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2016年729日放送 午後1000分~NHK-FM

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『お嬢様サヤカのらしくない日常(旅立ち編)』

原案:山本彩、渡辺美優紀、白間美瑠、矢倉楓子

脚本:北阪昌人

★参考:ハスミン、まっちゃん

出演

山本彩、渡辺美優紀、白間美瑠、矢倉楓子、山寺宏一

あらすじ

とんでもない大富豪のとんでもないお嬢様、無茶小路サヤカ。いつもはヘリか自家用ジェットにしか乗らないサヤカだが、この日は真っ黒なスーツに身を包んだ彼女の執事・渡辺が運転する大きなリムジンで、ゆっくりと大阪の街を移動していた。そんな時、大勢の客でにぎわう海水浴場がサヤカの目に留まる。人混みが気になるサヤカ。執事の渡辺はサヤカに説明するが、とんでもないお嬢様であるサヤカには理解できない。ギクシャクするサヤカと渡辺。すると渡辺は…。

人物相関図

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ナレーション:一台のリムジンが、ゆっくりと大阪の街を走っています。それはまるで海の底をさまようジンベイザメ。ピカピカに磨かれた黒塗りのボディが、夏の陽射しをギラリと跳ね返しています。そのとてつもなく大きなクルマに乗っているのは、大富豪、無茶小路家の令嬢、サヤカ。


サヤカ:たまには、こうして街中を走るのも悪くないわねえ、渡辺、

渡辺:はい、お嬢様。お嬢様はいつもヘリか自家用ジェットにしか、お乗りになりませんから。


ナレーション:リムジンを運転しているのは、お嬢様サヤカの執事、渡辺美優紀。彼女のスーツは、真っ黒。


サヤカ:渡辺、

渡辺:はい、サヤカお嬢様、

サヤカ:そのスーツ、やめなさいと言ったはずでしょ?

渡辺:はい、お嬢様。でも、私は、黒が好きなのです。

サヤカ:腹黒いと、勘違いされますよ。

渡辺:そんなことはありません。見てのとおり、どこをどう見ても、真っ白な人間ですから。

サヤカ:ぷっ!

渡辺:お嬢様、今、笑いました?

サヤカ:いえ、ぷっ!

渡辺:またしても、

サヤカ:それより、渡辺。

渡辺:はい、お嬢様。

サヤカ:あの人々は、なぜ、あんなに混んだ浜辺で水着を着ているのですか?

渡辺:はい、お嬢様のように、プライベートビーチをみんなが持てるはずもなく、誰もが行ける海水浴場にいくのであります。

サヤカ:どうして?

渡辺:いや、だから、プライベートビーチを持っていないから。

サヤカ:つくればいいではないか?

渡辺:だ・か・ら! 無理だって言ってるだろうが、このタコ!

サヤカ:・・・渡辺、

渡辺:はい、お嬢様。

サヤカ:あれ? 空耳かな、今、わたくしのことを、「無理だって言ってるだろうが、このタコ!」と言う声が聴こえましたが。

渡辺:あ、サヤカお嬢様にお伝えせねばならないことがあります。

サヤカ:なんだ? あ、わかった、ハラミとタン塩が好きで、ナスが食べられない。

渡辺:まあ、それはそうですが、今、お伝えしたいのは、別のことでございます。

サヤカ:別のこと?

渡辺:私、渡辺美優紀は、サヤカお嬢様のもとから、旅立とうと、思います。

サヤカ:え? 旅立つ?

渡辺:はい。今日のドライブが、最後でございます。


ナレーション:大富豪のお嬢様、サヤカを乗せたリムジンが、海辺の道を走っていたときでした。


サヤカ:どうかしました?

渡辺:クルマの前に、女性が二人、倒れています。

サヤカ:見てきて、渡辺、

渡辺:はい。

渡辺:大丈夫、ですか?

白間:ええ、大丈夫です。

矢倉:すみません、二人とも、急にめまいがして、倒れました。

渡辺:顔が真っ青ですよ。

白間:大丈夫です。二人とも、この浜で海女をやっているんですが、

渡辺:修道院?

矢倉:いえ、そっちの尼、ではなくて、海の女と書く、海女です。

渡辺:ああ、あまちゃん?

白間:ええ、そうです、あまちゃんです。

サヤカ:どうしたのですか? 渡辺、

渡辺:はい、お嬢様、この方がたが、めまいがすると、

サヤカ:クルマの中で休ませてあげなさい。

渡辺:はい、どうぞ。

白間:いえ、それはできないんです。これからまた海に入らなくては、どうしても獲らなくてならないんです。今日はお祭りがあるので。

サヤカ:海? 獲る? 渡辺、

渡辺:はい、

サヤカ:この方がたのお仕事はまさか、

渡辺:はい、海女さんです。

サヤカ:修道院。

渡辺:いえ、そっちではなく、あまちゃん、

サヤカ:ああ、ああ、そっちか、「おめえはぜってえ、プロにはなれねえ! いつまでたっても・・・あまちゃんなのさ」のあまちゃん?

