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消防団員が足りない!

担い手は減るばかり…変革を迫られる消防団
  • 2023年06月09日

大雨による災害や火災で活躍する、地域の消防団。
本業の仕事を持ちながら、ひとたび災害が発生するといち早く現場に駆けつけて消防署員とともに初動対応にあたります。

しかしその担い手は減り続けるばかり…
どうすれば活動を維持できるのでしょうか?
                           (宇都宮放送局記者 村松美紗)

今回取材したのは、佐野市消防団
地元住民 約580人が所属しています。

災害時に欠かせない存在

4年前の台風19号。佐野市では、市内を流れる秋山川が氾濫しました。

台風の翌日 報道ヘリから撮影

3800棟余りの建物が水につかるなど、甚大な被害が出ました。

住宅の浸水被害

この時も、消防団員は初動対応に力を尽くしていました。
秋山川のすぐそばで活動していた、消防団員の三井広好さんです。

当時、市内では次々に被害が発生していて、消防署員はすぐには駆けつけられませんでした。
このため署員が到着するまでの間、三井さんたち消防団員が手分けして住民の救助にあたったのです。

住民を救助したアパートの前で

消防団員 三井広好さん
「アパート1階の住民が『助けてください』と言っていたので、はしごを下ろして団員が下りて助けに行きました。すでに胸の高さまで水が来ていました」

一段高くなっている道路からはしごを下ろした

救助のあとは、まだ明かりがついている住宅の扉をたたいて避難を呼びかけたそうです。

消防団員が足りない!

災害時、重要な役割を担っている消防団員。

しかし佐野市では、必要な人数に対して現在約150人「定員割れ」しています。

佐野市消防本部 根岸康貴 消防団係長
「市内で災害が同時多発的に広範囲で発生した場合、消防本部の力だけでは限界があります。消防団員が減少することで、災害対応の遅れが一番の懸念です」

なんとか団員を確保したいと動き出した佐野市。

まず、市内3000を超える事業所宛てに、社員の入団の協力を呼びかけるリーフレットを送付しました。

消防庁のリーフレット

また、毎年恒例となっていた全国の消防団が消防技術を競う大会への出場を原則取りやめました。
大会については「練習の負担が大きい」との声があがっていて、負担軽減を図ったのです。

ことし始めた訓練の様子

大会の代わりに、1日で集中して訓練する行事に切り替えました。

ついに着手した〝統廃合〟

それでも、目先の団員確保だけでは、いずれ限界が来るのではないか。
市は、消防団の仕組みそのものの根本的な見直しにも着手しました。

消防団の〝統廃合〟です。

そのイメージがこちら。

消防団員が減ってしまうと活動に必要な人数が集まらず、初動対応に時間がかかってしまいます。
初動が肝心な災害対応では致命的です。

そこでたとえば、隣どうしの団をいくつか統合します。
地区ごとにある消防団の拠点も、1か所に集約。

担当する範囲を広げる代わりに、1つの団に必要な人数を確保できるというわけです。

消防団がなくなる!? 拭えない不安…

しかし、住民からは不安の声が寄せられました。

住民アンケートを見せてもらいました

統廃合によって「地元から消防団の拠点がなくなる可能性」について尋ねたところ…

『出動時間がどの程度遅くなるのか?』
『分団は今まで通りに残してほしい』

「不安」や「反対」という回答は7割を超えました。

不安に思うのは、なぜなのか。
山間部の住民に聞いてきました。

市街地から10キロ以上離れた山間部へ

山間部の地区で町会長を務める、須藤信夫さんです。

消防団の拠点を案内してくれました

こちらが須藤さんの地元にある消防団の拠点、分団小屋(ぶんだんごや)。
須藤さんが物心つく前からこの場所にあり、地元では通称「だんごや」と呼ばれて親しまれているそうです。

「だんごや」には、災害時に必要な資機材が備えられています。

ライフジャケット
浸水を防ぐために使う「土のう」

統廃合によってもし地元の小屋がなくなったら、隣の地区を頼ることになるわけですが…

延々と一本道が続く

この地区には市街地や隣の地区と結ぶ道路は一本しかありません。
碁盤の目のように道路が整備されている市街地とは違って、迂回ルートがないのです。

その一本道に架かる小さな橋を案内してもらいました。

画面奥側が市街地

須藤信夫さん 
「仮にこの橋が落ちてしまった場合、ここから奥は〝陸の孤島〟になってしまうのです」

地元に小屋がないと、いざという時に駆けつけてもらえないのではないか。

須藤信夫さん
「やはり危機管理という点では、消防は優先的に残していただけたらありがたいです」

こうした住民の不安を受け止めながらも、市は、消防団が将来にわたって存続できる形を探っていかなければならないとしています。

佐野市消防本部 根岸康貴 消防団係長
「消防団は、地域防災の要。なくてはならない存在です。ありとあらゆる施策を推進して、活性化を進めていく必要があると考えています」

取材を終えて

「存続するか弱体化の一途をたどるか、今が過渡期」
消防本部の根岸さんが何度も口にしていた言葉です。
消防団は、ほかの何にも変えられない、欠かせない存在なのだと感じました。

佐野市の取り組みはまだ始まったばかり。
それぞれの地域になじむ仕組みは見つかるのか?
引き続き取材を続けたいと思います。

  • 村松美紗

    宇都宮放送局

    村松美紗

    警察と司法を担当。
    ロケ当日は偶然大雨に。山間部に住む皆さんの不安な気持ちを実感しました。

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