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2018年106日放送 午後900分~NHK-FM

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『センチメンタルトレイン』

原案:須田亜香里、大場美奈、惣田紗莉渚、古畑奈和

脚本:北阪昌人

★参考:たくじい、リッカ

出演

須田亜香里、大場美奈、惣田紗莉渚、古畑奈和、山寺宏一

あらすじ

ここは名古屋の栄にあるSKE女学院。2年A組に転校生としてやってきたのは須田亜香里。人の心を見透かしたような微笑みや独特な雰囲気を持つ須田にクラスメイトの大場美奈、惣田紗莉渚、古畑奈和は不信感を抱いていた。ある朝、そんな須田について三人が話していると須田本人が現れる。惣田と古畑が慌てる一方、大場は強気に接する。すると、大場は須田から放課後、学校裏の公園に来るように言われて…。

人物相関図

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ナレーション:名古屋の栄にある、SKE女学院。秋の日差しが優しく降り注ぐ中庭のベンチで、昼休みに、大場美奈が、本を読んでいると、


須田:なに、読んでるの?

大場:え?

須田:その本、


ナレーション:話しかけてきたのは、綺麗な黒髪の見知らぬ女子生徒。


須田:集中して読んでたから、よっぽど面白い本、なんだね。

大場:これ? ああ、「銀河鉄道の夜」。

須田:銀河、鉄道?

大場:宮沢賢治。

須田:「では、みなさんは、そういうふうに川だといわれたり、乳(ちち)の流れたあとだといわれたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか」。

大場:・・・暗記してるの?。

須田:ふふふ、なんとなくね。

大場:あなた、誰?

須田:私? 私は・・・カリブの真珠、キューバから来た転校生。

大場:キューバ?

須田:向こうにバレエで留学してたんだけど、戻ってきたの。

大場:バレエ?

須田:須田亜香里。

大場:え?

須田:名前、私の。

大場:須田、さん・・・。

須田:じゃあ、またね。


ナレーション:その転校生こそ、SKE女学院に嵐をもたらす、とんでもない生徒だということを、そのときはまだ、誰も知りませんでした・・・。


担任:はい、いいですか。ホームルームの前に、今日から、この2年A組にやってきた転校生を、紹介します。はい、入って!

須田:どうも、須田です。須田亜香里です。

大場:あ、昨日、中庭にいた子だ・・・。

惣田:え? 美奈、知ってるの?

大場:ん? あ、まあね、

古畑:なんか、あの子、金木犀(きんもくせい)の匂いがするね。

惣田:金木犀?

大場:よく、分かるね?

古畑:私ね、大好きなの、金木犀。

惣田:とびきり美人ってわけじゃないけど、めっちゃ、雰囲気あって・・・綺麗・・・。

大場:そうかな。

惣田:そうだよ・・・あ、まあ、美奈よりは、綺麗じゃないけど。

大場:別に、そういうことじゃなくて・・・。

担任:ええ、須田は、長く海外にいたので、慣れないことは多いと思うけど、みんな、仲良くするんだぞ。えっと、席は、大場の隣が空いてるな、大場、おまえは学級委員なんだからな、ちゃんとフォローしてくれよ、いいな?

大場:はい。

須田:大場さん、初めまして、よろしくお願いします。

大場:え? 初めまして? だって、昨日、中庭で、

須田:中庭? なんのこと?

大場:え? だって、お昼休みに、「銀河鉄道の夜」を、

須田:ごめんなさい。何を言ってるか、全然、わかんない。

大場:え?

大場:そのときの須田さんの瞳は、背筋が凍るほど、冷たくて。

須田:大場さんって、字が上手なんだね。

大場:え?

須田:ノートの字、すごく綺麗。

大場:あ、ありがとう。

須田:頭の回転が、きっと速いんだろうな。

大場:そんなこと・・・。

須田:でも、

大場:え?

須田:・・・なんでもない。

大場:ひとの心を見透かしたような微笑み・・・須田亜香里、いったい、何者?


