障害者と地域をつなぐ「新聞バッグ」
- 2023年05月26日

丈夫で使い勝手が良い、新聞紙を再利用したエコバッグ。栃木県真岡市にある障害者の就労を支援する事業所で作られたもので、運営する食堂でテイクアウトの際に使われてきました。
お客さんからも好評の「新聞バッグ」をもっと広めようと始めた取り組みが、障害者と地域の絆を育んでいます。
(NHK宇都宮放送局キャスター 川島加奈代)
使いやすさ抜群!障害のある人たちが作る「新聞バッグ」

栃木県真岡市にある、障害のある人たちが働く食堂です。 障害者の就労を支援する事業所が運営していて、 13人が調理や接客などを担っています。
日曜と祝日以外は営業。 月替わりのメニューやスイーツを求めて地域の人たちが集う場所です。

料理はテイクアウトすることも可能。こちらの事業所では、新聞紙を再利用したエコバッグを使っています。

食堂の下に、新聞バッグ作りを行う工房があります。メンバーが役割分担しながら1日に50個ほど手作りしています。


材料は古新聞とのりだけ。 丁寧に折ってのり付けし、10分ほどで1つ完成します。


マチも十分にあって使い勝手がいい「新聞バッグ」です。強度はもちろん、取っ手を細くすることで見た目と持ちやすさにもこだわりました。
「試行錯誤して作り上げた自信作のバッグを、テイクアウト以外でも活用することはできないだろうか?」
そんな思いから、こちらの事業所では 身の回りのものと新聞バッグを交換してもらうプロジェクトを始めました。

もともとこちらの事業所では、地域の人たちと共同で子ども食堂の運営にも取り組んできました。

そのため、日ごろから地域の人たちが食材などを寄付してくれることが多かったそうです。

そこで、もらいっぱなしではなく対等な関係を築くために「新聞バッグ」をお返しとして渡すことにしました。

「そらまめ食堂」店長 成田雪子さん
こちらから何かお返しする、対等な立場というのは気持ちいいということもあったし、うちの利用者さんがやっていることをわかってもらうためには「新聞バッグ」はうちの強みだと思っているので、それを差し上げる形にするというのは一石何鳥にもなるような気がして始めました。
「新聞バッグ」が事業所の外で活躍!
寄付されるものはさまざまです。生き物とお金を除き、基本的にはなんでも受け付けています。

市内の花農家、日下田すみれさんです。出荷できない規格外の花を食堂に飾ってもらおうと定期的に寄付しているそうです。花と交換で、新聞バッグを受け取りました。

花農家 日下田すみれさん
捨ててしまうのはやっぱりもったいないですし、お花をきちんと飾ったりしてもらえるのがすごくうれしいのでいいなと思っています。
日下田さんは、受け取った新聞バッグを、趣味で行っている野菜販売の場で活用しました。
お客さんの反応も上々です。

購入時に新聞バッグを受け取ったお客さん
以前も使わせていただいたんですけれど、何度も使いまわししちゃったりして。なかなか壊れないですし。

購入時に新聞バッグを受け取ったお客さん
あったかい感じですかね。ちょっとしたときに使ったりできるのでいいです。
障害者と地域を「新聞バッグ」がつなぐ

事業所の外でも「新聞バッグ」を使ってもらうことは、メンバーのやりがいにもつながっています。

わらしべ長者的なことはないだろうと思っていたけれど、意外と来てくれる人がいますよね。

作ってよかったーっていう感じはしますね。お客さんから(いいと)言われると、やっぱり次も頑張ろうっていう気持ちになります。
プロジェクトをサポートする支援員の荒木裕美子さんも、手応えを感じています。

「そらまめ食堂」支援員 荒木裕美子さん
物々交換によって来てくださったお客様と彼らが直接顔を合わせることで、彼らにとってもこれを使ってくれる人がいるんだという実感につながるし、お客様にとっても一人の新聞バッグを折っている人なんだなという出会いが生まれるので、その出会いを増やす機会として広がっていくといいなと思っています。

そんななか、うれしい反響がありました。

市内のいちご農家から、販売用の「新聞バッグ」を作ってもらえないかという仕事の依頼がきたのです。重さのあるいちごを支えるためにはどんな形状がいいか話し合い、試作しました。

こちらが、いちごパック用に作ったバッグです。取っ手にはガムテープの芯を入れてベルト状にし、強度を高めました。

いちご農家 猪野麻美さん
ビニールの袋よりもエコだし、いいですよね。エコにつながるのでよかったです。求めていたものに近いというか、底があって丈夫で。どんどん活用させてもらいたいと思います。

使う相手を思ってつくった「新聞バッグ」が、障害者と地域の絆を育んでいます。
取材のきっかけは、プライベートで訪れた際、クレープのテイクアウトでいただいた「新聞バッグ」のクオリティの高さに感動したことです。捨ててしまうのはもったいなく、文房具を入れたりして職場で活用していました。
今回の取材でみなさんの丁寧な仕事ぶりを見せていただきました。使う人の身になって作られた「新聞バッグ」を手に取れば、きっとそのことが伝わると思います。
身の回りのものと新聞バッグを交換したい人は事前に「そらまめ食堂」への連絡をお願いします。
