最近、「医療的ケア児」ということばを耳にするようになったと感じる方は多いのではないでしょうか。
今、医療の進歩で救われる命が増えつつある一方、障害が残る子どもが急増しています。
そうした子どもたちは、生きるために、たんの吸引や人工呼吸器などの医療的ケアが欠かせなくなるため、「医療的ケア児」と呼ばれています。
しかし、多くの家族は、相談に乗ってくれる窓口や、日中に預かってくれる施設などを見つけることができず、一日中子どものケアに追われています。
中には、睡眠も満足に取れず、追い詰められるあまり、「このままではわが子を手にかけてしまうのではないか」と不安を募らせている親も少なくないんです。
こうした中、県内で今、長年、支援から取り残されてきた家族を支えようという動きが広がり始めています。
そのきっかけを作った1人の女性を取材しました。
「当事者団体を立ち上げてはどうか」という佐藤さんの提案から、およそ1か月後の5月30日。
医療的ケア児と、体などに重い障害がある「重症児」の母親あわせて9人が集まり、県内で初めての当事者団体を発足させました。
名称は「山形県医療的ケア・重症児者の会」。
今後、親の声を集めて、県などに必要な支援を要望していくということです。
また、家族を孤立させないよう、交流会を企画し、会報誌やSNSを通じて子育てに関する情報なども発信していきたいとしています。
印象的だったのは、参加した母親たちのほっとしたような表情です。
「こうした会が立ち上がることはお母さんたちの悲願でした。これまでは役所の窓口に行っても、1人だけの声で支援するのは厳しいと言われてきたので、会が出来て本当にうれしい」
(小学3年生の息子がいる母親)
「若いお母さんたちが子どもの『介護』ではなく、『育児』を楽しめるよう、先輩としてサポートしていきたい」
(3歳の息子がいる母親)
山形県内には、医療的ケア児が少なくとも120人いると言われていますが、正確な人数はわかっていません。会では、医療的ケア児の親はもちろん、活動に賛同してくれる個人や団体にも参加を呼びかけています。
参加を希望する場合は、佐藤さんが代表を務める「合同会社 ヴォーチェ」が、会の事務局を兼ねているので、ぜひ連絡してほしいということでした。
電話番号は【023-664-1735】です。
医療の進歩で救われたかけがえのない命。
その子どもたちと家族が、笑顔で、安心して暮らしていけるよう、こうした支援の輪がさらに広がっていってほしいと思います。
風間 郁乃
(かざま・あやの)
平成21年入局 山形局は2回目の赴任 “ママ記者”として医療・介護・子育てなどを取材 「山形に戻ってきました。生活に密着した話題やニュースをお届けしていきたいと思います」
山形局記者 | 投稿時間:17:02