ナレーション:SKE女学院には、バレエ部がありました。球技のバレーボール部ではなく、踊るほうの、白鳥の湖の、バレエ部。


コーチ:はいはい、みなさーん、今日から新しく、我がバレエ部に入ってくれるお友達を紹介するわよ。須田、亜香里さんです。須田さんは、キューバのバレエ学校で厳しい特訓を受けてきたので、おそらく、どんだけ~って、くらい、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれるでしょう。プリンシパルの惣田紗莉渚さん、うかうかしていると、あたくしに、こんなふうに、叱られちゃうわよ~。ボーッと生きてんじゃねーよ!

須田:惣田さん、よろしく。

惣田:よろしく。

惣田:須田さんの踊りは・・・。

惣田:すごかった! 体がしなやかで、柔らかい・・・特に手の表現力がすごい! まるで、釣り師のように、相手をいざない、たぐりよせる!

コーチ:ブラボー! ブラボー! 素敵よ、須田さん! もう、あたし、惚れちゃいそうだわ!

須田:ありがとうございます、コーチ。

コーチ:じゃあ、今度は同じパートを、惣田さん、やってみてちょうだい。

惣田:はい。お願い、します。

コーチ:はい! そこまで! もういいわ、なんか、今日は調子悪いみたいね、惣田さん・・・。なんか悩み事でもあるのかしら・・・。あのねえ、今度の文化祭、誰がプリマになるか、楽しみにしててちょうだい、むふふふふ。

惣田:コーチの言うとおりだった。うまく、踊れない。須田さんの氷のような瞳が気になって、うまく、踊れなかった・・・。

惣田:練習が終わって・・・ロッカールームで着替えていたら、

須田:おつかれさま。

惣田:あ! す、須田さん、

須田:私、惣田さんの踊り、嫌いじゃない。

惣田:え?

須田:きっと、ここまで来るのに、たっくさん、努力、したんだね。

惣田:ちょ、ちょっと! いきなり何よ。わかったようなこと言わないでよ!

須田:でもね、努力って、ひとに見せるもんじゃないんだよね。

惣田:なに? 喧嘩売ってるの?

須田:あなたは、自分に厳しすぎる。もっと、ふわっとしてて、いいの、人生なんてね、思い通りにいかないことだらけだから。笑えばいいの、失敗しても、笑えば、いいの。

惣田:勝手にいろいろ言わないでよ! あんたに私の何がわかるの? !

須田:じゃあね、また、明日。

惣田:なんなの? 須田亜香里、マジ、むかつくんですけど!


ナレーション:夕暮れ時、川岸の土手で、サックスを吹く、古畑奈和の姿がありました。


須田:うまいのね、サックス。

古畑:あなたは・・・須田、さん。

須田:古畑さん、だったわね。

古畑:どうして私の名前を?

須田:カエル、好きなの?

古畑:え?

須田:ほら、バッグに、小さなぬいぐるみ。

古畑:あ、ああ、そう、なんか、カエル、好きなんだよね。

須田:いいよね、かわいいよね。カエル。カエルって顔のわりに口が大きいんだけど、舌が小さいから、食べ物、飲み込めないんだって。だから、飛び出した目玉を下に引っ込めて、飲み込むんだってさ。そのときの画像がこれ、ね、すごい顔でしょ? 気持ち悪いよね、あとね、異物を飲み込んだとき、胃袋ごと吐き出して、綺麗にするんだって、そのときの画像が、

古畑:いいから! 可愛いって思えなくなりそうで、怖いから。

須田:あのね、古畑さん。

古畑:なに?

須田:ひとまえで演奏しないと、うまくならないよ。

古畑:え?

須田:密かに練習して、うまくなったらみんなの前で! って思ってるひと、ゼッタイ、うまくならない。恥をかいてもいいから、誰かに聴いてもらわないと。音楽ってさ、伝えるものでしょ? 誰かに、届けるものでしょ?

古畑:それは・・・。

須田:じゃあね、また、明日。

古畑:須田さんの後ろ姿は、なぜか、哀しそうだった。遠く、電車が橋を渡った。

惣田:なに、あの須田って、何様なの?えらそうに。

大場:なんか存在じたい、気味悪いよね。毒舌キャラは、私のものなのに。豆腐の入ってない麻婆豆腐みたいな顔して、

古畑:でも、

惣田:でも、なに? 奈和ちゃん、

古畑:少なくとも私が言われたのは、そのとおりっていうか、ドキっとしたっていうか・・・。


ナレーション:次の日の朝、授業前、大場、惣田、古畑の三人は、須田亜香里のことを話していました。


須田:なに?

