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2018年630日放送 午後900分~NHK-FM

放送一覧

『早送りカレンダー』

原案:宮脇咲良、本村碧唯、豊永阿紀

脚本:北阪昌人

★参考:ゆきお、掃除大好き星人

出演

宮脇咲良、本村碧唯、豊永阿紀、山寺宏一

あらすじ

HKT高校一年A組の宮脇咲良は同じクラスの本村アオタと日曜日に初デートをすることに。金曜日の放課後、帰り道を歩く宮脇の前に、魔法使いの老婆が現れる。宮脇はあさってにひかえた初デートを待ち遠しく思っていることを老婆に伝える。すると老婆は「早送りカレンダー」という時間を早送りすることができるカレンダーを出してきて…。果たして宮脇咲良のデートは、うまくいくのか?

人物相関図

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物語が読める ♪


ナレーション:ここは、福岡、博多にある、HKT高校。一年A組のクラスでは、窓際に座る宮脇咲良が、校庭で練習するサッカー部の、ある男子生徒を目で追いかけています。


宮脇:本村君・・・。ああ、なんてカッコいいんだろう。キレのある身のこなし、ドリブル、パス、そして、シュート! ああ、タオルで汗を拭く姿も可愛い・・・。本村君は、タオルが好きで、いつもバッグに五枚は入ってる。ああ、待ち遠しい、彼とのデート! そう、私は、あさっての日曜日、彼と初めてデートする・・・。彼との出会いは・・・。私が鹿児島から転校してきたとき・・・

(回想)
本村:教科書、ないだろ? オレと一緒につかおうぜ。

宮脇:え?

本村:いいから、机、こっちにくっつければいいよ。

宮脇:あ、ありがとう。

本村:鹿児島もめっちゃいいところだと思うけどさ、福岡も、めっちゃ気に入ると思うぜ。みんなあったかいし、優しいし、何より、ラーメンがうまい!

宮脇:あ、ありがとう。

本村:あ、オレ、本村アオタ。よろしく。

宮脇:よろしく。


宮脇:彼の笑顔がまぶしかった・・・。そして、本村君の前の席の綺麗な顔の女子が振り向いて、

(回想)
豊永:あ、宮脇さん、私、豊永阿紀です。よろしく。学級委員やってるんで、なんでも聞いてね。

宮脇:ありがとう。よろしく。


宮脇:私の博多での暮らしは、この二人のおかげで、楽しく始まった! そうして私は、本村君のことが・・・。あ~、日曜日のデート、楽しみだなぁ!


ナレーション:果たして宮脇咲良のデートは、うまくいくのか??


ナレーション:金曜日の放課後、宮脇咲良は、同じクラスの学級委員、豊永阿紀となだらかな長い坂をゆっくり降りていきます。夕陽の赤が、二人を包んでいます。


宮脇:今日も、一日、終わったね。

豊永:だね。ああ、なんか、夏だね。

宮脇:夏だね。

豊永:夏の夕方って、なんか、せつないよね。

宮脇:・・・せつないね。

豊永:どした?

宮脇:え?

豊永:宮脇さん、なんか・・・悩み事?

宮脇:・・・わかる?

豊永:わかる。宮脇さん、わりと顔に出るから。

宮脇:そっか・・・。

豊永:もしかして・・・本村君のこと?

宮脇:え?

豊永:あたり?

宮脇:・・・あたり。

豊永:好きになっちゃったの?

宮脇:うん・・・たぶん。あさっての日曜日、デートするんだけど、

豊永:え?

宮脇:なんか・・・待ち遠しくて。もう、なんだか、今日は授業が全然頭に入らなかった。

豊永:・・・そっか。

宮脇:確か、豊永さん、本村君と幼なじみだったよね。ね、彼、何が好きかな。あ、どんな格好していったら、気に入ってもらえるかな?

豊永:・・・そうねえ、あいつ、まだまだ子どもだから、色気より、食い気、っていうのかな? たぶん、ラーメンでも食べにいくと喜ぶんじゃない?

宮脇:そっか・・・。

豊永:ファッションもね、全然、わかってないと思う。あ、ただ・・・ミサンガは好きかな・・・。

宮脇:そう言った豊永さんの右腕には、ミサンガがあった。赤と青で編み込まれた、可愛いミサンガ。

豊永:あ、じゃあ、また来週、

宮脇:豊永さんは、いつものように、二股の道を右に曲がっていった・・・。私は、いつものように、左側の並木道を歩いていく・・・。

老婆:そこの、あんた、おいおい、あんたじゃよ、そこの可愛い顔の、あんた。

宮脇:いきなり、黒いマントを被ったおばあさんに声をかけられた。

老婆:あんた、早く時間が過ぎないかと、焦ってないかい?

宮脇:え? どうしてわかるんですか?

老婆:へへへっへ、魔法使いには、なんでもわかるんじゃよう。

宮脇:魔法使い? おばあさん、魔法使いなの?

老婆:そうじゃよ。

宮脇:へえ、初めて会った! 魔法使いなんだ・・・。これ、本物?

老婆:痛い、髪をひっぱるでない、で、どうなんじゃ? 時間を早送り、したいんじゃろ?

宮脇:実は・・・そうなんです。早く、日曜日の朝10時にならないかなあって。

老婆:ジャーーーン、

宮脇:なに? このでっかい、スケッチブックは?

老婆:いや、スケッチブックではない、これは「早送りカレンダー」!

宮脇:早送りカレンダー?

