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2018年223日放送 午後1000分~NHK-FM

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『春を呼び込むナイスショット!』

原案:小畑優奈、後藤楽々、鎌田菜月

脚本:北阪昌人

★参考:コウジロウ、かっちゃん

出演

小畑優奈、後藤楽々、鎌田菜月、山寺宏一

あらすじ

ライバルの後藤楽々に勝てず、ゴルフをやめた小畑優奈。ある日、小畑は入院している鎌田菜月を見舞いに行く。主治医から気力さえあれば病気から回復すると聞かされていた小畑は、SKE杯ジュニアゴルフ大会に挑戦し、諦めず戦う姿を鎌田に見せようと決意する。天性の才能にあぐらをかかず練習を積み重ねる後藤に挑むため、特訓を始めた小畑だが…。

人物相関図

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物語が読める ♪


ナレーション:ここは、名古屋の栄にある、とある病院。病室のベッドにいるのは、パジャマ姿の鎌田菜月。見舞っているのは、小畑優奈です。


小畑:菜月ちゃん、具合、どう?

鎌田:・・・私は・・・もういいの。

小畑:そんなこと言わないで。よくなるっていう気力がないと、病気に勝てないよ。

鎌田:優奈、いつも、お見舞い、ありがとうね。ハンドメイドのお人形、うれしい。特に可愛い、このカッパ。

小畑:犬だけど。


ナレーション:小畑優奈は、廊下で、鎌田の主治医からこんな話を聞いていました。


医者:鎌田さんは、気力の問題だけなんですよ。よくなる! って信じれば、生きる! って心から思えば、必ずよくなるはずなんです。医学の力を総動員しても、生きる気力のない患者さんを救うのは、難しいんですよ。希望、そう、彼女に、希望を持たせてあげられれば・・・。

小畑:ねえ、菜月ちゃん、

鎌田:なに?

小畑:もしも、もしもよ、私が、今度のSKE杯ジュニアゴルフ大会に優勝したら、病気に勝つって約束してくれる?

鎌田:え? だって、優奈、ゴルフはやめたって。あの後藤楽々がいるうちは優勝なんてできないから、やっても仕方ないって。

小畑:確かに、後藤さんは、凄い。

(イメージ)
後藤:おりゃああああ! 見なさい! 私のドライバーショット!

後藤:ロングパットだって、怖くない! それ!

小畑:私、小畑優奈は、思った。ひとを励ます最大の方法は、自分が頑張ること、無理だと最初から諦めないで、戦う姿を、見せること。

鎌田:無理でしょ、あの後藤楽々に勝つなんて・・・。

小畑:やってみなきゃ、わかんないよ。


ナレーション:ここは、名古屋の栄にあるゴルフ練習場。後藤楽々は、いつものように練習に励んでいます。


後藤:それ!

後藤:まだまだ、それ!

小畑:後藤さん・・・。

後藤:え? あ、あなたは、確か、小畑さん?

小畑:よく、覚えていたわね。

後藤:後にも先にも、私が負けたのは、あのときだけだったから。小学六年生のときの大会。

小畑:まぐれよ、あんなの。

後藤:そう、まぐれ。そうに違いない。だって、負けるはずないんだから。天性の才能にあぐらをかかずに、こうして練習を積み重ねている私が、負けるはず、ない。でも、私は、負けた。最終ホール、パー5のロングホール。残り250ヤードの二打目。小畑さんは、

小畑:ええい!

後藤:ボールはグリーンにオンして、白いボールは、カップに吸い込まれた。

小畑:あんなショット、練習でも打てたことなかった。まぐれ。

後藤:私はね、小畑さん、人生にまぐれなんてないって思ってる。結局、どれだけ練習したか、努力したか、ひとが遊んでるときに歯をくいしばって闘ったか。もし、神様が奇跡を起こしてくれるとしたら、そんなひとにだけ、ご褒美をくれるんだと思う。

小畑:私は・・・そこまで追い込んだことない。自分のこと。

後藤:で、なんの用かしら?

小畑:もう一度、あなたに挑戦する。

後藤:え?

小畑:今度のSKE杯、参戦することにした。

後藤:それを宣言しにきたの? わざわざ。

小畑:そう。こうでもしなきゃ、逃げてしまいそうだから。私、いつまでも「泣き虫」でいたくないから。

小畑:そうだ、これは、菜月ちゃんのためだけじゃない。自分のため・・・。

ごる平:ううう、優奈ちゃんじゃねえか、またおいらに教わりてえのか? ゴルフを。

小畑:はい、よろしくお願いいたします。

小畑:私は、以前、教わっていた、泪橋の近くの丹下ごる平さんを訪ねた。

ごる平:あんた、いいショットを持ってたからなあ、惜しいと思ってたんだよぉ。明日のために打つべし!

