考える、子どもたちの"いま"

1989年11月20日。
子どもの生きる権利や守られる権利を定めた「子どもの権利条約」が、国連総会で採択されました。
しかし、虐待や貧困など、解決していない課題も多くあります。
「子どもの権利」をテーマに、栃木県内の子どもたちの“いま”を見つめます。

コラム18.12.10更新

今のあなたのままでいい〈石川 由季記者〉

学校にいけない、心や体を傷つけられた、ごはんが食べられずいつもおなかをすかせている…。さまざまな状況にいる子どもたちに、私たちはどう向き合っていけばよいのでしょうか。

今回私は不登校の問題を中心に取材を行いました。さらに虐待や貧困など、子どものさまざまな問題と向き合う人たちやその経験を乗り越えてきた人たちから話を聞きました。放送には盛り込めなかった話をこのコラムにつづります。

貴恵さんと同僚

笑顔で同僚と写真を撮る かつて不登校だった女性

今のあなたのままでいい

今回の取材では話を聞いた人たちから、様々な状況で苦しむ子どもたちに向けた思いを聞くことができました。
中学生のときに不登校だった女性は「今のあなたを助けたいと思っている人は必ずいる」と呼びかけていました。さらに「今のままのあなたでいい」と、学校に行けなかったとき自分のありのままの姿を受け止め支援をしてくれた人たちから言われたことばを、今苦しむ子どもたちにも伝えたいと話していました。傷ついたときや苦しんだときにも、その心境をともに受け止めてくれる人がいることが生きていくエネルギーになる、そう感じた取材でした。

"しんどい" 思いは大人も

また取材を通じて強く感じたのは、厳しい状況を生きる子どもたちのそばには同じように苦しむ母親や父親などの大人の姿があるということです。経済的な困窮、自身の病気や障害、それに育児と仕事との両立など状況は様々ですが、中には支援が必要なケースもありました。こうした大人たちに必要なのも、ありのままの姿を受け止めてもらうということなのかもしれません。

子ども食堂イメージ

全国で広がる子ども食堂も当初は子どもたちに食事の提供を行うのがスタンダードな形でしたが、今ではさまざまに形を変え親子がともに食堂へと通っているケースもあります。その中で保護者たちへの特別なプログラムが行われているわけではなくても、誰かが作ってくれた温かな食事を食べながら他愛のない話をする、それだけで救われている大人たちも少なくないのではないでしょうか。

ともに考えたい 現代の子育て

私自身、1歳の子どもと2人で生活しています。
実家は遠方、お互い転勤族のため夫とは結婚してから長く別居です。家族・親戚や近所ぐるみで1人の子どもを育てる昔ながらの子育てとは違い、宇都宮で育児をスタートした当初は頼る人が近くに誰もいませんでした。忙しく仕事をする中、片付けられていない数日分の洗濯物やおもちゃが散乱した2人きりの部屋の中で泣き叫ぶ子どもに対して、声を荒げてしまったことは1度や2度ではありません。単身赴任中の夫が帰ってくるのがあと数日延期になるとか、何か1つでも歯車が狂えば子どもに手をあげてしまったのではないかと感じたこともあります。実際に子育てを経験してみると、虐待は遠いところで起こっている特別な人が起こすことではない、すぐ身近でも起こりかねない問題だと感じました。

親子イメージ

記者と息子

それでも私も、ファミリーサポートや保育園の支援を受けながら子育てを続けています。先日も、休日に息子のお気に入りの絵本のストーリーに沿ってホットケーキを一緒に作ったことを保育園の連絡帳に書きました。先生からのお返事には、自分で卵を割って生地を上手に混ぜた息子に対してではなく「ママも頑張りましたね」と私に対する返事が書かれていました。
本当に些細なことですが、否定せず、受け入れ、応援してくれる人たちが近くにいることは私たち大人にも必要だと感じた出来事でした。
子どもも大人も、誰かに受け止め、支えられながらささやかな幸せを感じられる社会になるように、これからも現代を生きる子どもを取り巻く課題を見つめ、取材を続けていこうと思います。

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