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2017年127日放送 午後1000分~NHK-FM

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番外編『天使の季節』

原案:小林由依、志田愛佳、渡邉理佐

脚本:北阪昌人

★参考:ちょきはる、はちみつ

出演

小林由依、志田愛佳、渡邉理佐、山寺宏一

あらすじ

ここは空の上の世界。天使見習いのマナカは、自分勝手な言動が目立ち、いつまでも天使に昇格できずにいた。そんなある日、サンタクロースに呼び出されたマナカは、天使に昇格するための最終試験として、病床の少女・由依に生きる希望を持たせることを命じられる。病院のベッドに横たわってばかりであった由依は、心配そうに寄り添う母の励ましに耳を傾けることなく自分自身を追いつめ、悲観的な日々を過ごしていた…。

人物相関図

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物語が読める ♪


ナレーション:ここは空の上の世界。サンタクロースが、天使見習いのマナカを、呼びつけました。


サンタ:おい、マナカ、

マナカ:はい、サンタさん。

サンタ:なんで呼ばれたか、わかるか?

マナカ:えっと、あ、わかりました。ついに私、天使になれるんだ!

サンタ:その逆だ。

マナカ:え? 逆って、

サンタ:このままでは、マナカを天使にすることはできない。

マナカ:ええ?だって、あれですよ、もうすぐクリスマス、天使が活躍できる最高の舞台がやってくるのに。

サンタ:おまえの自分勝手なところが気に食わない。なんていうか、いいか、天使っていうものは、熱いんだ、パッションだ、愛だ、優しさだ。いいか、マナカ、今からおまえには最後の試験を受けてもらう。これを見なさい!


ナレーション:サンタが手を拡げると、目の前に大きなスクリーンが現れました。そこには、病院のベッドに横たわる、ひとりの少女の姿が。


由依:ああ、あたし、もうすぐ、天国に行くんだよね?


ナレーション:由依というその少女の隣には、お母さんが心配そうに寄り添っていました。


母:なにをいうの!由依。大丈夫、生きる気持ちさえ持っていれば、大丈夫!

由依:窓から見える桜の樹・・・ああ、せめてあれが満開ならなあ、桜が咲いてくれれば生きられる気がするけど・・・。

母:春になれば、きっと咲くから。それまで頑張ろう、ね? 由依。

由依:無理無理、春までは無理だって。

母:そんなことない!

由依:ならお母さん、桜を咲かせて見せてよ!

母:それは、

由依:無理なもんは無理なの。季節がちゃんと決まっているように、私の寿命も決まってるのよ!

マナカ:わがままなこと言ってんね。お母さんが可哀想じゃん。

サンタ:いいか。この由依という女の子に、生きる希望を持たせるんだ。それができたら、おまえを天使に昇格させよう。

マナカ:ええ?そんなの・・・無理じゃね?

サンタ:期限は明日の朝。魔法はいっさい使ってはならない。

マナカ:ええ?マジ?春まで待っちゃダメかな?


ナレーション:ここは、東京、欅坂近くの、ある病院。病室の窓から外を眺めているのは、由依という少女でした。


由依:みんな隠してるんだ、きっと。私は重い重い病気で、もうすぐ死んじゃうんだ。あの桜の樹みたいに、花も葉っぱもない、それが今の私。


ナレーション:由依のお母さんは、病室の廊下で、主治医の先生と話しています。


母:先生、由依は、由依はどうなんでしょうか?

医師:正直、病気はもう治っているんですが、本人に生きる気力がない。食事もとっていないようですね。

母:ええ、ココアにクッキーを2.5秒ひたしたものしか、食べないんです。

医師:このままでは体力が落ちて最悪の状態にならないとも限りません。とにかく必要なのは、生きる気持ち、です。いったい、どうしたものか・・・。


ナレーション:そんな由依の前に現れたのは、シロクマの着ぐるみをかぶったマナカです。


マナカ:こんにちは。

由依:わあ! なに? いきなり、シロクマ!

マナカ:まあ、クリスマスが近いしね。

由依:関係ないっしょ、シロクマは。

マナカ:いや、そんなことないよ、サンタの友達なんだよ、シロクマは。

由依:聞いたことない、そんな話。

マナカ:まあいいから、あのさ、ぶっちゃけ、頼む。

由依:え?

マナカ:生きる! 私、生きることに決めた!とか、言ってくんないかな。

由依:え? なに? なにそれ、っていうかあんた誰?

マナカ:ちょこっと言ってくれるだけでいいんだけどなあ、そしたら、私、晴れて天使になれるわけで、

由依:天使?なにあんた。シロクマの着ぐるみ着て、いきなり現れて。

マナカ:こっから見えるあの桜の樹が満開になったら生きる!とかなんとか言ってるみたいだけど、そんなの無理に決まってんじゃん。季節っていうのはね、順番にめぐってくるもんなの。冬の次が春。まだ春じゃないから、桜は咲かない。ね?

由依:待てないのよ、私はもう。桜を見ないと、死んじゃいそうなの。

マナカ:なんじゃそれ、それってただのわがままじゃね?

