考える、子どもたちの"いま"

1989年11月20日。
子どもの生きる権利や守られる権利を定めた「子どもの権利条約」が、国連総会で採択されました。
しかし、虐待や貧困など、解決していない課題も多くあります。
「子どもの権利」をテーマに、栃木県内の子どもたちの“いま”を見つめます。

ストレートニュース18.11.21更新

"子ども食堂"を広げたい 宇都宮で勉強会〈宇都宮(11月16日):石川 由季記者〉

経済的に厳しい家庭の子どもなどに食事を提供する「子ども食堂」を県内に広げていこうという勉強会が、宇都宮市で開かれました。

 子ども食堂は、経済的に厳しい家庭や、親が働いていてひとりで食事をする子どもなどに無料や低額で食事を提供する取り組みで、全国では2300か所以上、県内には40か所程度あります。勉強会は、この取り組みを県内にさらに広げていこうと、「子ども食堂」の開設を支援する団体が開き、開設を考えている人などおよそ20人が参加しました。
 勉強会では、全国の「子ども食堂」の普及や支援に取り組む東京の「こども食堂ネットワーク」の釜池雄高さんが講演しました。この中で釜池さんは、小学校の家庭科室を使って朝ごはんを提供している例や、運営団体が子どもの自宅に食事を届けている事例を紹介しました。その上で、「子ども食堂の形態も進化し運営者を支援する仕組みも増えているので、栃木県でも取り組みが広がってほしい」と訴えていました。
 勉強会に参加した子ども食堂を運営している女性は「インターネットなどでの情報収集ではわからないこともあり、先行事例について話を聞けたことはとても勉強になりました」と話していました。

オレンジリボン配り「児童虐待防止」呼びかけ〈小山(11月15日):杉浦 雅尚記者〉

11月の「児童虐待防止推進月間」にあわせて、14日、小山市の幼稚園では、市民団体のメンバーが、保護者に虐待防止のシンボルマークの「オレンジリボン」を配り、活動への理解を呼びかけました。

 「オレンジリボン」を配ったのは、小山市を拠点に児童虐待の防止に向けた活動を進めている市民団体「カンガルーOYAMA」です。子どもの虐待防止を呼びかける「オレンジリボン運動」は、14年前の平成16年、小山市で幼い兄弟2人が虐待されて死亡した事件を受けて「カンガルーOYAMA」が始めたのがきっかけで全国に広がりました。
 14日は団体のメンバー4人が市内の幼稚園を訪れ、子どもの保護者およそ50人に、「オレンジリボン」とパンフレットを配って活動への理解を呼びかけました。
 30代の母親は、「虐待は社会からなくなってほしい。子育てをしていると、大変なことやイライラすることもあるが、穏やかな気持ちで子育てしていきたい」と話していました。
 「カンガルーOYAMA」の大久保 幸子 会長は「リボンを見て虐待防止の理解を深めすべての子どもが笑顔で過ごせるようになることを願っています」と話していました。

"子どもの貧困"実態調査へ〈小山(11月8日):杉浦 雅尚記者〉

栃木県小山市は、子どもの貧困の実態を調べようと、市内の小中学校と義務教育学校の子どもたちなどを対象にアンケート調査を実施することになりました。

 小山市は、子どもの貧困をなくすための5か年計画を策定して取り組みを進めています。そして、このほど市役所で開かれた会議で、子どもの貧困の実態を調べようと、アンケート調査を実施することを明らかにしました。それによりますと、対象は、市内の小学5年生と中学2年生、そして、同じ学年にあたる義務教育学校の児童・生徒と、それぞれの保護者あわせておよそ6000人で、11月中旬から下旬にかけて実施します。
 子どもへの質問では、学習や部活動で使う用具類を買うことができず困ったことがなかったかや、保護者に対しては、経済的な理由で、子どもの医療機関での受診や学校行事への参加をあきらめたことがなかったかどうかなど、合計およそ40項目を尋ね、外見ではわかりにくい「潜在的な貧困」の状況や、対策の必要性の有無を把握することが目的です。調査用紙は外国語版も作成し、学校で配布・回収するということです。
 小山市子育て包括支援課の大橋雅子課長は、「貧困という状況は目に見えません。貧困を断ち切るため次の計画にいかしたいので率直な回答を寄せてほしい」と話していました。

