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2018年1020日放送 午後900分~NHK-FM

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『魚沼温泉物語』

原案:佐藤杏樹、清司麗菜、日下部愛菜

脚本:北阪昌人

★参考:サタラーナ、マスかルポーネ

出演

佐藤杏樹、清司麗菜、日下部愛菜、山寺宏一

あらすじ

魚沼市に古くからある温泉宿「なんといっても・元気が出る・湯治場」略して「湯宿NGT」。美人女子高生女将として有名なこの宿の女将・佐藤杏樹は、宿の評価を決める覆面調査員がやってくるというウワサを聞き、やきもきとしていた。そんななか、れいにゃーとあいにゃーと名乗る若い女性の二人組が宿に訪れる。怪しい雰囲気を持つ二人こそが覆面調査員ではないかと疑う佐藤。果たして、若き女将と覆面調査員の対決の行方は…!?

人物相関図

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物語が読める ♪


ナレーション:賢明なリスナーのあなたは、新潟が、全国有数の温泉地であることを、ご存知ですよね? 有名な越後湯沢温泉、美人の湯として知られる月岡温泉、日本三大薬湯のひとつ、松之山温泉(まつのやまおんせん)、県内有数のパワースポットとして知られる彌彦神社(やひこじんじゃ)の近くにある弥彦温泉。島の各地に温泉がある、佐渡の温泉など、宿泊施設を備えた温泉地は150カ所を超えます。ここ魚沼市あたりにも、古くからやっている温泉宿があります。「なんといっても・元気が出る・湯治場」、略して『湯宿(ゆやど)NGT』。この宿は、美人女子高生女将がいることで有名です。


佐藤:いらっしゃいませ~! 湯宿NGTにようこそ! 私がこの宿の女将をしております、魚沼のマドンナ、佐藤杏樹でございます!


ナレーション:実は、彼女。このところ、ピリピリしていました。というのも、宿の評価を決める覆面調査員が、この宿にも、やってくるという噂を聞いたからです。


佐藤:ああ、ヤバイヤバイ、超、ヤバイんですけど。どのお客様も、めっちゃ、調査員に見えてくる。なんとかいい評価をもらわないと・・・。この場所、隠れすぎた秘湯だから、最近、お客さんが減っているし。

番頭さん:お嬢様! お嬢様!

佐藤:これ、寺山、私はお嬢様じゃない、お・か・み。

番頭さん:失礼いたしました! お・か・み、さん。

佐藤:いや、そこ真似しなくていいから。フツウに、女将さん。

番頭さん:はい、フツウに女将さん、

佐藤:めんどくさっ! 何よ、あわてて、何か用?

番頭さん:は、そうでしたそうでした、実はですね、さっき、入られたお客様なんですが、

佐藤:さっき?

番頭さん:はい、若い女性、二人連れの。

佐藤:ああ、なんか可愛らしいひとたちだったわね。ひとりは、ほっぺが愛らしくて、髪が長くて、もうひとりは、鼻の下のほくろが、チャーミングだった。

(回想)
清司:なんだか懐かしい匂いのする、お宿ですねえ。にゃあ。

日下部:ほんと、お庭の苔が、素敵。にゃあ。

番頭さん:さっすが、お嬢、じゃなかった、女将さん、観察眼が鋭いですねえ。

佐藤:その二人がどうしたの?

番頭さん:はい、それがその、宿帳にですねえ、

(回想)
清司:ここに名前を書けばいいんですね、サラサラサラと、

日下部:名前ですね、サラサラサラと、

番頭さん:書いた名前を見て、ビックリしました。

佐藤:どうして?

(回想)
清司:れいにゃー。

日下部:あいにゃー。

佐藤:れいにゃーに、あいにゃー?

番頭さん:ふざけてるのかと思いましたが、いたって真剣な様子だったんです。で、私、ピーンときたんですよ。ああ、あの二人こそ、我が宿を調査する、覆面調査員ではないかと・・・きっと試しているんですよ、

佐藤:れいにゃー? あいにゃー? どこかで聞いたことがあるような、

番頭さん:女将さん、いかがいたしましょうか?

