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2018年728日放送 午後900分~NHK-FM

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番外編『期待していない自分』

原案:河田陽菜、富田鈴花、濱岸ひより

脚本:北阪昌人

★参考:ゴリゴリ君、りえ

出演

河田陽菜、富田鈴花、濱岸ひより、山寺宏一

あらすじ

ひらがなけやき学園2年A組の河田陽菜は、クラスで一番のイケメン、富田ノブ男に花火大会に誘われる。クラス中の女子が憧れる富田から誘われたことがまだ信じられない河田。何気なくぬいぐるみのひよたんに話しかけると、突然、ひよたんが喋りはじめて…!?果たして、河田陽菜は、甘くてすっぱい、夏の思い出をつくることができるのか?

人物相関図

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ナレーション:ここは、ひらがなけやきという坂の上にある、ひらがなけやき学園。2年A組の教室では、窓際の席に座る河田陽菜が、夏の空を見つめながら、ぼんやりしています。


河田:あ~あ、この空の向こうにある宇宙はどこまで拡がっているんだろう。宇宙の先には、終わりがあるんだろうか、もしあるとしたら、どんな風景なんだろう・・・。そもそも、宇宙って、なんだろう・・・。


ナレーション:そんな河田のそばに、ある男子生徒が近づいてきました。クラスでイチバンのイケメン、富田ノブ男です。


富田:河田、

河田:・・・、

富田:おい、河田、

河田:え? あ、富田君、

富田:相変わらず、ぼんやりしてんな。

河田:悪かったわね。で、なに?

富田:あ、おまえさ、今度の日曜の花火大会だけどさ、

河田:うん、

富田:一緒にいくひと、決まってんのかよ。

河田:え? いや、別に、

富田:じゃあさ、・・・オレと行こうぜ。花火大会。

河田:え? ええ?

富田:あけとけよ。

河田:クラス中の女子が憧れる富田ノブ男くんが、私を誘った? え? マジ? めっちゃ、おどろきなんですけどぉ!


ナレーション:河田は、家に帰ると、いつものように、クマのぬいぐるみ、ひよたんに話しかけました。


河田:ねえ、ひよたん、どう思う? なんかの間違いだよね。私ね、期待しないようにしているの、他人にも、自分にも。だって、絶望するだけだもん・・・。ね? ひよたんもそう思うでしょ?

ひよたん:・・・。

河田:ぬいぐるみにだって、期待してない。どーせ、話しかけても、返事なんか返って、

ひよたん:ボクはそんなふうに思わないよ。

河田:え?

ひよたん:花火大会、楽しみにすればいいよ。

河田:ひ、ひ、ひよたんが、しゃべったぁ!


ナレーション:河田陽菜は、甘くてすっぱい、夏の思い出をつくることができるのでしょうか?


担任の先生:ええ、みんな、明日から夏休みだ! うれしいなあ、楽しいなあ、先生にも、あったんだぞ、高校生のときが。好きな子がいてなあ、花火大会に誘ったが・・・断られてしまったよ・・・。ひとりで観た花火・・・しゅーーーーぱん! うまいだろ?花火のまね、うん、私の恋も、夜空ではじけ散った・・・。ということで、今度の日曜日の花火大会、決して、はめは、はずさないように、いいな? でも、恋心という名の箱の鍵は、・・・はずしても、いいぜ。

河田:ああ、どういうつもりだろう、富田君。ああ、きっと、あれだ、私をからかってるんだ。待ち合わせ場所になんか、きっと現れっこない。私が待ちくたびれるのを、影でこっそり見て仲間と笑うんだ。期待しない、ぜったい、期待しない・・・。

ひよたん:どうして、ひなは、そうなんだよ。


ナレーション:河田陽菜は、学校にクマのぬいぐるみ「ひよたん」を、連れてきていたのでした。


ひよたん:ったくもう、そんなふうに、なにも期待しない人生って、さみしいんじゃないかな。

河田:ぬいぐるみのあんたには、わかんないわよ。

ひよたん:ひどいこというんだな、ひなは。

河田:あ、ごめん。

ひよたん:まあ、確かに、ボクはただのぬいぐるみだ。自分ひとりじゃ、どこかに行くこともできない。でもさ、ボクはいつも期待してるよ、ああ、ひなが、どっか連れていってくれないかな、ひなが、楽しいお話してくれないかなあって。

河田:ひよたん・・・。

ひよたん:いつもひなの愚痴をきいてきたけど、今回ばかりは、ボクも言わせてもらう。絶望をおそれるな! 期待していこう!

河田:ひよたん・・・。

富田:なに、ひとりでブツブツしゃべってんだよ、河田。

河田:と、富田君・・・。

富田:あのさ、あれかな、

河田:ん?

富田:河田、おまえさ、浴衣、とか持ってるのか?

河田:・・・あるけど。

富田:花火大会、オレ、浴衣、着ていくからさ、よかったらおまえも、その、浴衣で・・・

河田:・・・きっとあれでしょ、浴衣着させて、待ち合わせすっぽかして、私を笑いものに・・・。

富田:なんだよ、それ、

ひよたん:ちょっとひな! 何言ってんだよ。

河田:あんたはうるさい! 黙ってて。

富田:え! ? いや、うるさいって、オレ・・別に、

河田:いや、富田君に言ったんじゃないの、

富田:ええ~?