児童虐待防止を訴える〈栃木県庁(11月4日):佐藤 祐介記者〉

11月は、国が定めた「児童虐待防止推進月間」です。これにあわせて子どもへの虐待防止について考える催しが11月4日、栃木県庁で行われました。

 児童虐待防止推進月間にあわせて県が開いた催しには、およそ200人が参加しました。
はじめに、小山市から全国に広がった虐待防止を訴える「オレンジリボン」の運動に取り組んでいる市民団体の大久保幸子代表が、これまでの活動について報告しました。大久保さんは、サッカーや自転車など県内のプロスポーツ団体の協力で運動を展開してきたことを報告し、「オレンジリボンを通じて子どもたちを虐待から守り、健やかに成長できる家庭や社会を築く輪を広げていきたいです」と話しました。
 このあと、海賊にふんして子育てなどをテーマに音楽や講演活動を行っている栃木県出身の音楽作家、「キャプテン☆うっちゃる」さんが、歌や子育て論を披露し、「みんなが誰かを喜ばせる力を育てれば、虐待などのない将来を築くことができます」と訴えました。
 県によりますと、昨年度(平成29年度)県内の児童相談所などが把握した児童虐待の件数は、2214件とこれまでで最も多くなっています。
 子育て中の40歳代の女性は「子どもの行動に早くしなさいと叱りつけてしまうことが時々あるので、気をつけて子どもと接していきたい」と話していました。

「子どもの権利条約フォーラム」開催〈足利(11月3日):有馬 護記者〉

世界中の子どもの基本的人権が保障されることを定めた「子どもの権利条約」を多くの人に知ってもらおうと、子どもを取り巻く課題などを話し合うフォーラムが11月3日から足利市で始まりました。

 このフォーラムは、子どもの生きる権利や守られる権利の保障などを定めた「子どもの権利条約」の普及に取り組む市民団体が毎年、開催していて、栃木県では初めて開かれました。初日の11月3日は、およそ150人が参加し、家庭の事情で家にいられない子どもが放課後遊んだり泊まったりできる大阪・西成区の施設を取り上げたドキュメンタリー映画が会場で上映されました。そのあと、施設を運営するNPO法人の荘保共子理事長が講演し、「不登校や暴力などの行動は生きづらい状況への子どもたちの正常な反応で、問題を解決するためにも、子どもと保護者を支える地域の居場所が必要だ」などと話しました。
 「子どもの権利条約フォーラム」の大竹智 実行委員長は「1人でも多くの人が子どもの権利を考える機会にして欲しい」と話していました。フォーラムは11月4日も行われ、虐待防止や子どもの貧困など、20あまりのテーマについて意見が交わされました。

子育て中の母親支援「ホームスタート」始まる〈那須塩原(11月1日):田中 絵里記者〉

子育てに悩む母親の孤立を防ごうと、先輩ママのボランティアが幼い子どもがいる家庭を訪問する取り組みが那須塩原市で始まることになり、11月1日から申し込みが始まりました。

 「ホームスタート」と名付けられたこの取り組みはイギリスで始まったもので、日本でも児童虐待にもつながりかねない子育てに悩む母親の孤立を防ごうと各地で行われていて、栃木県内では、那須塩原市のNPO法人が11月から始めます。
 「ホームスタート」では、専門の研修を受けた子育て経験のあるボランティアが未就学児のいる市内の家庭を週1回、2時間ほど無償で訪れ、子どもを公園で遊ばせたり、食事作りを一緒にしたりするほか、母親の話し相手になります。
 現在13人いるボランティアへの研修は、定期的に実施する予定だということです。
利用申し込みは11月1日に始まり、「ホームスタート」のサービスを提供するNPO法人の「子育てほっとねっと」の高根沢明子さんは、「母親の話を聞き、孤立させないことで虐待を未然に防ぐことができると思う。ボランティアはみんな経験豊富な先輩ママたちなので ぜひ利用してほしい」と話しています。

電話番号 080-5979-5417(利用は那須塩原市内のみ)

児童虐待の対応件数 県内で2000件超〈11月1日:田中 絵里 記者〉

昨年度、自治体や児童相談所が対応した栃木県内の児童虐待の相談件数は、あわせて2191件で、前の年度よりも339件増え、初めて2000件を超えたことが県のまとめでわかりました。

 これについて県は、▽虐待への関心の高まりで通報が増えたことや、▽警察や教育機関との連携が強まり、通告が増加したことを理由にあげています。
このうち児童相談所に寄せられたのは1232件で、▽子どもの存在を否定するようなことを言ったり子どもの目の前で家族に暴力をふるったりする「心理的虐待」が最も多く533件、▽次いで、育児を放棄する「ネグレクト」が394件、▽子どもを殴るなどの「身体的虐待」が284件となっています。

