「外国人材は成長のカギ」奮闘する中小企業
- 2023年03月02日

慢性的な人手不足が続くなか、栃木県内で増えているのが外国人労働者です。去年10月末時点で2万9800人あまりと、これまでで最も多くなりました。なかでも増えているのが、即戦力となる高い技術や知識を持つ外国人たちです。こうした人材を多く獲得し育てていくことが会社の成長にもつながると、採用を積極的に進める足利市の中小企業を取材しました。
宇都宮放送局記者 梶原明奈
半導体関連企業に外国人急増!
栃木県足利市にある、社員120人の中小企業。世界的に需要が高まっている、半導体の作動テストを行う装置を製造しています。


この会社で活躍しているのが、外国人の技術者たち。この3年で、スリランカやベトナムなど3か国から20人以上を正社員として採用しています。機械のプログラミングなどの重要な役割を担い、いまや会社にとって欠かせない存在になっています。

工場長の笹岡孝一さん
外国人社員は日本語が堪能で、特に会話で困ることもなく、仲間としてやっています。
まじめだし、貪欲に学ぼうとする意識がある。仕事の飲み込みも早いので、貴重な戦力です。
人手不足に悩みも・・・
しかしこの企業も、数年前までは慢性的な人手不足に悩んでいました。
人材戦略を担当する佐藤幾代さんは、「即戦力となる外国人労働者を採用したい」と考えていました。
技能実習生を受け入れたこともありましたが、滞在期間の3年で帰国してしまい、育成が難しかったといいます。

企業で採用を担当する佐藤幾代さん
技能実習制度だと、一生懸命技術を教えても3年たって1人前になったころに自分の国に帰ることになってしまい、「実習生ロス」を経験したことがありました。システムの問題なので技能実習生のせいではないですが、なかなかうまくいかなかった。
半導体関連企業として、技術レベルを落とさずに人材の教育をして、会社として成長していきたいと思っていたので、外国人採用についても試行錯誤していました。
連携するのは専門学校

長く働いてもらえる人材を求め、この企業が声をかけたのが、宇都宮市にある専門学校でした。
IT専門のこの学校では、日本語学校で2年間学んだ外国人留学生が、より高度な知識を身につけようと勉強を続けています。


この学校では、留学生たちが就職先で即戦力になれるよう、企業のニーズを聞き取りながらカリキュラムを改善しています。この日学んでいたのは、機械などの3Dモデルを作成するための技術。「製造業には欠かせない」と企業から聞き、今年度から授業に加えました。

専門学校で外国人の就職を支援する五家真佐江さん
企業が、そして今の社会がどんな人材を求めているかということを常に考えながら人材育成をしています。栃木県を選んで来てくれた外国人留学生を、栃木県の中で活躍できるように育てて、企業にお渡ししたいと考えているんです。
企業にも、外国人留学生に対して偏見を持たないでほしいと伝えています。彼らは日本人と同じように能力を発揮できる人材なので、育てれば育てるだけ、きちんと返ってくるものがあるはずだということをわかってもらいたい。
増加する外国人労働者 過去最多に
栃木労働局のまとめでは、県内で働く外国人労働者の数は、去年10月末時点で2万9826人。おととしの同じ時期と比べて590人、率にして2%増え、企業に外国人を雇う際の届出が義務づけられた平成19年以降で最も多くなりました。
また、外国人労働者を雇用している事業所は4399か所で、こちらもおととしの同じ時期と比べて
78か所増えています。

背景にあるとみられるのは、新型コロナウイルスの水際対策の緩和、そして高度な技術や知識を身につけた外国人の雇用の増加です。エンジニアや通訳として働くなど、「専門的・技術的分野」に分類される在留資格を持つ外国人労働者の数が増えていて、去年10月末時点で5869人。前年同期比でプラス27.4%となっています。
栃木労働局は、「人手不足の業界を中心に、今後もこうした外国人労働者の受け入れが増えるのではないか」と分析しています。
長く働いてもらうには? 企業も模索
専門学校の卒業生を受け入れ始めた足利市の企業。会社の内部でも変化がありました。
「外国人社員が長く働ける環境を整えよう」と考えるようになったのです。

例えば、熱心な外国人社員の「少しでも早く技術を習得したい」という声に応えて、昼休みに自習ができるよう作業スペースを解放することにしました。昼休みの電気が消えた作業部屋では、昼食を食べ終わったベトナム人社員が勉強を続けていました。

ベトナム人社員
いろいろな仕事に早めに慣れて、自分でできるようになっていたいと思うので、手が空いたら
こんな風に自習をするようにしています。パソコンで勉強したいときに、いつでもできるという環境には満足しています。

生活のサポートも、丁寧に行っています。この日は、育休中のスリランカ人の女性社員が、赤ちゃんを連れて会社を訪れていました。彼女の周りには、自然と人だかりが。集まったほかの社員が「困っていることはない?」などとかわるがわる声をかけていました。日本で子育てをする外国人社員が孤立してしまわないよう、フォローを欠かさないようにしているのです。
育休中のスリランカ人社員
出産するまで不安はあったけど、会社のみなさんが優しいので、この会社にいられてうれしいです。今は子どもと一緒の時間を大事にしたいけど、1年たったら仕事もできると思うので、また戻ってきたいです。日本でずっと働いて、子どもも日本の生活に慣れてほしいと思っています。
この先も外国人材をパートナーに

外国人社員がいきいきと働ける環境を整え、この先も長くパートナーとして歩んでいく。
この企業では、新年度も4人の外国人を採用する予定です。

企業で採用を担当する佐藤幾代さん
彼らは企業にとって、いてもらわないと困る存在になっていますので、日本人と肩を並べて、胸を張って頑張ってもらいたいし、私たちも応援していきたい。私たち企業が彼らの能力を引き出し、彼らが成長する、会社で長く働いてもらう、という好循環を培っていきたいです。ぜひとも長く働ける企業として選んでもらいたいし、そういう企業でありたいです。