【記者特集】私たちと一緒に働いて

 

高齢者や障害者の暮らしを支える「介護業界」が、今、深刻な人手不足に悩まされています。

国は対策の1つとして、外国人材の受け入れを打ち出していますが、まだ定着は進んでいません。

 

こうした中、山形県に外国人材を呼び込もうと、県内の介護施設が新たな取り組みに乗り出しました。

 

 

 

“外国人技能実習生”を山形に

 

「早い段階から、外国人労働者と一緒に働く環境を整えていかなくては」

 

こう話すのは、天童市内で特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人「つるかめ」の伊藤順哉副理事長です。

ことし4月、この法人が中心となって、外国人技能実習生を介護分野で受け入れるための監理団体「エール事業協同組合」を山形市で立ち上げました。

 

山形県内の介護施設が、技能実習生を受け入れようと監理団体を立ち上げるのは初めてです。

 

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監理団体とは?

 

「監理団体」は、実習生を企業などに紹介するだけでなく、入国手続きを代行したり、日本での生活について相談に応じたりと、さまざまな支援を行います。

それにしても、どうして介護施設が、みずから監理団体を立ち上げたのでしょうか?

 

伊藤さんによると、介護職員を採用するのは年々難しくなっています。

 

「山形県内では、まだ外国人材を受け入れようという温度感が低く、受け入れが進んでいません。しかし、必要となってから体制を整えては遅いので、早い段階から外国人の方と一緒に働ける環境を作っていこうと思いました。介護施設に必要な人材の見極めができることも、介護施設が監理団体を作るメリットだと思います」(エール事業協同組合 伊藤順哉理事)。

 

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これからはミャンマー

 

そこで伊藤さんたちが目を付けたのがミャンマーです。

 

「非常に敬けんな仏教徒がほとんどで、子どものころから家庭で年上の方を敬うとか、高齢者を大切にすることを学んでいます。そういった部分から日本人にすごく合うなと直感しました。すでに他県の介護施設で働いているミャンマーの方も、おじいちゃん、おばあちゃんに好かれていますね」(エール事業協同組合 伊藤順哉理事)

 

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さらに、ミャンマー語は、文法が日本語と似ているそうです。

なのでミャンマーの人は日本語の習得が早く、日本人から見ても、ミャンマーの人が話す日本語は聞き取りやすいということです。

 

現地では受け入れのための環境も整い始めています。

ミャンマー最大の都市、ヤンゴンには、北海道と岐阜県の介護施設などが出資して作った実習生のための養成学校があります。

ここでは、日本で働きたいと希望する人たちが、すでに日本人の介護福祉士から直接、知識や技術を学んでいます。

また、日本語学校もあるので、来日前までみっちり日本語を勉強することもできます。

 

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自治体も注目

 

山形県もミャンマーに注目しています。

ベトナムやフィリピンなど、ほかのアジアの国ほど、介護人材の奪い合いが激しくなっていないからです。

 

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山形県は去年、介護分野での外国人材の受け入れを進めようと、専門の対策部会を設置しました。

そして、今年度の予算にも、秋ごろに県内の介護施設の担当者を連れてミャンマーを視察する費用を盛り込んでいました。

日本で働くことを目指すミャンマーの若者に山形をPRして、人材を確保したいという狙いがあるんです。

 

 

すでにオンラインで説明会も

 

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組合でも、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着けば、この冬に県内の介護関係者を連れて現地で採用面接会を開催する予定です。

そして、早ければ来年4月にも実習生の受け入れをはじめたいと考えています。

 

このため、今月からは、外国人材の受け入れに関心がある県内の介護関係者向けに、オンラインでの説明会もはじめました。

 

私たちが取材に訪れた日も、介護施設や障害者施設の担当者など11人が県内各地から参加していました。

そこでは、組合の担当者が、すでに外国人が働いている施設から「一生懸命働いてくれるので日本人の職員にも刺激になる」といった声が上がっていることを紹介し、「すぐに辞めたりせず、数年後には確実に戦力になっている」などと説明していました。

 

説明会では、参加者からの質問も受け付けていました。

多かったのは「住まい」や「文化の違い」についての質問です。

 

特に住まいについては、「どれくらいの広さの部屋を確保すればいいのか」とか「外国人のためというとアパートを貸してもらえないことがある」といった質問や悩みが寄せられました。

 

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これに対し、組合の担当者は、

「実習生だと最低でも1人あたり3畳のスペースを確保する必要がある」とか、「交代勤務もあって同じ部屋では生活に支障が出てしまうので職場の近くに一軒家を借りるのが望ましい」

などとアドバイスしていました。

 

参加者からは

「日本人を募集してもいっこうに集まらない。人材確保のための突破口になれば」

と受け入れに前向きな意見が聞かれました。

 

 

“安い労働力”ではない

 

外国人技能実習生は、一時しのぎのための“安い労働力”と見なされ、新型コロナウイルスで突然の解雇や休業に追い込まれる人も少なくありません。

 

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組合では、そうならないよう、帰国した実習生たちの雇用の場も確保していく方針です。

具体的には、実習生が母国の養成学校で先生として働いたり、病院や介護施設に勤めたりできるようミャンマー政府に働きかけていきたいとしています。

 

日本の介護現場が助かって、人材を送り出してくれたミャンマーにも将来の投資になる。

そんな双方にプラスになる関係をしっかり築いていくことで「日本に来たい」という外国人材が増えることを期待したいと思います。

 



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山形局記者 | 投稿時間:17:32