2021年10月27日 (水)「道下選手の笑顔と、視聴者の声」


北野です。今月の「インタビューこの人」(15日放送)のコーナーで、東京パラリンピック女子マラソン(視覚障害)で金メダルを獲得した道下美里選手(下関市出身)にリモートインタビューさせて頂きました。
トレードマークとも言えるあの笑顔は、とても素敵な理由から生まれていました。

そして、放送後に障害のある視聴者の方からご意見を頂きました。
皆さんにも一緒に考えてみてほしくて、ご紹介させて頂きます。ぜひ声をお寄せください。

 

前回(9/16)のブログで書きましたが、私は東京パラリンピックでメダリストインタビューを担当しました。
ただ、私は大会前半の担当で、道下選手のマラソンは最終日でした。
もし私が後半担当ならインタビューできたのに!と、残念な思いを残したまま山口に帰ってきたため、今回、道下選手へのインタビューが(リモートとはいえ)実現して、ぜひ聞いてみたいことがありました。

それは、道下選手のトレードマークとも言える、あの笑顔の理由です。
「どうしていつもそんなに素敵な笑顔でいられるんですか?」と“直球”で聞くと、道下選手からは「私は幸せだからだと思います」という答えが返ってきました。
いろんな人が声をかけてくれる、サポートしてくれる、それがすごくありがたいな、幸せだなと思える。
そしてつらくて苦しいときでも、笑わせてくれる仲間がいる。だから仲間が笑顔でないときは、自分が何かしてあげたいと思う。
そういう人間関係を作ってこられたことが、今の笑顔につながっている。
そんな「笑顔のキャッチボール」ができればいいといつも思っているそうです。

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さらに道下選手は、1日に「ありがとう」という言葉を数えきれないくらい使っているそうです。すると周りの人も「ありがとう」と言ってくれる、と。
「ありがとうはきっと連鎖すると思う」と話してくださいました。

“笑顔のキャッチボール”、“ありがとうの連鎖”…。印象的なフレーズが次々と飛び出して、しかもボストンマラソンから帰国翌日でお疲れにも関わらず、この日も素敵な笑顔を見せて下さって、本当に印象的なインタビューになりました。

 

 

この放送後、山口県内で車椅子で生活されている方から、番組宛にこんな声を頂きました。
「パラリンピックのあと、『道下選手たちは障害があっても頑張っているんだから、あなたも頑張れ』と言われることが増えてつらい。頑張りたくても頑張れない人がいることも分かってほしい」という内容でした。

実は、同様の声はパラリンピックのあと、東京のNHKにも寄せられているそうです。
「パラリンピックのためにつらい思いをする障害者がいる」というのは、放送に関わった一人としては本意ではありません。

障害がある人に「パラ選手みたいに頑張れ」と言うのは、障害がない人に「オリンピック選手みたいに頑張れ」と言っているのと同じで、もし自分がそう言われても困ってしまいます。
そしてそれが障害のある人なら、「困る」レベルでなく、「苦しい」「つらい」と感じてしまうかもしれないとも思います。

「パラリンピックの父」と呼ばれるグッドマン博士は、パラ選手に「失ったものを数えるな、残されたものを最大限に生かせ」と言ったそうです。
それが今でもパラリンピックの精神として受け継がれています。
パラ選手は、自分が使えるあらゆる部位の機能を最大限に鍛え、伸ばし、生かして究極のパフォーマンスを見せてくれました。
その姿に感動し、勇気づけられ、そして「すごい」と思いました。

 

ただ、その努力を他の人と比べたり、強要したりするのは違うと思うのです。
自分ができることを、できる範囲で懸命に取り組んでいる人は、障害の有無に関わらず、「えらい」「すごい」と称えられるべきだと思うのです。
そして「頑張れ」と誰かを励ますことはもちろん大切なことですが、「頑張っているね」と認めることも大切だと思います。

 

「パラリンピックは多様性の象徴」と言われました。
「多様性を認め合う社会」と言うと難しく感じてしまいますが、つまりは障害がある人もない人も、それぞれが自分にできる範囲で努力して、その一人一人の努力をお互いに認め合うことが当たり前になれば。
まさに長門市出身の金子みすゞが言った「みんなちがって、みんないい」ということなのかなと思います。

そして、そうなるためには、道下選手が話してくれたように「笑顔のキャッチボール」と「ありがとうの連鎖」がとても大切なんだと、改めて感じました。

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皆さんはどう思いますか?声を聞かせてください。

 

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投稿者:アナウンス | 投稿時間:12時30分

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