ひよたん:楽しみにしてます! ってひとこと言えばいいんだよ。

河田:うるさい! だまれ! クマ!

富田:クマ? い、いや、オレ、クマじゃねえし。

河田:あ、違うの、ごめん、あ、じゃあ、日曜日。

富田:お、おお。日曜日。じゃあ、夕方五時に、ひらがなけやき坂の上の、欅の木の下で、待ってるから。

河田:わ、わかった・・・。その、なんかごめん。えっと、じゃあ、ひらがなけやき坂の下の、欅の木の上ね。

富田:・・・河田、

河田:ん?

富田:おまえ、大丈夫か?


ナレーション:さて、いよいよ、花火大会、当日の朝がやってきました。


ひよたん:え? やっぱり行かない? 行かないってどういうことだよ?

河田:だって! ひやかしに決まってるよ、からかわれるの、嫌だもん。

(イメージ)
富田:あははははは、あれれ? マジでオレが誘ったと思っちゃった? めっちゃウケるんですけどぉ。このモテモテなオレさまが、お前なんか相手にするわけねえじゃん、あはははは、

ひよたん:めっちゃネガティブな想像してるね。

河田:だってそうでしょ、私なんか何のとりえもないんだよ。

ひよたん:そう胸張って言われてもなあ。

河田:魚の皮が好きだし、窓をあけて外の匂いをかぐのが好きだし、宇宙のことを考えてたらとまらなくなる、こんな変わった女の子、あの富田君が、好きになんかなるはずない!

ひよたん:まあ、そりゃ、そうかもなあ。

河田:そうそう! って、ええ?

ひよたん:いや、でも、人間、いろんな趣味のひとがいるから、大丈夫だ。

河田:変な励まし方。

ひよたん:とにかく、若いってことはだな、ぶつかって失敗してもいいってことなんだ。

河田:ひよたん、年寄みたいなこと言うんだね。歳いくつ?

ひよたん:さあな。いいかい、ひな、期待するってことは、大切なことなんだ。期待してワクワクする時間は、人生の宝物だ! さぁ、ひな!

河田:・・・わかった。ひよたんがそこまで言うなら・・・行くよ。

ひよたん:そうこなくちゃ。

河田:別に、期待してないけど。


ナレーション:夕闇が迫る中、河田陽菜は、ひらがなけやき坂の上にある、大きな欅の木の下にやってきました。


河田:もう五時だよ、ひよたん、

ひよたん:大丈夫、きっと来るよ。


ナレーション:金魚が泳ぐ白い浴衣を着た、河田陽菜。空はどんどん藍色に近くなっていきます。


河田:10分、過ぎたよ・・・。やっぱり、来ないよ。

ひよたん:大丈夫、期待して、最後まで、期待してみて。

ひよたん:ひな、誰かくる!

男子学生:おやおや、そこにいるのは、ひらがなけやき学園の河田ちゃんじゃあーりませんか!


ナレーション:目つきの悪い男子が、河田に近づきました。


男子学生:オレはさあ、荒くれ高校二年の荒(あら)クレオだよ。どうかなあ、オレと一緒に、行かねえか? 花火大会。なあ、いいだろう、こんなところにいたら、蚊に刺されちまうぜ。へへへっへ。

河田:がっかりした・・・。そっか、そういうことか。私は、結局、だまされたんだ。

河田:富田君に頼まれたんでしょ?

男子学生:はあ?

河田:私を・・・私を・・・馬鹿にしないで!

男子学生:なに言ってんだか分かんねえけど、さあ、いこうぜ、

河田:ちょっと、やだ、放して!!

男子学生:いいから、さあ!

富田:その手を放せ!!

河田:え?

富田:その汚い手を、放せ。

男子学生:なんだ、おめえ、

富田:オレを知らないか?

男子学生:え?

富田:オレは、富田ノブ男だ。

男子学生:えええ? このあたりを仕切る、最強のイケメン・・・と、富田ノブ男・・・。

富田:怪我したくなかったら、とっとと失(う)せな。

男子学生:ひぃぃぃぃ!!

河田:富田君・・・。

富田:待たせて悪かったなあ・・・。

河田:ほんとに、来てくれたんだね。

富田:え? なにいってんの? 来るに決まってるっしょ。オレが誘ったんだし。

ひよたん:よかったね、ひな。

河田:・・・まだ、わかんないよ? このあと、ドッキリがあるかも。

ひよたん:どこまで期待しないんだよ、ひな、いいかい、いろんなことに、期待してごらん、ひとにも、自分にも。世界が輝いて見えるから。

河田:ひよたん・・・。

富田:河田?

河田:あ、ああ、ごめん、

富田:行こうか、

河田:うん。

富田:浴衣、すげー似合ってるよ。

河田:・・・ありがとう。

富田:始まった!

河田:そう、ようやく、私の人生が始まった。花火の音は、出発を告げる、合図のように、聴こえた。

河田:ひよたん、ありがとう・・・。

ひよたん:・・・・。

河田:ひよたん?

河田:それから、ひよたんは、もうしゃべらなくなった。でも、私は覚えている、ひよたんが言ってくれた言葉。

ひよたん:ひな、いいかい、いろんなことに、期待してごらん、ひとにも、自分にも、世界が輝いて見えるから。

収録後のワンショット

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