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75年ぶりの路面電車 安全対策は

  • 2023年09月07日

8月26日、LRT=次世代型路面電車が、宇都宮市と芳賀町を結んで開業しました。
もっとも重要な課題は、乗客乗員の安全対策、そして歩行者や車との事故防止です。
ただ、新たな路面電車の開業は国内で75年ぶり。
関係者の多くが、初めて経験する難しい対策に追われることになりました。

(宇都宮放送局記者 宝満智之・梶原明奈)

試運転中に起きた脱線事故

去年11月の脱線事故

市民や関係者の間に衝撃が走ったのは去年11月、深夜の試運転中に起きた脱線事故でした。
現場は、多くの人が行き交うJR宇都宮駅前の広場。
開業したあとなら、大事故につながっていたおそれもあります。

事故のあと、ただちに専門家による有識者会議が設けられ、原因究明と再発防止策の検討が進められました。

事故の原因と対策は

専門家がまとめた最終報告書によりますと、事故が起きたのは、車両の行き先を切り替える「分岐点」と、急カーブが続いた場所でした。

車両が「分岐点」を通過した際に左右に振られて不安定になり、そのまま急カーブに入ったため、カーブを曲がりきれなくなって脱線したとみられるということです。

事故が起きた場所

報告を受けて宇都宮市や運営会社は、この区間の制限速度を当初より遅い「10キロ以下」に定め直し、レールの追加工事を行いました。

また、専門家から「急カーブでは、車輪やレールの摩耗が早期に進む可能性も考えられる」と指摘されたことを受け、継続的な点検作業も行っています。

宇都宮市 佐藤栄一市長
試運転中は、まだ車輪とレールがなじんでいないので、坂を上りきれなくて落ちてきてしまったり、脱線をしたりするおそれがあり、そのためにさまざまな検証をすると聞いていました。
脱線事故を教訓にして、行政も運営会社も “安全第一” を肝に銘じ、運行に取り組んでいきたいと思います。

慣れないLRTに不安の声も

一方、路面電車が走ることに慣れていないまちでは、歩行者や車との事故を防ぐことが重要です。
開業前、沿線の住民が交通ルールを確認するために開いた会議では、子どもやお年寄りが事故にあわないか、心配する声が相次ぎました。

この間、LRTのレールの溝に、子どもの靴がはまって動けなくなっていました

線路内で倒れた人がいたとき、運転士が目視だけで確認するのは危ない気がします

運転士の訓練 最前線

住民の不安の声にこたえるため、運転士の訓練も念入りに進められてきました。
その要として期待されたのが、中村隆行さん (54) です。

新人の訓練に向かう中村隆行さん(左)

中村さんは、広島市で約30年にわたって、路面電車の運転や後進の指導にあたってきました。
宇都宮市に去年招かれ、新たに採用されたおよそ50人の運転士の指導役を任されています。

指導する中村さん(右)

中村さんが心がけていることは、車や歩行者の「先の動き」を予測することです。
取材をした日は、交差点で信号待ちをしているトラックが、線路に近い場所に停止しているのを見て、注意を促しました。

中村さん

(道路標示の)ゼブラゾーンに入ってきて停止する車は、右折するときにLRTの方に寄ってきて接触する可能性がある。
迷ったときは、まずブレーキを入れておくことが大事。

車や歩行者の動きを常に注意深く観察し、何が起きても即座に対応できるように、指導しています。

運転士の指導役 中村隆行さん
車の動き、歩行者の動き、これから乗車してくるお客さまの動き。それらをすべて見据えた上で対応できるように、総合的な訓練を行ってきました。宇都宮市民に安心してもらうためには、私たちが、いかに安全に徹しなければならないかを、常に伝えています。


開業から10日がたち、これまでに車とLRTの車両が接触する事故が、2件起きました。
2件とも、車のドライバーが交通ルールを守っていなかったことが原因とみられ、けがをする人はいませんでしたが、LRTは一部の区間で30分から45分ほど運転を見合わせました。

公共交通機関では、大事故はもちろん、小さな事故でも影響は少なくありません。
行政や運営会社だけでなく、地域の住民とも連携した綿密な安全対策が、今後も求められます。

  • 宝満智之

    宇都宮放送局 記者

    宝満智之

    2020年入局
    8月から宇都宮市政と事件担当

  • 梶原明奈

    宇都宮放送局 記者

    梶原明奈

    2019年入局
    現在は栃木県政担当

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