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災害時“トイレ”どうする?

被災地で活動する医師は
  • 2024年01月26日

 

誰もが毎日使う“トイレ”。

私たちの生活に欠かせないものですが、能登半島地震で大きな被害が出た石川県では、断水の影響でトイレが使えない状況が続いています。

トイレなどの衛生環境が整わないと病気が悪化したり、体調を崩したりして亡くなる“災害関連死”につながりかねません。

この問題に取り組む医師を取材しました。

被災地に入った医師が見たのは

県立河北病院 院長 森野一真医師

話を聞いたのは山形県立河北病院の院長で医師の森野一真さんです。県救命救急センターのセンター長を務めるなど救急医療が専門の森野さん。

東日本大震災をきっかけに全国の医療関係者で作るNPO法人「災害医療ACT研究所」を立ち上げ、熊本地震や西日本豪雨など多くの災害現場でも支援にあたってきました。

亀裂の入った道路(森野さん撮影)

地震のあと森野さんはNPOのメンバーとしてたびたび石川県に入り、被害が大きかった輪島市や七尾市などの避難所や病院、それに介護施設などを回りました。

そこで問題となっていたのが東日本大震災と同様、断水でトイレが使えなくなっていることでした。

避難所の外には仮設トイレの設置は進められていますが、「室内」でも利用できるトイレが必要だと
森野さんは指摘します。

「災害医療ACT研究所」森野一真 理事長

災害医療ACT研究所 森野一真 理事長
お年寄りや足の悪い人が外まで行くのは非常に大変ですし、仮設トイレは和式タイプが多いのでしゃがむことができない方にとっては使いづらいです。そして今の時期、寒い中、屋外のトイレに行くのはおっくうだという人もいると思います。

そうするとトイレに行くのが嫌だから、食事や水分も控えてしまってさまざまな生活上のストレスが加わって血栓を形成するような病気になりやすくなる。結果“災害関連死”につながるおそれもあります。あと屋外のトイレは性犯罪の場になりやすいので、リスクを避けるためにもトイレは室内にあったほうがいいと思います。

使用禁止となった仮設トイレ(森野さん撮影)

さらに、し尿を処理する施設も被災し、トイレにたまった汚物の回収が追いついていません。

このため中には使用できない仮設トイレも出ていたと森野さんは話していました。 

被災地にきれいなトイレを

そこで森野さんたちが力を入れているのが災害時に使える簡易的なトイレの設置です。

 

珠洲市の避難所に設置された「自動ラップ式トイレ」

「自動ラップ式トイレ」と呼ばれるこのトイレ。防災用品の開発などを行っている東京の会社が製造しています。

事前に凝固剤を入れて用を足したあと、スイッチを押すと自動で排せつ物を密封処理し、そのまま捨てることができます。このため、汚物の菌などによる二次感染を防ぐ効果が期待できるということです。

また、充電式なので停電している場所でも使うことができ、組み立てに時間もかかりません。

東日本大震災のときに、森野さんが宮城県石巻市の避難所で活用されているのを目にし、それ以来、大きな災害があるたびに被災地で普及を図ってきました。

4年前(2020年)には全国9か所に備蓄の拠点を整備。

今回の地震で、備蓄していた600台のうち530台を石川県内に運び込みました。断水が長引く中、問い合わせも増えていて、1月23日の時点で石川県内の避難所や医療機関などに477台設置されたということです。

このままいくと、台数が需要に追いつかない可能性もあるとして、クラウドファンディングで追加で製造するための費用を確保していく予定です。

災害医療ACT研究所 森野一真 理事長
避難所や介護老人福祉施設でお年寄りが使いたいということもあるが、学校が再開するにあたって必ずトイレが必要になってくるので、学校からほしいという依頼が結構来ています。

災害時、どうしてもトイレはその辺しておけば・・・という発想が抜けないと思うのですが、そうすると感染症が流行するリスクが高くなってしまうので、ふだんから避難所に指定されている場所や公共施設、介護施設などでトイレを備えておくことが非常に重要だと思います。必ずトイレの問題はついて回るので。

水の備蓄も

災害医療ACT研究所 森野一真 理事長

さらに、被災地では手を洗うためのきれいな水も足りていません。

この教訓から、森野さんは水の備蓄も欠かせないと指摘します。

災害医療ACT研究所 森野一真 理事長
輪島市ではノロウイルスが流行っているが、ノロウイルスなどの感染症は流水で流さないと対応できないので、蛇口のついた水のタンク、これが災害時には必要になると思います。東日本大震災のときも探すのに苦労したので、今後、トイレとセットにして災害の被災地に届けられるような態勢をとろうと思っています。

記者も“トイレ苦労した”

 

被災地での取材から戻った岡野祐己記者

“私もトイレに行かなくてもいいように、どうしても飲食を控えてしまった”
こう話すのは、1月15 日まで石川県内で取材にあたった山形局の岡野祐己 記者です。

岡野祐己 記者
避難所に身を寄せる人に「最も困ったこと」を尋ねたところ、やはり「トイレ」という声が上ががりました。石川県七尾市で取材した60代の女性は「足が悪くて外の仮設トイレに行くのも大変。トイレの回数を減らすため食事や水を飲むのも我慢した」と話していました。

そして、森野医師が指摘していたように仮設トイレの多くは和式トイレで、障害のある人や足が不自由な高齢の方は利用を控えてしまうこともあります。誰もが使いやすいようなトイレを設置していく必要があると感じました。

市販されている携帯トイレ

岡野記者は被災地で取材するにあたって、携帯トイレを常に持ち歩いていたと言います。こうした携帯トイレは、ホームセンターなどで1つ数百円で販売されていますし、100円ショップでも買うことができます。

日本トイレ協会の「災害・仮設トイレ研究会」によりますと、成人の1日の平均トイレ回数は5回で、国が推奨する日数は7日間。つまり1週間に35個の携帯用トイレがあるといいとされています。

取材後記

山形県内から被災地に入ったほかの支援者と話すなかでも、トイレは大きな課題となっていました。

「仮設トイレにできる長蛇の列・・・ようやく入ってみると汚れがひどく、使うことを躊躇した」

「トイレに行きたくないから食事を1日1回に制限したり、スルメやガムで空腹を紛らわした」

災害となると飲み物や食べ物の物資を思い浮かべがちですが、そこにトイレもセットで届けたり、自治体や町内会、それに私たち個人がいまから“災害時のトイレ”についても考えておくことが大切だと強く感じました。

(R6・1月17日 NHK総合 やままるで放送)。
↓動画はこちらから↓

  • 風間郁乃

    山形局 記者

    風間郁乃

    主に福祉・子ども分野を担当
    3児の母
    皆さんの生活に役立つ情報をお届けしたいと思います。

  • 岡野祐己

    山形局 記者

    岡野祐己

    山形県政担当
    京都→兵庫→大阪→山形と暮らしてきました。関西にはない山形の自然が好きです。

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