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交通事故遺族の署名活動

“時速160キロは危険運転ではないのか”
  • 2023年07月06日

    「今から帰るよ」スマートフォンに届いたそのことばが、最後のメッセージでした。
    ことし2月、宇都宮市で起きた交通死亡事故。
    夫のオートバイに追突した車は、時速160キロを超える速度で走っていたとみられています。
    「法定速度を100キロ上回るスピードが出ていて、なぜ危険運転の罪に問われないのか」
    遺族の女性は署名活動をはじめました。

    (宇都宮放送局記者 齋藤貴浩)

    夫は帰って来なかった

    佐々木多恵子さん

    佐々木多恵子さんです。
    ことし2月、夫の一匡さんを交通事故で亡くしました。

    佐々木多恵子さん
    主人から「今から帰るよ」ってメッセージが来て、そのあと帰りをずっと待っていました。
    でも、全然連絡が来なくて、心配になって玄関を開けたら警察官が立っていて「これは事故や事件に巻き込まれたのかも」と思いました。

    一匡さんは宇都宮市の国道新4号バイパスをオートバイで走行中、後ろから来た車に追突されました。

    事故に遭ったバイク(画像提供 佐々木家)

    乗っていたオートバイは原形をとどめないほど大破しました。多恵子さんが病院に駆けつけた時には、すでに一匡さんの死亡が確認されていました。

    初孫を抱く一匡さん

    亡くなるおよそ半年前には初孫が生まれて、成長を楽しみにしていたという一匡さん。
    自動車メーカーに勤務し、車の安全に関する研究を行っていました。

    佐々木多恵子さん
    交通安全に関しては人一倍気をつけていた人が交通事故で亡くなるとは、こんな理不尽なことがあっていいのかなって。主人にとっても無念だったと思います。

    “危険運転”ではなく“過失運転”

    事故現場

    その後の捜査で、車を運転していた20歳の被告は、法定速度を100キロ上回る時速160キロを超える速さで走っていたとみられることがわかりました。
    しかし裁判で被告が問われたのは、より刑の重い「危険運転」の罪ではなく「過失運転」の罪でした。

    法律では、制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為によって人を死亡させた場合、危険運転致死の罪に問われることになっています。

    この事故は法定速度を100キロ上回っているにも関わらず、なぜ「危険運転」の罪に問えないのか。
    多恵子さんの質問に対し、検察官は次のように話したといいます。

    検察官
    事故の直前まで直線道路をまっすぐ走れていたということは、車が制御できていたことになる

    こうした返答に多恵子さんは、やりきれない思いを感じたと言います。

    佐々木多恵子さん
    車を制御できなかったから追突したと思っている。検事さんが言っている「運転を制御できている」という意味が、私には理解できませんでした。

    “危険運転”への変更を求めて

    「過失運転」ではなく「危険運転」の罪に問うことはできないのか。
    多恵子さんは事故から4か月後の6月、インターネットで署名活動を開始しました。
    開始から3週間で、約5万人の署名が集まりました。

    署名活動のWEBサイト

    さらに、宇都宮市内の街頭でも署名活動を行いました。
    一匡さんの職場の同僚も協力を呼びかけ、1日で600人以上の署名を集めることができました。

    宇都宮市内での署名活動

    署名した男性
    160キロというのがあまりに度が過ぎている。悪ふざけや失敗のレベルではないと思う。

    過失運転致死の罪に問われている被告の裁判は、宇都宮地方裁判所で続いています。
    多恵子さんは6月26日、危険運転致死罪への「訴因変更」を求める要望書と、およそ5万人分の署名を宇都宮地方検察庁に提出しました。

    提出後の記者会見で、多恵子さんは次のように話しています。

    佐々木多恵子さん
    およそ5万人もの人たちから署名が集まったことはとてもうれしく思っています。 
    “過失運転”ではなく“危険運転”だという自分の考えは間違っていなかったんだと確信しました。
    これからも訴因変更などに向けて活動に取り組んでいきたいです。

    事故をめぐる動き

    多恵子さんが要望書を提出した2日後の6月28日、警察や検察は事故現場の周辺で現場検証を行いました。事故の裁判をめぐる今後の動向が注目されます。
     

      • 齋藤貴浩

        宇都宮放送局 記者

        齋藤貴浩

        2021年入局
        宇都宮局が初任地
        事件・司法取材を担当


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