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2018年421日放送 午後900分~NHK-FM

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『欲望刑事(よくぼうでか)』

原案:吉田朱里、渋谷凪咲、太田夢莉

脚本:北阪昌人

★参考:コットン、りんご兄弟

出演

太田夢莉、吉田朱里、渋谷凪咲、山寺宏一

あらすじ

時は2048年。多くの問題を抱える政府は、欲望規制法案を成立させた。そして、人々の欲望を監視する特殊組織、人呼んで「欲望刑事」を結成した。欲望を抱いたものを次々に逮捕していく欲望刑事。そんなある日、欲望は抑制すべきではないと主張し、隠れて欲望を語り合う地下組織「欲望者(よくぼうもの)」の情報を入手する。欲望刑事の太田は地下組織へ潜入捜査を試みるが…。

人物相関図

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物語が読める ♪


ナレーション:ときは、2048年。多くの問題を抱える政府は、ひとびとの抱く欲望こそが、その原因だという結論に達し、欲望規制法案を成立させた。そして、ひとびとの欲望を監視する特殊組織を結成した。彼らの名は、ひとよんで、「欲望刑事(よくぼうでか)」。


女子A:あああ、スイカとみかんが食べたい!

欲望刑事・太田:そこのキミ、ちょっと、こっちに。

女子A:はい?

太田:いま、なんて言った?

女子A:え? あ、いや、私はただ、水星ってみかんみたいな形かなあって、

太田:逮捕。

女子A:えええ?

女子B:もっともっとメイクがうまくなって、女子力あげたい!

太田:はい、そこの、キミ、ちょっと、こっちに。

女子B:え? あ、私、ですか?

太田:そうですよ、ブログになんて書いた? 女子力あげたい! って書かなかった?

女子B:い、いや、あれは、女子力っていう名の凧(たこ)をあげたい、っていうか、タコタコあがれ、揚げタコ焼きにな~れ、なんちゃって、

太田:・・・つまらん、すこぶる、つまらん。

女子B:まさか・・・。

太田:逮捕。

女子B:ひえええええ、許してください~。


ナレーション:ここは、大阪なんばにある、「日本みんなの欲望を暴力を使ってでも抑制します管理センター」、略して、NMB管理センター。センター長の、希望梨男(のぞみ・なしお)は、部下の太田に、はっぱをかけていました。


希望:おい、太田!

太田:はい!

希望:最近、たるんでないか!

太田:はい! たるんでないであります!

希望:ケータイ小説が読みたい! とか思ってないだろうな!

太田:はい!あるかな・・・いえ、ないであります!

希望:「はあ、疲れた夜は、スマホでアニメでも見るのがイチバン」、とか思ってないか!

太田:はい! あるかな・・・いえ、ないであります!

希望:よかろう。太田、

太田:はい。

希望:地下組織のことは、知ってるな。

太田:地下組織・・・。

希望:欲望は抑制すべきではないと主張し、ひそかに、隠れて、欲望を語り合うイベントをやっている連中だよ。

太田:はい! 噂には聞いておりました。ちょっと、うらやましいな。

希望:は?

太田:いえ! なんでもないであります!

希望:おまえに、潜入捜査の任務を与える。

太田:せ、潜入捜査?

希望:欲望刑事であることを隠し、彼らの仲間になるんだ。いいな?

太田:センター長!

希望:なんだ?

太田:なぜ、私をこの任務に?

希望:ふふふ、簡単なことだ。

太田:はい!

希望:私も、おまえと同じで、グリンピースが嫌いだからだ。

太田:はい!

希望:太田!:地下組織「欲望者(よくぼうもの)」をぶっつぶせ!

太田:はい!!


ナレーション:ここは、大阪なんばの、とあるビルの屋上・・・。


あかりん:ねえ、ナギオ、

ナギオ:なんだい、あかりん、

あかりん:私たち、地下組織なのに、こんな屋上にアジトがあって、いいの?

