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車を借りて被災地支援 その仕組みとは

  • 2023年06月08日

    「車社会」といわれる栃木県で、新たなカーリース事業が始まりました。
    月およそ1万円の安値で車を借りることが、被災地の支援につながるというこの事業。
    一体どんな仕組みなのでしょうか。
    (宇都宮放送局記者 齋藤貴浩)

    被災地で生まれたカーリース

    この事業を運営するのは、宮城県石巻市に本部のある「日本カーシェアリング協会」です。
    5月10日、関東初の活動拠点となる支部を栃木市に開設しました。

    駐車場には、通勤や生活の足として大活躍の軽自動車や、作業に使える軽トラックなどがずらり。
    これらの車を月額1万1000円で誰でも借りることができます。 

    吉澤武彦さん

    協会を立ち上げた吉澤武彦さんです。
    立ち上げたきっかけは、12年前の東日本大震災でした。

    吉澤さんは当時、宮城県石巻市などでボランティアとして活動していました。
    そこで目の当たりにした光景が忘れられないといいます。

    日本カーシェアリング協会 吉澤武彦さん
    石巻では約6万台の車が流されて、交通弱者の方々がいっぱい出たんですね。移動に困っている方がたくさんいらっしゃると聞いて、なんとかしたいという気持ちでした。

    津波で流された車(2011年3月 宮城県石巻市)

    車がなく生活に困っていた住民の姿を見て、吉澤さんは被災地に車を贈ろうと心に決めます。
    しかし、当時の吉澤さんはペーパードライバーで、自動車業界で働いた経験もありませんでした。

    そこで、連絡先のわかる企業に次々に電話をかけ「車を譲ってほしい」と頭を下げました。
    3か月後、ようやく1台の車を譲ってもらい、石巻市の仮設住宅に寄付しました。

    車を寄付する吉澤さん(画像提供 吉澤武彦さん)

    仮設住宅で車をシェアしてもらうことで、移動手段がなくて困っている住民たちを助けたい。
    これが事業のはじまりでした。

    カーリースの仕組みとは

    その仕組みがこちら。

    車の借主はふだん、月額およそ1万円という格安の値段で車を借りることができます。
    車検代や自動車税はカーリース団体(日本カーシェアリング協会)が負担し、借主が負担を求められることはありません。

    ただし、ひとたび全国のどこかで災害が発生し、被災地で車が必要となれば10日以内に返却します。

    返却された車はカーリース団体を通じて被災地に送られ、被災者の移動手段に使われる仕組みです。
     

    栃木に広がったわけ

    東日本大震災のあとも国内では災害が相次ぎ、吉澤さんたちの協会は被災地に車を届けてきました。
    4年前、台風19号による大きな被害を受けた栃木市も、そのひとつです。

    臨時の受付窓口(画像提供 吉澤武彦さん)

    協会が臨時の受付窓口を設置すると、被災した多くの栃木市民が車を利用しました。
    この時のつながりが、今回の支部開設のきっかけになったといいます。

    左が吉澤さん(画像提供 吉澤武彦さん)

    日本カーシェアリング協会 吉澤武彦さん
    台風の時に栃木に支援に入りましたが、そのときにできたつながりの中で協力してくれる人が出てきて、協力態勢が築けたことが支部の設立の足がかりになりました。

    着実に増える利用者

    支部への利用者からの問い合わせや申し込みも、少しずつ増えてきました。

    鍵を受けとる利用者(写真右)

    取材した日は、地元の市議会議員も務めるNPO法人の代表が軽トラックの受け取りに来ました。
    地域のゴミ拾いや植樹などに活用するためです。

    利用者の男性
    これまではゴミ拾いをする際に知り合いから車を借りるなどして活動していました。
    これからは軽トラックが手元にあるのですぐに活動できます。非常にありがたいです。

    車を借りて被災地支援

    こうした利用者に対し、協会が月およそ1万円の安値で車を貸し出すのは、いざという時に被災地へすぐに車を届けられるようにするためです。

    車は屋外の駐車場に止めたままだと雨風で傷みやすくなるほか、バッテリーが上がるなどのトラブルが起きやすくなる場合があります。また、駐車場代や維持管理のコストも協会の負担となります。

    そこで、車を安く貸し出し、借主に維持管理を担ってもらうことで、災害時に必要な一定の台数を確保し続けようというのです。

    車を借りることが、いざという時に被災地に車を届け、被災地支援につながるというこの事業。
    吉澤さんは、家庭や会社で車があと1台ほしいという人などに気軽に使ってほしいといいます。

    日本カーシェアリング協会 吉澤武彦さん
    いつどこで災害が起きるか分からない時代です。栃木をいざという時、被災地に車を出せる場所にしていきたいので、気軽に車を借りてもらえたらうれしいです。

    “車で助け合い”できる社会を

    ふだんから使われている車が被災地で「即戦力」として使えるのはとても良い仕組みだと、取材を通して感じました。車の利用を通した助け合いで成り立つこの事業に今後も注目していきたいと思います。

      • 齋藤 貴浩

        NHK宇都宮放送局記者

        齋藤 貴浩

        2021年入局 宇都宮局が初任地で3年目を迎えました
        趣味はあてのないドライブと県内の温泉めぐり
        愛車で25市町制覇しました

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