老婆:そうじゃ、カレンダーの日付に名前を書き込み、「この日、この時間に行きたい! 」って叫ぶと、一気に、

宮脇:飛べるの?

老婆:ああ、飛べる。

宮脇:飛びたい!

老婆:そうじゃろそうじゃろ。よーし、いいか? 使えるのは、たった一回限り。一度、飛んだら、三十分後に、もとに戻る、それでも、いいかい?

宮脇:はい! 一度、行ってみれば、本村君の好みもわかるし、

老婆:そうかいそうかい、じゃあ、はい、書きこんでごらん。

宮脇:私は、カレンダーに、自分の名前を書きこんだ。

老婆:さあ、叫んでごらん。

宮脇:はい。私は・・・「この日、この時間に行きたい! 」

宮脇:体がふわっと、宙に浮いたような感じがして・・・。次に、ラベンダーの香りがした・・・。

宮脇:うわああああ、あああああああ、

宮脇:気がつくと、私は、駅前にいた。本村君との待ち合わせ場所。ロータリーにある時計を見る・・・10時。

本村:わりい、わりい、遅れちゃって、

宮脇:振り向くと、そこに、本村君がいた。

本村:宮脇、おまえ、日曜日なのに、制服かよ。

宮脇:え? あ、ああ、まあ、

宮脇:そっか、服は金曜日の私のままなんだ・・・。

本村:え?

宮脇:いや、なんでもない。

本村:そっか・・・ああ、これからどうする?

宮脇:え?

本村:やっぱ、あれかな、映画とか、見にいくか?

宮脇:そ、そうだねえ。

本村:でもさ、なんか、腹へんない?

宮脇:そうだ、ね、ラーメンとか、行く?

本村:いいねえ! そうしようぜ。

宮脇:あ、でも、この時間にやってるとこ、あるかな。

本村:あるんだよ、それが! オレのめっちゃ好きな店、

店主:へいらっしゃい! なんだ、アオタか。

本村:なんだってことねえだろ。ああ、父ちゃん、こちら、宮脇咲良さん、

宮脇:と、父ちゃん? って、ええ? 本村君のお父さん?

店主:ああ、どうも、いつもアオタが世話になってます。どうしようもねえでしょ、こいつ、勉強はからきしダメで。

宮脇:はい。あ、いえ、

本村:父ちゃんのつくるとんこつラーメンは、世界一だと思うんだ。オレね、このお店、継ごうと思ってるんだ。

宮脇:そうなんだね。

店主:なんだよう、いつもこんな店、継げるかあって、いってんのによう。

本村:まあ、複雑な年ごろなんですよ、オレたちは。とんこつ二つで!

店主:あいよ。

宮脇:私は、ふと、想像してしまう・・・。エプロンに三角ずきんをかぶった私が、カウンターの向こうにいる。隣には、本村君、

(妄想)
本村:おう、咲良、餃子あがったぜ。

宮脇:はいよ、おまえさん!

本村:今の間に、子どもたちのお迎え、行ってきな。

宮脇:はいよ、おまえさん!


宮脇:そういうのも、悪くないかも・・・。

宮脇:突然、勢いよく、店の戸が開き、

店主:へいらっしゃい! って、なんだい、阿紀ちゃんかい・・・。

宮脇:そこに、豊永さんが、立っていた。その目は、何かを決意したように、真っ直ぐで、

豊永:宮脇さん、ごめん、

宮脇:え?

豊永:私、ずっと黙ってたけど・・・本村君のことが、好きなの。

宮脇:ええええ?

豊永:ちっちゃいときから、本村君のお嫁さんになるのが、私の夢で、

本村:お、おいおい、豊永、なに言っちゃってんだよ、知らねえよ、そんなこと・・・。

宮脇:私は、気づいていた。本村君の右手には、ミサンガがあった。豊永さんと同じ、青と赤で編まれた綺麗なミサンガ。

豊永:私・・・宮脇さんのことも、大好きで、だから、どうしようかって悩んだ。宮脇さんになら、本村君をとられても仕方ないかなあって。だって宮脇さんは可愛いし、頭もいいし、性格も優しいし。

宮脇:豊永さん・・・。

豊永:でも・・・やっぱりダメ。私、本村君のこと好きすぎて、ダメ・・・私の、私の夢だから・・・。

宮脇:私は・・・。

宮脇:と言いかけたとき、体がふわっと宙に浮かぶ感じがした。

宮脇:そうか・・・一時間、経っちゃったんだ・・・。

宮脇:うわああああああああ!

宮脇:あああああああああ!

宮脇:気が付くと、私は夕暮れの並木道にひとり立っていた。まわりには誰もいない。

豊永:はぁはぁはぁ、

宮脇:豊永さんが、追いかけてきた。

豊永:あ、あの、宮脇さん、

宮脇:なに? 豊永さん、

豊永:あの、あのね、私、

宮脇:やめた。

豊永:え?

宮脇:私、あさっての本村君とのデート、やめた。

豊永:ええ? なんで?

宮脇:え? なんでだろう・・・なんか、急にそんな気分じゃなくなったの。あとで、本村君には、電話する。

豊永:そう、なんだ。

宮脇:うん。

豊永:それで・・・いいの?

宮脇:・・・うん、いい。

豊永:後悔、しない?

宮脇:しないと思う。

豊永:そっか・・・じゃあね。

宮脇:じゃあ・・・。

宮脇:私は、小さくなっていく豊永さんの背中をいつまでも見ていた。

収録後のワンショット

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