世帯年収の違いによるコロナ禍の影響とその背景にあるデジタル化の恩恵の濃淡

~「新型コロナウイルス感染症に関する世論調査(第3回)」の結果から③~

公開:2024年1月1日

NHKが2020年11月から毎年同じ時期に3回連続で実施した、新型コロナに関する世論調査の結果について、本稿では「世帯年収の差」に注目して分析を深めた。主な結果は以下の通りである。
コロナ禍による生活変化については、いずれの世帯年収層でも『プラス』だったと思う人より『マイナス』だったと思う人が多いが、年収が高いほど『プラス』が多く、その理由で目立つのが「在宅勤務などができるようになったから」だった。実際に年収が高いほどテレワークをしている人が多かった。また、年収が高いほど日常生活の感染対策にもデジタルを活用している人が多く、社会全体のデジタル化の進展についても肯定的に捉えている人が多かった。
一方、年収が低いほどコロナ禍によって収入が『減った』という人が多かった。これは、「販売・サービス業」などの年収が比較的低い職業に携わる人ほどコロナ禍による仕事への影響が大きかったことが要因のひとつだと思われる。さらに、年収が低いほど「気持ちが落ち込む」などといった精神的なダメージが大きかったことも明らかになった。
3年の時系列でみると、年収が高い人ほど生活満足度の増加率が大きく、低年収層との差が年々広がった。これは、高収入層でテレワークが広がったことや、コロナ禍初期に減少した収入の回復が、ほかの層に比べて早かったことなどが影響していると推察される。
これらのデータは、新たなパンデミックの際に、低収入層への初期の段階での迅速な経済的支援などが必要なことを示すものといえよう。

世論調査部 小林利行

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