OnAir

2017年310日放送 午後1000分~NHK-FM

放送一覧

『東京カメラ物語』

原案:小栗有以、倉野尾成美、太田奈緒、谷川聖

脚本:北阪昌人

★参考:カミンスキー、ミコ

出演

小栗有以、倉野尾成美、太田奈緒、谷川聖、山寺宏一

あらすじ

写真家として有名になった小栗有以。人に接するのが苦手な彼女は、風景ばかりを被写体にして活動していた。そんなある日、編集長の太田から雑誌『月刊カメラウーマン』の企画として、生身の女性を撮影することを打診される。断り切れず、しぶしぶ引き受ける小栗。撮影することになったのは、アイドル二人組「ひじがなる」。メンバーの谷川聖と倉野尾成美は、かつてのクラスメートだった…。

人物相関図

  • ストーリー&キーワード募集
  • メンバーへの質問募集
  • 感想を送る

物語が読める ♪


小栗:私、小栗有以は、写真家。カメラで有名になった。

太田:あの、小栗さんですか?サインしてもらってもいいですか? 写真集買いました。『東京室外機』。エアコンの室外機だけを写した写真集なんて、シュールでよかったです。

小栗:あ、ごめんなさい、サインはお断りしてるんで。

太田:ああ、そうですか、すみません。。。

小栗:私は、ひとが苦手だ。だから被写体は、風景ばかり。なかでも、東京のビルが好き。無機質で、クール。私は、街に出かけ、ビルの裏側にまわり、さみしい写真ばかり撮っていた。そんなある日・・・。出版社の編集長に呼ばれた。

編集長:小栗ちゃん、あのさあ、今度さあ、ウチの雑誌、『月刊カメラウーマン』でさあ、特集やりたいんだよね、あの小栗有以が、生身の女性を撮ったらどんな写真になる!? どう? いい企画だと思わない?

小栗:あの、あたし、やりません、ていうか撮りません、人間の写真なんか。

編集長:ここらでやっとかないと、先、ないよ、小栗ちゃん。

小栗:いいです、先なんかなくても。

編集長:でも、こっちには先が必要なのよ。あんたが食えない時、面倒見たのは誰だっけ?

小栗:そ、それは・・・太田編集長です。

編集長:でしょう?わかりゃいいのよ、わかりゃあ。

小栗:で、いったい誰を撮るんですか?

編集長:今をときめく、アイドル二人組、「ひじがなる」よ。

小栗:ひじがなる?

編集長:え? やだ、知らないの? ひじりと、なるみ、略して、ひじがなる。

小栗:実は・・・知っていた。谷川聖と、倉野尾成美、二人は・・・かつて私のクラスメートだった。そうして、再会のときがきた。


ナレーション:さて、ここは、東京・渋谷の立体歩道橋の上。アイドルユニット「ひじがなる」の二人を被写体に、カメラをかまえる小栗有以の姿がありました。


小栗:じゃあ、撮ります。

谷川:ちょっと待って。

小栗:なに?

谷川:なんか、ないの?

小栗:なんか?

谷川:久しぶりに会って、

小栗:別に、

倉野尾:同じクラスで、ウチら仲良くしてたじゃない。

小栗:だから?

倉野尾:え?

小栗:同じクラスだから、たまたま席が近いから、それだけで仲良くなるなんて、お気楽だよね、高校時代って。

倉野尾:それだけじゃなかったでしょ?

倉野尾:三人でなんでも話せたじゃない?

小栗:でも・・・結局、来なかった。

倉野尾:やっぱり、ひっかかってたんだね。

小栗:別に・・・。

小栗:そう、あれは・・・3月の少し肌寒い午後だった。私は急に転校することになった。親の仕事の都合で。授業中だったけど、駅まで見送りにきてくれると信じていた。ひじりと、なるみだけは・・・来てくれると、信じていた。なのに・・・。

小栗:誰も来なかった。空から、粉雪がおりてきた・・・。

谷川:違うの、あれね、担任の引見(いんけん)先生が、嘘の情報を。

引見先生:え? 小栗? ああ、小栗なら、もう行っちゃったみたいだよ。昨日の夜中に、さあさあ、授業だ授業。席について。

倉野尾:ほんとに知らなかったの。

谷川:そのことを伝えようと思っても、有以、連絡くれないし。

倉野尾:言い訳してるって思ってるみたいだし。

小栗:だって・・・。


ナレーション:そんな撮影現場にやってきたのが・・・。


編集長:小栗ちゃん、あんたはねえ、次のステージにあがるべきなの。そのためには、ちゃんと事実を知るべきだと思ったから、わざわざ来てもらったのよ、この忙しいお二人に。さあ、ちゃんと撮りなさい!

小栗:そんなこと・・・今さら言われても・・・。ずっと憎んできたのに・・・人間なんか信じないって、風景ばかり撮ってきたのに・・・。

谷川:有以の写真、好きだよ。風景を写しても、ちゃんと心が見える。

倉野尾:そう、なにより、有以の優しい心が見える。

小栗:やめて、そんなこというの、やめて。

谷川:高校のときも、撮ってくれたじゃない。

倉野尾:私達の写真。

谷川:二人は、才能あるから、歌を続けたほうがいいって言ってくれたの、有以だよ。

小栗:私は・・・。

編集長:さあ、ごちゃごちゃ言ってないで。カメラをかまえて。いい? 小栗ちゃん、あなたには、ちゃんとあなたを応援してくれているひとがいるの。目には見えなくてもね。だから、勝手にクールを気取らないで。もういいの、人間を撮っても、いいの。やだ、泣いてるの?

小栗:泣いてなんか、ない。

谷川:さあ、有以、お願い。

倉野尾:有以、この写真、ニューアルバムのジャケットにするから。

小栗:私は、涙をふいて、シャッターを切った。

小栗:そうだ、思い出した。私がカメラを好きになったのは、こうして、友達の笑顔を撮ったとき、とっても幸せな気持ちになったからだ。

小栗:聴こえる・・・あのときの笑い声が、聴こえる。

(イメージ)
谷川:はははっは、

倉野尾:ははははは、

編集長:ちょっと見せて・・・素晴らしいじゃない、小栗ちゃん、おめでとう!あなたは、今、階段をのぼった。

小栗:違います、編集長、私は登ったんじゃなく、階段を下りて、確認したんです。自分がいかに幸せな時間を過ごしてきたかを。あれですね、自分を必要以上に不幸に思うのは、やめたほうが、いいですね。

編集長:そうね。

小栗:ありがとう・・・。

谷川:よかった。また有以の笑顔に会えて。

倉野尾:ほんと、全然、変わってない、その笑顔。

小栗:ひじり、なるみ・・・。

編集長:あああ、見て、夕陽が、綺麗!

小栗:東京の空が、オレンジ色に輝いていた。私は、この街が好きだ。そして、今目の前にいる、このひとたちが、大好きだ。

収録後のワンショット

Page Top