考える、子どもたちの"いま"

1989年11月20日。
子どもの生きる権利や守られる権利を定めた「子どもの権利条約」が、国連総会で採択されました。
しかし、虐待や貧困など、解決していない課題も多くあります。
「子どもの権利」をテーマに、栃木県内の子どもたちの“いま”を見つめます。

コラム19.01.28更新

困惑する現場 早急な環境整備を

日本語指導が必要な子どもたちの取材をして印象に残ったのが、急激な外国人の増加や多国籍化に困惑する学校現場の様子でした。ある日突然、日本語が全く分からない子どもが教室にやってくる。そんな状況が、県内のあちこちで起きているのです。

教室の中の女子児童

教室の中の女子児童

努力を重ねる学校現場

もちろん、外国人児童の増加は、負の側面だけではありません。日本人の子どもたちが、言葉が分からない外国の子どもの学習をサポートしたり、一緒に遊んだりすることで互いにいい影響を与えることも考えられます。実際、今回取材した足利市の小学校では、日本に来たばかりの女子児童をあたたかく迎えようと、教室にスペイン語の挨拶の言葉が貼り出されていました。小学校の校長は、「子どもたちは、女子児童が学校になじめるように、いろいろな面でサポートをしてくれている」と話していました。言葉が通じない相手と交流することは、日本の子どもたちにとってもかけがえのない体験になると思います。

高い進学のハードル

一方、学習面では、やはり日本語指導の充実が求められていることも痛感しました。取材した指導員の姉妹は、日本語を十分に理解出来ない外国人の子どもにとって、高校への進学はハードルがとても高いことを教えてくれました。姉妹は10年以上指導員を務めていますが、高校を卒業できた子どもは少なかったといいます。足利市内の外国人の子どもが姉妹の日本語の個別指導を受けられるのは、現状では、週に1時間だけ。日本での進学を考えると、子どもたちに十分な学習時間を確保出来ているとは言えない状況です。

日本語指導をする指導員

日本語指導をする指導員

求められる学習支援の制度設計

外国人材の受け入れを拡大する法案が先日国会で成立しました。今後も外国人の子どもが増え続けることは間違いないと言えるでしょう。こうした中、指導員の姉妹は、「私たちの指導だけでは子どもへの教育が不十分になってしまうのではないか」と心配していました。指導員や学校現場は、外国人の子どもの急激な増加に困惑しつつも、できる限りの支援をしようと努力を重ねています。しかし、それには限界がありますし、子どもたちの将来に向き合うのであれば、現場の努力任せにすることは許されません。厳しい財政状況の中ではありますが、市や県、それに国が学習支援のための制度をどうするべきなのか正面から議論する必要があると感じました。

深刻な未就学の問題も

今回のリポートでは触れられませんでしたが、外国人の子どもをめぐっては、学校へ通わない「未就学」の問題も起こっているといいます。憲法は国民に、子どもに教育を受けさせる義務があると定めています。しかし、これはあくまで日本国民についての話で、外国人にはその義務がないのです。私自身、恥ずかしながら、このことを今回の取材で初めて知りました。保護者が希望すれば、学校は外国人の子どもを受け入れることになっていますが、中には子どもを学校へ行かせていない保護者もいるといいます。国籍はどこであれ、子どもには適切な教育をうける権利があります。日本に生きる私たちは、子どもたちの将来に真摯に向き合えていると言えるでしょうか。同じ地域に暮らす外国人の子どもたちの教育に何が求められているのか、これからも取材を続けていきたいと思います。

▲ ページの先頭へ