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2018年714日放送 午後900分~NHK-FM

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『人魚姫メルの冒険』

原案:田島芽瑠、田中美久、松岡はな

脚本:北阪昌人

★参考:グミ子、ユーリ

出演

田島芽瑠、田中美久、松岡はな、山寺宏一

あらすじ

ここは、九州、福岡の博多湾。港にやってきた豪華客船HKT号を見つめているのは、人魚姫のメル。人間界の食べ放題ビュッフェに憧れるメルは、声が出せなくなることを条件に、魔女のミクの力で一日だけ人間にしてもらう。人間になったメルは、さっそくHKT号に乗るHKT王国の王子ハナオに声をかけられるが、メルは客船のキッチンから香る匂いに興味を持ち…。

人物相関図

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物語が読める ♪


ナレーション:ここは、九州、福岡の博多湾。いま、一隻の大きな船が、港にやってきました。豪華客船HKT号です。


ナレーション:海の中から、頭だけを出して、その船を見つめているのは、人魚姫メル。


メル:あ~あ、あんな船に、一回でいいから、乗ってみたいなあ。でもなあ、私は人魚だしなあ・・・。ビュッフェっていうのがあるらしいんだよなあ、人間界には、いわゆる、食べ放題。なんじゃそりゃ、食べ放題って・・・。皿に好きなだけ、のせて、いいんだとさ。なんじゃそりゃ、お、おお! 皿になんかてんこ盛りにしためっちゃイケメンが、デッキを歩いてる。

ハナオ:ラーメン、つけめん、ボク、イケメン、なんてね。ちょっと、古かったかな、はははは。


ナレーション:この、めっちゃイケメンこそ、HKT王国の王子、ハナオ・マツオーカでした。世界中を回って見聞を広めようと考えていたのです。


ハナオ:いやあ、食べ放題っていっても、そんなに食べられるもんじゃないよなあ、って、あ、ああああ! でっかいメロンパンを落とした!


ナレーション:波間に、ゆらゆら揺れるメロンパンは、やがて沈んでいきました。


ナレーション:それを、ものすごいスピードで追いかけていくのは、人魚姫メル。メロンパンを手にすると、いきなりかぶりつき!


メル:美味しい! めっちゃ美味しい、このメロンパン、いいなあ、人間界は、こんなのを毎日食べられるんだ。

魔女ミク:はははっはは、

メル:なに? この耳ざわりな笑い声は?

魔女ミク:ははははっは、こんにちは。人魚姫メル。

メル:あなたは・・・妖精ミクリン?

魔女ミク:誰が妖精や! 私は、海の中でフラフープをするのが好きな、魔女のミク。

メル:ミクさんかあ。

魔女ミク:メル、どうやら、人間になって、食べ放題に行きたいらしいわね。

メル:ドキ! どうしてそれを?

魔女ミク:私の髪の毛は、ワカメでできてるんだよ。

メル:・・・いや、意味がわかりません。

魔女ミク:ワカメはねえ、海で起こる全てのことをキャッチする、アンテナなんだよ。それがめぐりめぐって、私の髪に、とどくんだよ、キューティクルとなってねえ。

メル:そういうことか・・・?

魔女ミク:で、どうなの? 行きたいの? 行きたくないの?

メル:食べ放題、ビュッフェ、行きたいです!

魔女ミク:ようし、では、海の日、一日だけ、メルを人間にしてあげる。

メル:マジで? めっちゃうれしいんですけどぉ。

魔女ミク:って、なんか軽いなあ。

メル:やったぁ! めっちゃ、うれしい! サイコー! 食べ放題、イエイ!

魔女ミク:喜ぶのは、まだ早いよ。

メル:え?

魔女ミク:条件がある。

メル:条件?

魔女ミク:人間になる代わりに、あんたの声は、一日、私が預からしてもらうからねえ。

メル:え? 話せないんだ。

魔女ミク:そう。声をはっすることはできない。

メル:でも・・・食べ放題が体験できるなら・・・。

魔女ミク:OK。契約成立。はははは、


ナレーション:再び、船のデッキでは・・・。


ハナオ:今日の海は、いちだんと綺麗だなあ・・・。博多湾、いいところだ。いい出会いが、ありそうな予感がするぜ。ボクは、イケメンだしなあ、あははははっは。


ナレーション:さて、人魚姫メルは、どんな一日を過ごすのでしょうか?


ナレーション:博多湾に浮かぶ、豪華客船HKT号には、HKT王国の王子、ハナオが乗っていました。彼が、デッキから、青い海を目を細めて見ていると・・・。


ハナオ:むむ、向こうからやってくるのは、

メル:こんにちは、って、ああ、そうだった! 私は声を一日、預けているんだった。

ハナオ:全身ずぶ濡れの、めっちゃ可愛い女の子! どうも、こんにちは。まるで海にでも落ちたみたいですね。

メル:こんにちは。私は、海からやってきた人魚です。って聴こえないか。

ハナオ:ああ、え~と、わかるよ、何を言ってるか、わかるよ、もう一回、ゆっくりいってくれたまえ。

メル:わたしは、海からやってきた、人魚です。

ハナオ:タワシは? クツを洗ってきた? 戦士です?

