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2016年56日放送 午後1000分~NHK-FM

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『幸せの甘噛み犬』

原案:山本彩、上西恵、吉田朱里

脚本:北阪昌人

★参考:プリンス、ハンター

出演

山本彩、上西恵、吉田朱里、山寺宏一

あらすじ

大阪・難波のとある神社には、評判の犬がいました。なんでも、その犬に軽く噛んでもらうと、願いが成就するというウワサなんだとか。誰が呼んだか、その犬はこんな愛称をさずかりました。『幸せの甘噛み犬(あまがみけん)』。神社の境内では、幸せの甘噛み犬ことサヤネエの甘噛みレッスンが行われ…。

人物相関図

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物語が読める ♪


ナレーション:ここは、大阪・なんばの、とある神社。この神社には、評判の犬がいました。なんでも、その犬に軽く噛んでもらうと、願いが成就するという噂なんだとか。誰が呼んだか、その犬はこんな愛称をさずかりました。
『幸せの甘噛み犬』。
おやおや、境内に、二匹の犬がいます・・・。


ケイ:うーーワンワン。なあなあ、アカリン、

アカリン:なんやねん、ワンワン、ケイっち。

ケイ:ええなあ、サヤネエは、いつもええもん食べさせてもろて。

アカリン:そんなんいうたかて、しゃあないやろ。サヤネエは、幸せの甘噛み犬なんやさかい。ワンワン。

ケイ:あれやろ、たまたまアゴがひっかかって、強く噛めへんかっただけやろ。

アカリン:しっ! あかんあかん、サヤネエをディスルこというたら、おこぼれ、もらえへんで。

サヤネエ:うーーーーーーワンワン。ワンワンワンワン!

ケイ・アカリン:うっ! この威圧感まるだしの鳴き声は!

サヤネエ:誰がしゃくれやて?

ケイ:い、いえ、サヤネエ、そんな、

アカリン:誰もいうてません、あごがひっかかったなんて。

サヤネエ:うううううう!ワンワン!

ケイ・アカリン:ひえっ!

サヤネエ:誰のおかげで、野良やってられる、思てんねん。

ケイ・アカリン:はっ! 幸せの甘噛み犬・サヤネエ様のおかげでございます! ワンワン!

サヤネエ:あたいのところに、人間さんがぎょうさんやってくる、みんな貢物を抱えてなあ・・・。それをあんたらに分け与えているこの心優しいサヤネエ様をなめたらいかんぜよ!

ケイ:はい!

アカリン:分け与えるっていうても、自分がいらんもんをちょこっとくれるだけちゃうの?

ケイ:しっ! アカリン、あかんあかん、そんなんいうたらあかん。

サヤネエ:ああ、甘噛みしすぎて、アゴがこったわ。

ケイ:オモミいたしましょう!

サヤネエ:ふ~、甘噛みしすぎて、歯がかゆいわ。

アカリン:歯を磨かせてください!

サヤネエ:まあ、ええやろ。ううううう、ワンワン!


ナレーション:この甘噛み犬、サヤネエに最大のピンチが訪れるのですが・・・。


ケイ:こんな感じでいかがでしょうか?

サヤネエ:うううう、気持ちええで~。自分、うまなったなあ、アゴのマッサージ。はははは。


ナレーション:神社の境内では、幸せの甘噛み犬ことサヤネエの甘噛みレッスンが行われていました。


サヤネエ:うーーーワンワン、ほらほらケイっちに、アカリン、ええか、よく聞くんやで。甘噛みの基本は、噛んでるんやけど、痛ない、痛ないけど、なんか噛んでもらってる、この微妙なさじ加減、バランスなんや。

ケイ・アカリン:ワンワン!

サヤネエ:バランスを鍛えるには、あたいの体を丁寧にブラッシングすることや。

ケイ・アカリン:ワンワン!

サヤネエ:そうや、ええで、気持ちええで~うう~ワンワン。ああ、眠くなってきたわ~ふ~むにゃむにゃ・・・。

アカリン:ケイっち、なんかぶっちゃけ、私ら、サヤネエの家来みたいと思わへん?

ケイ:みたいやのうて、家来や。

アカリン:そんなんでええの?

ケイ:ええもなにも、人間に捨てられたあたしたちを見捨てへんかったんは、サヤネエだけやから。

アカリン:もうちょっと優しくしてくれてもいいのに・・・。

ケイ:前に聞いたことがあるんや、サヤネエから、

アカリン:え?


サヤネエ:あたいなあ、めっちゃ大切に飼われとったんやけど、あるときな、もう面倒みきれへんって、ぽいって捨てられたんや。それ以来、あたいは、復讐の鬼と化したんや。あたいが有名になってネットに顔がのったら、いつか、あんとき捨てた飼い主が、やってくると思うねん。能天気な顔して、ごめんねえって。
でもなあ、あたいは許さへん!
そんときはな、そんときは、甘噛みするとみせかけて、ガブっ!!