大場・惣田・古畑 うわ!

須田:なんの話、してたの?

惣田・古畑:い、いやあ、別に、

大場:あんたの悪口、言ってたの。

惣田:ちょっと、美奈!

大場:いいじゃない、ほんとのことだから。

須田:そう、私の悪口、言ってたの? ふふふふ、

大場:そこで、須田亜香里は、微笑んだ。

須田:大場さん、

大場:な、なに?

須田:放課後、ちょっといい?

大場:いいって、なに?

須田:ちょっと、学校の裏の公園に来てほしいんだけど。

大場:公園・・・。

担任:さあ、授業、始めるぞ~。今日は宮沢賢治だ、賢治宮沢だ! 先生はなあ、大好きなんだ、賢治が。いいぞ~。賢治は、哀しいんだ、いろいろやったけど、どれもうまくいかずに、苦しんだんだ、いいぞ~。はい、教科書の159ページ、開いて、「カイロ団長」、カエルの話だ。深いぞう、この話。古畑、おまえ、カエル好きだったな・・・。読んでくれたまえ!

惣田:美奈、私も行こうか?

大場:別に、いいよ。

惣田:いったい、何する気だろうね、あの子。


ナレーション:二人は、須田の涼し気な横顔を見ました。


大場:ほんとは、怖かった。須田亜香里、あんたいったい・・・何者?

須田:ふふ、大場さん、前を向いていないと、先生に、怒られるわよ。


ナレーション:謎の転校生、須田亜香里に、呼び出された、大場美奈。放課後、とぼとぼと、学校裏の公園に行きました。そんな大場の後をこっそりつけているのは、惣田紗莉渚と、古畑奈和です。


古畑:大丈夫かな、美奈、

惣田:大丈夫だよ、美奈は、強いから。コロコロしてるけど、あんがい心はとんがってるし。

古畑:須田さん、私は悪い人だと思わないんだけど、

惣田:でも、なんか、不気味だよね。

古畑:美奈の足取り、なんか、重いね。

大場:須田亜香里が、立っていた。その姿はまるで、月から降り立ったかぐや姫みたいに、見えた。

須田:ごめんなさい、呼び出して。

大場:なに?

須田:え?

大場:ここで、喧嘩でもするの?

須田:喧嘩? どうして私と大場さんが喧嘩しなくちゃいけないの?

大場:だって・・・

須田:ちょっと、ついてきてもらっても、いい?

大場:え?

古畑:あれ、なんか、どっかにいくよ。

惣田:だね。

大場:須田亜香里は、迷いなく、スタスタと歩く。私は、彼女の背中を見ながら、思っていた・・・。なんだか、懐かしい・・・前にも、こんなことがあったような気がする・・・。

大場:どこに、いくの?

須田:ふふふ、いいから、着いてきて。

大場:彼女は、古びたビルの中に入っていった。

須田:こっちよ、こっち。

大場:こんなビル、あったっけ・・・。

大場:階段をのぼる、一階・・・二階・・・三階・・・

須田:さあ、着いた。ドア、開けるわよ。

大場:こ、これは!

大場:広い室内の床一面・・・真っ白な紙が敷かれていて、

須田:ここに、字を書いて。

大場:え?

須田:書道で、有名になりたいんでしょ。書家になるんでしょ、いつまでも小さな半紙に書いてちゃ、ダメ。大きな字を書かないと、ほんとうの字は書けない。枠(わく)を壊(こわ)して、自分の殻(から)を破って、ひよこだって、自分の殻は自分で壊して出てくるんだよ。

大場:須田さん・・・。

須田:墨汁と、筆、ここに全部用意できてる。

大場:あなた、いったい・・・。

須田:ただの字が綺麗なひとで終わるか、世界に名をとどろかす書家になるか・・・全部、あなた次第よ、大場美奈さん。

須田:それから、そこの後ろに隠れている、あなたたち、

惣田:え?