ナギオ:いいんだよ、あかりん。

あかりん:やっぱり、地下のほうが、しっくりくるわ。

ナギオ:ふふ、そんなの、おかしいよ。

あかりん:そうかなぁ。

ナギオ:それに、ボクにはねえ、太陽の光を体いっぱいに浴びたいっていう欲望があるからね。

あかりん:ダメ、ナギオ、その言葉を言っちゃ、ダメ。

ナギオ:ふふふ、平気さ、ここは、安全だ。

あかりん:安全? そんな場所、あるんかなぁ。そういえば・・・

ナギオ:ん?

あかりん:最近、組織に入った、あの子だけど、

ナギオ:ああ、太田さんか?

あかりん:大丈夫かな?

ナギオ:大丈夫って?

あかりん:いや、考えすぎだと思うんねんけど、まさか、スパイってことないよね?

ナギオ:ははははは、ないない。あんな綺麗な子が、スパイだなんて、

あかりん:綺麗? まさか、ナギオ、太田さんに、

ナギオ:え? あ、ああ、ないない、ボクは、あかりんに、ぞっこんラブさ、はははは

あかりん:もう、ナギオの・・・アホんだら。

ナギオ:お、噂をすれば・・・来たぜ、太田さん、

太田:なんだか、楽しそうね。

あかりん:そうでもないけど、

ナギオ:ずいぶん、たくさんのトウモロコシを抱えてるねえ、

太田:だって、好きだから。欲望って、いいわね。

ナギオ:そうさ。

太田:で、なんの話をしていたの?

ナギオ:いやあ、笑っちゃうんだけど、あかりんがさあ、

太田:あかりんが?

ナギオ:太田さんが、スパイだっていうんだよ。

太田:えっ!!!

ナギオ:ああ、あああ!

あかりん:別に私は、スパイだって決めつけたわけじゃないのよ。

太田:あああ!

太田:痛った~~・・・。

ナギオ:ああ、大丈夫? 太田さん、

太田:はい、

ナギオ:さあ、ボクの手を、

太田:すみません。

あかりん:もうナギオったら、女性みんなに優しいんだから。

ナギオ:仕方ないよ、これがボクの「欲望」だからねえ、はははは

あかりん:太田さんの目は、笑っていない・・・。しかも、なに? あの分かりやすい動揺。やっぱり・・・あの子は・・・。


ナレーション:あかりんは、大阪なんばの裏路地の地下にある、「お好み焼き」屋さんに、ナギオを連れていきました。この「お好み焼き」も、NMB管理センターにより、禁止されているのでした。好みの具を入れるということは、欲望そのもの、と考えられているからです。


店主:さあ、好みを自由に言ってくれてええからなあ、ここでは、欲望のままに、好きな具を言ってええんやで。

あかりん:おっちゃん、ほな、ブタ肉に、海老で!

ナギオ:ボクは、そうだな、おっちゃん、モダン焼きで!

店主:オッケー、まかせとき! 欲望のままちゅうのは、ええもんやなあ。

ナギオ:で?

あかりん:ん?

ナギオ:ん? やなくて、なに? ここへ呼び出して。

あかりん:あ、ああ。・・・やっぱり、怪しいのよ、

ナギオ:怪しいか、そうやんな、ボクも思ってた、

あかりん:ナギオも?

ナギオ:ああ、ここのお好み焼きの豚肉、あれは、ほんまに国産やろか?

あかりん:いや、お好み焼きのことじゃなくて!

ナギオ:え? 違うの。じゃあ、なに?

あかりん:太田さん、

ナギオ:またその話か、もうええやろ。あ、あああ! さては!

あかりん:なに?

ナギオ:もしかして、あかりん、あれやろ、嫉妬やろ! ヤキモチやろ。ボクが太田さんのこと、一万年にひとりの美少女っていうたから、

あかりん:言うたん? そんなこと、言うたん?