アカリン:ひええええ! えらいこっちゃ。

ケイ:それだけ、根深い恨みがあるっちゅーことなんや。


ナレーション:さて、ある夜、遅くのことでした。空にはぽっかりお月様が顔をのぞかせています。いつものように、境内で3匹の犬は、休んでいました。


アカリン:綺麗なお月さんやなあ、ワンワン。

ケイ:そうやなあ。ワンワン。

サヤネエ:あたいが捨てられたのも、こんな夜やった・・・。

アカリン:ワンワン、誰かくるで。

ケイ:こんな時間に誰やろ?

サヤネエ:あ、あああ、あれは!


ナレーション:暗闇の中から姿を現したのは、サヤネエをかつて可愛がっていた、飼い主の宏平でした。


宏平:おい、サヤネエ、サヤネエ、いるんか? オレやで、宏平やで、

アカリン:で、でた! ワンワン!

ケイ:サヤネエの飼い主がやってきよった! ワンワン!

宏平:サヤネエ、えらい人気やなあ。ネットで見たでえ。久しぶりに元気な姿見て・・・オレは・・・オレは。

サヤネエ:そんな下手な芝居でだまされるか! ワンワン!

宏平:おお、おお、サヤネエ、ああやっぱりおったんかいな、サヤネエ、よく、元気で。実家にひきとってもらおう思て、車にのせたんやけど、いきなり逃げてしまうから・・・心配したんやで。

サヤネエ:実家でひきとる? よういうわ。保健所に電話してたん、あたいは聴いとったで。

宏平:幸せの甘噛み犬、か。出世したもんやなあ。

サヤネエ:誰のせいで、こうなった思てんねん。ここまでくるのに、どんな苦労した、思てんねん。食べるもんを自分で探し、雨を避け、水を求め、どろどろのヘトヘトになりながら、生きてきたんや! ワンワン!

宏平:おお、おお、そうかそうか、おまえも懐かしいか。

ケイ:ああ、飼い主が、サヤネエに手をさしだしよった。

アカリン:甘噛みと見せかけて、

ケイ:ガブ!

アカリン:ああ、あああ、えらいことになんで! ワンワン!

宏平:さあ、サヤネエ、こっちにおいで。

サヤネエ:いまさら、どの面さげて、あたいの前に現れてんねん。

宏平:すまんかったなあ、苦労したやろ。

サヤネエ:え?

宏平:ほんまいうとなあ、保健所に電話したんや。おまえは賢い犬やさかい、もしかしたら、それ、知ってたんやなあ。でもな、オレはすぐに気持ちかえて、実家の父親に頼み込んだんやで。オレが、どうしても東京に転勤になって、社宅暮らしになってしまうから。さみしかったで、どんなときも一緒におったもんなあ・・・。

サヤネエ:今さら、なんやねえ、そんな話、信じられるか!

宏平:おお、そうか、そうか、甘噛み、してくれるんか、

サヤネエ:覚悟しいや! ワンワン。

宏平:そうかそうか、ありがとう。

ケイ:あかんで、おっさん、

アカリン:噛まれんで!

サヤネエ:この恨み、はらさせてもらうで!


ナレーション:サヤネエが、宏平の手を思い切り噛もうとしたそのとき、宏平の腕に巻かれている、ブレスレットが目に入りました。


サヤネエ:こ、これは・・・あたいと宏ちゃんをつないでいたリード?

宏平:お、これ、気づいたか? おまえのこと、忘れられへんでなあ、リードを切って、いっつも腕に巻いとったんや、はは、会社のみんなからは、けったいなブレスレットして、って笑われてしもて。

ケイ:ねえ、アカリン、見て。

アカリン:うん、見てる。

ケイ:サヤネエが、泣いてる。

アカリン:うん、サヤネエ、泣いてる。

サヤネエ:宏ちゃん、あたい・・・あたし・・・さみしかったんや。あんたに捨てられた思て、さみしかったんや・・・。

宏平:よしよし、ええ子やなあ、ええ子や、サヤネエは、ほんまにかしこい、ええ子やあ・・・。そうや、実家に行くか? 一緒に帰ろ。


ナレーション:そこで、サヤネエは、ケイとアカリンのほうを見ました。


宏平:そうかそうか、仲間がおんねんな。


ナレーション:サヤネエは、宏平の手を噛まずに、頬をこすりつけました。


サヤネエ:来てくれて・・・ありがとさん。ワンワン。

宏平:ああ、ああ、また来るさかい、元気でなあ。

サヤネエ:ワンワン・・・。


ナレーション:こうして、幸せの甘噛み犬、サヤネエは、仲間たちと一緒に神社に暮らし、みんなの幸せのために、いつまでも甘噛みを続けたのでした。


サヤネエ:うううう、ワンワン!!

収録後のワンショット

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