由依:うっさいな!あんたにわかるわけないよ。私の気持ちなんか。

母:あらまあ、由依のお友達ですか?気づきませんで。

マナカ:ああ、お母さん、どうも。

由依:こいつ、友達でもなんでもないよ、お母さん。

母:この椅子に座ってください。よかったらその白いコートをここにかけてくださいねえ。

マナカ:コートじゃないし。シロクマだし。

母:ああ、それはどうも、気づきませんで。

由依:もうみんな出てってよ! ひとりにして! どうせ、どうせ、私の命なんか・・・すぐに消えちゃうんだから。

母:由依! そんなこと言うもんじゃありません。そんなこと言わないでよ、お母さん、哀しくなるから。

マナカ:ったくもう、仕方ないなあ・・・。あのさ、由依。

由依:って呼び捨て?

マナカ:ほんとに桜が満開になったら、生きる! 生まれ変わる!って約束するか?

由依:無理に決まってるって自分で言ってたじゃん。

マナカ:いいから、ほんとに生まれ変わるか? 季節が変わったら!

由依:まあ、天地がひっくりかえって、桜が満開になったらね。

マナカ:よし、わかった。

母:シロクマさん、そんな由依に希望を持たせるようなことを言わないでください。

マナカ:お母さん、

母:はい。

マナカ:希望を語らないと、次の季節はやってこないんですよ。

母:はい。


ナレーション:シロクマの着ぐるみをかぶったマナカは、天の上にのぼり、サンタクロースにお願いしました。


マナカ:ねえサンタさん、枯れ木に桜を咲かせる灰とかないんですか? よかったらそれをもらいたいんですが・・・。

サンタ:バカモン! おまえは自分で努力もせずに、私を頼るのか!

マナカ:だって、どう考えても無理っしょ。

サンタ:さっさと戻りなさい! 時間はないぞ!


ナレーション:病院に戻ったマナカでしたが・・・。中庭の枯れた桜の樹を前にたたずむばかりです。


マナカ:これを満開にねえ・・・。


ナレーション:そのとき、ベンチで折り紙を折っているおばあさんの姿がマナカの目に入りました。ひとつひとつ丁寧に、花びらを折っています。


マナカ:折り紙か・・・。魔法も使えないしなあ。


ナレーション:一方、、病室では・・・ぐったりした由依が・・・。


由依:明日の朝、桜の樹が満開になっていなかったら、私、もうダメな気がする・・・。

母:由依!バカなこと言わないで!


ナレーション:夜も更けたころ、桜の樹にのぼる、シロクマの姿がありました。


マナカ:なんだって、この寒空の中、桜を貼りつけなきゃなんないんだよ、まったく。


ナレーション:マナカは、折り紙で桜の花びらを折り、それを木に貼りつけているのでした。


マナカ:うううう、寒い。風が冷たい・・・。うううう。ったく由依のやつ・・・。ん?


ナレーション:誰かが木を登ってきます。


マナカ:あれ? お母さん、


ナレーション:由依の母親でした。


母:すみませんねえ、シロクマさん、私にも手伝わせてくださいね。

マナカ:ああ、ありがとうございます。

母:いえ、こちらこそ、こんなことまでしていただいて、あなたには何の得にもならないのに、なかなかできることじゃありませんよ、素晴らしいかたですね、シロクマさん。

マナカ:いえ、これはその、自分のためでもあるわけで。

母:私、あの子を甘やかせすぎたかもしれません。でもねえ、可愛くて仕方ないんです。いい子なんです、ほんとは優しい、いい子、なんです。

マナカ:ってお母さん、泣かないで。頑張りましょう。あ、落っこちないでくださいね。

マナカ:最初は、腹を立てながら、桜を貼りつけていたけれど、やっているうちに、だんだん、気持ちが変わってきた。お母さんの気持ちに近づいてきた。由依って子に、元気になってほしい。なんとか、生きるって思ってほしい。私の心が、冬から春に変わっていくように、枯れた桜に、花があふれていった。


ナレーション:翌朝、目を覚ました由依は、病室の窓を開けました。


由依:なに、あれ、超ダッサイ、桜が咲いてるんですけど。折り紙だって、バレバレで・・・。


母:由依・・・

マナカ:そんなこと言っちゃダメ! お母さんがねえ、一生懸命、かじかんだ手で・・・。

由依:知ってたんだ、ほんとは、

マナカ:由依・・・

由依:ゆうべ、こっそり見てたんだ。二人を。バカみたい・・・私なんかのために、バカみたい。

母:由依、お母さんは、

由依:なんか、お腹がすいたな。

母:え?

由依:体も軽くなった。もう退院してもいいかな、お母さん。なんだか私に来たみたい、誰よりも先に、春が!

母:由依!

由依:お母さん、ごめんなさい。


ナレーション:こうして、マナカは晴れて天使に・・・。


マナカ:え~~? ダメ? まだ天使になれないの?

サンタ:私の眼はごまかせんぞ。最後、折り紙を貼るとき、ちょこっと魔法を使ったな?

マナカ:あ、バレました?

サンタ:このバカモノ!まだまだ修行だ!

マナカ:は~い!

マナカ:私の春は、もう少し先になりそうです! でも、季節はきっとめぐってくるよね。

収録後のワンショット

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