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2018年714日放送 午後900分~NHK-FM

放送一覧

『夏のプール』

原案:田島芽瑠、田中美久、松岡はな

脚本:北阪昌人

★参考:バタフライ、ごっち

出演

田島芽瑠、田中美久、松岡はな、山寺宏一

あらすじ

たった3人しかいないHKT女子学園の水泳部。部員の芽瑠はコーチに400メートルメドレーリレーで大会に出ることを宣言するが、コーチをはじめ、同じく部員の美久、はなからも相手にされない。みんなが大会に消極的なことは理解していた芽瑠が、それでも必死になっているのには、ある理由があり…。果たして水泳部はどうなってしまうのか!?

人物相関図

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ナレーション:ここは、HKT女子学園の屋外プール。水泳部の練習が始まっているのですが・・・。


ナレーション:泳いでいるのは、三人だけ。どうやら部員は、三人しか、いないようです。


美久:芽瑠、大会に出るって、本気なの?

芽瑠:ほんきだよ。

はな:だって、私たち、三人しか、いないんだよ。

芽瑠:そんなことはわかってるよ。


ナレーション:プールサイドに集まった部員が話していました。空は真っ青で、蝉の合唱が聴こえます。


芽瑠:あ、コーチ!


ナレーション:やってきたのは、よぼよぼの、おじいさん。


コーチ:ああ、ああ、みんな、こんなに暑いのに、よく、がんばるねえ、わたしはねえ、もう限界、帰らせて、もらうからねえ、

芽瑠:待ってください!

コーチ:ん? どうした? マルくん、

芽瑠:メルです。あの、私たち、来月の福岡県大会に、出ます!

コーチ:ははははは、見たところ、三人しか、いないようじゃが・・・。

芽瑠:それでも出ます。

コーチ:種目は?

芽瑠:400メートルメドレーリレーです。

美久:芽瑠、無理だよ、メドレーなんて、だってあれは、

はな:四人でやるもんだよ。

芽瑠:私が二回、泳ぐ。

美久:そんな・・・。

はな:芽瑠、無理だよ、そんなの・・・。

芽瑠:コーチ、私たちは三年生で最後の大会なんです。

コーチ:それぞれ、個人種目で、出れば、いいんじゃなかろうか。

芽瑠:嫌です。私は、はなと美久、三人で、メドレーがやりたいんです。このチームが好きだから。

コーチ:はははっは、これは愉快じゃのう、三人で、メドレーリレーをねえ・・・ははははは。

芽瑠:私、田島芽瑠は、思っていた。この夏は、一度きりしかない。だから私は、諦めない!


ナレーション:放課後のHKT女子学園。プールに向かう渡り廊下で、田中美久と松岡はなが話しています。


美久:どう思う? はな。

はな:どう思うって?

美久:芽瑠だよ、芽瑠。

はな:ああ、

美久:おかしいよね、三人でメドレーリレーだなんて。

はな:まあねえ、おかしいね。

美久:もしさ、仮に出られたとしても、恥ずかしいよ。

はな:恥ずかしい?

美久:だってさあ、たった三人で頑張りました! って、なんかお涙ちょうだいって感じで、マジ、ひくわ~。

はな:でもさ、芽瑠には芽瑠の思いがあるんじゃないかな。

美久:あ、芽瑠が来た!

芽瑠:練習、がんばろうね。はな! 美久!

はな:うん、

美久:あ、芽瑠、あのさ

芽瑠:なに? 美久。

美久:本気?

芽瑠:なにが?

美久:本気で、メドレーリレーに出ようって、思ってるの?

芽瑠:・・・思ってるよ。さあ、練習練習!

芽瑠:美久が、どんびきしてるのは、わかっていた。それでも、私はやりたいと思った。それには、わけがあって・・・。ある日、聴いてしまった。校長室で、コーチが校長と話しているのを・・・。

コーチ:ええ? もうおしまいなんですか、校長先生、

校長:残念ながら・・・。

コーチ:そんな・・・。

校長:ここまで弱いと、さすがに、面倒みきれませんよ。

コーチ:そう言わずに、

校長:いや、気持ちはわかりますが、私だって、成長を見守りたい、でもねえ・・・負け過ぎですよ・・・。

コーチ:確かに・・・。

芽瑠:そう、私たちは、全く、いい成績を残せなかった。廃部になっても仕方ない。でも・・・そうなってはいけない理由があった。それは・・・。

美久:おじいちゃんが?

