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2017年55日放送 午後1000分~NHK-FM

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『アキバ座の怪人』

原案:田名部生来、福岡聖菜、佐々木優佳里、村山彩希、馬嘉伶

脚本:北阪昌人

出演

村山彩希、馬嘉伶、田名部生来、福岡聖菜、佐々木優佳里、山寺宏一

あらすじ

演劇やダンスを志すひとの登竜門『アキバ座』を愛するあまり、劇場の屋根裏部屋に住み着いたゆいりー。期待できそうな新人をつきっきりで指導するゆいりーを、みんなは『アキバ座の怪人』と呼ぶ。そんなアキバ座にひとり泣き崩れる、新人女優マチャリン。今度の舞台の主役を射止めた彼女は無事主役を演じ切ることができるのか…。

人物相関図

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ナレーション:あなたは、知っていましたか? その劇場には怪人が住んでいることを。演劇やダンスを志す者たちの登竜門『アキバ座』に、かつて600回以上出演したツワモノがいました。彼女の名前は、ゆいりー。ゆいりーは、あまりに劇場が好きすぎて、やがて、劇場の屋根裏部屋に住みつき、これから期待できそうな新人をつきっきりで、指導するというのです。みんな、彼女のことを、こう呼びました。『アキバ座の怪人』。


ゆいりー:あはははははっは、この劇場のヒロインは、私が決める!


ナレーション:ここ『アキバ座』の静まり返った舞台に、ひとり、泣きそうな顔をした女性がいます。彼女の名前は、マチャリン。台湾からやってきたばかりの新人の女優です。しかし、なんと彼女は、いきなり主役に抜擢されてしまったのです。今度の舞台の演出は、新進気鋭の佐々木優佳里です。


佐々木:ああ、あのね、今度の主役は、マチャリンでいくから。いい? みんな、誰がなんといっても、マチャリンでいくから。この舞台は届けるよ、ハピネス!


ナレーション:しかし、どうやら、マチャリンは、落ち込んでいるようです。


マチャリン:むり、ぜったい、むり。わたしには、できない。


ナレーション:誰もいない舞台でひとり泣き崩れるマチャリン。そこへ・・・


ゆいりー:心配、ないよ~。わたしがついてるから、心配ないよ~。

マチャリン:え、だれ?

ゆいりー:うふふ、わたしのこと、知らないの?

マチャリン:ああ、あなたは!

ゆいりー:知ってるんだね?

マチャリン:だれ?

ゆいりー:え? 知らないんだぁ。そっか、知らないのか。あのね、わたしはゆいりー。この劇場が好きすぎて、住みついてしまった怪人だよ。あはははははは。

マチャリン:こわい。

ゆいりー:いやいや怖くないよ。あなたを怖がらせるのが目的ではないからね。わたしは、あなたの、味方。

マチャリン:めかた?

ゆいりー:そうそう、昔のひとは体重のことを「めかた」って言ったんだ…って違う、めかたじゃなくて、みかた。

マチャリン:ああ、みたか。

ゆいりー:次は、吉祥寺~吉祥寺~本日も中央線快速をご利用いたただきましてありがとうございますって、違う、三鷹じゃなく、味方。んー、なんていえばいいかなあ、あのね、ドゥユーノー、桃太郎? 鬼は、敵ね、敵。サル、キジ、イヌ、イズ、みかた。OK?

マチャリン:サル? あなた、サル?

ゆいりー:いやいや、わたしはサルじゃない。

マチャリン:イヌ?

ゆいりー:イヌでもキジでもなく、み・か・た。

マチャリン:ああ、あああ、あああ、

ゆいりー:OK?わかった? ああ、よかった!

マチャリン:鬼!!

ゆいりー:鬼じゃねーし!


ナレーション:そうして、ゆいりーによる、マチャリンの特訓が始まりました。


ゆいりー:さあ、マチャリン、あなたにはダンスを教えるね。踊ることで、言葉の壁を乗り越えるの、いい? まずは、腹筋、600回!

マチャリン:えええ?


ナレーション:そんな様子を睨みつけるようにして見ている女優がいました。マチャリンのヒロイン抜擢を、悔しがっている、福岡聖菜


福岡:きーーーー、悔しい! ヒロインは私に決まっていたはずなのに。イケメン俳優で今めっちゃ人気の田名部くんの相手は、私のはずなのにぃ!きーーーーー!