渡辺:どんなテレビの影響ですか? 海の女と書いて、海女さん。海に潜って、貝や海藻を獲る、女性のことです。

サヤカ:知ってますぅ。もう、ぷ~。

白間:まあ、膨れてしまって。まるでフグみたい。

矢倉:はははははは、ほんとに。

白間・矢倉:はははははっはは、


ナレーション:そのとき、サヤカお嬢様の目が光りました。そうです、お嬢様はすこぶる負けん気が強い! バカにされるのが、大嫌い!


サヤカ:渡辺、

渡辺:はい、お嬢様。

サヤカ:わたくし、決めました。

渡辺:はあ、

サヤカ:海女さんになります。

渡辺:え?

サヤカ:さあ、このものたちと一緒に、海に入りますよ。

渡辺:え?


ナレーション:サヤカたちを乗せたリムジンが岩場にたどり着くと、そこには、すでに、もっと大きなリムジンが停車していました。


サヤカ:お父様、すみません、いきなり呼び出してしまって。

父:いいんだよ、我が最愛の娘、サヤカよ。わたしはなあ、うれしいんだ、おまえに頼られるのが。ほら、用意したぞ、潜水艇を五十艇。魚をとらえる網は、東京ドーム四個分だ。つかまえたいだけ、つかまえればいい、さあ、いきなさい。

サヤカ:はい、お父様!

渡辺:ちょっと待って!!

サヤカ:どうしたの?渡辺、大きな声を出して。

渡辺:お嬢様のそういうところが嫌いです!

サヤカ:嫌い?

渡辺:なんでもお金や機械に頼ろうとするところ。

父:おい、渡辺、口が過ぎるぞ!

渡辺:いえ、今日は言わせてください。これが最後になりますから。いいですか、海女さんっていうのは、酸素ボンベもつけずに、自力で、自分の息が続くまで、海に潜るんです。ね? そうですよね?

白間:まあ、そうです。

矢倉:昔から、そうやって海の恵みをいただいてきたから。

渡辺:自然には自然のルールがあります。獲りすぎてはいけないんです。

サヤカ:渡辺は、わたくしに説教をするのか?

渡辺:そうです。

サヤカ:おまえ・・・本当にわたくしの執事をやめるのか?

渡辺:サヤカお嬢様に、いえ、NMB財閥のみなさまに、たくさんのことを教えていただきました。でも、いつか卒業しないと、私自身が成長できなくなる、そう、思ったんです。

サヤカ:何がほしい? もっと給料をあげてほしいか?

渡辺:そういうことじゃないんです! サヤカお嬢様!

サヤカ:なんだ? なぜ、わたくしに抱きつく?

渡辺:大好きです、お嬢様も、お父様も、みんな。でも、私は、あえて、荒れた海に出たくなったんです。

サヤカ:やめてどうする?

渡辺:釣り師になります。

サヤカ:釣り師?

渡辺:もともと、漁業に興味がありました。釣りは、自然と一体になること、釣りは、心です。

サヤカ:よし、では、今から、一緒に海に潜って、わたくしより多く魚を獲ったら、おまえの卒業を認めてやろう。

渡辺:いいでしょう。

サヤカ:わたくしが、めっぽう泳ぎがうまいこと、知っているわね?

渡辺:はい、存じております。


ナレーション:波は、決しておだやかではありません。サヤカと執事の渡辺は、海に入りました。


白間:魚や貝をとったら、海に浮かんだこの桶に、獲物を入れてください。

矢倉:くれぐれも、無理はしないように。苦しくなる前に、必ず、水からあがってください。


ナレーション:二人は、海中に潜っていきました。サヤカお嬢様も、なかなかの腕前。渡辺も、着実に貝や海藻をゲットしてきます。


白間:力は、五分五分だね、

矢倉:どっちが勝っても、おかしくない。


ナレーション:勝負を終えたふたりは海から上がり、結果を待ちました。


父:では、発表する。

父:渡辺美優紀の勝ちだ!

渡辺:や、やった! 勝った!

サヤカ:悔しいけど、負けは負けよね。

渡辺:・・・お嬢様、

サヤカ:なに?

渡辺:私、わかりました。

サヤカ:え?

渡辺:わざと、負けましたね。

サヤカ:まさか、渡辺の実力よ。

渡辺:何年一緒にいると思ってるんですか、サヤカお嬢様の考えることくらい容易に想像がつきます・・・。だって、だって、サヤカお嬢様は優しくて、実は、とんでもなく優しくて・・・。

サヤカ:泣かないで、渡辺。

渡辺:泣いてなんかいません、これは、海の水、ほら、しょっぱい。


ナレーション:もうリムジンには乗らずに、ひとり、海辺の道を去っていく渡辺の後ろ姿がありました。


渡辺:もう、私は、ここにいない。さようなら、


サヤカ:渡辺!! 元気でね!! 何かあったら、いつでも帰ってくるんだよ!!

収録後のワンショット

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