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地元に愛された三春屋が閉店 八戸市中心部のこれからは?

執筆者長谷川薫(記者)
2022年04月05日 (火)

地元に愛された三春屋が閉店 八戸市中心部のこれからは?

人口20万余りの八戸市。市の中心部は飲食店や観光施設などが数多く集まり、昼も夜もにぎわいます。
そのにぎわい創出を担う代表格が百貨店「三春屋」です。
50年以上の歴史があり、ここで買い物をするために市の中心部に足を運ぶ人も少なくありません。しかし…。

営業終了のお知らせ

「三春屋」はことし3月上旬、約1か月後の4月10日で閉店すると発表し、その歴史に幕を下ろすことになったのです。
NHKの八戸支局から徒歩5分ほどの場所にあり、私もときおり買い物をすることがあったので驚きました。

長谷川記者

確かにお客さんが少ない時もあり、少し寂しいと感じることもありましたが、まさか店を閉めるほどの苦境にあったとは思えませんでした。
いったいなぜこんなことに?
私は閉店にいたった経緯と地域に与える影響について取材を始めました。

約500年前に創業 三春屋の歴史

歴史

「三春屋」はもともと、いまの福島県で呉服商として始まったとされています。創業はなんといまから500年ほど前。北東北では三戸南部氏が勢力を誇っていた戦国時代のころです。

「三春屋」はその後、八戸へ移り1970年には百貨店として市の中心部で営業を始めます。以来52年にわたって営業を続けてきました。
最も業績のよかった1989年には140億を売り上げ、地域経済を引っ張っていたのです。

セール

半世紀にも及ぶ歴史の中で、「三春屋」は地域に根ざした百貨店として、地元の人を中心に親しまれました。
閉店までの1か月間は売り尽くしセールが行われ、大勢の客でにぎわっていました。お客さんたちに話を聞くと、皆さん閉店を惜しんでいるようでした。

客

「毎日来ていたのでなくてはならない存在だった。閉店はさみしいし街が廃れると思う」

なぜ閉店することに?

地元八戸で親しまれてきた「三春屋」。
なぜ閉店に追い込まれてしまったのでしょうか。
三春屋を運営しているのは、商業施設の開発などを手がける東京の企業のグループ会社の「やまき三春屋」です。
運営会社は閉店の理由について、新型コロナウイルスの感染拡大で客足が遠のいたことを挙げています。

売上

運営会社によると、「三春屋」の売り上げは新型コロナの感染拡大前から減少傾向にありましたが、感染拡大以降は落ち込みが大きくなったということです。
去年10月までの1年間の売り上げは約27億円で、前の年の7割程度となっています。

解雇

業績の悪化は経営にも深刻な影響を及ぼします。
去年9月、運営会社は経営改善を図るため直営の売り場を縮小するとして、全従業員の7割にあたる約90人を解雇しました。
このときは労働組合が解雇の撤回を要求したことなどから、解雇した従業員のうち約40人は再雇用されましたが、経営の再建が差し迫った課題となっていました。

経営再建に向けた模索も

経営再建に向けた模索も

運営会社は経営を立て直すための模索を続けてきました。
2年前に打ち出したのが会員制の「サロン構想」です。
食事をとりながら演奏される音楽を楽しめる飲食店やスポーツジムなどを集めたスペースを「三春屋」に設け、集客力を高めようとしたのです。
百貨店のイメージの刷新も目指しましたが、この構想を打ち出した直後から新型コロナの感染が拡大。
3密を避けられないなどとして、「会員制サロン」の実現は見送られてしまいました。

リニューアルの実現は見送られた

その後、運営会社は「三春屋」の直営売り場を縮小し、代わりにテナントを増やしてリニューアルオープンを目指す方針を打ち出しました。
テナントが増えれば、売り上げに左右されず一定の収入が見込め、安定した業績が期待できるとされたためです。
運営会社はことし3月30日のリニューアルオープンを目指し、広告も打ってきましたが、結局コロナ禍でテナントが確保できずオープンは見送られました。

経営再建の見通しは立たず、売り上げの落ち込みに歯止めもかけられない。
こうして「三春屋」の閉店が決まりました。
運営会社は閉店したあとも「三春屋」の屋号はなんとか残していきたいとしています。

八戸市中心部はどうなる?

八戸市中心部

「三春屋」から徒歩数分のところには、百貨店の「さくら野」があります。
2つの百貨店は、八戸市中心部の活気を支えてきました。
一方の百貨店「三春屋」が閉店することについて、周辺の商店街でつくる団体は八戸市中心部を訪れる人が減るのではないかと懸念する一方、市中心部にできた新しい美術館などの施設をいかして、多くの人が集まる新たな街を目指すべきだとしています。

松井正文会長

八戸中心商店街連絡協議会 松井正文会長
「買い物だけが中心街ではない。美術館やスポーツのリンクもできている。はっちなど休むことができる場所もある。そこを拠点に楽しめるような街にすればよいのではないか」

「三春屋」の近くではマンションの建設も進められていて、今後、住民が増えていくという期待も寄せられています。
八戸市中心部のにぎわいを維持していくため、街の魅力をどうやって向上させていくのか。地域が一体となって考える時が来ているのではないかと感じています。

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