はな:そう、

美久:芽瑠のおじいちゃんが造ったんだぁ、あのプール。

はな:もともと、大工さんだったらしいんだけど、学校にはプールがあったほうがいいって、無料で、コンクリ固めて、いちからプールを造ったんだって。

美久:そうなんだ・・・だから・・・

はな:だから、芽瑠は、水泳部をつぶしたくないんだよ。・・・水泳部がなくなれば・・・きっと、あのプールは消える。

美久:そっか・・・。でもさ、私らには関係ないじゃん。

はな:プールがなくなれば、夏のプールの授業もなくなる。生徒からは不評だしね、プールの授業。もう子供じゃないんだし。着替えるの、メンドクサイし。

美久:私は、好きだけど。きっとそういう子も、いるよね。

はな:校長は、プールをなくして、校庭を拡げたいって、思ってるみたいだしね。


ナレーション:美久とはなの二人が、プールに近づくと・・・。


ナレーション:25メートルは背泳ぎ、ターンして、クロール、芽瑠の姿がありました。


美久:すごいね、

はな:だね、

美久:さっきから、練習、休んでないね。

はな:だね、


ナレーション:芽瑠は、必死でした。おじいちゃんの思いを残したい、そのために・・・。


芽瑠:私は、おじいちゃんっ子だった。いろんなところに連れていってくれたおじいちゃん・・・。大好きな、おじいちゃん。

美久:芽瑠・・・本気なんだね。

はな:そう、本気。どうする? 美久、わたしらも、やるしかないんじゃない?

美久:・・・そうだね。やるしか、ないね。

アナウンサー:はい、全国の水泳ファンのみなさま、こんにちは。全国高校水泳ミラクル選手権、実況アナウンサーの、水野泳(みずの・およぐ)です。福岡大会初日。400メートルメドレーリレーに、ちょっと変わった高校が参加しています。背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライ、自由形、4種目をそれぞれ、100メートルずつリレーで泳ぐこのレースに、三人で参加している学校があるんです。HKT女子学園。果たして、どんなレースを展開してくれるんでしょうか?

アナウンサー:さあ、背泳ぎからスタートです。HKT女子学園は、第2コース。最初に泳ぐのは、最後に自由形を泳ぐ、田島芽瑠さんです。

アナウンサー:おおっと、いきなり飛ばす、田島選手! すごい! 速い速い!!

芽瑠:負けるわけには・・・いかない。

美久:芽瑠!! がんばって! 芽瑠!!

アナウンサー:二番目に泳ぐのは、田中美久選手! いま、飛び込みました!

芽瑠:美久、お願い! 練習、頑張ったよね。私たち、頑張ったよね。

アナウンサー:すごい、HKT女子学園、すごい、田中美久も頑張り、一位で通過、タイムは? おおっと、なんとここまで高校生女子、日本新記録!

はな:美久、美久、その調子!!

アナウンサー:第三泳者は、バタフライの松岡はな!

はな:ぜったい、勝ってみせる!

アナウンサー:これも、速い! いや、ああ、疲れが出たか、ああ失速!、でも、持ち直して、2位でターン、いよいよ、アンカー、さっき背泳ぎを泳いだばかりの田島芽瑠が、自由形に挑みます。

芽瑠:おじいちゃん、見ててね。私、負けない・・・。

アナウンサー:すごい、すごい! なんとか、二位をキープ! さあ、一位になれるか・・・。

芽瑠:ダ、ダメだ・・・右足が、つってきた・・・。動かせない、ああ、ごめん、みんな、ごめん・・・。

アナウンサー:おおっと、田島選手、失速、ここで失速、万事休す! HKT女子学園の挑戦は、終わりました・・・。

芽瑠:ごめん、美久、

美久:あやまらないで。

芽瑠:はな、私・・・。

はな:いいの、芽瑠、よくやったよ、私たち・・・。

コーチ:あああ、あああ、よく頑張ったなあ・・・。

芽瑠:ごめんなさい、コーチ、これで我が校のプールは・・・。

コーチ:プール? プールがどうした?

芽瑠:とぼけないでください。校長先生と・・・私、聞いちゃったんです。

(回想)
コーチ:ええ? もうおしまいなんですか、校長先生、

校長:残念ながら・・・。

コーチ:そんな・・・。

校長:ここまで弱いと、さすがに、面倒みきれませんよ。

コーチ:そう言わずに、

校長:いや、気持ちはわかりますが、私だって、成長を見守りたい、でもねえ・・・負け過ぎですよ・・・。

コーチ:確かに・・・。

コーチ:ああはっはは、あれかい、あれはねえ、わたしが、校長に、将棋を習っていてねえ、いつまで経っても進歩がないもんでね・・・。

芽瑠:えええ? そうだったんですかっ!?

芽瑠:こうして、おじいちゃんのプールは守られた。私の高校三年生の夏は、精一杯泳いだ、最高の夏だった!

収録後のワンショット

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