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コミュニケーションで激変したプロバスケットボールチーム 青森ワッツ 裏側を取材

執筆者角田彩子(記者)
2023年02月07日 (火)

コミュニケーションで激変したプロバスケットボールチーム 青森ワッツ 裏側を取材

青森市を拠点とするプロバスケットボール男子Bリーグ2部の“青森ワッツ”です。青森ワッツは2012年に結成され、今年で10年目。
昨シーズンの成績はBリーグ2部で“5勝47敗”と東地区で最下位でした。
過去5年間では3度、最下位に沈んでいます。
そんな青森ワッツですが、今シーズンは前半だけですでに“14勝”していて“今年は何かが違います”。その裏側を取材しました。

戻ってきた!ベテラン裏方女性

試合中

私が取材をしたのは、1月中旬。
この日は、ホームの青森市マエダアリーナで同じくBリーグ2部の越谷アルファーズと対戦した青森ワッツ。一進一退の攻防が続きました。

長谷川万利子さん

そんな戦いの中、MC横に座るこの女性。名前は長谷川万利子さんです。
長谷川さんは、青森ワッツのアシスタントゼネラルマネージャーとして、試合がスムーズに進行できるよう指示を送るなどスタッフ12人を統括しています。

青森ワッツ立ち上げ当時の写真

そんな長谷川さん。自身も中学校から大学までバスケットボールに打ち込んできた大のバスケ好きで、10年前の青森ワッツのチーム立ち上げにも携わりました。5年前にいったんは勇退しましたが、バスケットへの情熱は消えず、去年の夏に青森ワッツに戻ってきたのです。

長谷川万利子さん
「もう完全に青森ワッツから離れて、違う仕事をしていました。そんな中、声をかけてもらって、私ができることは“スタッフがやるべきことをきちんとやれる環境を作ること”だと思いました。1人1人が1歩ずつ前進しながら上に上がっていけばいいなと思います」。

北谷社長

長谷川さんが青森ワッツに戻るきっかけを作ったのは社長の北谷稔行さんです。北谷社長は、低迷するチームを何とか立て直したいと必死だったと当時を振り返ります。

北谷稔行社長
「社内の雰囲気も暗く、コミュニケーションもなかなかない状態でした。立ち上げにも携わっていた長谷川さんに“もう一度助けてほしい”と最初に声をかけました」。

スタッフと話す長谷川さん

社長の猛アプローチで再び青森ワッツに戻ってきた長谷川さん。長谷川さんは、暗い職場の雰囲気を打破しようと、まずは“コミュニケーションの大切さ”を訴えたといいます。

長谷川万利子さん
「若手だろうがベテランだろうが最善を尽くそうと頑張っていても必ず何かミスが起きる。そういう時にコミュニケーションを取ることが大切で『私の担当じゃないから知らない』とするのではなく、状況などについて話をすることで解決に向かっていく。それは課題解決だけでなく、目標に向かって進んでいく時も、いろんなことが話せる間柄であれば前に進んでいけると私は思っているので“1人1人がベストを尽くそうよ”とみんなに声をかけただけです」。

コミュニケーションで明るい職場へ

会議風景

長谷川さんの後押しもありスタッフ同士のコミュニケーションは徐々に活発になりました。この日、試合のオープニングイベントについて話し合われた会議でも、スタッフ同士活発に意見交換が行われ、笑顔も多く見られました。「話しやすい雰囲気になった」と実感するスタッフも多数います。

スタッフ
「本当に明るくなりました。長谷川さんが来るだけで全然違います。エンターテイメントを届ける職業なので“明るさ”は大切だと思いました」。

スタッフ
「以前は自分の仕事に不安を抱えることが結構ありましたが、長谷川さんがいることで自分のやっていることに少しずつ自信を持つことができるようになりました。今は意見が言いやすい雰囲気なので、良いものが作れるようになってきたと感じています」。

選手も触発!前向きに

練習風景

青森ワッツ10周年の今年は選手たちにも変化がありました。13人いる選手の中で11人は新加入の選手です。
長谷川さんは選手たちにも声をかけ、気遣いをみせます。
選手たちも、長谷川さんたちスタッフの変化を感じ、チームもいい方向に進んでいると感じています。

野里惇貴選手(副キャプテン)
「去年と違ってスタッフ同士がしっかり話し合っていることが多いですし、長谷川さんが戻ってきて本当に良い方向に進んでいると思います」。

下山大地選手(キャプテン)
「以前は正直、フロントスタッフも中々プロフェッショナルな組織ではなかったのですが、今は長谷川さんがさまざまな点を改革してくれて、フロントスタッフが一丸となり、それがチームにも浸透していると思います。良いチームになるには良い組織じゃないといけなくて、そういった意味で、社長を含め会社が本気で変わろうとやってくれたと思います」。

課題にも前向きに取り組む

コロナの影響で入場制限もあり、昨シーズンはその半数以下の500人ほどになりました。

今は、このチームの勢いに乗って、課題である“観客動員数”を増やす取り組みにも力を入れています。以前のホームの観客動員数は平均で1試合あたりおよそ1300人でした。しかし、コロナの影響で入場制限もあり、昨シーズンはその半数以下の500人ほどになりました。

イベントを開催

観客を増やそうと、今シーズンはオープニングイベントで空手の演舞を披露したり、キッズコーナーを設けたりして、子どもから大人まで楽しめるイベントを開催しています。観客からの評判も上々です。

「楽しかったです。踊りもかわいかった」。

長谷川さん

長谷川万利子さん
「お客様に試合やイベントなど会場全体の雰囲気を楽しんでもらえて本当にありがたいです。私自身、こうやってお客様や誰かのために頑張れることがうれしい。これからも、みんなが楽しめる青森ワッツを作るためにサポートしていきたいです」。

今年の青森ワッツの躍進の裏には、チームの勝利とお客さんの笑顔のために活動する女性の存在がありました。

取材後記

小学校から中学校までバスケットボールをしてきたので、趣味のバスケットボール観戦で青森ワッツを見てきました。「青森ワッツ、今シーズンは何かが違う」そう確信して取材を進める中で出会ったのが長谷川さん。インタビューの中で「私はいいから。頑張っているのは若手スタッフたちだから」と何度も言っていたのが印象的で、長谷川さんの“スタッフ1人1人を思いやる気持ち”を感じました。
青森ワッツの1部昇格に向けて、1県民としてこれからも応援したいと思います。

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