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2018年47日放送 午後900分~NHK-FM

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番外編『戦国女子学園』

原案:小池美波、米谷奈々未、織田奈那

脚本:北阪昌人

★参考:ユピーナ、むぎ

出演

米谷奈々未、小池美波、織田奈那、山寺宏一

あらすじ

欅坂女子学園1年A組では、担任の徳川家康男先生による新入生へのあいさつが行われていた。ひときわ緊張しているのは、大阪から来た米谷奈々未。そんな米谷に、豊臣秀吉の生まれ変わりだと言う小池美波が声をかける。何を言っているのか分からない米谷もまた加藤清正の生まれ変わりだと伝えられる。そこに織田信長の生まれ変わりだという織田奈那も加わって…。戦国武将の生まれ変わりが集まった1年A組、このクラスで巻き起こる騒動とは?

人物相関図

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ナレーション:ここは、欅坂という坂の上にある、欅坂女子学園。1年A組では、担任の先生が、初々しい新入生を前に、話しています。


徳川家:ええ、このクラスの担任、徳川家康男(とくがわけ・やすお)です。ようこそ、我が欅坂女子学園へ! 創立してまだ二年の新しい高校ですが、誇りを持って、勉学にスポーツに励んでください。ただ、くれぐれも焦らずに、「鳴かぬなら、鳴くまで待とう、ほととぎす」てな感じで、いきましょう! やがて天下をとれる日が、きますからねえ。じゃあ、自己紹介してもらいましょうか。

米谷:ああ、自己紹介、めっちゃドキドキやわ~。大阪の中学から来たんやけど、関西弁でしゃべらんほうがいいかなあ・・・。ああ、どないしよ~。私のハートは、ガラスでできてる。ああ、どないしよう・・・。


ナレーション:ひときわ、緊張しているのは、米谷奈々未です。彼女の隣に座っている小池美波が、話しかけてきました。


小池:なあなあ、

米谷:はい?

小池:あんた、米谷さんやろ?

米谷:はい。

小池:心配せんでええ。

米谷:え?

小池:私が、守ってあげるから。

米谷:あなたも、関西弁?

小池:あのね、信じるか信じないかは、あんたの勝手やねんけど、

米谷:はい。

小池:私、豊臣秀吉の生まれ変わりなんや。

米谷:は?

小池:で、あんたは、加藤清正の生まれ変わり。

米谷:えええ?

小池:まだ、自覚はないようやけど、

米谷:あの、私、女子高生ですけど。

小池:わかってないんやなあ。人間っていうのはなあ、みーんな誰かの生まれ変わりなんや。もし、魂が無限に増え続けたら、世の中、魂だらけになるやろ? 決まった数の魂が、何度も何度も生まれ変わる。それが、真実なんや。

徳川家:ほら、そこ、さっきからぺちゃくちゃしゃべってるみたいだけど、そんなんじゃ、関ケ原で勝てないぞ。

米谷:ということは、あの担任の先生は、

小池:まあ、どう見ても、徳川家康の生まれ変わりやろなあ。

米谷:ええ?

徳川家:じゃあ、次、小池美波。

小池:はい! ええ、兵庫から来ました、小池です。私は先生と違って「鳴かぬなら、鳴かせてみせよう、ほととぎす」でいきたいと思っています。

徳川家:おおっと、いきなり大坂冬の陣ですか?

小池:いえいえ、ええ、あの、よろしくお願いいたします。

徳川家:じゃあ、次は・・・

織田:はい! じゃあ、私が、

徳川家:おお、じゃあ、よろしく。

織田:「鳴かぬなら、殺してしまえ、ほととぎす」どうも、織田です。織田奈那です。

小池・米谷:織田??

織田:あまっちょろい考えを持ってるひとが多すぎますよね。鳴くまで待つ? 鳴くようにする? 時間の無駄です。速攻、解決すること、それが大事。私は、このクラスを、私の手で、おさめてみせます。

徳川家:おお、ハンパない気迫だなあ、織田。

米谷:ま、まさか・・・あの目つきのするどい女子は、

小池:織田信長の、織田、の、のぶなが様の・・・。

米谷:生まれ変わり・・・。っていうか、小池さん、めっちゃビビってません?