ハナオ:なるほど、タワシか・・・。

メル:もう、全然、違うし。

ハナオ:いま、タオルを持ってこよう・・・。ここで待っているんだよ。ビューティフル・レディ。

メル:ああ、タオルより、私は食べ放題がいいんだけど。う~ん、あっちから、いい匂いがしてる・・・。


ナレーション:匂いに誘われるがままに、メルは、客船の地下にある、キッチンに行向かいました。


メル:ああ、ここ、ヤバイかも・・・めっちゃ、いい匂い。

シェフ:おおい、ダメだよ、それじゃ、焦げちゃうよ! ああ、そっちは煮込みすぎだ、おいおい、料理はリズムだ、食材との会話だ! 生き物相手にしてんだから、気合い入れてやれ! 気合い!


ナレーション:シェフが、メルに気がつきました。


シェフ:おおい、あんた誰だよ、ダメだよ、勝手に入ってきちゃ、しかも、ずぶ濡れじゃないか!

メル:なに? この太ったおじさん。白いとんがり帽子をかぶって、あ、ああああ、なんか、なんか、太ったヤリイカみたい、ふふふ、

シェフ:って何笑ってんだよ。あのね、関係者以外、ここは、立ち入り禁止。おいおい、誰だ、このスープつくったのは? 味がぼんやりして、これじゃあただの熱いお湯だよ、全くもう。

メル:どれどれ、って、熱っ!

シェフ:って、あんた、何、指を突っ込んでるんだよ! もう・・・スープが台無しじゃないか!

メル:いいから、飲んでみてください。これ。

シェフ:え? なに? 飲んでみろ? ええ。このスープ? ・・・う、う、う、うまい! ぎょぎょ! 絶妙の塩加減! いったい、どうやったんだ? あんた何もんだよ!

メル:私が、片っ端から手を突っ込んで味見してもらうと、

シェフ:こっちも、ああ、こっちも、味が、整ってる。まるで魔法だ・・・。なんだ、あんた、すげえ、マジ、すげえ、あんた、ここで働かないか?

ハナオ:なんだよ、ここにいたのか、ボクの愛しのキミ。探したよ、まさか厨房にいるとはねえ。

シェフ:ああ、王子様、これはこれは。

ハナオ:シェフ、まさか、このレディをここで働かすわけじゃないよねえ。この人はねえ、王女になるひと、なんだよ。

シェフ:ああ、そうでしたか・・・いやあ、あまりにすごい料理センスをしてるんで、つい。

ハナオ:さあ、愛しのキミ、って、あれ? いないっ!

メル:私は海に飛び込み、魔女のミクを探した。

魔女ミク:私を探しているのかい?

メル:ああ、いたいた! ワカメおばけ。

魔女ミク:誰がワカメおばけじゃ!

メル:魔女ミクさん、あのですね、なんとか、あそこで働くわけにはいかないでしょうか?

魔女ミク:あそこ?

メル:船で料理を作ってるところですよ。

魔女ミク:え? 食べ放題は?

メル:いや、もちろん、食べ放題はいいんですが・・・。ただ、それよりもっと、うれしいものがあったんです。

魔女ミク:もっと、うれしいもの?

メル:はい、それは、

魔女ミク:それは?

(回想)
シェフ:こっちも、ああ、こっちも、味が、整ってる。まるで魔法だ・・・。なんだ、あんた、すげえ、マジ、すげえ、あんた、ここで働かないか?

メル:ほめられる、ってことです。私は、今まで、こんなにほめられたこと、なかった。海の世界では、いっつも、他のひとより、うまくできなくて。でも、あの太ったおじさんは、言ってくれた。

(回想)
シェフ:ここで働かないか?

メル:うれしかった・・・。だから、魔女ミクさん、私をあそこで、ずっとずっと働けるようにしてくれませんか?

魔女ミク:永遠に声を取り戻すことができなくても、いいの?

メル:・・・はい、いいです。私、自分の居場所がほしいんです。


ナレーション:魔女のミクは、メルの真剣なまなざしに、心をうたれました。この子は、本気だ、そう思ったのでした。


ハナオ:おお、見つけたよ、愛しのキミ。


ナレーション:再び、デッキにあがった人魚姫メルにハナオが歩み寄ります。


ハナオ:ボクと結婚してほしい。

メル:ああ、声が出せないから、もどかしい。私は、この船のキッチンで働きたいだけなのに・・・。

ハナオ:さあ、ボクと一緒に行こう、さあ、

メル:いや、離して!

ハナオ:え?

メル:え?

メル:声が・・・出た。

ハナオ:なんだ、喋れるんじゃないか。

(イメージ)
魔女ミク:声を戻してあげるよ・・・せいぜい、頑張りなさい、もし、なんかあったら、いつでも海に帰っておいで。

メル:ミクさん、ありがとう!!

メル:王子様、私は、この船のキッチンで働きたいのです。美味しい料理をつくって、食べたひとを笑顔にしたいのです。

ハナオ:おおお、おおおお、なんと、心の美しい・・・。


ナレーション:こうして、人魚姫メルは、無事に、キッチンで働くことができました。彼女のつくる料理は、世界中の人々を、幸せにしました。


ハナオ:メル、キミは、素晴らしい!

メル:でも、やっぱり、つくるより、食べるほうが好きかも!

収録後のワンショット

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