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インタビュー

永田 武 役・吉岡秀隆さん

「どん底に大地あり」は、今の世の中にも伝えたいメッセージ

スポーツシーンを彩る数々の応援歌やヒット歌謡曲を手がけた、昭和を代表する作曲家・古関裕而(こせき ゆうじ)氏をモデルに、音楽とともに生きた夫婦を描く、連続テレビ小説『エール』。
第19週では、裕一(窪田正孝)が「鐘の鳴る丘」で音楽の道へ復帰。さらには、長崎の被爆者や戦争中に亡くなった多くの人びとへささげる鎮魂歌「長崎の鐘」の作曲にあたりました。今回は、随筆『長崎の鐘』を執筆した医師・永田武を演じる吉岡秀隆さんにインタビュー。吉岡さんは撮影の中で、さまざまな“エール”に触れたといいます。

――吉岡さんは、永田武をどんな人物だと捉えていますか?

永田のモデルである永井隆先生は、原爆投下直後、頭に重症を負いながら被爆者の治療を行った医師です。永井先生の経験も行動も想像を超えていて、永井先生について調べると、ただただ偉大さに圧倒されてしまうので、台本から感じることを大切にしながら無心で演じようと思いました。

――裕一に発する言葉の一つひとつにも、すごみを感じます。

自分の歌がきっかけで死んでいった人たちのために「長崎の鐘」を作りたい――。そう話す裕一に、「贖罪(しょくざい)ですか」「長崎の鐘をあなたご自身のために作ってほしくはなか」と返すのが印象的でした。厳しい言葉にも聞こえますが、その奥には永田の優しさを感じます。音楽を通じて大勢の若者を戦争に送ったのかもしれないけど、君はあくまで人を応援していたんだよ、と気付かせる“エール”なんだと思いました。

――その後のシーンでも、永田はあえてヒントしか言いませんでしたね。

裕一に自分で気付いてもらうように促すことは、永田自身へのエールにもなっていた気がします。病床に伏す永田にとって、「長崎の鐘」に真摯(しんし)に向き合う裕一の姿は、一つの希望だったのかもしれません。
窪田くんとは一度、映画で共演した間柄です。彼は相手の芝居を受けて、その場で生まれるものをきちんと感じ取ってくれるので、今回もあらかじめ決めこまず、お互いが向き合った時におのずと沸き上がる感情を大切にしたいと思いました。

――「どん底に大地あり」という言葉は、ドラマを見ている側にも響く言葉だと思いました。

永井先生がどれほどの思いの中からこの言葉にたどり着いたのかは、正直なところ、まだ実感できません。どん底から希望を見いだすのは大変なことですが、ともに頑張れる仲間と一緒に立ち上がろうと思う方がいらっしゃればうれしいです。ドラマづくりもコロナの影響を受けていますが、僕は今回、コロナ禍で必死に対策をしながら撮影を進める『エール』の現場に、とても励まされました。

――それは、どういうことでしょう?

原爆で焦土と化した長崎の街のセットに入ったとき、スタッフのエネルギーを感じて胸が熱くなったんですよ。徹底的な感染対策をすると、通常の撮影よりもできることが限られます。それでも、みんなでマスクやフェイスシールドを着用し、ソーシャルディスタンスを保ちながら、協力し合って、できる限りの努力をしている――。戦争とコロナは全く違いますが、大けがをしながら被爆者の治療にあたった、永井先生に通じるものを感じました。そんな現場に身を置かせてもらい、僕自身もエールをいただいた気がします。

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