古畑:ええ?

須田:惣田さん、古畑さん、

惣田:はい、

古畑:はい、

須田:惣田さん、この階の上にバレエスタジオがある。壁は鏡張りになってる。

惣田:ええ?

須田:このビルの地下は、楽器が練習できるスタジオになってる。古畑さん、サックスは、そこで練習して。

古畑:ええ?

須田:みんな、ここを好きなだけ使っていいんだよ。ここで、思う存分、やってみて。

大場:どうして?

須田:え?

大場:どうして、須田さん、そこまでしてくれるの?

須田:ふふふ、だって・・・あなたたち、書いたじゃない。

惣田:書いた? なにを?

須田:七夕の短冊に、

古畑:短冊?

(イメージ)
大場:私、大場美奈は、筆一本で世界を驚かせたい。誰にも書けない字を書く、書家になりたい!

惣田:私、惣田紗莉渚は、バレエダンサーとして、認められたい。パリでオペラ座の舞台に立ちたい!

古畑:私、古畑奈和は、日本一有名なサックスプレーヤーになって、世界にその名をとどろかせたい!

須田:受け取っちゃったからね、仕方ない。

大場:須田さん、あなたは、

須田:ただね、私ができるのは、きっかけを用意するだけ。ここからは、あなたたちの努力しだい。

惣田:須田さん、あなたはどこから来たの?

須田:宇宙のかなたの、金木星(きんもくせい)。

古畑:きんもくせい・・・。

須田:七夕の短冊に書かれた願いは、センチメンタルトレインという列車にのって、宇宙にいくの。で、さまざまな星に届けられる。私は、たまたま、あなたたちの願いを受け取ったから、ここにいる。

大場:センチメンタル、トレイン・・・。

須田:あなたたち、もしかしたら、SKE女学院を変えるかも、

大場:え?

須田:がんばって! 私は、あなたたちを、心から応援します!


ナレーション:それから、大場、惣田、古畑の三人は、それぞれの道を極めようと、頑張りました。


大場:私は、字を、書く。誰も書いたことがないような、大きくて、のびやかで、ひとを元気にする字を!

惣田:私は、立派なバレエダンサーになる! 足のマメがつぶれても、かまわない、うまくなりたい! もっと、うまくなりたい!

古畑:私は、一流のサックスプレーヤーになりたい! 夢は世界! 世界が舞台! 練習! 練習! また、練習!!

大場:須田さんが与えてくれた、私たちの稽古場は、理想的だった。

惣田:誰もいない場所で、集中できた。

古畑:ひとまえで、いよいよ吹くときが、きた。学園祭で・・・。

須田:古畑さん、素晴らしい演奏だったわ。よく頑張ったね。

惣田:私も、踊り切った!

大場:私の書が、表彰された!

須田:みんな、ほんとうによく頑張ったね。


ナレーション:そうして、須田亜香里との別れのときが、やってきました。SKE女学院の近くの古びたビル、その屋上に・・・。


須田:集まってもらって、ありがとう。

大場:須田さん、私、最初、あなたを怖いって思った。

惣田:私も、

古畑:正直、なんか不気味っていうか・・・。

大場:でも、あなたのおかげで、強くなれた。

須田:それは違うよ。

惣田:え?

須田:私は、どんなひとの心の中にもあるの。

古畑:え?

須田:いい? 忘れないで。センチメンタルトレインは、願えば必ずやってくる。

須田:迎えが、来たみたい。

惣田:行っちゃうの?

須田:行っちゃう。世界中に、待ってるひとがいるから。

大場:また、会える?

須田:七夕の短冊に、心を込めて、書けば。

古畑:ありがとう、須田さん。

大場:夜空からやってきた汽車が、目の前に停まった。

大場:これが、

惣田・古畑:センチメンタルトレイン!

須田:さようなら。あなたたちの戦いは、これからだからね。


ナレーション:その後、大場、惣田、古畑の三人は、大活躍! SKE女学院は、スターを育てる学校として日本だけではなく、世界的に有名になりました。


須田:忘れないで。センチメンタルトレインは、願えば必ずやってくる

収録後のワンショット

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