小池:え? ええ? い、いやあ、信長さまにはねえ、そのいろいろ世話にもなってるしねえ・・・。怖いんだよね、

徳川家:はい、じゃあ、次、米谷。

米谷:はい、ええっと、どうも、米谷奈々未です。ええ、趣味は、お城の模型を作ったりすることです。バドミントンの戦いでは、そう簡単に負けない自信があります。大阪から来ました。よろしくお願いします。

織田:小池さんに、米谷さん、どうぞ、よろしく。

米谷:よろしく。

小池:はは~~、

米谷:って、小池さん、土下座してますけど。


ナレーション:さて、このクラスで巻き起こる騒動とは?


ナレーション:朝の通学タイム。女子高生たちが、欅坂をのぼっています。その中に、米谷と、小池の姿が・・・。


小池:しっかし、いきなりレポート出せって、あの徳川さん、おだやかそうな顔して、やることえげつないわ。

米谷:え? レポート?

小池:ほら、昨日、帰りしなに言うとったやろ?

(回想)
徳川家:ええ、みんなの希望、この学園で何を学びたいかを、800字以内でまとめて、明日、持ってくるように。いいですか。

小池:米谷? どないしたん?

米谷:・・・すっかり忘れてた。

小池:ええ?

米谷:ああ、どないしよう、速攻で教室行って、書くしかないよね。

小池:まあ、落ち着いて、・・・私に考えがある。

米谷:考え?

徳川家:さてと、今日も授業、がんばるぞ! 外ばきを、スリッパに履き替えて、と、む? むむ? スリッパが・・・あったかい。なんだ、この優しい履き心地は・・・。

小池:おはようございます! 徳川先生!

徳川家:ああ、おはよう、徳川じゃなく、徳川家ね。

小池:スリッパ、気持ちよかったですか?

徳川家:あ、ああ、とっても・・・え? なんで小池が?

小池:あ、あのですね、実は、米谷さんが先生のスリッパをずっと、懐であっためていたんです。4月に入ったとはいえ、まだまだ寒かったりしますから。

徳川家:米谷が・・・。

小池:恥ずかしいから言わんといてくれって言うんですけど、友達として、これは言ったほうがええかと・・・。足元の冷えから病がやってきます。米谷さんは、先生の体を気づかって・・・。あれ? せ、先生?

徳川家:教師生活、25年、こんな生徒がいただろうか、あっためた米谷もすごいが、それを伝えてくれる小池も偉い、ああ、見上げたもんだ、ああ、うれしい、なんだか、私は、うれしいよ。

小池:米谷さん、先生のスリッパをあっためることに夢中で、宿題のレポートをどこかに落としてしまったんやそうです。

徳川家:え? レポート? ああ、そんなもんより、今は、スリッパだよ、スリッパ。あああ、うれしい、かつていただろうか、こんな生徒が・・・。

織田:あまーーい!

小池:むむ?

織田:先生、そんな初歩的な作戦にひっかかってどーすんですか! 私、織田は、見ました。この小池が、学食ラウンジの電子レンジで、スリッパ、あっためてるの。

徳川家:へえ? ええええ??

小池:おのれ・・・織田。

織田:ふふふ、小池・・・いや、秀吉、そう簡単に天下は渡さん。

徳川家:そう、そうなのか? ねえ、そうなのか?

小池:あ、じゃあ、失礼します!

織田:レポートのとりたては、厳しくお願いします。では、失礼!

徳川家:って、あの、小池? それから、織田? あれ、私は・・・なんで泣いていたんだっけ?


ナレーション:さて、昼休みの中庭。ベンチに座って抹茶メロンパンを食べているのは、米谷奈々未。隣でサツマイモをかじっているのは、小池美波。


小池:ったくもう、あの織田っていうのは、ことごとく、私らをつぶしにかかってくるなあ。

米谷:気のせいちゃうの?

小池:いや、それどころか、私のこと、秀吉、って言ってきたんやから。

米谷:え? わかったっていうこと?

小池:織田さんには、かなわへんよ。

米谷:でも・・・ありがとう。

小池:え?

米谷:宿題を忘れた私が悪いのに、一生懸命、なんとかしようとしてくれて。

小池:頑張れば、鳴かんほととぎすも、鳴くって信じてるからなあ。

米谷:すごいね、それ。私は・・・中学んとき、なんだかいっつも諦めてたような気がする。

小池:諦めるのは、最後の最後でええと思う。基本、負けを認めへん戦(いくさ)は負けたことにならへんのやから。

米谷:すごいなあ、小池さんは、めっちゃポジティブでうらやましいわ。

織田:お二人、おそろいで。

小池:ひええ!

