件」判決を踏まえて、Aereoの番組送信は個別・私的なものであり、公の実演の侵害にはあたらないと判断した。しかし、最高裁では一転して、AereoはCATVと極めて類似しており、CATV事業を公の実演権の対象とした1976年の著作権法改正の趣旨からみて、Aereoは公の実演権を侵害していると認めた。

こうした正反対の判決はどのようにして導き出されたのか。この報告では、これまでの放送ビジネスモデルを覆すとまで言われたAereoのサービスの特徴などを概観した上で、判決の内容について、米国著作権法や過去の判例などを参照しながら検証する。また、日本の「まねきTV事件」判決との比較も行い、さらに今後のクラウドサービスへの影響など、この判決を通して見える課題についても考える。

メディア研究部  山田潔/柴田厚