おいしさ×おいしさの成果は?

 

20230316_01.png

 

ジャムやドレッシングを主力商品とする高畠町の「セゾンファクトリー」と、洋菓子のラスクやパンで知られる山形市の「シベール」。山形県民におなじみのこの2社、去年10月、同じグループの会社になりました。同じ社長のもとでおいしさを追求する両社。
どんな効果が生まれているのでしょうか?

 

20230316_02.png

 

バレンタインデーを間近に控えた先月(2月)10日。山形市内の
シベールの店舗にもチョコレートやイチゴチョコのラスクが並んでいました。

 

20230316_03.png

 

その中には、今シーズンから新たに加わった商品もありました。ホワイトチョコのラスクです。口溶けのよさにこだわったというこの商品、シベールが「セゾンファクトリー」と共同で開発しました。

 

20230316_04.png

 

「パッケージもデザインもすてきでおしゃれだなあと」。

 

20230316_05.png


「発売された時に買って食べたんですけど、おいしかったのでリピートしようかなと」。

 

20230316_06.png

 

1989年創業の「セゾンファクトリー」。こだわりの果物や野菜を原料にジャムやドレッシングなどを製造販売してきました。しかし、民間の調査会社によると、コロナ禍の影響で売り上げが落ち込んだとみられ、経営に行き詰まります。

 

20230316_07.png

 

経営の立て直しを迫られたセゾン。頼ったのはシベールが加わっていた山梨県に本社がある企業グループでした。去年10月、この企業グループに入り、セゾンとシベールはいわば「兄弟会社」になったのです。

 

20230316_08.png

 

セゾンとシベールの社長を兼務する小田切一哉さん(41)です。
現在、グループ企業4社すべてのトップを務めています。

 

20230316_09.png

 

「(グループ企業化の効果の)手応えは十分です。10月~12月は繁忙期ということもあり、損益はすごくよかったです」。

 

20230316_10.png

 

小田切社長が進める経営戦略。その1つが相性の良さを生かした商品開発と販売です。シベールは、ラスクだけでなくパンの製造・販売も行っています。

 

20230316_11.png

 

一方、セゾンの主力商品は、フルーツジャム。その種類は、およそ30にのぼります。

 

20230316_12.png

 

「シベールは山形県と宮城県でベーカリーや洋菓子店やってますし、セゾンファクトリーは主力商品がジャム。パン屋とジャム屋って、相性がいいじゃないですか」。

 

20230316_13.png

 

去年11月、両社がコラボした商品を試験的に販売しました。シベールのデニッシュの上にセゾンのジャムをのせたパンです。山形市内のシベール1店舗で販売したところ、200個が即日完売したということです。

 

20230316_14.png

 

互いの販売網を活用した販路の拡大も目指しています。シベールは、山形県と宮城県を中心にあわせて17店舗。これに対しセゾンは
主に、全国の百貨店に展開。東京や大阪などにあわせて16店舗(ことし2/17時点)あります。エリアやターゲット層が
重複していないことを逆手にとって、販路の拡大や売り上げの拡大につなげようというのです。

 

20230316_15.png

 

東京都内の百貨店にある「セゾン」の店舗に置かれているこのラスク。ことし1月から販売を始めた新商品です。シベールが作ったラスクをセゾンがデザインしたパッケージに詰めたコラボ商品です。

小田切社長は「百貨店の店員さんはシベールのラスクを知っているので、中身がシベール製ということを『安心、本物だよね』と言ってくれる。セゾンファクトリーの販路に関しても大都市に店を持って、固定のお客さんがいらしてブランディングができているところに魅力を感じる」と話します。

 

20230316_16.png

 

小田切社長は出始めている相乗効果をさらに高めていきたいと考えています。
「シベールというブランドは山形県と宮城県に根づいたブランドですし、セゾンファクトリーは日本を代表するハイブランドの食品メーカーなので、特性は違うけれども、しっかり2社のいいところを
残しつつ、2社とも、発展していくように今頑張ってます。県産の食材を使ったヒット商品を我々のグループとして、しっかり作り続けてですね、山形県にも貢献をしていきたい」。

 

20230316_17.png

 

同じグループ会社になって5か月余り。その効果は、早くも出始めています。今回取材したコラボ商品のホワイトチョコのラスクは、2月中旬までにあわせておよそ14万袋を販売。
目標の10万袋をすでに上回っているということです。こうしたこともあり、コロナ禍で業績が落ち込んでいたセゾンは、業績が回復しているとしています。

 

20230316_18.png

 

今後の課題ですが、セゾンとしては百貨店以外でも収益の柱をつくることが挙げられます。全国の百貨店の去年(2022年)の売り上げは10年前に比べると、およそ1兆1600億円あまり、率にして19%減っていて、大都市でも閉店する店舗が出てきています。
県内でも、3年前(2020年)の1月に山形市中心部の「大沼」が閉店。さらにセゾンが入っていた甲府市の百貨店も床面積を大幅に縮小して移転し、これに伴ってセゾンの甲府店は先月(2月)で閉店しました。百貨店にとって厳しい状況が続くなか、百貨店以外での販路の拡大は欠かせません。

 

20230316_19.png

 

そこで、今後、セゾンが力を入れていくことにしているのが、インターネットでの販売です。現在はセゾンの全売り上げのうち、およそ1割。「セゾン」と「シベール」のそれぞれのウェブサイトでも両社の商品を掲載し、ネットでの売り上げアップを図っていきたいとしています。百貨店の閉店だけでなく、原材料価格の高騰などにも直面していますが、これからも両社の強みを生かし補い合って逆風を乗り切り、おいしい商品をより多くの人に届けてほしいと思います。



記者特集   

山形局記者 | 投稿時間:18:05