米谷:織田さん!

織田:ひとの悪口を言う時は、もっと小さな声がよくってよ。

米谷:別に悪口なんて・・・。

織田:まあいいわ。あのね、ひとつだけ言っておくわね。私につくか、つかないか、A組でやっていくには、その二つの道しかない。で、私につかないっていう選択をしたら、かなり厳しい学校生活になるってこと、覚えておいて。

米谷:なんか・・・織田さんって、カッコいいね・・・って、小池さん、ベンチの下に隠れてどーしたん?

小池:いや、やっぱ、かなわへんわ、あの威圧感。信長公は勇将なり、良将にあらず。

米谷:え?

小池:勇ましく、ひとに怖いと思われているひとは、優れた武将ではない。ひとに優しく、みんなから慕われているひとこそ、優れた武将である。

米谷:いやいや、織田さんかて、ほんまは優しいひとかもよ。

小池:さあ、それはどうやろ・・・。


ナレーション:放課後、夕暮れの坂道を、米谷と小池が、くだっていると・・・。


男子A:ちっす! 欅坂女子学園の新入生さん!

男子B:ねえねえ、オレたちと今から遊びにいかね?


ナレーション:目つきの悪い男子生徒二人に、からまれてしまいました。


小池:遊びにいきません!

男子A:ずいぶんとまあ、ハッキリ言うじゃんかよう。

男子B:賤ヶ岳(しずがたけ)戦国高校をなめてもらっちゃあ、困るんだよなあ。

小池:別になめてなんか・・・。

男子A:いいじゃんかよう、ちょっとだけ、カフェでお茶するだけだよ。

男子B:そうそう、カフェーでお茶だけ、へへへへ。

小池:ど、どいてください。

米谷:どいてください。

男子A:なあなあ、ちょっとだけ、

織田:嫌がってんだろ!

男子B:へ?

織田:戦国高校の名に恥じることをするでない!

米谷・小池:織田さん!!

男子A:なんだ、こいつ、

男子B:よし、こうなったら、三人まとめて、どうだ? 一緒にカフェで、あ、いたた、いたたた、手をねじるな、痛い、痛い、

織田:ふん!

男子A:下手に出れば、いい気になりやがって。

織田:あ、な、なにをする! 放せ! 放せ!!

米谷:そのとき、私、米谷奈々未の中で、何かがはじけた。

米谷:ガラスが割れる音が聴こえた。私のハート、ガラスのハートが。

米谷:おまえら! その汚い手を放せ!!

織田・小池:え?

米谷:私は、かつて、虎を退治したことがある。

男子A:はあ?

男子B:何言っちゃってるの?

米谷:私は、近くに落ちていた枝を拾い、

米谷:えい!! えい!! えーーーい!!

男子A:痛い、痛い、

男子B:な、なにすんだよ、痛いよ、お願い、ぶたないで。

米谷:おらぁ! どぉだぁ!!

男子A:ちきしょう、おぼえてやがれ、退散だぁ!

男子B:あばよ!

小池:お、驚いた・・・強いなあ。

織田:ほんと、さすが清正。

米谷:なんだかわからへんけど、ガラスのハートが壊れたあとは、もっと強いハートが隠れとった。織田さん、助けてくれて、ありがとう。

織田:いや、結果、助けてもらったけど。

小池:すごい、剣さばきやったなあ・・・。

米谷:ありがとう、私、小池さんと織田さんのおかげで、少しだけ、強くなれた気がする。これからの学校生活、頑張っておくれそうな気がする。

織田:米谷さんがいう、「ありがとう」って、なんかいいね。心がこもっていて。

米谷:って小池さん、何してんの?

小池:あ、いや、織田さんの脱げたスニーカー、懐であっためようかと、

織田:ちょっとやめてよ、もう秀吉!

小池:はは~

米谷:また、土下座?

三人:(笑う)

米谷:落ちていく夕陽が、世界を赤くしていく。私は聴いた、ガラスが割れる音、弱い私が割れる音。

収録後のワンショット

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