佐藤:ふふふ、面白い、受けて立とうじゃないの! 見せてあげるわ、美人女子高生女将のどえらい力を!


ナレーション:さて、若き女将と覆面調査員の対決の行方は?


ナレーション:ここは、秋も深まり、庭の紅葉が美しい「湯宿NGT」。美人女子高生女将が、謎の二人連れの部屋を訪ねました。


佐藤:失礼いたします。この宿の女将でございます。ご挨拶をと思いまして・・・。

清司・日下部:どうぞ!

佐藤:失礼いたします。

佐藤:ふすまを開いた瞬間、私は驚いた!

佐藤:ええ?

佐藤:ひとりの女性は、アクロバットでくるくると部屋の中を回り、

清司:え~い! とう! にゃにゃにゃ! にゃああ~~!

佐藤:もうひとりは、激しくも美しいダンスを披露している。

日下部:いえい! はっ! よう! にゃあ! にゃにゃにゃん!!


ナレーション:女将の佐藤は、感動していました。体は柔らかくしなやかで、部屋中を大きく使った、今までにみたことのない、美しいパフォーマンス・・・。


佐藤:すごい・・・。でも、なんで?


ナレーション:ものすごいダンスを踊る二人でしたが・・・


清司・日下部:あ。

佐藤:あああ!


ナレーション:あまりの激しいパフォーマンスに、障子を破ってしまいました。


清司:ごめんなさいにゃ。

日下部:ごめんなさいにゃ。

佐藤:あ、い、いえ・・・。けっこう、派手に、破っちゃって・・・。

佐藤:い、いけない・・・何を動揺しているの? 杏樹、しっかりするの、こういうときこそ、ビシッと、女将らしく。

佐藤:いいんですよ、形あるものはいつか壊れるもの。素敵なダンスを見せていただいたんですから、これくらい、なんとも、ありません。

清司:すみません、

日下部:つい、ここに来たのがうれしくて、

清司:もう、はしゃいだりしませんので。

日下部:ごめんなさいにゃ。

佐藤:ごめんなさいにゃ? ・・・にゃ?


ナレーション:ふたりは覆面調査員に違いない・・・。様子が気になる女将の佐藤杏樹は、二人が露天風呂に入ったのを知ると、こっそり庭の影から、聞き耳を立てました。


佐藤:「お湯につかると、ひとは本音をしゃべる! 」これは先代の教え。何を話しているの?


清司:ああ、いいお湯だね。にゃああ、

日下部:ほんと、しっとりと肌をつつむ、やわらかい、お湯。

清司:ああ、ほっこりするにゃあ。

日下部:ほんと、やっぱり、いい宿だにゃあ。

清司:ねえねえ、あいにゃー、

日下部:なになに、れいにゃー、

清司:私たちの正体、バレてないよね。

日下部:たぶん・・・大丈夫だと思うけど。

佐藤:正体? バレる? や、やっぱり・・・覆面調査員ね、そうなのね!

清司:あんがい、女将さん、気づいていたりして・・・。

日下部:まさか・・・ないない。あのひと、意外におっちょこちょいだし落ち着きないし。

佐藤:おっちょこちょい? 落ち着きない? 失礼な!

清司:わかるぅ、でもさあ、よくやってるよね。

日下部:若いのに、しっかりしてる。

清司:いつも笑顔で、エライ!

日下部:だね。

清司:ああ、気持ち、いいね。

日下部:ほんと、気持ち、いい。

清司:夕食も楽しみだなあ、

日下部:土鍋で炊いた、コシヒカリ。

清司:懐かしいね。

日下部:懐かしい。

清司:にゃああ、

日下部:にゃああ。

佐藤:間違い、ないわね。あの二人は、

清司:え? そこに誰かいるの?

佐藤:ま、まずい。落ち葉を踏んでしまったぁ!

日下部:誰?

