苦境のしょうゆ業者、海外に活路を

 

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この春も、さまざまな物が値上がりしています。日本の食卓を支える「しょうゆ」も例外ではありません。山形市に本社を置くしょうゆの蔵元は、先月(4月)の出荷分から、やむを得ず再び値上げすることを決断しました。この蔵元は、値上げによる消費者離れをカバーするため、新たな需要を開拓しようと、いま、商品開発を進めています。その動きを追いました。

 

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ことし3月、東京で開かれた食品の展示会です。2500社あまりが参加しました。海外のバイヤーに新製品などを売り込むのが大きな狙いです。

 

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県内から参加した企業の1つ、山形市に本社を置く老舗のしょうゆ蔵「丸十大屋」です。8代目の社長、佐藤利右衞門さん。しょうゆを取り巻く現状への危機感から展示会に参加しました。

 

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大手も相次いで値上げに踏み切るなか、佐藤さんは1年前の値上げに続き、先月(4月)の出荷分から自社のしょうゆを最大で25%値上げすることを決断。前回は大豆などの価格高騰が原因でしたが、今回は「うまみ成分」が大きな要因になったといいます。

 

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この会社の主力商品は、山形の秋の風物詩「日本一の芋煮会」にも使われる「だしじょうゆ」。

 

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うまみ成分の1つは先月から1年前に比べ(去年3月比)18%値上がり。

 

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別のうまみ成分は実に47%の値上がりです。

 

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「うまみ成分などの調味料関係の価格は、半端じゃなく上がっている。(価格を)上げないで済むんであればそれにこしたことはないんですが、コストはコストとして反映させていただかないと、事業として継続できない」。

 

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しかし、前回・1年前の値上げのあとは売り上げが大幅に落ち込みました。おととしの同じ時期の約半分にまで減ったといいます。加えて国内ではしょうゆの消費が低迷。おととし(R3)の生産量は平成元年に比べて40%以上も減っています。

 

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そのため、佐藤社長は海外でも売れる新たなしょうゆに活路を見いだそうとしているのです。いま、開発を進めているのが、ジェル状の「だしじょうゆ」です。

 

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ジェル状の大きなメリットは、垂れないこと、そして容器から漏れる心配が少ないこと、です。

 

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「もちろん液体でも輸出はしますが、もっと用途を広げるためには何か形を変えたい。海外の業務用需要、それから日本でも、お店で販売するお弁当需要などの業務用で使えるんではないのかなと」。

 

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佐藤社長は東京の展示会に、ジェル状のだしじょうゆの試作品を出しました。ひきあいに出したのは海外でも人気のおすし。しょうゆをつけすぎず、おいしく食べられるとみずから売り込み、海外のバイヤーたちからも上々の反応を得ました。

 

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「トルコにふつうのしょうゆはあるが、ゼリー状のものはないので面白い」。

 

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「豆腐のような和食にのせるのが合うと思う」。

Q:カナダで売れると思うか?

「売れる可能性はあると思うので、社内で話し合ったうえで前向きに検討したい」。

 

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「思った以上に食いつきがいいですね。ただその価格の面で高いとおっしゃる方とこれでも売れるとおっしゃる方と両方いらっしゃいました。早めにやりたいのはやまやまなんですが、(賞味期限を確かめる)耐久試験を続けていきたいと思ってます」。

 

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いま、しょうゆメーカーの多くが値上げを余儀なくされています。

しょうゆ製造大手「キッコーマン」では、先月の納入分から、しょうゆやだしじょうゆを希望小売価格で約5%~11%値上げ。「ヤマサ醤油」も、先月の納入分からしょうゆや濃縮つゆなど業務用を含めた101品目を出荷価格で約5%から12%値上げしました。

 

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こうした中、開発が進められているジェル状のだしじょうゆ。今後の課題は2つあります。1つは、賞味期限の確認です。夏場の暑い倉庫でも保管されることなどを想定して、どのくらいの期間、おいしく食べられるか、耐久試験を繰り返し行って確認していくことにしています。もう1つは、「価格」です。佐藤社長は「高くなりすぎてしまうと手に取っていただけないと思う」と話し、手ごろな価格を目指しています。国内外で売れる商品にするためには、価格をできるだけおさえる工夫が求められています。順調に行けば、ことし秋ごろには登場する予定のジェル状のしょうゆ。蔵元の挑戦に、今後も注目したいと思います。

 



やままる   

山形局記者 | 投稿時間:17:07