 こうしたなか、県内ではネグレクトや家庭の困窮などの状況にある子どもに食事の提供や学習支援を行う「子どもの居場所」づくりが進められていて、県によりますと、現在NPOなどが運営する施設が9か所あるということです。
 また、虐待につながりかねない母親の孤立をどう防ぐかも課題です。県内では、▽妊婦や産後の母親の家事、育児をサポートする制度を設けている自治体があるほか、▽先輩ママのボランティアが、小さな子どもがいる家庭を訪ね、話をしたり一緒に遊んだりするNPOの取り組みなどが始まっています。

栃木県内の不登校の子ども 過去10年で最多〈11月1日:石川 由季 記者〉

栃木県内の不登校の子どもの人数は、2600人あまりで、過去10年で最も多くなったことがわかりました。

 文部科学省の調査によりますと、昨年度・平成29年度、栃木県内で病気や経済的な理由などを除いて年間30日以上、学校を欠席した「不登校」の子どもは、▽小学生が630人、▽中学生が2007人のあわせて2637人で、過去10年で最も多くなりました。
 不登校となった理由は、▽いじめや学校での友人関係、▽学業の不振、▽家庭に関わる問題などさまざまで、複数の理由が原因となっているケースも少なくありません。
 こうした中、県内23の市・町では、不登校の子どもたちの相談や勉強の場として「適応指導教室」を設けているほか、栃木県が、不登校の予防や解決のための学校支援などを進める専門チームを設置しています。
 一方、不登校などの支援に取り組む「栃木県若年者支援機構」によりますと、フリースクールなど民間が運営する不登校の子どものための施設も県内に10か所程度あるということです。

栃木県内の"外国人の児童" 過去10年で最多〈11月1日:有馬 護 記者〉

栃木県内の小中学校に通う外国籍の児童や生徒の数は1500人あまりで、このうち小学生は、過去10年で最も多くなりました。

 県教育委員会によりますと、ことし・平成30年5月現在、県内の小中学校に在籍する外国籍の子どもは、▽小学校が1068人、▽中学校が480人となっています。
 これは、5年前と比べて、▽小学校で232人、▽中学校で28人増え、特に小学生は過去10年で最も多くなりました。

 また、文部科学省の調査によりますと、おととし・平成28年5月現在、県内の公立の小中学校で、日本語の指導が必要な外国籍の子どもは、▽小学校で、外国籍の児童のおよそ半分にあたる500人、▽中学校でおよそ3割にあたる127人いることがわかりました。

 これらの児童・生徒を母国語別にみると、▽スペイン語が最も多く232人、▽次いで、ポルトガル語が141人、▽フィリピン語が111人、▽中国語が51人となっています。

 また、長年海外で生活し帰国した子どもたちなど日本語指導が必要な日本国籍の子どもは、▽小学校で110人、▽中学校で20人となっています。
 栃木県では、日本語の指導が必要な子どもが多い県内の小中学校40校を拠点校に指定し、日本語の指導教室を開設するなどの支援策を取っていますが、子どもたちの出身国が多国籍化する中で、どのように対応するかが課題となっています。

生活保護世帯などの子ども 栃木県内で1万人超〈11月1日:石川 由季 記者〉

栃木県内で、生活保護を受けている世帯などにいる小中学生の人数は1万人を超え、20年前と比べて2倍以上増えていることが国の調査でわかりました。

 文部科学省によりますと、▽給食費や学用品の費用などを支給する「就学援助」や▽生活保護を受けている世帯の小中学生の人数は、平成27年度、あわせて1万1015人にのぼりました。
これは、平成7年度の4707人の約2.3倍で、少子化で全体の子どもの数が減る一方で、経済的な理由から支援を受ける子どもは、過去20年間で大きく増えています。こうした中、十分に食事が取れない子どもや1人で食事をする機会が多い家庭の子どもたちなどを対象に、食事を無料や格安で提供する、いわゆる「子ども食堂」が県内でも増えています。
 子ども食堂の開設を支援している「こども食堂・サポートセンターとちぎ」によりますと、ことし4月の時点で宇都宮市や鹿沼市、それに足利市などに40を超える子ども食堂があり、子どもたちの孤立を防ぐ居場所となっています。

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