佐藤:・・・にゃ、にゃああ、

清司:なんだ、

清司・日下部:猫なのね。

佐藤:にゃあ、


ナレーション:なんとかその場をやり過ごした女将はさっそく番頭さんに報告しました。


佐藤:寺山、間違いないわ。

番頭さん:やっぱり・・・。

佐藤:あの二人、覆面調査員。

番頭さん:これから料理をお出しするんですが、じゃあ、品数増やしたり、鯛のお頭付きも、追加しましょう。デザートを3つほど用意して・・・いえ、5つかな~。ここでいい評価をもらわないと・・・この宿の存続がかかってますので、

佐藤:いいえ、

番頭さん:はい?

佐藤:いつも通りでいい。

番頭さん:女将さん・・・

佐藤:私たち、毎日毎日、ベストを尽くしてきたわよね。

番頭さん:それはまあ、

佐藤:なんか・・・さっき、盗み聴きしている自分が、恥ずかしかった。にゃあ、とか言ったりして、

番頭さん:にゃあ?

佐藤:日々、ベストを尽くす! いつもと変わらぬ笑顔でお客様に接する。それが全て。

番頭さん:女将さん・・・。

佐藤:どうしたの、寺山、なんで泣いてるの?

番頭さん:今の言葉、先代が聞いたら、さぞや喜ばれるでしょう。いい女将さんになりましたねえ。


ナレーション:料理を運ぶとき、女将は、二人に挨拶にいきました。


佐藤:今日は、ようこそ、おいでくださいました。

清司:いいえ、

日下部:いい宿ですねえ、ずっと変わらず。

佐藤:ずっと、変わらず?

清司:ご無沙汰しています。

日下部:お久しぶりです。

佐藤:え? あの、本当に申し訳ございません。その、私、お二人を存じ上げなくて、以前にお越しいただいたことが・・・?

清司:わかりませんか? 麗菜です。

佐藤:麗菜!

日下部:愛菜です。

佐藤:愛菜!

清司・日下部:にゃあああ。

佐藤:ま、まさか!

清司:そう、私たちは、以前、この宿で、あなたに助けてもらった

清司・日下部:猫です。

佐藤:えええ?

日下部:飼い主が引っ越すことになり、

清司:行き場のなくなった私たちを、

日下部:あなたは引き取ってくださり、

清司:暴れん坊だった私たちは、宿の中をかけまわり、

日下部:障子を破ったり、料理をひっくり返したり、

清司:それでも、あなたは、いつも優しく、見守ってくれて・・・。

日下部:二人で話したんです。

清司:長くここにいると、女将さんに迷惑がかかるから、ここを出ようって、

佐藤:・・・麗菜、愛菜・・・。それで急に姿を消したの?

日下部:女将さんに会えなくなるのは、つらかったけど、

清司:女将さんを困らせるのは、もっと哀しかったから。

佐藤:私は・・・ずっと一緒にいたかったのに、私は・・・。

清司:そうだったんですか?

佐藤:もちろん。さみしくて・・・私、一度、きつく叱ってしまったでしょ、二人がダンスをするみたいに暴れたとき・・・ごめんね。

日下部:いえ、当然です。

佐藤:強く叱りすぎて、それで、私のことが嫌いになったのかと、

清司:そんなことはありません。

佐藤:じゃあ、戻ってきて、お願い、麗菜、愛菜。

清司・日下部:女将さん・・・。

佐藤:お願い・・・戻ってきて・・・。


ナレーション:女将が、涙を流したとき、


ナレーション:二人は、


清司・日下部:にゃあ、


ナレーション:二匹の猫に、なっていました。


番頭さん:女将さん、大丈夫かなぁ?


ナレーション:心配になった番頭さんが、部屋をのぞいてみると、


番頭さん:ええ? 女将さんが、二匹の猫を抱きかかえて、頬をすりすりやっている・・・これはいったい?

佐藤:ずっとそばにいてね。ずっと、ずっと・・・。


ナレーション:その後、この二匹の猫のダンスが評判になり、湯宿NGTにはたくさんのお客さんが来るようになりました。まさに・・・招き猫。


佐藤:ちょ、ちょっと! また障子やぶったの?

清司・日下部:ごめんなさいにゃあ!

収録後のワンショット

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