壱のツボ 調和した自然を愛でる
京都市にある桂離宮。 |
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御殿の中は、思いがけないほど簡素で、静かな佇(たたず)まいです。柔らかな光に、包まれた空間。 1つ目のツボは、 |
畳の先に続く6畳ほどの竹の縁台は、月見台です。広縁(ひろえん)から庭へと張り出し、丸竹を敷き詰めただけの簡素な作り。 |
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桂離宮の中には、わびた風情の茶屋も建っています。 |
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建物は、風流人を楽しませる仕掛けに、満ちています。 |
縁側の上がり口(くち)。 |
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簡素で美しく、遊び心あふれる邸宅。桂離宮は、主(あるじ)の雅(みやび)な心と、細やかな気遣いで、訪れる人を楽しませ、自然と美を堪能してもらう場なのです。 |
弐のツボ 人生を飾るハレの舞台
東京三田の三田演説館(慶應義塾大学)は、福沢諭吉によって建てられた、珍しい洋館です。 2つ目のツボは、 |
明治維新後、政財界の大物たちは、こぞって豪奢(ごうしゃ)な洋館を建てました。こちらは、三菱財閥の岩崎家三代目当主久弥(ひさや)が明治29年に建てた17世紀英国風の洋館です。 |
旧岩崎邸の廊下を進むと、目の前が開けます。主人が、階段を伝って颯爽(さっそう)と登場し、客人と初めて出会う場所です。 ここは、岩崎邸全体の印象を決める舞台空間のようなところです。 四本の柱が絶妙に組み合わさることで、部屋の奥行きが強調されました。 |
岩崎邸といえば、この豪勢な洋館が有名でしたが、実は洋館の裏に、巨大な和館がありました。 内田 「洋館というのは接客空間。部屋で言うと応接間のような空間だった。そういうことが成立する過程で、天皇の行幸(ぎょうこう)がとても大きな役割を果たしたと推測してるんですね。」 |
明治になると日本は、急速に西洋化を推し進めます。明治天皇も洋装で日本各地を行幸しました。その洋装化された天皇への最大のもてなしが、洋館でした。 |
主が、一世一代の思いで天皇を迎えた、舞台のひとつを見てみましょう。西郷隆盛の弟、従道(つぐみち)の洋館です。ここに、天皇の行幸があったのは、明治22年のこと。 |
歴史作家の桐野作人さんは、明治天皇と西郷の関係についてこう語ります。 桐野 「明治天皇は、兄隆盛を大好きだったということですね。相撲を一緒にとって明治天皇を投げ飛ばすことまでしているわけです。」 しかし、その隆盛は西南戦争を引き起こし、逆賊となってしまいます。その名誉回復がなされたのは、弟、従道の邸宅に天皇が行幸に訪れる、まさにその年でした。 |
明治天皇が訪れた際、休憩されたとされる貴賓室。 |
行幸の晴れ舞台は、この貴賓室のベランダでした。従道は、庭に土俵を作り、力士を呼んで天覧相撲の場としたのです。 桐野 「兄西郷隆盛との思い出を、明治天皇に思い起こしてもらいたい。そういう舞台設定として相撲が行われたんじゃないかと。」ここ一番の勝負の舞台として、明治の有力者が選んだのは、洋館という建物でした。そこには、新しい時代を切り開こうとする、大志が宿っていました。 |
参のツボ 和洋が出あって “和モダン”へ
次は、昭和初期に建てられた和洋折衷の住宅の美です。この時代にしばしば見られる、玄関脇の小さな洋館。家ごとに思い思いの装飾をほどこし、異国を思わせる雰囲気を作り出しました。 |
洋館つき和風住宅の傑作をご紹介しましょう。昭和5年に建てられた伊東邸。洋館は、とびっきり個性的な装いです。 |
屋根は、東京駅にも用いられ、当時モダンとされていたスレートで葺(ふ)かれた屋根です。 |
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壁は、セメントで固め、砂利を露出させた「洗い出し」という仕上げ。和にも洋にも合うと、重宝されました。 |
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日本人にとって本当に住みやすい家とは何か、その課題に取り組んだのが当時の建築家たち。 |
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前川は、近代建築の父と呼ばれるル・コルビュジェのもとで学びました。 |
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一方、京都では、より生活の視点から、課題に取り組んだ建築家がいました。 |
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それぞれの部屋をつなぐ空間が、家族の集まる居間です。その一角に畳敷きの席。イスと畳に座った人の目の高さがあうように、設計されています。和と洋が違和感なく解け合う家です。 |
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和と洋を融合させ、日本人にふさわしいすまいを探究した建築家たち。彼らのこころみは、現代の私たちの住まいの礎となったのです。 |
四のツボ 野趣あふれる造形美を味わう
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出羽三山(でわさんざん)の山のふもとにある山形県鶴岡市の田麦俣(たむぎまた)地区。 |
もうひとつ、日本家屋の源流を感じさせてくれる古民家をご紹介しましょう。今から300年以上前に建てられた、旧尾形家。広々とした土間は、その家の玄関であり炊事場、そして冬には屋内の作業場ともなりました。 |
土間に入った人を強烈な存在感で迎えるのが、この独立柱(どくりつばしら)。 |
こうした独立柱に、日本に古から伝わる精神を見出す研究者もいます。古民家を研究する建築史家の宮澤智士さん。 宮澤 「曲がったりでこぼこだったりする独立柱を見ると、私は縄文的なものを感じるんです。縄文時代の竪穴式住居はこんなに広くはありませんが、その痕跡を近世の建物に伝えているのではないかと私は感じます。」 |
宮澤智士さんは、巨大な柱は神聖なものだったと考えています。 縄文の人々にとって、大木は自然の力を象徴するものでした。日本人は、柱に宿った木の力が、家を守ると考えたのです。大きな柱にあやかり、そこに神を見たのかもしれません。 |
楽曲名 | アーティスト名 | 使われた場所 (番組開始後) |
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Moanin' | Art Blakey & The Jazz Messengers | 0分2秒 |
Rhapsody In Blue | 安川 午朗 | 1分33秒 |
Stella by Starlight | Cannonball Adderley | 3分0秒 |
New Rhumba | Ahmad Jamal | 5分15秒 |
Over The Rainbow | Chris Botti | 6分55秒 |
Toccata And Fuga | New Roman Trio | 12分11秒 |
It Don't Mean a Thing | Kronos Quartet | 13分44秒 |
Why Was I Born | Jimmy Smith | 15分54秒 |
Come Sunday | Duke Ellington | 18分51秒 |
You Be So Nice To Come Home To | Jim Hall | 23分4秒 |
Senor Mouse | Chick Corea & Gary Burton | 25分22秒 |
You Look Good To Me | Oscar Peterson | 28分45秒 |
Spiritual | Charlie Haden & Pat Metheny | 33分2秒 |
The Drum Thing | John Coltrane | 34分34秒 |
Shenandoah | Keith Jarrett | 36分57秒 |
Clara | Duke Pearson | 39分18秒 |