【記者特集】医療的ケア児 18歳になっても

 

「いつか離れなくてはいけない時が来る…

 それまでにわが子の居場所を用意してあげたい」。

 

これは18歳になった “医療的ケア児”の母親の言葉です。

 

医療的ケア児とは、生まれつき重い障害を抱え、

生きていくために、たんの吸引や人工呼吸器などの

医療的なケアが欠かせない子どもたちのことです。

 

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その数は、最新の推計で全国に1万8000人と、

10年前の2倍近くに急増し、国や自治体も、

まだ不十分ながら支援に乗り出しています。

 

ただ、こうした子どもたちが大人になったらどうなるか、

皆さん、ご存知でしょうか。

 

多くの人は18歳まで特別支援学校に通っていますが、

卒業してから行き場を失ってしまうケースが相次いでいるんです。

 

こうした人たちの支援について話し合うシンポジウムが、

先日県内で開かれました。

 

 

医療的ケア児の親で作る

「全国医療的ケア児者支援協議会・親の部会」の小林正幸会長は、

「18歳以上の支援については正直手つかずの状態。

受け入れ施設がないと高齢の親が障害のある子を介護する“老障介護”に陥ってしまう」

と警鐘を鳴らしています。

 

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しかし、大人になってからも医療的ケアに対応できる施設がどれだけあるのか、

そしてどれくらいの人がそうした施設を必要としているのかについては、正確なデータがありません。

ただ、施設の担当者からは

「特に重い障害を抱えている人の受け入れ先が不足している」

と指摘する声が上がっています。

また、親が高齢になって自宅でケアができなくなった場合に

入居できるグループホームや、

短期間宿泊できる施設もまだまだ少ないのが現状です。

 

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そして、もう1つ必要とされているのが「入浴サービス」です。

今回、取材に応じてくれた松林瑠美子さんは、

40キロ近くある佳汰さんと亜美さんを自分でお風呂に入れています。

しかし、親の中には風呂場でバランスを崩して転倒し、

背中や腰を痛めてしまったという人もいます。

このため、日中通える施設で入浴をさせてほしいという声が

多く出ていますが、職員の人手不足などもあって、

対応できる施設はまだまだ足りていません。

 

医療的ケア児をめぐっては、県医師会が、

支援を検討する委員会をことし10月に立ち上げました。

また、県も来年3月までに、医師や施設の担当者などを交えて、

必要な支援について話し合う場を設けることにしています。

 

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「自分がいなくなったら、子どもたちはどうなってしまうのか」。

そんな不安を親たちが抱えずに済むよう、

医療的ケア児が大人になってからも地元で支援を受けられる

仕組みを考えていく必要があると思います。

 



医療的ケア児    

山形局記者 | 投稿時間:18:31