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突風被害から命と暮らし守るために

  • 2023年08月28日

7月10日に栃木県南部を襲った突風被害では、野木町や小山市などで建物などの被害が相次ぎ、農作物にも深刻な被害が出ました。
こうした被害はなぜ発生するのか。そしてどのように備えればいいのか。
専門家や、地元の人たちに取材しました。

(宇都宮放送局記者 齋藤貴浩)

突然の突風被害

木が倒れて道路を塞いだ

7月10日の夜、栃木県南部の野木町や小山市などで、突風の被害が発生しました。
停電や倒木、それに建物などへの被害が、広い範囲で相次ぎました。

野木町の会社の倉庫は、建物ごと風で持ち上がり、全体がひしゃげていました。

気象台の現地調査

宇都宮地方気象台が、翌日に現地調査をした結果、急激な下降気流が発生して、上空の冷たい空気が吹き降ろす「ダウンバースト」という現象が発生した可能性が高いと判断しました。

関東地方特有の地形が影響

栃木県の突風被害の翌日には、周囲の埼玉県や茨城県などでも、似たような被害が起きていました。

同じような地域で、なぜ被害が立て続けに起きたのか。
突風の仕組みに詳しい防衛大学校の小林文明教授に聞いたところ、関東地方特有の地形が影響しているということでした。

防衛大学校 小林文明教授
関東地方は平野が広いうえに、北側には日光連山や赤城山などの山がそびえたっていて、積乱雲が発達しやすい条件になっています。積乱雲に伴う突風や「ダウンバースト」、竜巻などの現象が、日本でも1、2を争うくらい発生しやすいエリアと言うことができます。

小林教授によりますと、暑い日が続いて積乱雲が発生する夏の時期、突風被害はいつでも発生するおそれがあるということです。

また、世界的な課題となっている「地球温暖化」や「ヒートアイランド現象」が深刻化するのに伴い、こうした被害はさらに増加し、激甚化する傾向にあるということです。

私たちが身の安全を守るためには、スマートフォンなどで最新の気象情報を確認するとともに、視覚や嗅覚などの“五感”を働かせて、突風の前触れを感じ取ることが重要だと、小林教授は指摘しています。

防衛大学校 小林文明教授
注意深く空を見ていることで、いつもとは違う積乱雲があることや、雲全体が非常に巨大がどうかを判断できるようになります。
例えば、冷たい風を感じる、アスファルトの湿ったにおい、草の“もわっとした”においを感じる、こうしたものを“五感”で感じることで、突風の前触れを察知することができるのです。

農業被害も深刻

建物などの被害とともに深刻だったのが、農業被害です。

当時は突風とともに、広い範囲でひょうも降ったことから、農作物や農業用の施設が甚大な被害を受けました。
栃木県の7月末時点のまとめで、被害額は、およそ1億6千万円にのぼっています。
 

ひょうで傷ついた梨

野木町で、20年以上梨を栽培している中村毅久さんの果樹園でも、収穫が近づいていたほとんどの梨が被害を受けました。

中村さんは、全国から100件以上入っていたという注文を、すべてキャンセルせざるを得ませんでした。

中村毅久さん
ことしは豊作だと意気込んでいたのですが、ひょうの被害によって売り物になる梨はほとんどなくなってしまいました。収穫量も売り上げも、去年の1割にも届かないと思います。

中村さんの果樹園では、梨の実に加えて、葉っぱまで落ちたり傷ついたりしことで、来年の収穫にも影響が及んでしまう可能性があるといいます。

中村毅久さん
葉っぱが落ちてしまったので、木が“葉っぱが足りない”と錯覚して、新しく芽を出そうとしているんです。本来なら来年出る芽が、すでにこの時期に動き出しちゃっているので、来年は実がつかない可能性があります。

「防ひょうネット」で被害を防げ

こうした被害を防ぐには、どうすればいいのか。
ひょうから農作物を守る「ネット」を販売する会社が、同じ野木町にありました。

このネットは編み目が細かく、畑や果樹園を広く覆うことで、ひょうの被害を防ぐことができます。
耐久性にもすぐれ、一度購入すれば、10年以上にわたって使用できるということです。

この会社によりますと、ひょうによる農業被害は、ここ数年で増え続けているうえに被害の範囲も拡大していて、7月の被害のあとには、関東地方のさまざまな地域から、注文や見積もりの相談が相次いだということです。

“いつもの雨”からわかることがある

栃木県は、夏の時期に急な大雨が降ってくることが多い地域です。

だからこそ、「きょうはいつもと違う雲だ」とか「冷たい風が吹いている」などと、突風が起きる前触れを感じ取れるようになるとも言えます。

みずからの“五感”と最新の情報を組み合わせることで、みずからの命と暮らしを守ることが重要になります。

  • 齋藤貴浩

    宇都宮放送局記者

    齋藤貴浩

    2021年入局
    県警・司法担当を経て
    8月から両毛地域を担当
    突風被害が発生した日の夜から現地で取材

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