【記者特集】要介護者の願いかなえる"旅行介助士"

 

今回のブログは「体が不自由になっても旅行を楽しみたい!」という方、必見です。

 

高齢者や障害者の中には、介護が必要になって、旅行に行くのが難しくなったという方が少なくありません。

 

とくに大変なのが、旅行中の移動や入浴です。

 

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民間のシンクタンクが、介護が必要な人の家族に調査した結果、実に85%が「旅行するためのサービスなどが不足している」と回答しています。

 

こうした中、介護が必要になっても旅行を楽しめるようにサポートする、ある取り組みが始まりました。

 

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ことし4月、天童市である研修会が開かれました。

バスツアーに同行する「添乗員」の業務を学ぶのが目的です。

 

バスに乗り込んで、観光地へ!

早速、行き先などを乗客にどうアナウンスするかを教わります。しかし、よく見ると、参加しているのは…。

 

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実は全員、介護施設などで働くスタッフです。

参加したのは、「介護福祉士」や「看護師」、それにリハビリを担当する「理学療法士」など10人あまり。

「国内旅行介助士」という新しい民間資格を取得しようと集まりました。

 

新資格「国内旅行介助士」とは?

 

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この「国内旅行介助士」という資格。

聞き慣れない方も多いと思います。

ひと言で言えば、高齢者などの旅行を支える「介護職員と添乗員の知識を併せ持ったエキスパート」です。

 

観光施設の見学やバスの乗り降り、温泉の入浴など、さまざまな場面で介助を行います。

 

さらに、バリアフリーに対応した観光施設を探したり、参加者の体調に応じて旅行のプランを作ったりもします。

現地でのスケジュールの管理なども行うそうです。

 

この資格を作ったのは、東京のコンサルティング会社や天童市にある介護施設などで作る一般社団法人の「日本介護旅行サポーターズ協会」という団体です。

 

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中心になって立ち上げた糠谷和弘さんは、介護施設を運営する中で、体が不自由だからと旅行を諦めてしまう利用者を目の当たりにしてきました。

 

「要介護になっても旅行に行きたいという方は本当に多いんですよね。一方で、家族がサポートしながら旅行ができるかというと、家族に介助してもらうことに気兼ねしてしまうという面もありますし、結果として、そういう方の旅行は実現していないのが現実なんです」

(日本介護旅行サポーターズ協会 糠谷和弘 代表理事)

 

介護のプロが“添乗員”に!その研修内容とは

 

そこで思いついたのが、日頃から高齢者や障害者の方に接している介護・福祉施設のスタッフに「添乗員」として旅行に同行してもらうことでした。

 

資格を取得するための研修は3日間。

試験に合格すれば「添乗員」の資格も取ることができます。

このうちの「バス研修」に私たちも同行させてもらいました。

 

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講師を務めたのは、添乗員を養成する学校の先生です。

一緒に観光地に出向いて、高齢者などが旅行先で快適に過ごすためのポイントを確認します。

 

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まず向かったのはJR山形駅。到着すると、参加者が突然、車椅子に乗りました。

高齢者や障害者の目線で、バリアフリーに対応しているかをチェックするのが狙いです。

 

次に確認したのがトイレです。ちゃんと手すりがついていて、車椅子が上り下りしやすいようスロープも設置されていました。

 

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一方、新たに気づいたことも…。

車椅子に乗ってみた参加者は

「みんなが普通に歩いているところも狭く感じた」

と話していました。

 

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糠谷さんは

「観光地でざわついている場所は、車椅子に乗っている人には、結構怖く感じられます。声をかけながら移動するなど、ふだんと違う介助が必要になってくるんです」

とアドバイスしていました。

 

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JR山形駅のあとに向かったのは、ちょうど人間将棋のイベントでにぎわっていた天童市の舞鶴山公園でした。

ここではまず、高齢者が休息をとれる場所があるかを調べていました。

また、大勢の人がいるため、はぐれないよう、出入口の数や場所を1つ1つ確認していました。

 

参加した作業療法士の女性は

「利用者の方を楽しませるための気配りなど、事前の準備がすごく勉強になってよかった」

と話していました。

 

また、理学療法士の男性は

「旅行先で利用者の方をどうサポートしたらいいか具体的にイメージがついたので、参加して非常に意味がありました」

と話していました。

 

資格制度を全国に

 

資格取得のための研修会は、当初、協会に所属する介護施設の関係者向けに行われていましたが、先月(6月)から一般募集が始まっています。

 

糠谷さんは、資格を持つ人が全国で増えることで、できるだけ多くの高齢者や障害者が旅行を楽しめる環境を整えたいと話しています。

 

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「旅行に行くことで、生きがいを感じてもらったり。

1回旅行に行った方は、次はもっと難易度の高い場所だったり、もっと遠くて魅力を感じる場所に行くということをふだんの生活のやりがいにしていただけたら」

(日本介護旅行サポーターズ協会 糠谷和弘 代表理事)

 

介護職員「不足」大丈夫?

 

一方、

「ただでさえ、介護職員が足りないのに、旅行の付き添いまでできるのか?」

と疑問に思う人もいるかもしれません。

 

でも、こうした資格ができることは、介護職員の確保につながると期待する声も出ています。

 

これまで、介護と言えば、施設や自宅での生活をサポートするイメージが強かったと思います。

そこに「旅行」が加わって、仕事の幅が広がれば、今よりもっと介護の仕事を目指す人が増えるのではないかと協会では期待しているんです。

 

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また、旅行を楽しみに、高齢者がリハビリに励んでくれたら、身体機能が改善する可能性も高まりますし、旅行に出かけること自体、認知機能の改善につながるという声もあります。

 

介護と旅行の知識を併せ持ったエキスパート!

こうした人材が増えることで、年齢や障害に関係なく、多くの人が旅行を楽しめる環境が整うのはもちろん、福祉業界にとっても人手不足解消の一手になればと思います。

 



記者特集    

山形局記者 | 投稿時間:16:40