ナギオ:いや、いま初めて言うたんやけど、

あかりん:なにそれ、ていうか嫉妬なんかじゃない、だって、あ、ああ! み、見て、あそこ、

ナギオ:え?

あかりん:今、柱の陰に、太田さんがおった!

ナギオ:え?

あかりん:待って!

ナギオ:ちょっと、あかりん!

店主:おいおい、もう二枚焼き上がるでぇ! おいおい、どないすんの? 食べるの? 食べへんの? おーーーい!


ナレーション:あかりんは、逃げる太田を追いかけました。その後ろをさらに追いかけるのは、ナギオ。


あかりん:待って! 太田さん!

ナギオ:おい、待てよ、っていうか、お好み焼き、食べたかった!


ナレーション:なんばの地下街は、迷路のように入り組んでいました。かつてあった商店も、今は、すっかり姿を消し、暗闇の中、三人の走る音だけが、響いています。


ナギオ:よし、はさみうちにしよう! あかりんはそっちへ!

あかりん:わかった!


ナレーション:なんばの地下街を知り尽くしたあかりんとナギオは、二手に分かれ、やがて・・・。


あかりん:太田さん!

ナギオ:太田さん!

太田:チッ! 挟み撃ちか!

あかりん:あなた、もしかして、欲望刑事(よくぼうでか)?

太田:え?

ナギオ:そうなのか?

太田:それは、

あかりん:どうなの?

ナギオ:正直に、いうてくれ。

太田:私は・・・。

希望:あははははっはは、何も話す必要はないぞ、太田。

太田:せ、センター長!

希望:よくやった。おまえが送ってくれた証拠の数々、もう十分だ。あかりん、ナギオ、おまえらは、もう終わりだ。

あかりん:やっぱり・・・

ナギオ:ああ、お好み焼きを最後に、食べたかったな。

希望:二人を逮捕するんだ、太田。

太田:二人を逮捕・・・。

希望:さあ、早く!

太田:わ、私は・・・

希望:どうした?

太田:あ、あの、

希望:なんだ?

太田:必要だと、感じました。

希望:はぁ?

太田:欲望は、必要だと、感じました。ひとは、欲するから、成長するんです。欲があるから、成長するんです。もっと食べたい、もっとほしい、もっと強くなりたい、欲望が、人類を発展させてきたんです。

希望:何を言ってる、太田!? ミイラとりが、ミイラになったか・・。

太田:私、間違ってました。逮捕されるべきは、私です。だって、私、欲望のかたまりなんです。今だって、イチゴやキウイやわたあめが欲しくてたまらない!

希望:太田・・・残念だ・・・。裏切り者には・・・

あかりん:だめ!

太田:え?


ナレーション:太田に向けて放たれたはずの銃弾を、あかりんは、その身をもって防いだのです。


あかりん:うぅ・・・。

太田:ダメ、あかりん、ダメ、私のためなんかに、死んじゃダメ!!

ナギオ:あかりん!!

太田:あかりん!!

あかりん:って、二人とも、めっちゃ声でかいんやけど。

太田:え?

あかりん:私ね、通販、大好きで、買ってたんですねえ、防弾チョッキ。まさか、こんなふうに役立つとは思わへんかったわ。

太田:あかりん!

ナギオ:あかりん!

あかりん:って、二人とも、抱き着かんといて、重い、重い、

店主:お~い! はあ、はあ、もう、焼けたで、お好み焼き。おっかけるの、大変やったわ、あ、あんたも食べるか?

希望:え? ええ? あ! ああ、い、いい匂いだぁ・・・。

太田:食べちゃいましょう、センター長。欲望があってこその、人間ですから。

希望:ああ、あああ、あああああ、この匂い、我慢できない!!


ナレーション:この事件をきっかけに、2048年の暮れには、「欲望規制法」はなくなっていました。なぜなら・・・


太田:私たち、人間はみんな・・・欲望者だから。

収録後のワンショット

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