バリ島北東部トランベンの海岸に沈むリバティ号 沈船にすむ怪魚アカマダラハタ 昼間はめったに姿を現さない夜行性の肉食魚 大きな口で獲物を吸い込む 艶やかな魚も大好物 夜な夜な沈船をさまよう怪魚 海のギャングと恐れられるウツボ 尻尾を使った頭脳的な狩りをするウツボ 怪魚とウツボが共同で狩りを行う 怪魚とウツボの最凶コンビ
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インドネシア バリ島   沈船の怪魚 驚きの狩りを追う

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インドネシア・バリ島のトランベンは世界有数のダイビングスポット。海岸近くに沈船があり、多くの魚が集まる魚礁となっている。この沈船に夜な夜な謎の怪魚が出没するという。大きな口を持ち、傷だらけの体で奇想天外な狩りを行うとのウワサだ。しかしその姿を見た者は少ない。謎の怪魚の正体をつきとめるべく夜の海へ。魚たちが眠りについた沈船はまるで幽霊船。そこで出会ったのは体長1mを超すアカマダラハタだった。昼間は沈船の奥深くにじっと身を潜めてめったに姿を見せないが、夜になると獰猛(どうもう)なハンターと化す。怪魚の名にふさわしく迫力満点の狩りを見せる。獲物に忍び寄ると顔を爆発させたかのように膨らまし、大きな口で一気に吸い込む。そのスピードとパワーは周囲のサンゴを壊してしまうほどだ。そのため怪魚の体にはいつも生傷が絶えない。怪魚はさらに驚きの行動を見せる。海のギャングと恐れられる巨大ウツボと一緒に狩りを行うのだ。なぜ大型肉食魚どうしが手を組む必要があるのか? その狩りの方法を分析すると驚きの秘密が明らかとなった。なんと互いの弱点をカバーし、協力しながら効率的な狩りを行っていたのだ。怪魚たちが次々と魚を捕食していく姿は圧巻。驚愕(きょうがく)のシーンの連続だ。夜の沈船を舞台に繰り広げられる怪魚たちの奇想天外な営みを、高性能カメラによる至極の映像美でお届けする。

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フィールドリポート

アグン山の奇跡とリバティ号

沈没船がダイビングスポットになっている場所は世界中にありますが、トランベンの海に沈むリバティ号ほどドラマ性をもった船はないのではないでしょうか。

全長120メートルの蒸気貨物船として建造されたリバティ号。第二次世界大戦が勃発(ぼっぱつ)すると、船首と船尾に大砲をしつらえ、アメリカ陸軍の輸送艦となりました。1942年、バリ島の沖合を航行中、日本軍の潜水艦による魚雷攻撃を受け損傷。死者はありませんでした。積み荷を回収するためトランベンまで曳航(えいこう)後、海岸に打ち捨てられました。それから20年、海岸で朽ち果てていたリバティ号に奇跡が訪れます。1963年、アグン山が噴火。直後に起きた地震により、リバティ号は滑り落ちるように海底に沈んだのです。

太平洋とインド洋に面するバリ島はもともと魚の豊富な地域です。中でもトランベンの海は、アグン山の栄養豊富な伏流水が海底から湧き上がるため、たくさんの魚種が密集しています。そんな海に巨大な船が沈んだのですから“魚たちの楽園”になったのは当然のこと。アグン山の奇跡がリバティ号に新たな命を与えたのです。

ジグソーパズルのような映像チェック

ディレクターの仕事には「制作進行」や「撮影の指示(演出)」の他に「安全管理」も含まれます。海での撮影はときに命に関わる大事故につながります。そのためディレクターは水中撮影には同行せず、海岸や船上に残らなくてはなりません。すぐ目の前に番組の舞台となる沈没船があるというのに自分の目で見ることが出来ないのです。誠に残念ですが諦めるほかありませんでした。

撮影後に行う映像チェックで最大の難点になったのが、撮影場所の特定でした。モニターに映っているのは船の残骸ばかりで、それがどの場所なのかまったく見当がつかないのです。カメラマンから話を聞いて「このカットは船首の左側面の水深20メートルあたりを、船尾方向やや斜め上を撮影しているシーン」と頭にインプットしても、カットが変わると途端にわからなくなります。カメラマンの説明を聞いて再び位置関係を頭に描きますが、カットが変わればゼロに戻ってしまいます。その繰り返し。まるで深い迷宮に迷い込んだかのようでした。

その理由は2つあります。1つは撮影現場に同行していないため、船の全体像を把握できていないこと。完成した絵を知らないまま巨大なジグソーパズルを作っている感じでしょうか。2つめは水中撮影の特異性です。水中では陸上と違って上下に移動できます。いわば空中撮影をしている感じです。さらに、360度全方位が撮影できます。そのためカメラマンのいる水深とカメラのアングル(上下左右の角度)がちょっと変わっただけで、まったく違った映像となってしまうのです。結局、全体像が把握できたのはロケも中盤を過ぎた頃だったでしょうか。その苦労もありリバティ号についてはかなり詳しくなりましたね。

リバティ号が消滅する?

トランベンの人々の大切な収入源となっているリバティ号ですが、その未来はけっして明るいものではありません。魚雷攻撃で損傷した後、20年も海岸で野ざらしにされ、地震によって海底へ滑落。すでにボロボロの船体ですが、ここ十数年で状況がさらに悪化していると言います。その原因はダイバーたちが吐く「空気」です。空気は鉄を酸化させます。いわゆるサビです。サビによって腐食した船は壊れやすくなります。連日たくさんのダイバーが訪れるリバティ号は、かなり腐食が進み、このままでは近い将来に崩壊するのは明らかです。実際、半年ほど前に船首にあった大砲が外れ、海底に落ちてしまいました。もし巨大な台風が襲来すれば甚大な被害を及ぼす危険もあります。

リバティ号を保全する一番の方法は、ダイバーの船内への侵入を禁止することです。実はそのような規則を設けている沈没船スポットは世界中に存在します。それにより腐食の進行を緩めているのです。しかし、リバティ号の魅力はその神秘的な船内にもあります。禁止してしまうとダイビングスポットとしても魅力が損なわれてしまうかもしれません。観光収入に依存するトランベンの人々にとっては難しい問題です。かといって、リバティ号が崩壊してしまっては元も子もありません。やはり内部への侵入を禁止するのが最善の策なのでしょうか。

いずれにせよ、リバティ号が存命のうちに再度トランベンを訪れ、自分の目で“魚たちの楽園”を見てみたいものです。

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