【記者特集】医師に聞いた "ブレイクスルー感染"とは?

 

”ブレイクスルー感染”って何?

 

皆さんの中には、インフルエンザの予防接種を打ったのにかかってしまった…という経験をした方もいるのではないでしょうか?

 

それと同じことが、ワクチン接種が進む新型コロナウイルスについても確認されるようになっています。

「ブレイクスルー感染」、

2回目の接種から2週間以上たって感染が確認されると、こう呼ばれます。

 

 

山形県内の状況は?

 

令和3年9月に感染者の集団=クラスターが確認された川西町の介護老人保健施設「かがやきの丘」によりますと、9月中に感染が確認された利用者と職員あわせて11人のうち▼ワクチンを2回接種していた人は7人。さらに、▼このうち少なくとも職員2人は、2回目の接種から2週間以上経過しているということで、この2人はブレイクスルー感染にあたるとみられます。

 

県内の状況について県に取材しましたが、「県内でブレイクスルー感染が起きていることは確実だが、いったい何人になるのか、患者数の把握まで追いついていない」という回答でした。

ワクチンを打ったあとの「ブレイクスルー感染」はどういうメカニズムで起きるのか?

県内でコロナ治療の最前線に立つ医師に話を聞きました。

 

 

”ブレイクスルー感染”のメカニズムは?

 

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山形県立中央病院の感染症内科・感染対策部長、阿部修一医師です。

県内で初めて感染が確認された令和2年3月から継続して新型コロナウイルスの治療にあたってきた阿部医師は、ブレイクスルー感染が起きるのは「ウイルスの増殖のスピードにワクチン接種によってできた抗体の増加が追いつかない場合があるためだ」と解説します。

 

阿部医師

「新型コロナは入ってきた途端にどんどんその場で鼻の粘膜、のどの粘膜を壊していきます。だからにおいがしなくなったり味がわからなくなったり。あとはそのまま気管支や肺に行けば、せきを出したり肺炎を起こしたりしていく。入ったそばからウイルスにどんどん壊されるとなると、抗体が最初から十分になければ最初の攻撃に対抗できないわけですね。その抗体の産生量は個人差があって、量が十分でない場合もあります。そこには基礎疾患や服用している薬など、さまざまな要因があると思います」

 

さらに、感染力の強い「デルタ株」をはじめとする変異ウイルスの存在も、ブレイクスルー感染を招く要因の1つになっていると指摘します。

 

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阿部医師

「ウイルスが変わってしまえば抗体も十分に機能できないものが出てくるということなんです。今回はデルタ株がそれに該当しますけども、従来株であれば90%以上効果があるのに、デルタ株になったらそれが60%くらいまで落ちてしまった」。

 

 

ワクチンで”移しにくく”はなる?

 

阿部医師によりますと、仮に接種後に感染しても▼症状が出る期間が短くなったり、▼PCR検査で陽性になってしまう期間も短くなったりするという報告が上がっているということです。

こうしたことからワクチン接種により▼重症化を防ぎ、▼ほかの人に移しにくくなるという効果があると考えられます。

 

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阿部医師

「例えば2週間せきが出る場合と1週間せきが出る場合を比べたときに、咳をしてウイルスを出す期間が短くなれば、仮にかかったとしても他人に移す機会を減らせるということになります」。

 

 

接種後も引き続き感染対策を

 

ワクチン接種で重症化などを抑えられるとしても、あくまでも阿部医師は「ワクチンを2回打ったとしてもウイルス自体の感染は理論上起こりうる」と指摘します。

そのため、阿部医師は接種後も引き続き感染予防対策をとってほしいと話しています。

 

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阿部医師

「ワクチンを打っていない人に移してしまえば相手は重症化する可能性もあるので、自分を守る意味でも人に移さない意味でも、せめて人前でのマスク着用はちゃんと続けるべきだと思います」

 

阿部医師が挙げたマスクの着用に加え、換気の徹底やソーシャルディスタンスの確保などを、自分や周りの人を守るために継続してほしいと思います。

 



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山形局記者 | 投稿時間:18:54