田名部:やあ、聖菜さん、おはよう。

福岡:た、田名部くん・・・。

田名部:しかしあれだね、マチャリンの頑張りには、驚くよね。知ってたかい? 彼女、毎朝五時にここに来て自主練やってるんだってさ。オレたちも負けてられないな、はははは。

福岡:ああ、田名部くんの白い歯がキラッと光った。かっこいい。ああ、涼し気な横顔。ああ、彼に助けられる王女役、渡したくない!


ナレーション:アキバ座の怪人、ゆいりーは、マチャリンに厳しくケイコをつけました。


ゆいりー:はい、ダメ、全然、ダメ、そんなんじゃあお客さんは、感動してくんないよ。あのね、劇場なめたら、あかん! 毎日、何を見て、何を思い、どう生きているか、舞台ってもんは、それがぜーんぶ、出ちゃうの。一瞬でも手を抜いたら、それがぜーーーんぶ、バレちゃうの。怖いんだよ、舞台は。でもね、だから面白い、だから私は、好き。がんばって、マチャリン。さあ、もう一回、タップの練習、いくよ! いい?

マチャリン:はい・・・。


ナレーション:そう言ったものの、マチャリンはもう限界でした。ある日、稽古をサボってしまったマチャリンは、大型連休で賑わう、秋葉原の街を、ひとり、歩きました。みんな、買い物をしたり、アイスクリームを食べたり、楽しそうでした。彼女が、ベンチで休んでいると。


田名部:ここ、いいかい?


ナレーション:イケメン俳優の田名部くんが、マチャリンの隣に腰かけました。


田名部:たまには、いいかもな、

マチャリン:え?

田名部:さぼるの。オレもさあ、よくサボったもんだぜ。ケイコなんて、練習なんて、もう嫌だ!ってねえ。

マチャリン:田名部くん。

田名部:でもさあ、最近、思うんだよな。オレたちの仕事ってさ、ひとが遊んでいるときに頑張る仕事なんだなあって。毎日、満員電車に揺られ、頑張って働いてるひとが、やっととれた休みに、笑ったり泣いたりしてくれるのが、劇場だろ? それって、すげえことだよな。少しでも、ハッピーを届けられたら、こんなにうれしいこと、ねえよな。

マチャリン:田名部くん・・・。

田名部:あ、なんかオレ、いいこと、言っちゃった系かな?

マチャリン:よく、わからない。

田名部:えええ?そうなの? オレ、めっちゃいいこと、言ったんだけど。

マチャリン:ごめんなさい。

田名部:あ、いや、まあいいや。戻ろうか、マチャリン。

マチャリン:はい。


ナレーション:ほんとうは、マチャリンは、全部、理解していました。でも、照れ臭かったので、わからない、と言ったのです。田名部くんの言葉が、とっても、うれしかったのでした。


マチャリン:怪獣さん。

ゆいりー:いや、怪獣じゃなくて、怪人、なんだけどね。

マチャリン:さぼって、ごめんなさい。

ゆいりー:ケイコ、さぼった分、今日は、もっとキツイよ。

マチャリン:はい! よろしくお願いします!


ナレーション:マチャリンは、頑張りました。ジャズダンス、タップダンス、歌まで。歯をくいしばって、頑張りました。そんな様子を袖で見ているのは、福岡聖菜。


福岡:負けたわ・・・。マチャリン、今の私には、そこまでできない。でも、いつか見てらっしゃい! 田名部くんの相手役、必ず、ゲットして見せる。きーーー。


ナレーション:こうして舞台の幕が開き、


ナレーション:公演は、大成功でした!


佐々木:すばらしかったわ!マチャリン! やっぱり、私の目は正しかったのね。ハピネス、しっかり届いていたわよ。

マチャリン:ありがとうございます!

佐々木:このあと、初日打ち上げやるから、来てね。


ナレーション:しかし、マチャリンは、あるひとのもとに走りました。自分を鍛えてくれた、ゆいりー。


マチャリン:怪物さん、

ゆいりー:怪人なんだけど、

マチャリン:ありがとうございました!

ゆいりー:感謝してる暇があったら、すぐケイコだよ。

マチャリン:はい。

ゆいりー:ねえ、聞いてごらん。お客さんの拍手がまだ聴こえるでしょ? 私たちは、あの拍手をもらって、また前に進めるの。がんばろうね! 明日も。

マチャリン:はい!

収録後のワンショット

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