小畑:えい!

ごる平:あちゃあ、なんだい、そのショットは、身体が流れちまってる。あんた、バレエで鍛えた体幹があったはずじゃねえのか? どうしちまったんだ、ダメだダメだ、そんなんじゃ、明日への橋は、渡れねえぜぇ。

小畑:はい! 特訓、よろしくお願いします!

小畑:しばらくして、また菜月ちゃんのお見舞いにいった。

鎌田:優奈、ちょっと手を見せて、

小畑:え?

鎌田:豆がつぶれて・・・すごいことになってる。

小畑:昔の勘をなかなか取り戻せなくて、

鎌田:本気なの?

小畑:もちろん、

鎌田:後藤さんって、ゴルフのためにアメリカに留学したんでしょ。

小畑:そうね。

鎌田:ゴルフに全て賭けてる。そんなひとに勝てっこない。

小畑:そうかも、しれない。でも、可能性はゼロじゃないって思ってる。

鎌田:私は・・・ゼロよ、きっと、治りっこない。

小畑:そんなことない。ねえ、お願い、私が勝ったら、

鎌田:負けるよ、無理だよ、

小畑:やっぱり、結果を出すしかない。言葉じゃなく、行動で示さないとダメなときがある。


ナレーション:そうして、いよいよSKE杯ジュニアゴルフトーナメントの決勝ラウンドの日がやってきました。予選を一位で通過した後藤楽々と、二位通過の小畑優奈は同じ最終組で回ります。


後藤:まずは、ほめてあげるわ、小畑さん。いきなりの復帰で、予選二位、立派だわ。

小畑:ありがとう。でも、あなたに勝たなきゃ、意味がないの。

後藤:私に、勝つ? まだそんな寝ぼけたこと、言ってるの?


ナレーション:最初のハーフは、両者譲らず、パープレー。小畑は、前日までの二打差を追いかける展開でした。


小畑:二打差をひっくり返すには、どこかで、勝負に出なくちゃ。


ナレーション:16番のロングホール、小畑は、二打目にドライバーを選択しました。


後藤:直(じか)ドラ? 賭けに出たわね。でも、こんな狭いフェアウエーでリスクが多すぎる。

ごる平:おおおお、優奈よぉ。おもしれえじゃねえか、いいぜ、その意気だ、それくれえしねえと、後藤には、勝てねえ! いつの間に知っちまったんだ、ここぞっていう決めの一打の打ち方を!

小畑:菜月ちゃん、見てて、これが私の生き方! 私の好きな言葉は、「甘えるな! 自らが動かない限り、そんないつかは、ゼッタイに、来ない!! 」どりゃあああああああ!!


ナレーション:白い玉は、真っ直ぐ、グリーンに向かって伸びていきます。


後藤:何っ!?


ナレーション:ボールは、グリーンに乗り・・・。


ナレーション:なんと、そのままカップイン。


後藤:そんなことって・・・。

小畑:まぐれよ、まぐれ。

後藤:いえ・・・いまのは、まぐれとは、言えない。


ナレーション:こうして、最終18番ホール、二人は、同じスコアで、グリーン上にいました。しかも、ほぼ同じくらいの距離を残しての、パーパット。外したほうが、負けです。まず、後藤が、


後藤:気持ちを静めて、いつものリズムで、集中! 集中!!


ナレーション:そして、小畑のパーパット。


小畑:大丈夫。見えた。これはプレーオフになる。

小畑:え? てもとが、緩んだ・・・。


ナレーション:小畑は、パーパットをはずし、ボギー。後藤の優勝が、決まりました。


小畑:負けた・・・。


ナレーション:両ひざをつく、小畑優奈の姿がそこにありました。とそこへ・・・病室の鎌田菜月から、メールが来ました。


鎌田:優奈、ずっとテレビで応援してたよ。すごかった。最後、残念だったけど、感動した。だって、なんで手元がゆるんだかって、私には分かるよ。あなたの両手は、豆がつぶれて血がにじんでいた。痛かったでしょう、辛かったでしょう、それでも優奈は最後まで諦めず、闘った。逃げなかった。私は、自分が情けない。勝手にダメだと決めつけて、逃げてた。もう、逃げないよ、優奈。私、闘う。病気になんか負けない! ありがとう、優奈! 大事なことを教えてくれて、ありがとう!!


ナレーション:美しい光景がそこにありました。勝った後藤が、座りこんだ小畑を抱き起したのです。


後藤:素晴らしかったわ、小畑さん。

小畑:いいえ、やっぱりあなたは、凄かった、後藤さん。

後藤:ありがとう、私、もっともっと強くなる。

小畑:私も、ゴルフ、続けることにした。


ナレーション:闘いを終えた二人の傍らを、優しい春風が、通り過ぎていきました。

収録後のワンショット

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